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得々
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とくとく
ふりがな文庫
“
得々
(
とくとく
)” の例文
その時々に行わるる標準をもって勝敗を定むることはほんの一時的で、市中の
屠者
(
としゃ
)
が
韓信
(
かんしん
)
に勝ったといって
得々
(
とくとく
)
たると同じである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼らは電燈の明るいサロンにいつも快活に話し合っていました。のみならず時には
得々
(
とくとく
)
と彼らの超人ぶりを示し合っていました。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
新政府に
嫁
(
か
)
し、維新功臣の
末班
(
まっぱん
)
に列して
爵位
(
しゃくい
)
の高きに
居
(
お
)
り、
俸禄
(
ほうろく
)
の
豊
(
ゆたか
)
なるに
安
(
やす
)
んじ、
得々
(
とくとく
)
として
貴顕
(
きけん
)
栄華
(
えいが
)
の
新地位
(
しんちい
)
を占めたるは
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
そんなひどい形容詞を、まっさきに案出して、それを私の王冠となして、
得々
(
とくとく
)
としていたのは、誰でもない、私なのである。この私である。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
また
退
(
しりぞ
)
いて再考すれば、学者先生の中にもずいぶん俗なる者なきに非ず、あるいは稀には何官・何等出仕の栄をもって
得々
(
とくとく
)
たる者もあらん。
学問の独立
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
こうして後からあの世への迎えが宙を飛んで自分の背に迫って行きつつあるのも知らずに、
得々
(
とくとく
)
と大手を振って歩いているものと思われる。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ことに
倫落
(
りんらく
)
した女たちは、鬼の首でも取ったかのように、
得々
(
とくとく
)
揚々として、批判も同情もなく、
殆
(
ほとん
)
ど吐きだすような調子であげつらうのを聞いた。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
家にかえってから、私は母に
得々
(
とくとく
)
とその話しをした。そしたら、三年生の姉が帰ってきて、
口惜
(
くや
)
しがりながら云った。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
軽蔑の意味をもってこれを呼び
得々
(
とくとく
)
としている者もあるように見受けるが、これははなはだ心得違いのことである。
戦争と平和
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
金に眼がくれて町人の娘を貰い、それで
得々
(
とくとく
)
たる仁だけあって、物の考えが
無骨者
(
ぶこつもの
)
のわれわれとは天から違い申す。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
渠
(
かれ
)
はこの柱のもとに立寄り、真中の一本に、
斉天大聖到此一遊
(
せいてんたいせいとうしいちゆう
)
と墨くろぐろと書きしるした。さてふたたび雲に乗って如来の掌に飛帰り、
得々
(
とくとく
)
として言った。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
この人情の機微をも知らずして、ただちにわが神学的断定を友の頭上に加えて
得々
(
とくとく
)
たるところ、正にその神学の純正を誇る若き神学者そのままというべきである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
ことにいわゆる
一尋鰐
(
ひとひろわに
)
の物語の、古い印象に養われた人々ならば、猿が亀の背に乗って、
得々
(
とくとく
)
として海の都に行く
絵様
(
えざま
)
に、どれくらい興じ笑ったかしれぬのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
予は
凱旋
(
がいせん
)
の将の如く
得々
(
とくとく
)
として伯父より譲られたる銀側の時計をかけ革提を持ち、「皆様御健勝で」と言うまでは勇気ありしが、この
暇乞
(
いとまごい
)
の語を出し終りたる後は胸一杯
良夜
(新字新仮名)
/
饗庭篁村
(著)
ズガニを三匹とった正は、それをあき
缶
(
かん
)
にいれて
得々
(
とくとく
)
として
石垣
(
いしがき
)
をのぼってきた。三角形の空地にある
杏
(
あんず
)
の木は夏にむかって青々としげり、黒いかげを
土手
(
どて
)
の上におとしている。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
歴史はとにかく彼等はかかる異様な風態をして夜間だけは
得々
(
とくとく
)
たるにも係わらず内心は少々人間らしいところもあると見えて、日が出ると、肩をすぼめる、胸をかくす、腕を包む
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その太刀を
着
(
つ
)
けて、新宮の祭の行列に加わり、
得々
(
とくとく
)
としてねり歩くつもりだろう。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
ただ、作家がその小感動を述べて
得々
(
とくとく
)
としているのを見ると
虫唾
(
むしず
)
が走るのである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
これも或る時、ドウいう
咄
(
はなし
)
の連続であったか忘れたが、例の通り清貧咄をして「黒くとも米の飯を食し、綿布でも綿の入った着物を着ていれば僕はそれで満足している」と
得々
(
とくとく
)
としていった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
すると彼は
得々
(
とくとく
)
として喋りだしたものである。云うところはこうだ。
不思議なる空間断層
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
兎も角も兄の
敵
(
かたき
)
を討つ為めに、苦労に苦労を重ねた上、ついに最後の目的を達したと信じ切って、
得々
(
とくとく
)
としてその巧妙な殺人手段を見せびらかしていた時、殺してしまった筈の、当の敵の倭文子が
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ある
生温
(
なまあたた
)
かい曇天の午後、ラップは
得々
(
とくとく
)
と僕といっしょにこの大寺院へ出かけました。なるほどそれはニコライ堂の十倍もある大建築です。
河童
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
穴山梅雪は、
帰館
(
きかん
)
すべくふたたびまえの
駒
(
こま
)
にのって、持ってきた黄金をも取りかえし、
武田伊那丸
(
たけだいなまる
)
をも手に入れて、
得々
(
とくとく
)
と社頭から列をくりだした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
けれども、そのような失敗にさえ、なんとか理窟をこじつけて、上手につくろい、ちゃんとしたような理論を編み出し、苦肉の芝居なんか
得々
(
とくとく
)
とやりそうだ。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この点に
就
(
つい
)
ては
我輩
(
わがはい
)
も氏の事業を
軽々
(
けいけい
)
看過
(
かんか
)
するものにあらざれども、
独
(
ひと
)
り
怪
(
あや
)
しむべきは、氏が維新の
朝
(
ちょう
)
に
曩
(
さ
)
きの敵国の士人と
並立
(
ならびたっ
)
て
得々
(
とくとく
)
名利
(
みょうり
)
の地位に
居
(
お
)
るの一事なり
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
知識階級にある男たちまでが
好
(
い
)
い気になってあなたの恋愛——他人に何らの
容喙
(
ようかい
)
をも許されないことにまで立入って、はずかしげもなくあげつらい
得々
(
とくとく
)
としていました。
平塚明子(らいてう)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
むかし
淮陰
(
わいいん
)
の少年が
韓信
(
かんしん
)
を
侮
(
あなど
)
り韓信をして
袴下
(
こか
)
を
匍伏
(
ほふく
)
せしめたことがある。
市
(
まち
)
の人は皆
韓信
(
かんしん
)
の
怯懦
(
きょうだ
)
にして負けたことを笑い、少年は勝ったと思って必ず
得々
(
とくとく
)
としたであろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
科学者たちはその滅亡の跡を見て数々の原因を指摘しては
得々
(
とくとく
)
としているが、その原因と称する所のものは、何ぞ図らん、原因ではなくて結果に過ぎないことが多いのである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
中学などの少年輩までが
見様見真似
(
みようみまね
)
に、こうしなくては幅が
利
(
き
)
かないと心得違いをして、本来なら赤面してしかるべきのを
得々
(
とくとく
)
と
履行
(
りこう
)
して未来の紳士だと思っている。これは働き手と云うのではない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうして、ほどなく、見た所から
無骨
(
ぶこつ
)
らしい伝右衛門を伴なって、
不相変
(
あいかわらず
)
の微笑をたたえながら、
得々
(
とくとく
)
として帰って来た。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
信雄は
欣然
(
きんぜん
)
として、長島へ帰った。
庸劣
(
ようれつ
)
なこの
公達
(
きんだち
)
は、秀吉から約された微々たる
戦捷
(
せんしょう
)
の分け前をもって、鬼の首でも取ったように、
得々
(
とくとく
)
として去った。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なおかつ一世を
瞞着
(
まんちゃく
)
して
得々
(
とくとく
)
横行すべきほどの、この有力なる開進風潮の中にいながら、学校教育の一局部を変革して、もって現在の
世態
(
せいたい
)
を左右せんと欲するが如きは
徳育如何
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
得々
(
とくとく
)
としていたときなど、次男は、陰でひとり、余りの痛憤に、大熱を発した。
愛と美について
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その
宣言
(
せんげん
)
を非難するわけではないが、その実際は
如何
(
いかん
)
と
尋
(
たず
)
ねられれば、ややもすると国家社会は言うまでもなく、
己
(
おの
)
れの友人
親戚
(
しんせき
)
にさえも迷惑をかけて自分のみ
得々
(
とくとく
)
として金を作ったり
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
野口という大学教授は、青黒い
松花
(
スンホア
)
を頬張ったなり、
蔑
(
さげす
)
むような笑い方をした。が、藤井は
無頓着
(
むとんじゃく
)
に、時々和田へ目をやっては、
得々
(
とくとく
)
と話を続けて行った。
一夕話
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
為の連れの者の勘太が、ひっ返して来て、うしろへ近づいていたのも知らず、浪人者は、安んじて、
得々
(
とくとく
)
と自己の偉力を誇っていたところだったからである。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
社会の
陰処
(
いんしょ
)
に独り醜を
恣
(
ほしいまま
)
にするにあらざれば同類一場の交際を開き、豪遊と名づけ愉快と称し、
沈湎
(
ちんめん
)
冒色
(
ぼうしょく
)
勝手次第に飛揚して
得々
(
とくとく
)
たるも、不幸にして君子の耳目に触るるときは
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
得々
(
とくとく
)
としていた時など、次男は、陰でひとり、余りの痛憤に、大熱を発した。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
すでに洛内で
凱旋
(
がいせん
)
気分を揚げているほかの
得々
(
とくとく
)
たる諸大将の派手やかさとは、全く似ても似つかない。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はズボンのポケツトの底へちやんとそのマツチを落した後、
得々
(
とくとく
)
とこの店を後ろにした。……
あばばばば
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
君らがいわゆる盛会に例の如く妓を
聘
(
へい
)
し酒を飲み
得々
(
とくとく
)
談笑するときは勿論、時としては親戚・朋友・男女団欒たる内宴の席においても、一座少しく興に入るとき、
盃盤
(
はいばん
)
を
狼藉
(
ろうぜき
)
ならしむる者は
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
俄然
(
がぜん
)
、口をひらいて、それらの花器や茶入れの渡って来るところの
明
(
みん
)
という国がらについて、その風俗、気候、
山川
(
さんせん
)
、地域の広さなどを、見て来たように
得々
(
とくとく
)
と語り出した。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日本一の桃太郎は犬猿雉の三匹と、人質に取った鬼の子供に宝物の車を引かせながら、
得々
(
とくとく
)
と故郷へ
凱旋
(
がいせん
)
した。——これだけはもう
日本中
(
にほんじゅう
)
の子供のとうに知っている話である。
桃太郎
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三千年前の
項羽
(
こうう
)
を
以
(
もっ
)
て今日の榎本氏を
責
(
せむ
)
るはほとんど
無稽
(
むけい
)
なるに
似
(
に
)
たれども、
万古不変
(
ばんこふへん
)
は人生の心情にして、氏が
維新
(
いしん
)
の
朝
(
ちょう
)
に青雲の志を
遂
(
と
)
げて
富貴
(
ふうき
)
得々
(
とくとく
)
たりといえども、時に
顧
(
かえり
)
みて
箱館
(
はこだて
)
の旧を思い
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
小牧
(
こまき
)
の蝶々と呼び、こんどの拾い者だと称して、
得々
(
とくとく
)
と大坂城へつれ帰ったのではあるが、はしなくも、それから数日後、北の丸の
寧子夫人
(
ねねふじん
)
とのあいだに、何か、問題になり
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
毛利先生の身ぶりや
声色
(
こわいろ
)
を早速使って見せる生徒——ああ、自分はまだその上に組長の
章
(
しるし
)
をつけた自分までが、五六人の生徒にとり囲まれて、先生の誤訳を
得々
(
とくとく
)
と指摘していたと云う事実すら
毛利先生
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
とかいう風に、自己満足な解釈を下して、
得々
(
とくとく
)
と、旅の
垢
(
あか
)
を洗っている——
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが一つには
帰雁
(
きがん
)
とあり、一つには二とあったそうじゃ。合せて読めば
帰雁二
(
きがんに
)
となる、——こんな事が嬉しいのか、康頼は翌日
得々
(
とくとく
)
と、おれにもその葉を見せなぞした。成程二とは読めぬでもない。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
(
得々
(
とくとく
)
と)黄泉の使も
情
(
なさけ
)
だけは心得ているつもりなのです。
二人小町
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
得
常用漢字
小5
部首:⼻
11画
々
3画
“得々”で始まる語句
得々然