命令いひつけ)” の例文
細君は其日は早速車夫の庫さんを使ひにして三鉢許り命令いひつけてやつて翌日からは何か一つづゝお手料理を拵へて十風の歸るのを待つことにした。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
貴方あなた……そんなにせつなくつたつて、一寸ちよつと寢返ねがへどころですか、醫師せんせい命令いひつけで、身動みうごきさへりません。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
皆の仕事を監督みまはりかた/″\、墨壺墨さし矩尺かねもつて胸三寸にある切組を実物にする指図命令いひつけ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
任命するやうにわしにお命令いひつけなすつた。それだから、明日立てるやうに準備をするがよい。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
親の命令いひつけ通りに結婚して臺所にばかり齷齪あくそくしてゐる自分はあまり幸福しあはせではなさゝうだつた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
照子がその手帛はんけち命令いひつけ通り方々へ配つたか、それともこつそり箪笥たんすの中にしまつてゐるかは私の知つた事ではないが、親切な大隈侯は先日こなひだ養子の信常氏が九州へ往つた帰途かへりにも
ベシーから嚴しい命令いひつけを受けて、寢臺ねだいを整へてゐた(今は、ベシーは、屡々私を小間使ひの下働きのやうに、部屋をかたづけたり、椅子のほこりを拂つたりなどする爲めに使つた)
お前の命令いひつけを聞かなかつたは惡るからうけれど、今怒られてはかたなしだ、お前といふ後だてが有るので己らあ大舟に乘つたやうだに、見すてられちまつては困るだらうじや無いか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は命令いひつけ通、直に螢を放してツた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
お前の命令いひつけを聞かなかつたは悪るからうけれど、今怒られてはかたなしだ、お前といふ後だてが有るので己らあ大舟に乗つたやうだに、見すてられちまつては困るだらうじや無いか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さまこそ異れ十兵衞も心は同じ張を有ち、導かるゝまゝ打通りて、人気の無きに寒さ湧く一室ひとまの中に唯一人兀然つくねんとして、今や上人の招びたまふか、五重の塔の工事しごと一切汝に任すと命令いひつけたまふか
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
コスチウスコオがある時、隣り村の僧侶ばうさんのところへ葡萄酒の進物をしようとした事があつた。その使者つかひとして馬丁べつたうが呼び出された。馬丁べつたうは御主人の命令いひつけで、その飼馬かひうまを引き出してそれに乗る事にした。
まへ命令いひつけかなかつたはるからうけれど、いまおこられてはかたなしだ、おまへといふうしろだてがるのでらあ大舟おほぶねつたやうだに、すてられちまつてはこまるだらうじやいか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
祭りの夜は田町の姉のもとへ使を命令いひつけられて、更るまで我家へ歸らざりければ、筆やの騷ぎは夢にも知らず、明日に成りて丑松文次その外の口よりこれ/\で有つたと傳へらるゝに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
命令いひつけならば是非がなけれど私しに撰ばして給はらば華族さまは厭やといふ、さては黒澤の方がよしとか、我意に氣樂なるには相違なけれど、行々の事につきて何ほど頼もしき宿でもなく
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
片折戸かたをりどしづかにおとなふはきゝなれし聲音こはねなり、いとくりやのかたにこゑをかけて、たま雪三せつざうまゐりたりとおぼゆるに、燈火ともしびとくと命令いひつけながら、ツトたちかどかたうちやりしが、やみにもしるきしろげて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
書生しよせい千葉ちばさむかるべきをおぼしやり、物縫ものぬひのなかといふに命令いひつけて、おほせければそむくによしく、すこしはなげやりの氣味きみにてりし、飛白かすり綿入わたい羽織はをりときの仕立したてさせ、あくたまふに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よしかくくるまねがひたしとおしかへしてたのるゝに師匠しゝやうにもとどくがりてらばおまをすまじとてもおかへりなさるゝにけてはよろしからずくるま大急おほいそぎにまをしてよとしゆ命令いひつけには詮方せんかたなくてやうらめしげながらうけたまはりて梯子はしごあわたゞしくりしが水口みづぐち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
不審ふしんといはゞ不審ふしんもたつべきながら子故こゆゑにくらきはおや眼鏡めがね運平うんぺい邪智じやちふかきこゝろにもむすめ何時いつ無邪氣むじやき子供こどもびしは脊丈せたけばかりとおもふかしやの掛念けねんすこしもなくハテなかかりしはむかしのことなりいま芳之助よしのすけなにとして愛想あいそつきぬものがあらうかむすめはまして孝心かうしんふかしおや命令いひつけることそむはずなし心配無用しんぱいむよう勘藏かんざう注意ちゆうい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)