“呼吸:いき” の例文
“呼吸:いき”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花92
田中貢太郎30
吉川英治28
海野十三27
国枝史郎26
“呼吸:いき”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語12.0%
文学 > 日本文学 > 戯曲9.3%
文学 > 日本文学 > 詩歌2.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
したがって稚市ちごいちが、この世で始めの呼吸いきを吐くと、その息吹と同時に、一家の心臓が掴み上げられてしまったのだ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
独木船の船底に、若い侍が仆れていた。蒼褪めた顔、落ち窪んだ眼、血にまみれた腕や足、呼吸いきのある人間とは見えなかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
如何どうも何とも云われぬ、実に怖かったが、双方逃げた跡で、ずホッと呼吸いきをついて安心して可笑おかしかった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
巌は読むともなしにそれを読んだ。突然とつぜんかれの頭に透明な光がさしこんだ。かれは呼吸いきもつかずにもう一度読んだ。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
はッ! はッ! と肩で呼吸いきづく老婆おさよ、人眼をぬすんでこの小屋のかげに何を掘り出そうとしているのだろう……?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
わし背中せなか呼吸いきかよつて、微妙びめうかほりはなびらにあたゝかつゝまれたら
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あっ」と専斎は呼吸いきを呑んだが老人は見返りもしなかった。白い掛け布を一所ひとところスーと小刀で切ったものである。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
軍鶏もすくむようであった。婆は恐しい目をしながら、胸に波を打たせて肩で呼吸いきだ、歯を喰緊くいしめて口が利けず。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にぶい眼で、西瓜をながめていた。眼は虚無の玉みたいに何の意力も希望もたたえていない。呼吸いきをすると肩ばかりうごいた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれに貸せ、やっこ寝ろい。なるほどうっとうしくきやあがるッて、ハッとてのひら呼吸いきを吹かしったわ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呼吸いきめて、なほすゞのやうなひとみこらせば、薄暗うすぐら行燈あんどうほか
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
浮雲あぶねえ! 馬鹿!」とこの時初めて甚太郎はにくののしったが、さすがに呼吸いきは苦しそうである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
草葺くさぶき小屋のなか一ぱいに、それらの言葉はもやもやと立てめ、急に煙ったく呼吸いきぐるしくなったようであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
大きな呼吸いきをしても……チョイト動いても、すぐに運命の神様の御心にそむいて、大変な事が起りそうな気がして来た。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
といって首領はジリジリと帆村の方に近づいて来た。覆面対覆面――それは首領対帆村の呼吸いきづまるような一大光景だった。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「は、」と、呼吸いきをひいて答えた紫玉の、身動みじろぎに、帯がキと擦れて鳴ったほど、深く身に響いて聞いたのである。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ト思うと一呼吸いきに、油壺をかけて突壊つきこわしたもんだから、流れるような石油で、どうも、後二日ばかり弱りました。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呼吸いきも絶ゆげな、なえたような美津のせなを、屏風の外で抱えた時、お珊は、その花やかなわらいを聞かしたのである。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呼吸いきが切れ、目がくらむと、あたかも三つ目と想う段の継目の、わずかに身をるるばかりの石の上へ仰ぎ倒れた。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とばかりで、肩で呼吸いきして、草に胡坐あぐらしたまま、おのが膝を引掴ひッつかんで、せいせい言って唇を震わす。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は靴のままヴェランダに上って、そこにある籐椅子の一つにどっかり腰を下した。そうしてすこし荒い呼吸いきづかいをしていた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「夢であったか、今大入道が飛び込んで来て、私奴の上にあがって、ぐいぐい押しつけますので、呼吸いきが出なくなりました」
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
病室の番号が次ぎ次ぎに彼の視線にうつり、教えられた七号室がもうそこだとわかると、彼は、急に呼吸いきをのんで立ちすくんだ。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
とお由は唸つた。眼が開き相だ。松太郎は何と思つたか、またゴロリと横になつて、眼をつぶつて、呼吸いきを殺した。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お桐はかう言ふ中にも二三囘続けて咳をした。そして暫くの間苦し相に呼吸いきをはずませた。平三は一人で膳を出して食べかけた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
珍らしく夜延よなベでもする気がして、火の玉め洋燈ランプの心を吹きながら、呼吸いきともれそうに火をつけていた処。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「は、」と、呼吸いきをひいて答へた紫玉の、身動みじろぎに、帯がキと擦れて鳴つたほど、深く身に響いて聞いたのである。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今朝東京なる本郷病院へ、呼吸いき絶々たえだえ駈込かけこみて、玄関に着くとそのまま、打倒れて絶息したる男あり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つかれた鍬と、つかれた呼吸いきとが、次第にもつれ合って、めまいがしそうになって来ても、又八の手は止まらなかった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ぐず/\いうこたァねえ。――日暮里を来すぎたら、こゝまで来たんだ、もう呼吸いきして田端へ出りゃァいゝ。」
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
咽喉のどが苦しい、ああ、呼吸いきが出来ない。素人らしいが、(と莞爾にっこりして、)口移しに薬を飲まして……」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女は寝床の上にいつの間にかあがってしまった。許宣は呼吸いき苦しいほどの幸福に浸っていたが、ふと気が注くとそれは夢であった。
雷峯塔物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
男はその響きのするところまで駈けようとするのであつたが、いくらも走らないうちに呼吸いきがきれぎれになつてしまつた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
お松の手で咽喉をしめしてもらったお君は、再び言葉をつぐ元気がないと見えて、目をつぶったままで微かに呼吸いきを引いています。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
目敏めざとそうな人物が、と驚いて手をかざすと、すすきの穂をゆすぶるように、すやすやと呼吸いきがある。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はっと火のような呼吸いきを吐く、トタンに真俯向まうつむけに突伏つッぷす時、長々と舌を吐いて、犬のように畳をめた。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「まあ驚きましたね!」と、かの紳士は呼吸いきが絶えでもしたように叫んだ。「スクルージさん、そりゃ貴方本気ですか。」
餅屋は動いて声を立てたならどんな目に逢わされるかも判らないと思ったので、呼吸いきもしないようにしてそっと見ていた。
餅を喫う (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかしてたとへば呼吸いきもくるしくわたより岸に出でたる人の、身を危うせる水にむかひ、目をこれにとむるごとく 二二―二四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かぶった帽も振落したか、駆附けの呼吸いきもまだはずむ、おやかたの馬丁義作、大童おおわらわで汗をき、
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝦蟇がまが大きく引く呼吸いきをするや、空を舞っている蠅が、弾丸たまのようにその口の中へ飛び込んで行くであろう。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
男はその響きのするところまで駈けようとするのであつたが、いくらも走らないうちに呼吸いきがきれぎれになつてしまつた。
味瓜畑 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
だから、やがてどうやら落が付き、今晩これぎりと打ちだしたとき、うそもかくしもなくホッと圓朝は呼吸いきをついたくらいだった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ドアそとでひき呼吸いきつぶやこゑ彈丸だんぐわんごとんでおと
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「フム、それからどうした?」私も何だか古い焼疵やけどを触られるような心持がして、少し呼吸いきが詰るようになった。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
どこまでもその性格にい、指揮に従い、日常も呼吸いきをあわせて、大道一貫の歩をそろえていたのは当りまえである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬま呼吸いきくやうに、やなぎからもりすそむらさきはなうへかけて
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
学校の成績がいつも優等であった彼女は、最後の呼吸いきが絶えるまで頭脳あたま明晰めいせきで、刻々迫る死期を自覚していた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
という言葉が出かかって、そのまま咽喉のどにこびり付いてしまった。外に出たのはその口付きと呼吸いきだけであった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「オヤ! 細川先生、老先生は今東京へお出発たちになりました!」と呼吸いきをはずまして老僕は細川の前へ突立った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と云うのはうっかり声を出して、そのため呼吸いきでも乱れたら、そのまま倒れてしまうだろうと――こういう不安があったからである。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
呼吸いき苦しそうな声である。長庵方の施療患者、浪人藤掛道十郎である。足駄あしだを穿き雨傘を持ちしょんぼりとして立っている。
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あちこちの窓々から、これらの声が放送された。と、群童の呼吸いき使ひは恐怖の絶壁から忽ち感激の山頂に飛びあがつて、
サクラの花びら (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「勘さんか、」とに組は肩で呼吸いきをして、「や、えれえことになった。大鍋だいなべのお美野さんがお前――。」
金之助は色気のないおくびをし、垢抜あかぬけのした目のふちに色を染め、呼吸いきをフッと向うへ吹いて、両手で額を支えたが、
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水が脈を立てゝ心持よく流れてゐるあたりまでかの女はその足をめなかつた。種子はそこに行つて始めてほつと呼吸いきをついた。
草みち (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
彼は呼吸いきはずませていた。暗くてくは判らぬが、おそらく顔の色も蒼くなっているだろうと思われた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お浪ははや寝しすけが枕の方につい坐って、呼吸いきさえせぬようこれもまた静まりかえり居るさびしさ。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
広巳は肩で呼吸いきをした。広巳の刀には血が赤く笑っていた。広巳はその刀をりまわしながら岡本を尋ねて走った。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
友の腕を、自分の首へまわして、負うようにたすけて歩きながら、武蔵は、たえず自分の耳もとでする又八の呼吸いきが気になって、
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ようやく馬車がとまると、コワリョーフはハアハア呼吸いきをはずませながら、あまり大きくもない受付室へ駆けこんだ。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
母親はたすきがけになって、勝手道具を片づけていたが、そこに清三が外から来て、呼吸いきをきらして水を飲んだ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
むなしく死んだ鋸屋も、やがて二三刻の後には呼吸いき絶えるかも知れない自分も、これではあまりにみじめすぎる。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
思わず飲まされ過ぎた直し酒に、スッカリ参ってしまって、暫くの間は呼吸いきが出来ないくらい胸が苦しくなっていた。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と三好は夢中になって藻掻もがいたが、白坊主の力は意外に強く、肩先を羽がい締めにして来るので呼吸いきが詰まりそうになって来た。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
血の気のない顔に生汗なまあせしたたらせ、白い唇をわななかせつつ互いの顔を睨み合って、肩で呼吸いきをするばかりであった。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
台所へ廻ろうか、足をいてと、そこに居るひとの、呼吸いき気勢けはいを、伺い伺い、縁端えんばなへ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いけねえ。落ち着いてちゃあいけねえ!」と与吉は、わらじをとくまも呼吸いきを切らしているが、家内のお藤は大欠伸おおあくびだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と我知らず呼吸いきを吹く。その間にパッと飛び立った男は右手を懐中ふところへ突っ込むと初めて匕首あいくちを抜いたものである。
三甚内 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かみは乱れてあお白くしょうすいした顔にへばりつき、死人のように呼吸いきも絶え絶えに昏倒こんとうしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
彼はしばらく呼吸いきを入れ、再び一散に走り出した。と何者にか突き当たった。「あっ!」と叫んで仆れる物音。声はどうやら女らしい。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
キャラコさんは、大きく呼吸いきを吸い込むと、池のほうへ逆落さかおとしになっている急傾斜をすべり降りはじめた。
ただ、お断りしておきますが、曲芸の最中にくさめをしたり、あまり強い呼吸いきをしたりしないように願いますよ。
こういってね、それッきり。ひッそり陰気になったが、いや、その間、はッと思って、私も呼吸いきがつけないのでした。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「大変でございますこと、」とお杉が思わず、さもいたわるように言ったのを聞くと、ほっとする呼吸いきをついて、
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
驚いたように云った対手あいてあたたか呼吸いきほおにかかるように思った。務は驚いて眼をみはった。
白っぽい洋服 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今は、大寒の真冬であろう、黒い天井のはりも板じきも、氷のように冷えていて、武蔵の呼吸いきするものが、燈心の光に白く見える。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
提燈の明りに揺らいで見える彼女の顔いろは、葉桜の青葉のように変っていて、呼吸いきもしていないかのように見えた。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、童子だけは自分がどこから来ているかということを、かれはかれの本体に呼吸いきづいているだけ瞭然と知っていた。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
振りほどいた両手の力は、あたかも鷲が存分に蛇に体を巻かせておいて一時にパッと寸断する翼の呼吸いきと相似ている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あまりの怖ろしさに、人びとはただ呼吸いきをのんでいると、彼女は二人の子を連れて、そのままどこへか立ち去った。
しかし後日になってその不思議が解ける日がやってきたとき、八十助は呼吸いきの止まるような驚愕を経験しなければならなかったのである。
火葬国風景 (新字新仮名) / 海野十三(著)
やがて、朱鷺色ときいろ手巾ハンケチで口を蔽うて、肩で呼吸いきして、向直って、ツンとすまして横顔で歩行あるこうとした。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……神楽坂は引上げたが、見る間に深くなる雪に、もう郵便局の急な勾配で呼吸いきついて、我慢にも動いてくれない。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せなかながうちにもはツ/\と内証ないしよう呼吸いきがはづむから、ことはらう/\とおもひながら
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
幻影まぼろしのやうなものではく、あだか練絹ねりぎぬいたやうで、てふ/\のふわ/\と呼吸いき
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
世津子か知ら? それとも加寿子か知ら? と初瀬は、二人のどちらかでなければと、呼吸いきを殺して、声の色合ひを聴き分けようとする。
荒天吉日 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
クレテの海底に埋没したカビールの女王の腰帯をもとめに水底を掻き潜る長呼吸いきの選手の名だ、セブラは――。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
汗があごを伝わって胸のほうへ流れ込み、咽喉のどがカラカラに乾いて呼吸いきをするたびにヒリヒリと痛んだ。
呼吸いきを詰めて見透すと、白い、ほっそりした、女の手ばかりが水の中から舳にすがっているのであります。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれを打てか、自らを殺せか――呼吸いきの下で、かすかに震えた、女は、まだ全く死んではいないのである。
妾はこの時何だか自分の身の上に、怖ろしい事が起りかかっているように思われて、恐ろしさの余り呼吸いきく事も出来ませんでした。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
眼をふさぎ、呼吸いきをころしてひそみたるに、四足よつあしのものの歩むけはひして、社の前を横ぎりたり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かすかにおとよさんの呼吸いきの聞き取れた時、省作はなんだかにわかに腹のどこかへ焼金を刺されたようにじりじりっと胸に響いた。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
これは尻あてと、呼吸いきを吹きこむ口紙の方と間違ったかナと思って、今度はそっちの方をひきむしってみた。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
野村は鉛のような重い灰色の空気に押しかぶされた気持で、暫くは呼吸いきをするのさえ忘れたかのようだった。
黄鳥の嘆き (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
代助はそれをて、貧弱な工業が、生存のために無理に呼吸いき見苦みぐるしいものと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてやや暫らくしてから、やっと呼吸いきが落ち付くと、又、おもむろに私の方へ向き直って一礼した。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
玲子は眼を大きく大きく見開いて中林先生の顔を見上げて呼吸いきけないでいた。その顔を見下しながら中林先生はニッコリと笑った。
継子 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
黒吉は、ちらりと葉子の方を見ると、黙々と呼吸いきを整えながら、一つ二つと数えるようにブランコをゆり始めた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
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