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いねむ
ふりがな文庫
“
居睡
(
いねむ
)” の例文
いくら
居睡
(
いねむ
)
りをしていても、不思議に、ぼくは二宮を乗り越したことはいっぺんもなかった。ぼくの毎日はそのようにしてつづいた。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
叔母の
肩
(
かた
)
をば
揉
(
も
)
んでいる
中
(
うち
)
、夜も
大分
(
だいぶ
)
に
更
(
ふ
)
けて来たので、源三がつい
浮
(
うか
)
りとして
居睡
(
いねむ
)
ると、さあ恐ろしい
煙管
(
きせる
)
の
打擲
(
ちょうちゃく
)
を受けさせられた。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
皆の
跫音
(
あしおと
)
が聞えた時、火鉢に
倚
(
よ
)
りかかって、時々こくりこくりと
居睡
(
いねむ
)
りをしていた母親は、あわてて目を
擦
(
こす
)
って仕事を取りあげた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
【説明】 次に映写し出されましたるは、九州帝国大学精神病学教室本館階上、教授室に於ける正木博士の
居睡
(
いねむ
)
り姿で御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
西風の夜のこの獲物は、
鴨
(
かも
)
が
葱
(
ねぎ
)
を背負ってきたようなものだった。うっかり
居睡
(
いねむ
)
りでもしていようものなら、逃げられてしまう
筈
(
はず
)
だった。
人間灰
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
「何を
愚図々々
(
ぐずぐず
)
しているんだえ? ほんとうにお前位、ずうずうしい女はありゃしないよ。きっと又台所で
居睡
(
いねむ
)
りか何かしていたんだろう?」
アグニの神
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
最後に下女と小僧を呼出して調べましたが、これは灯のない店とお勝手で
居睡
(
いねむ
)
りしていて何にも知らず、ただ変ったことは
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして、昨夜あんな恐しい仕事をして
睡
(
ねむ
)
らなかったので、熱海か箱根へ逃げのびる途中で、ついウトウトと、
居睡
(
いねむ
)
りをしはじめたのに違いない。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
人気俳優の家庭を知っていることに
聴手
(
ききて
)
が興味をもつであろうと思って、そのくせ自分はキョトンとして
居睡
(
いねむ
)
りの出そうな
長閑
(
のどか
)
な顔をしていた。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
然し、皆は明日
居睡
(
いねむ
)
りをしても、のめりながら仕事をしても——例の「サボ」をやっても、皆で「お通夜」をしようということにした。そう決った。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
睡
(
ねむ
)
くなるとそうしたままでうとうとと
居睡
(
いねむ
)
りしながら過ごして来た葉子も、思いのほか頭の中が軽くなっていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
呼んで来なよ、あの
娘
(
こ
)
や、何んだって今ッから
居睡
(
いねむ
)
りをしているんだよ、いけねえ餓鬼だよ、長次はんを見て来て呉んなましよ、
喜勢川
(
きせがわ
)
はんの座敷に居なますよ
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ある
夜
(
よ
)
懲
(
こ
)
りずに忍んで来た修験者が、寝室の口から
覗
(
のぞ
)
いて見ると、切燈台の壮い男は頭から
明
(
あかり
)
の
点
(
とも
)
った瓦盃をおろして、こくりこくりと
居睡
(
いねむ
)
りをしておりました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
いつも、こんな時には留守居役の老女中、お早婆さんが、
居睡
(
いねむ
)
り半分、
仕舞湯
(
しまいゆ
)
に
浸
(
つか
)
っているはずである。
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お父さんは
居睡
(
いねむ
)
りしていらっしゃる時の外は何時でも
暗誦
(
あんしょう
)
ですから、私の方でも思うようには出来ませんから、長い間ずっと
階下
(
した
)
の四畳半で皆と一緒におります。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……
艶々
(
つやつや
)
と
媚
(
なま
)
めいた
婦
(
おんな
)
じゃが、ええ、驚かしおった、おのれ! しかも、のうのうと
居睡
(
いねむ
)
りくさって、
何処
(
どこ
)
に、馬の通るを知らぬ婦があるものか、
野放図
(
のほうず
)
な
奴
(
やつ
)
めが。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
家の人たちは山林の下刈りにいったとかで、母が
一人
(
ひとり
)
大きな家に留守居していた。日あたりのよい奥のえん側に、
居睡
(
いねむ
)
りもしないで一心にほぐしものをやっていられる。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「うむ? あ?」と、ちょっとまごついて、今まで
居睡
(
いねむ
)
りでもしていたらしい顔をあげた。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
何気ない顔で家に帰れば、召使達は勝手元に待くたびれて居汚く
居睡
(
いねむ
)
っています。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
あなたが学校でよく
居睡
(
いねむ
)
りをしておられるので、てっきりこれは苦学生だなと僕は思っていたんです。そして、ちょいちょい僕はここで、あなたの夕刊売りの様子を拝見していたんです
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
何分激しい業務の
余暇
(
よか
)
に
睡眠
(
すいみん
)
時間を
盗
(
ぬす
)
んでは稽古するのであるから次第に寝不足が
溜
(
たま
)
って来て暖い所だとつい
居睡
(
いねむ
)
りが
襲
(
おそ
)
って来るので、秋の末頃から夜な夜なそっと
物干台
(
ものほしだい
)
に出て弾いた。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして窓の
扉
(
と
)
にも出入口の
扉
(
ドア
)
にも厳重に鍵をかって見張をしていた。一時になって、二人は紅茶を飲んだ。それから三十分も経ったろうか、二人はいつしかとろとろと
居睡
(
いねむ
)
りをしていたらしい。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ところが、その妹婿も大して危険な人物ではなさそうだった——というのは、もうすっかり酔っぱらってしまったと見えて椅子に掛けたまま、
頻
(
しき
)
りにこくりこくり
居睡
(
いねむ
)
りをしていたからである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
活動写真の評判や
朋輩
(
ほうばい
)
同士の
噂
(
うわさ
)
にも毎日の事でもう
飽
(
あ
)
きている。
睡気
(
ねむけ
)
がさしてもさすがここでは
居睡
(
いねむ
)
りをするわけにも行かないらしく、いずれも
所業
(
しょざい
)
なげに
唯
(
ただ
)
時間のたつのを待っているという様子。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それは天気のいいとき、このうえの岩のうえで
蜥蜴
(
とかげ
)
みたいにぺったりとお
腹
(
なか
)
を日にあっためられた岩にくっつけて、眼をつぶり、無念無想でねころんだり、
居睡
(
いねむ
)
りしたりする
愉
(
たの
)
しみのことをいうんだ。
涸沢の岩小屋のある夜のこと
(新字新仮名)
/
大島亮吉
(著)
真下に
視下
(
みおろ
)
す議場では、
居睡
(
いねむ
)
りをしている人や、肩を
怖
(
い
)
からせてつかみあっている人たちがいた。それが議員と云う人たちなそうで、もう
吃驚
(
びつくり
)
してしまって、それきりな気持ちになってしまっている。
生活
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「向うの電信柱の下で立ったまま
居睡
(
いねむ
)
りをしているあの人です。」
ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
つまり吾輩が今朝になって、その遺言書を書きさしたまま、
居睡
(
いねむ
)
りを初めてから、まだ五時間しか経過していない理窟になるんだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
小僧は火の気のない帳場格子の
傍
(
わき
)
に坐って、懐手をしながら、コクリコクリ
居睡
(
いねむ
)
りをしていた。時計がちょうど七時を打った。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、
忌々
(
いまいま
)
しさを忘れるには、一しょに流された相手が悪い。
丹波
(
たんば
)
の少将
成経
(
なりつね
)
などは、ふさいでいなければ
居睡
(
いねむ
)
りをしていた。
俊寛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
当時の演奏会のプログラムは、今日のそれに幾倍する恐ろしいもので、
貴顕淑女達
(
きけんしゅくじょたち
)
が、曲の半ばについうつらうつらと
居睡
(
いねむ
)
りすることが普通であった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
居睡
(
いねむ
)
っているのであるから、サンドウィッチを買ったって、構わないようなものの、しかし、物音を立てて、うっかり眼でもさまされたら、却って困る。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
(姉めも、病身じゃによって、)と
蜘蛛
(
くも
)
の巣だらけの
煤
(
すす
)
け
行燈
(
あんどん
)
にしょんぼりして、
突伏
(
つッぷ
)
して
居睡
(
いねむ
)
る
小児
(
こども
)
の蚊を追いながら、打語る。……と御坊は縁起で云うのですが。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人間たちのラッシュと、疲労と、適度の震動と、車内の薄暗さから、毎日のようにぼくは
居睡
(
いねむ
)
りをするのだった。……客車には、品川ではほとんど乗りこむ余地がなかった。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
その
永眠
(
えいみん
)
の時には
法華経
(
ほけきょう
)
を読んでいて、声の止んだのを
居睡
(
いねむ
)
りかと家人にあやまられたと聞いて、ただありがたいことと思ったのみ、これでふたりとも親が亡くなったのだなとは考えながら
落穂
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「いや、考えているのじゃない。あの怪潜水艦は、
居睡
(
いねむ
)
りをしているんだ」
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だからまた勝ちすぎる荷と連夜の睡眠不足のために、学校に行って机に
凭
(
よ
)
りかかるとはすぐに
居睡
(
いねむ
)
りが出てきて、どんなに気を張りつめて眠らないようにしようとしてもそれには勝てなかった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
或る時白髪小僧は王様の居る都に来て、その
街外
(
まちはず
)
れを流れる一つの川の縁に立っている大きな銀杏の樹の蔭でウトウトと
居睡
(
いねむ
)
りをしておりました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
一等室の
鶯茶
(
うぐいすちゃ
)
がかった腰掛と、同じ色の
窓帷
(
カアテン
)
と、そうしてその間に
居睡
(
いねむ
)
りをしている、山のような白頭の肥大漢と、——ああその堂々たる相貌に
西郷隆盛
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
暑い日中、熱に浮かされたような患者は、時々
床
(
ゆか
)
の敷物のうえに疲れて
居睡
(
いねむ
)
りをしているお庄を、幾度となく呼んだ。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、それもほんの一度だけで、夜は水のごとく静まり返ると、ガラッ八はコクリコクリと
居睡
(
いねむ
)
りを始めました。
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
紳士の顔は、うしろのもたれと
窓枠
(
まどわく
)
の間へはまり込むようにして
居睡
(
いねむ
)
っているので、帽子が前へズレて、半分隠されたようになっているが、それは、さっきのままの顔である。
香水紳士
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
その釘を刺した
形代
(
かたしろ
)
を、肌に当てて
居睡
(
いねむ
)
った時の心持は、何とあった。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
展望車に接近した特別貸切室の
扉
(
ドア
)
の前に、二十二三ぐらいのスマートな青年ボーイが突立ったまま
凭
(
もた
)
れかかってコクリコクリと
居睡
(
いねむ
)
りをしている。
人間レコード
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
すると、やれ清水の桜が咲いたの、やれ五条の
橋普請
(
はしぶしん
)
が出来たのと云っている
中
(
うち
)
に、幸い、年の
加減
(
かげん
)
か、この婆さんが、そろそろ
居睡
(
いねむ
)
りをはじめました。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
巳
(
み
)
の
刻
(
こく
)
近い、真昼の日を浴びて、八五郎はお座敷を覗いて
顎
(
あご
)
を撫でるのです。四月のある日、坐っていると、ツイ
居睡
(
いねむ
)
りに誘われるような、美しい
日和
(
ひより
)
です。
銭形平次捕物控:376 橋の上の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
母親は時々こくりこくりと
居睡
(
いねむ
)
りをしながら、鼻を
塞
(
つま
)
らせて、
下卑
(
げび
)
たその文句に
聴
(
き
)
き
惚
(
ほ
)
れていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
やっと
居睡
(
いねむ
)
りから眼を醒ました吾輩が、少々気抜けの
体
(
てい
)
でボンヤリしていると、間もなく若林が例の新式サイレンの自動車で馳け付けて来る様子だ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、重吉は通夜疲れの為にうとうと
居睡
(
いねむ
)
りをしていなければ、窓の外の新開町を眺め、「この辺もすっかり変ったな」などと気のない独り語を
洩
(
も
)
らしていた。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「なにぶん娘と二人の
無人
(
ぶにん
)
でございます。薬箱持ちの男はおりますが、それは通いで、夜は帰ってしまいますし、下女は一人おりますが、
居睡
(
いねむ
)
りするより外に芸のない女で——」
銭形平次捕物控:095 南蛮仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
居
常用漢字
小5
部首:⼫
8画
睡
常用漢字
中学
部首:⽬
13画
“居”で始まる語句
居
居候
居所
居士
居間
居室
居眠
居合
居堪
居処