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慨
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なげ
ふりがな文庫
“
慨
(
なげ
)” の例文
若い警官たちは、めいめいの心の中に、この
慨
(
なげ
)
き悲しむ麗人を慰めるため、一刻も早く犯人を捕えたいものだと思わぬ者はなかった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼
(
か
)
のあるいは世を
慨
(
なげ
)
き、時を
詈
(
ののし
)
り、
危言
(
きげん
)
激語
(
げきご
)
して死に
就
(
つ
)
く者の如き、壮は則ち壮なりといえども、なおこれ一点狂激の行あるを免れず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
そして数年前設立されたベルン経済学会の会報は、勤労や技術や農業や工業の衰退や、人口消滅の切迫せる危機やを
慨
(
なげ
)
く論文で満たされていた。
人口論:02 第二篇 近代ヨオロッパ諸国における人口に対する妨げについて
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
この心を知らずや、と
情極
(
じようきはま
)
りて彼の
悶
(
もだ
)
え
慨
(
なげ
)
くが手に取る如き隣には、貫一が
内俯
(
うつぷし
)
に
頭
(
かしら
)
を
擦付
(
すりつ
)
けて、
巻莨
(
まきたばこ
)
の消えしを
擎
(
ささ
)
げたるままに
横
(
よこた
)
はれるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
貴方が絶えずお
慨
(
なげ
)
きになっていたように、なるほど軍司令部の消極政策も、おそらく原因の一つだったにはちがいないでしょうが、もともといえば
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
▼ もっと見る
もっともそれを自覚することによって、われわれは心構えが強められるのであって、
慨
(
なげ
)
くのではない。われわれとしては出来るだけのことはして来た。
二つの序文
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
僕はここでゴーゴリがペテルブルグの画家を
慨
(
なげ
)
いたことを思い出します。凡てが鈍重で悦びもなく又誰一人にも朝鮮の芸術家は大事にされないのです。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
人間の全的の感情を養い套習の
覊絆
(
きはん
)
から解放し、自由の何たるかを知らせんとする、真の文学の絶無といってもいゝのを
慨
(
なげ
)
かずにいられないのであります。
文化線の低下
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
奴隷
(
どれい
)
の歴史を読んで、その主人の暴虐に憤る前に、人は、その奴隷の無知と、無活気なるを
慨
(
なげ
)
かないだろうか。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
他日この絶大実力を貯うべき
備
(
そなえ
)
ありやを顧み、上に聖天子おわしましながら有君而無臣を
慨
(
なげ
)
き、政治に外交に教育に、それぞれ得意の辛辣な皮肉を飛ばして
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
山崎氏、君にはなんらの怨みとてはないが、君が邪魔をするために、国家の大事を誤るといって
慨
(
なげ
)
いている人がある、その人のために君を遠ざけねばならぬ。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
熱つぽい眼は
乾
(
かわ
)
いて、深い
慨
(
なげ
)
きといふよりは、燃えつくやうな、忿怒を感じたのは何んとしたことでせう。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
慨
(
なげ
)
いてゐる。その無智な、
無辜
(
むこ
)
の人達のために、殊にかれは手を仏に合せなければならないことを思つた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
自分の魂を打ち込んで焦心苦慮したことがまるで水の泡になってしまったことを
慨
(
なげ
)
いても
歎
(
なげ
)
いても足りないで私はひとり胸の中で天道を怨みかこつ心になっていた。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
追い追いの文明開化の風の吹き回しから人心うたた浮薄に流れて来たとの
慨
(
なげ
)
きを抱き、はなはだしきは
楠公
(
なんこう
)
を
権助
(
ごんすけ
)
に比するほどの偶像破壊者があらわれるに至ったと考え
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
男女
(
なんにょ
)
の間変らじと
一言
(
ひとこと
)
交
(
かわ
)
せば一生変るまじきは
素
(
もと
)
よりなるを、
小賢
(
こさか
)
しき
祈誓三昧
(
きしょうさんまい
)
、誠少き
命毛
(
いのちげ
)
に
情
(
なさけ
)
は薄き墨含ませて、文句を飾り色めかす腹の
中
(
うち
)
慨
(
なげ
)
かわしと昔の人の
云
(
いい
)
たるが
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
実は、拙者も年来蘭書読みたき宿題でござったが、志を同じゅうする良友もなく、
慨
(
なげ
)
き思うのみにて、日を過してござる。もし、各々方が、志を合せて下されば何よりの幸いじゃ。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
郭迻
(
くわくい
)
の音義とは所謂一切経類音である。類音の疎略にして、慧琳音義の伝はらざるを
慨
(
なげ
)
いて作つたのである。然るに此行瑫の書も亦亡びて、未だその発見せられたことを聞かない。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「あれが
織田信長
(
おだのぶなが
)
の紋ですよ。信長が王室の
式微
(
しきび
)
を
慨
(
なげ
)
いて、あの幕を献上したというのが始まりで、それから以後は必ずあの
木瓜
(
もっこう
)
の紋の付いた幕を張る事になってるんだそうです」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いくら剣術の空っ下手な(情人たるお国が
首
(
はじ
)
めのほうでしきりにそう
慨
(
なげ
)
いている!)
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
久留島義太のごときは、数学者は数学の問題をやっておればよいのであるが、問題がないので暦術の問題などをいじくることになったのは
慨
(
なげ
)
かわしい、というようなこともいっている。
文化史上より見たる日本の数学
(新字新仮名)
/
三上義夫
(著)
と何か
慨
(
なげ
)
くように言ったが、私を子供と思ったのか「まあ、聴いて置きなさい」
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
今では
蕩尽
(
とうじん
)
されて、僅に
残株
(
ざんしゅ
)
を存するばかり、昔のおもかげは見る由もないと
慨
(
なげ
)
かれたが、小御岳から、大沢をはさんで、大宮口に近い森林まで、純美なる白石楠花の茂っていることは
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
これより先、裸美の画
坊間
(
ぼうかん
)
の
絵草紙屋
(
えぞうしや
)
に一ツさがり、遂に沢山さがる。道徳家
慨
(
なげ
)
き、美術家
呆
(
あき
)
れ、兵士喜んで買い、書生ソッと買う。
而
(
しか
)
してその由来を『国民の友』の初刷に帰する者あり。
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
東亜の風雲
益
(
ますます
)
急なるよしを告げ、この時この際、婦人の身また
如何
(
いか
)
で
空
(
むな
)
しく過すべきやといいけるに、女史も我が当局者の優柔不断を
慨
(
なげ
)
き、心
私
(
ひそ
)
かに決する処あり、いざさらば地方に遊説して
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
近頃だんだん上方の舞が東京の踊に圧倒されて行く傾向のあるのを
慨
(
なげ
)
き、このままでは衰微してしまう郷土芸術の伝統を世に
顕
(
あら
)
わしたいと云う考から、山村舞に異常な
憧
(
あこが
)
れを寄せている人々が多く
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
真に
肺肝
(
はいかん
)
から出て非常に
慨
(
なげ
)
いて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
慨
(
なげ
)
きては、
雨
(
あめ
)
の
夕
(
ゆうべ
)
の
おもひで
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
「今日は、ちっともいいのが来ないわ」と松山の左手に坐っていた川丘みどりが、真紅に濡れているような唇をギュッと曲げて
慨
(
なげ
)
いた。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『こんなことをいつまでやつてゐたつて仕方がない。』鈍根でない人は必ずかう言つて
慨
(
なげ
)
くに相違ない。又非常なる単調と疲労と平凡とを感じて来るに相違ない。
自からを信ぜよ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
今日まで
懕々
(
ぶらぶら
)
致候
(
いたしさふらふ
)
て、唯々
懐
(
なつかし
)
き
御方
(
おんかた
)
の事のみ
思続
(
おもひつづ
)
け
候
(
さふらふ
)
ては、みづからの
儚
(
はかな
)
き儚き身の上を
慨
(
なげ
)
き、胸は
愈
(
いよい
)
よ痛み、目は
見苦
(
みぐるし
)
く
腫起
(
はれあが
)
り候て、今日は
昨日
(
きのふ
)
より
痩衰
(
やせおとろ
)
へ
申候
(
まをしさふらふ
)
。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
阿島の旗本の家来で国事に心を寄せ、王室の衰えを
慨
(
なげ
)
くあまりに脱籍して浪人となり、
元治
(
げんじ
)
年代の長州志士らと共に京坂の間を活動した人がある。たまたま元治
甲子
(
きのえね
)
の戦さが起こった。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
老婆は貞順の無慙な姿を見附けるなり、ふーと息を吐き出して朝鮮語で
慨
(
なげ
)
いた。
光の中に
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
私に取っては何よりの
慨
(
なげ
)
きでしたが、幸いな事に妙子は、九八郎にすっかり愛想を尽かして、二度ともう帰ろうとしないばかりか、その話を一寸でもすると、ヒドく憂鬱になる様子でした。
新奇談クラブ:02 第二夜 匂う踊り子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
元封
(
げんぽう
)
元年に武帝が東、
泰山
(
たいざん
)
に登って天を祭ったとき、たまたま
周南
(
しゅうなん
)
で病床にあった
熱血漢
(
ねっけつかん
)
司馬談
(
しばたん
)
は、天子始めて漢家の
封
(
ほう
)
を建つるめでたきときに、
己
(
おのれ
)
一人従ってゆくことのできぬのを
慨
(
なげ
)
き
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
前に
疏
(
そ
)
を
上
(
たてまつり
)
りて、諸藩を削るを
諫
(
いさ
)
めたる
高巍
(
こうぎ
)
は、言用いられず、事
遂
(
つい
)
に発して天下動乱に至りたるを
慨
(
なげ
)
き、書を
上
(
たてまつり
)
りて、臣願わくは燕に
使
(
つかい
)
して言うところあらんと請い、許されて燕に至り
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
さてこそ虎松は、捜索上の不運を
慨
(
なげ
)
くよりも前に帯刀の
辛辣
(
しんらつ
)
なる言葉を耳にするのを
厭
(
いや
)
がっていたのであった。——
くろがね天狗
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ある処は叙述が説明に陥るのを憂ひ、ある処は会話と会話とのつなぎの十分でないのを
慨
(
なげ
)
いた。しかし何うやら彼うやら『生』の一篇が出来た時には、ほつと呼吸を
吐
(
つ
)
いた。
小説新論
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
一枚の
曠着
(
はれぎ
)
さへ無き身貧に相成候ほどに、いよいよ先の錦の事を思ひに思ひ候へども、今は
何処
(
いづこ
)
の人手に渡り候とも知れず、日頃それのみ苦に病み、
慨
(
なげ
)
き暮し居り候折から
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
賢君忠臣の
事蹟
(
じせき
)
を
空
(
むな
)
しく地下に埋もれしめる
不甲斐
(
ふがい
)
なさを
慨
(
なげ
)
いて泣いた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
『不浄だとは何だ』と丑松は心に憤つて、蔭ながらあの大日向の
不幸
(
ふしあはせ
)
を憐んだり、
道理
(
いはれ
)
のないこの非人扱ひを
慨
(
なげ
)
いたりして、穢多の種族の悲惨な運命を思ひつゞけた——丑松もまた穢多なのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
まことに
慨
(
なげ
)
かわしき存在だったのです。
銭形平次捕物控:241 人違い殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いつもはわざと住居から遠くはなれて秘密な恋を味い喜んだあの
佃島
(
つくだじま
)
で私ははっきり切れ話を持ち出した。時子の
慨
(
なげ
)
きがどんなであったか、それは想像に委せる。
三角形の恐怖
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人は唯、愛することを得ざるを
慨
(
なげ
)
き、信ずることを得ざるを悲しむべきではないか。
女と情と愛と
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
三吉にはそれも耳に入らぬらしく、折悪しく帆村名探偵の海外出張中なのを
慨
(
なげ
)
いていた。
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
西鶴を不真面目と言ひ、通人と言ひ、幇間と言ふ人の眼の盲いてゐることを私は
慨
(
なげ
)
かずには居られない。既に『虚無』である、従つて、西鶴は『箇』に住した作家だと言ふことが出来る。
西鶴小論
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
いや
慨
(
なげ
)
くのは後でもいい。今はたった一人の愛すべき妹とその夫が、全く同じ手で殺害されようとしているのだ。……ああ、おれはもう、この雷鳴の済むまで待ってなどいられないんだッ
雷
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そしてその後で、すぐ筆をつづけて、何うして帰つて来たらう! 愛も何もない男の許に何うして帰つて来たらう! と言つて
慨
(
なげ
)
いてゐる。何うしても、立派に今の心境小説であると私は思つた。
早春
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
ただ彼の親しい友人のAというのが、よくこんな赭い熟れきったような顔を彼の前に現わして、「ああ
昨夜
(
ゆうべ
)
は近頃になく呑みすぎちゃった。きょうはフラフラで睡い睡い」と
慨
(
なげ
)
くのであった。
軍用鼠
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今まで広い空間に孤独を歎き、一人を歎き、自然の無関心を
慨
(
なげ
)
いた自己は、
杳
(
はる
)
かに遠い過去に没し去つた。今はその如来の像はかれに向つて話し懸けた。又かれに向つて
微妙
(
みめう
)
不可思議の心理を示した。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
慨
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
“慨”を含む語句
慷慨
慷慨家
感慨無量
憤慨
慨然
感慨
慨歎
悲憤慷慨
慨嘆
慨世
慷慨淋漓
大憤慨
感慨深
慷慨悲憤
敵慨心
慷慨悲歌
慷慨激越
気慨
慷慨癖
慷慨的
...