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屹
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き
ふりがな文庫
“
屹
(
き
)” の例文
しばらくはわが足に
纏
(
まつ
)
わる絹の音にさえ心置ける人の、何の思案か、
屹
(
き
)
と立ち直りて、
繊
(
ほそ
)
き手の動くと見れば、深き幕の波を描いて
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
貫一は食はんとせし栗を持ち直して、
屹
(
き
)
とお峯に打向ひたり。聞く耳もあらずと知れど、秘密を語らんとする彼の声は
自
(
おのづ
)
から
潜
(
ひそま
)
りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
わるい事だが、芸のためには、やむを得まい。私も実行しよう。すぐに
屹
(
き
)
っと
眉
(
まゆ
)
を挙げて、女中さん、と声の調子を変えて呼びかけました。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
呉羽は見る見る
中
(
うち
)
に
硝子
(
ガラス
)
瓶のように血の気を喪った。
屹
(
き
)
っと身を起して笠支配人の真正面に正座して、唇をキリキリと噛んだまま睨み付けた。
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
美人「夫では貴方の叔父さんへお伝え申しましょう、併し夫もお目に掛って
直々
(
じきじき
)
にで無くては」余「イヤ叔父は定めし喜びましょう、私が
屹
(
き
)
っと叔父を ...
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
▼ もっと見る
「
何
(
なん
)
だ。
強盜
(
がうたう
)
だ、
情人
(
いろ
)
だ。」と
云
(
い
)
ひさま、ドンと
開
(
あ
)
けて、
衝
(
つ
)
と
入
(
はひ
)
つて、
屹
(
き
)
と
其
(
そ
)
の
短銃
(
ピストル
)
を
差向
(
さしむ
)
けて、
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るや、あ、と
叫
(
さけ
)
んで、
若旦那
(
わかだんな
)
は
思
(
おも
)
はず
退
(
すさ
)
つた。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それでも一度だけ彼は険しい顔をして、自分と
相向
(
あいむか
)
いに坐っている子供たちを
屹
(
き
)
っと睨みながら食卓を厳しく叩いた。それはまったく
機宜
(
きぎ
)
に適した処置であった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
上品な黒のアストラカンの
外套
(
がいとう
)
を
恰好
(
かっこう
)
よく着こなした、スッキリとした姿!
屹
(
き
)
っと見据えていた切れ長な
眸許
(
めもと
)
……
口惜
(
くや
)
しそうに涙ぐみながら、
睨
(
にら
)
み付けていた姿!
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
中には煌々とした
灯火
(
あかり
)
が輝いているが、その窓かけの上に映っている影絵、
屹
(
き
)
っと支えられた頭、角張った肩、峻鋭な風貌、——やがてその影絵は、頭を半廻転させたが
空家の冒険
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
闇太郎は、ふと、
屹
(
き
)
ッとした目で、女がたを見た——悲哀に閉ざされた横がおを、強く見た。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
私が、なにを言うかと
屹
(
き
)
ッとみる
目差
(
まなざ
)
しを、その老エスキモーは受けつけぬように静かに
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
心誉僧正に祈られんとて召しに遣はす程に、未だ参らざるさきに、女房の局なる女に物憑きて申して曰く、別の事にはあらず、
屹
(
き
)
と目見入れ奉るによりて、斯くおはしますなり。
憑き物系統に関する民族的研究:その一例として飛騨の牛蒡種
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
彼女は
屹
(
き
)
っとなって身ずまいを正した。火鉢の火に
被
(
かぶ
)
さった白い灰が崩れおちた。
不幸
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
今汝らに告げんとす、告ぐる所は
屹
(
き
)
と成らむ、 410
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
「いいえ。」青白い顔の眼の大きいその女の子は、名女優のように
屹
(
き
)
っと威厳を示して、「あなたでは、ございません。」
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
直道は
屹
(
き
)
と振仰ぐとともに両手を胸に組合せて、
居長高
(
ゐたけだか
)
になりけるが、父の
面
(
おもて
)
を見し目を伏せて、さて
徐
(
しづか
)
に口を開きぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
白糸の
眼色
(
めざし
)
はその精神の全力を
鍾
(
あつ
)
めたるかと覚しきばかりの光を帯びて、病めるに似たる水の
面
(
おも
)
を
屹
(
き
)
と
視
(
み
)
たり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「罪あるを許さずと誓わば、君が
傍
(
かたえ
)
に坐せる女をも許さじ」とモードレッドは
臆
(
おく
)
する気色もなく、一指を挙げてギニヴィアの
眉間
(
みけん
)
を
指
(
さ
)
す。ギニヴィアは
屹
(
き
)
と立ち上る。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それがいつもの通り、口を
屹
(
き
)
っと結んでいて、その
※
(
いりやま
)
形の
頂辺
(
てっぺん
)
が殆んど顔の真中辺まで上って来ているのだが、その幾分もたげ気味にしている目窪の中には、異様に輝いている点が一つあった。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
雪之丞が、まるで
容子
(
ようす
)
を変えて膝に手を、
屹
(
き
)
ッとお初を見上げたが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
さはれ汝に今宣んす、宣んする處
屹
(
き
)
と成らむ
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
「五月三日の今ごろ、またお伺い致します。その時は、よろしくお願いします。」
屹
(
き
)
っと少女をにらんでやった。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
髷
(
まげ
)
の島田の気高いまで、胸を
屹
(
き
)
と据えていたが、母衣に真白な両手が
掛
(
かか
)
ると、前へ
屈
(
かが
)
んだ月の
俤
(
おもかげ
)
、とばかりあって、はずみのついた、車は石段で留まったのであった。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婦人はとにもかくにも
遣過
(
やりすご
)
せしが、又何とか
思直
(
おもひなほ
)
しけん、
遽
(
にはか
)
に追行きて呼止めたり。
頭
(
かしら
)
を
捻向
(
ねぢむ
)
けたる酔客は
眊
(
くも
)
れる
眼
(
まなこ
)
を
屹
(
き
)
と見据ゑて、
自
(
われ
)
か
他
(
ひと
)
かと
訝
(
いぶか
)
しさに
言
(
ことば
)
も
出
(
いだ
)
さず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
と、いって、
屹
(
き
)
ッと、相手をみつめて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
無駄なことをしては困るね、と私は、さんざ叱ってやりました。すると、あの人は、私のほうを
屹
(
き
)
っと見て
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
時に
立窘
(
たちすく
)
みつゝ、
白鞘
(
しらさや
)
に思はず手を掛けて、以ての
外
(
ほか
)
かな、
怪異
(
けい
)
なるものどもの
挙動
(
ふるまい
)
を
屹
(
き
)
と
視
(
み
)
た夫人が、忘れたやうに、
柄
(
つか
)
をしなやかに袖に
捲
(
ま
)
いて、するりと帯に落して
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
こまかい雪が芝居のようにたくさん降っているさまを
屹
(
き
)
っと見て、雪がざあざあ降るといっては、いけない。
千代女
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
時
(
とき
)
に
立窘
(
たちすく
)
みつゝ、
白鞘
(
しらさや
)
に
思
(
おも
)
はず
手
(
て
)
を
掛
(
か
)
けて、
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
かな、
怪異
(
けい
)
なるものどもの
擧動
(
ふるまひ
)
を
屹
(
き
)
と
視
(
み
)
た
夫人
(
ふじん
)
が、
忘
(
わす
)
れたやうに、
柄
(
つか
)
をしなやかに
袖
(
そで
)
に
捲
(
ま
)
いて、するりと
帶
(
おび
)
に
落
(
おと
)
して
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
良夫
(
おっと
)
と誤り、良夫と見て、胸は早鐘を
撞
(
つ
)
くごとき、お貞はその良人ならざるに腹立ちけむ、
面
(
おもて
)
を赤め、瞳を据えて、
屹
(
き
)
とその面を
瞻
(
みまも
)
りたる、来客は帽を脱して、
恭
(
うやうや
)
しく一礼し
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まんなかに大きい富士、その下に小さい、
罌粟
(
けし
)
の花ふたつ。ふたり揃ひの赤い外套を着てゐるのである。ふたりは、ひしと抱き合ふやうに寄り添ひ、
屹
(
き
)
つとまじめな顔になつた。
富嶽百景
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
やがて私も
御相伴
(
ごしょうばん
)
して一緒にごはんを食べたのであるが、今井田さんの奥さんの、しつこい無智なお世辞には、さすがにむかむかして、よし、もう嘘は、つくまいと
屹
(
き
)
っとなって
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
咳
(
しわぶき
)
さえ高うはせず、そのニコチンの害を説いて、
一吸
(
ひとすい
)
の巻莨から生ずる多量の沈澱物をもって混濁した、恐るべき液体をアセチリンの
蒼光
(
あおびかり
)
に
翳
(
かざ
)
して、
屹
(
き
)
と試験管を示す時のごときは
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相手から、あまりしつこく口論を吹っかけられた場合には、
屹
(
き
)
っとなって相手の顔を見つめ、やがて静かに、君も
淋
(
さび
)
しい男だね、とこう言え。いかな論客でも、ぐにゃぐにゃになる。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その十数名の軍夫の中に一
人
(
にん
)
逞
(
たく
)
ましき
漢
(
おのこ
)
あり、
屹
(
き
)
とかの看護員に向いおれり。これ百人長なり。
海野
(
うんの
)
と
謂
(
い
)
う。海野は年配三十八九、骨太なる手足飽くまで肥えて、身の丈もまた群を抜けり。
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
映画で覚えたのか
煙草
(
たばこ
)
の吸いかたが、なかなか気取っている。外国の役者の真似にちがいない。小型のトランク一つさげて、改札口を出ると、
屹
(
き
)
っと片方の眉をあげて、あたりを見廻す。
座興に非ず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
美しい
女
(
ひと
)
は、そんなものは、と
打棄
(
うっちゃ
)
る風情で、
屹
(
き
)
とまた幕に向って立直った。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その十数名の軍夫の中に一人
逞
(
たく
)
ましき
漢
(
おのこ
)
あり、
屹
(
き
)
と
彼
(
か
)
の看護員に向ひをれり。これ百人長なり。
海野
(
うんの
)
といふ。海野は
年配
(
ねんぱい
)
三十八、九、
骨太
(
ほねぶと
)
なる手足あくまで肥へて、身の
丈
(
たけ
)
もまた群を抜けり。
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そいつを、素早く、さっと顔にかけて、
屹
(
き
)
っと眉毛を挙げ、眼をぎょろっと光らせて、左右を見まわす。なんということもない。マスクをはずして、引き出しに収め、ぴたと引き出しをしめる。
懶惰の歌留多
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「あ、」勘蔵は
屹
(
き
)
っとなって、「てる坊!」と奥のほうへ呼びかけた。
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
これより
前
(
さき
)
、看護婦の姿が欄干から消えて、早瀬の病室の
扉
(
と
)
が堅く
鎖
(
とざ
)
されると同時に、
裏階子
(
うらはしご
)
の上へ、ふと
顕
(
あらわ
)
れた一
人
(
にん
)
の
婦
(
おんな
)
があって、
堆
(
うずたか
)
い前髪にも隠れない、鋭い瞳は、
屹
(
き
)
と長廊下を射るばかり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と立向って、英臣が
杖
(
ステッキ
)
を前につき出した時、日を遮った帽子を払って、柔かに起直って、待構え顔に
屹
(
き
)
と見迎えた。その青年を誰とかなす——病後の色白きが、清く
瘠
(
や
)
せて、鶴のごとき早瀬主税。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「来たな!」
屹
(
き
)
っと身構えて、この酒飲まれてたまるものか。
禁酒の心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しっかりと胸にしめつつ、
屹
(
き
)
と
瞰下
(
みお
)
ろす目に
凄味
(
すごみ
)
が見えた。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
屹
(
き
)
つとなつてしまつて
火の鳥
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
美しい
女
(
ひと
)
は
屹
(
き
)
と紳士を振向いた。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
屹
(
き
)
っとなってしまって
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
屹
漢検1級
部首:⼭
6画
“屹”を含む語句
屹度
屹立
屹然
屹々
屹驚
屹坐
屹崛峨々
屹度可相立旨
屹水下
突屹相