彼此かれこれ)” の例文
僕が立つのに妻なんぞはゐなくてもいから、是非一しよに行つて上げろと云つて、妻を附けて遣つた。それでももう彼此かれこれ帰る頃だよ。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼此かれこれ種々いろ/\すぐれた簡便かんべん方法はうはふかんがへてはたものゝ、たゞ厄介やくかいことにはうしてれを實行じつこうすべきかと名案めいあんたなかつたことです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
先程見た一人の旅人たびびとはこの遍路であつたのだから、遍路は彼此かれこれ三十分も此処ここに休んで居るのであつた。遍路は眼が悪いといふことを云つた。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
この上尚ほ彼此かれこれ面倒な事を申して居りますならば、鉱毒の水を汲んで来て、農商務大臣に飲んで貰ひませう。早い話である。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼此かれこれ似つかはしき中なるに、マリアが所有なりといふカラブリアの地面はいと廣しといへば、おん二人ふたり生計たつきさへ豐かなることを得べきならん。
イクバクモ亡クシテ彦之ハ房州ニ帰リ彼此かれこれ訊問杳然ようぜんタルコト数年ナリ。庚戌ノ秋余事アリ房州ニ赴キよぎリテ彦之ヲ見ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
千駄木せんだぎおくわたしいへから番町ばんちやうまでゞは、可也かなりとほいのであるが、てからもう彼此かれこれ時間じかんつから、今頃いまごろちゝはゝとにみぎひだりから笑顔ゑがほせられて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其様子を例の意地悪の職人が認めて、二人の事を彼此かれこれ言つては調戯からかひ、仲間中に触れ廻る。仲間の者も笑つて
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
しかし、彼此かれこれするうちに二人の間に女の子が出来、それからというものは、彼女は非常におとなしくなった。
誤った鑑定 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
お糸さんを一足先へかえし、私一人あとから漫然ぶらりと下宿へ帰ったのは、彼此かれこれ十二時近くであったろう。もう雨戸を引寄せて、入口のおおランプも消してあった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これとつてウームと力任ちからまかせにやぶるとザラ/\/\とたのが古金こきん彼此かれこれ五六十りやうもあらうかとおもはれるほど、金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
世間で彼此かれこれ云ってわたしの耳に這入らないうちに、あの人が自分で話したから好かったわね。フリイデリイケばかりではないわ。一体なんだってどの女もどの女もあの人にでれ付くのだろう。
それで致し方なく、口笛を鳴らしながら彼此かれこれ三十分近くも蹲んで居りますうちに、向う岸の雫石さんの裏手辺りに誰かいたと見えて、莨の吸殻を池の中へ投げ捨てたのが眼に入りましたので。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
病めるものは之を慰め、貧しきものは之を分ち、心曲こゝろまがりて郷里の害を爲すものには因果應報の道理をさとし、すべて人の爲め世の爲めに益あることは躊躇たゆたふことなくし、絶えて彼此かれこれ差別しやべつなし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
今日も、周囲の明るさに、自然に目を覚したのは彼此かれこれ十時近くであった。
曇天 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
此処こゝでさん/″\たせられて、彼此かれこれ三四十ぷん暗黒くらやみなかつたのちやうや桟橋さんばしそとることが出来できた。したのはかたばかりのちひさな手荷物てにもつで、おほきなトランクは明朝みやうてうりにいとのことだ。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
黄昏時たそがれどきがもう近くなった。マリイはろは台に腰を掛てから彼此かれこれ半時はんときばかりになる。最初の内は本を読んでいたが、しまいにはフェリックスの来るはずの方角に向いて、並木の外れを見ていたのである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
質の彼此かれこれに関はらず何事でも茫大なことが彼の趣味であつた。
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
それから彼此かれこれ一里の余も歩くと、山と山とが少し離れた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
、世間では彼此かれこれ申すさうぢやありませんか、私ヤ、うせ斯様かうしたからだなんですから、ちつともかまやしませぬけれど、其れぢや、先生に御気の毒ですものねエ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
話は前へ戻って、彼此かれこれするうちに、お蝶さんは妊娠したのであります。即ち、悪漢のたねを宿したのであります。運命はどこまでお蝶さんを虐げるのでしょう。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
その関係を前後混同して彼此かれこれ云ったところで、所詮しょせん戯論に終わるので、理窟は幾何いくらくわしいようでも、この歌から遊離したうわそらの言辞ということになるのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼此かれこれするうちに寛永九年になつて、前將軍秀忠が亡くなり、忠之は江戸で葬儀に列して領國へ歸つた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
と言わぬばかりの高慢の面付つらつきしゃくさわってたまらなかったが、其を彼此かれこれ言うと、局量が狭いと言われる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
本当に姉さんはお村を彼此かれこれ云ってくださるから有難い事だって、平常ふだんそう云っているのだよ、なんでも姉さんの云う事をかなけりゃいけねえって、そう云っているのだから
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
町で評判であつた美しい花嫁時代、それからだん/\生活に直面して来て、長いあひだ彼此かれこれ三十年ものあひだ、……遠い国の礦山に用度掛りとして働いてゐた夫の留守をして
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
然しその事は最早彼此かれこれいふべき時期を過ぎた。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼此かれこれ五時頃であったろうか。
長崎の一瞥 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼此かれこれするうちに、私は死体というものに一種の強い愛着の念を覚えるに至りました。老若男女を問わず、死体でさえあれば、それに接するのが楽しくなったのです。
三つの痣 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
其れも余り軽蔑けいべつした仕方と思つたからこそ、君を媒酌人ばいしやくにんと云ふことに頼んだのだ、最早もう彼此かれこれ半歳はんとしにもなるぞ、同僚などから何時式を挙げると聞かれるので、其の都度つど
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「思へれば」は、彼此かれこれおもう、いろいろおもうの意で、此句と、前の句との間に小休止があり、これはやはり人麿的なのであるから、「ものおもふ」ぐらいの意に取ればいい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
八はこんな風で彼此かれこれ三十分もうとうとしてゐた。其間に時計が三時を打つたのをも、八は知らなかつた。転寝といふものは、少しると一時は存外精神を恢復させるものである。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
聞くに堪え兼ね、怒りに任せ、思わずうなる声を聞きつけ、お國が出て参り、彼此かれこれと言いあいはしたものゝ、源次郎の方には殿様から釣道具の直しを頼みたいとの手紙をもって証拠といたし
其時はしんに其積りであながち気休めではなかったのだが、彼此かれこれ取紛とりまぎれて不覚つい其儘になっている一方では、五円の金は半襟二掛より効能ききめがあって、それ以来お糸さんが非常に優待して呉れるが嬉しい。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
の時にも君に放逐はうちくする様に注意したのだが、自分のことで彼此かれこれ云ふのは、世間の同情を失ふおそれがあるからと君が言ふので、其れも一理あるとわしも辛棒したのだ、今度は、君
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼此かれこれするうち、日は容赦なく過ぎて、検事は焦燥を感じましたが、法医学教授をたずねた折、ふと鯉坂君が、新案探偵法を工夫したということを聞き、物も試しだからと思って
新案探偵法 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「言挙せず」は、「神ながら言挙せぬ国」(巻十三・三二五三)、「言挙せず妹に依り寝む」(巻十二・二九一八)等の例にもある如く、彼此かれこれと言葉に出していわないことである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
お前様といふものある清さんとこのやうな身持の私が、すなほに彼此かれこれ申し候とも願のかなふはずなければ、何事も三谷さんの酒の上から出たたわぶれのやうに取成とりなし、一しよにさへ寝たならば
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
右様天下衆人之能存候よくぞんじそろ罪状有之者を誅戮ちゆうりく仕候事、実に報国赤心之者に御座候間、非常之御処置をもつて手を下し候者も死一等を被減候様仕度げんぜられそろやうつかまつりたく如斯かくのごとく申上候へば、先般天誅之儀に付彼此かれこれ申上候と齟齬そご
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
彼此かれこれするうちに、ここに新らしいセンセーションが起った。