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厠
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かわや
ふりがな文庫
“
厠
(
かわや
)” の例文
十歳を越えて
猶
(
なお
)
、
夜中
(
やちゅう
)
一人で、
厠
(
かわや
)
に行く事の出来なかったのは、その時代に育てられた人の
児
(
こ
)
の、敢て私ばかりと云うではあるまい。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
厠
(
かわや
)
のはどうにもならないが、梯子段の近辺は手すりにのぼった。窓の近くは窓にのぼり、欄間に手をかけて
屋守
(
やもり
)
の這うかたちでした。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
『はい私は、その紐の本数を、存じ
居
(
お
)
ります。実を申せば、お殿さま、
厠
(
かわや
)
に
入
(
い
)
らせられましたとき、私はお出を待つ間に、紐の本数を ...
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
お答えして「朝早く
厠
(
かわや
)
におはいりになつた時に、待つていてつかまえてつかみひしいで、手足を折つて
薦
(
こも
)
につつんで投げすてました」
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
詰所に近い
厠
(
かわや
)
の前の庭へ落雷した。この時厠に立って小便をしていた伊沢柏軒は、前へ倒れて、門歯二枚を
朝顔
(
あさがお
)
に打ち附けて折った。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
九人一つ座敷にいる
中
(
うち
)
で、
片岡源五右衛門
(
かたおかげんごえもん
)
は、今し方
厠
(
かわや
)
へ立った。
早水藤左衛門
(
はやみとうざえもん
)
は、
下
(
しも
)
の
間
(
ま
)
へ話しに行って、
未
(
いまだ
)
にここへ帰らない。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おうめにお茶を
淹
(
い
)
れて、と云いながら、おみきは喜六を家へ招き入れた。その家は六
帖
(
じょう
)
と四帖半二た間に、
厠
(
かわや
)
と勝手という造りだった。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だしぬけに目の前の
厠
(
かわや
)
で、うめく声がすると、ばったり戸を開けて出たのが間淵で、——こんがらかると
不可
(
いけ
)
ません。——兄洞斎です。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とつこうつ、明け方までに、
厠
(
かわや
)
へ通うこと数度、およそ旅先の旅館で、深夜、厠へ通うほど、ほかの部屋へ気がひけるものはない。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寝床に置きに行く時、枕の下にそっと押し込んでおき、晩になって寝床の中で食べます。もしそれができない時は、
厠
(
かわや
)
の中で食べます。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それはある晩のことであったが、時刻もちょうど
丑満時
(
うしみつどき
)
、甚五衛門は小姓を連れて奥の
厠
(
かわや
)
へ行こうとして廊下を向こうへ歩いて行った。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
厠
(
かわや
)
へ入って、独りでそっと憤激の熱い涙を
搾
(
しぼ
)
り搾りしたものだったが、それには何か自身の心に
合点
(
がてん
)
の行く理由がなくてはならぬと考え
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
毎朝歯を磨くにも多量の塩を用ゐ
厠
(
かわや
)
用の紙さへも少からず費すが如き有様なりしかば誰も元義の寄食し居るを好まざりきといふ。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
同じこの白で
厠
(
かわや
)
に取りつける朝顔を作りますが見事な形のを見かけます。信楽の一部をなす
神山
(
こうやま
)
はその土瓶でよく知られました。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
お留は
周章
(
あわ
)
てて
厠
(
かわや
)
へ行った。そして、戻るとき戸棚の抽出しから白紙を出して、一円包んで出て来ると安次に黙って握らせた。
南北
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その時の態度は公平で、率直で、同情に富んでいて、決して泥酔して
厠
(
かわや
)
に寝たり、地上に横たわったりした人とは思われない。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
女
(
め
)
の
童
(
わらわ
)
の小雪というのが眼をさまして
厠
(
かわや
)
へ立った。彼女は
紙燭
(
しそく
)
をともして長い廊下を伝ってゆくと、紙燭の火は風もないのにふっと消えた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人びとは手に手に
棍棒
(
こんぼう
)
や箒などを持って彼の
厠
(
かわや
)
へ駈けつけたが、べつに変ったことはなく
髷
(
まげ
)
が入口に無気味な恰好で落ちていただけであった。
簪につけた短冊
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
てらてら黒光りのする
欅
(
けやき
)
普請の長い廊下をこわごわお
厠
(
かわや
)
のほうへ、足の裏だけは、いやに冷や冷やして居りましたけれど、なにさま眠くって
葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「純日本式の、手入れの届いた
厠
(
かわや
)
には必ず一種特有な、上品な匂いがする、それが云うに云われない
奥床
(
おくゆか
)
しさを覚えさせる」
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しまいには足が痛んで腰が立たなくなって、
厠
(
かわや
)
へ
上
(
のぼ
)
る折などは、やっとの事壁伝いに
身体
(
からだ
)
を運んだのである。その時分の彼は彫刻家であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
を入ってすぐのところに以前共同
厠
(
かわや
)
のあったことをいっても、おそらくだれもその古い記憶をよび起すのに苦しむだろう。
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
緒方氏がまだ十歳くらいの頃、大阪の家の広い庭で遊んでいられた時に、父上が
厠
(
かわや
)
から出られたと思うと、手洗の所でひどく
咯血
(
かっけつ
)
せられました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
外套
(
がいとう
)
を着て、帽子を
冠
(
かぶ
)
ってから、あらためて
厠
(
かわや
)
へ行き直したり、忘れた持物を探しはじめたりするのが、彼の癖である。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
狭い裏梯子から、風呂場や
厠
(
かわや
)
に行くようになっていた。その裏梯子に雨洩りがしていたし厠への廊下は、しぶきをとばして雨が落ちかかっている。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
取締りの老女中が、奥向きの部屋部屋——内玄関、勝手、納戸、茶の間、寝室、御居間、書院、湯殿、
厠
(
かわや
)
というようなところを、案内してくれた。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
厠
(
かわや
)
の縁に立って眺めると、雪もやがて
霽
(
は
)
れるとみえ、中空には
仄
(
ほの
)
かな光さえ射している。ああ静かだと貞阿は思う。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
上の
厠
(
かわや
)
といっている二ノ間つきのご不浄は、畳を敷きつめた六畳ほどの広さで、地袋の棚には、書見台と青磁の香炉が載っているといったぐあいである。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
厠
(
かわや
)
係りの童女はきれいな子で、奉公なれた新参者であるが、それが使いになって、女御の
台盤所
(
だいばんどころ
)
へそっと行って
源氏物語:26 常夏
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
お角さんの
厠
(
かわや
)
まで逃げ込み、なおまた大谷風呂の風呂番にまで窮命させられているのは、つまりその
祟
(
たた
)
りである。
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
汚れた種類の食物だとか、汚れた手や食器で触れた食物だとか、食物についての
禁忌
(
タブー
)
が人を汚すなどということはありえない。食物は皆
厠
(
かわや
)
におちるのだ。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
そうしたままで
清逸
(
せいいち
)
は首だけを腰高窓の方に少しふり向けてみた。夜のひきあけに、いつものとおり咳がたてこんで出たので、眠られぬままに
厠
(
かわや
)
に立った。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼は暫く半眠半醒の状態で床上に苦しんでいたが、はっきり眼がさめるとあわてて
厠
(
かわや
)
にとびこんだ。斯ういう場合、誰でも比較的永く厠にいるものである。
夢の殺人
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
「どうして
厠
(
かわや
)
の中で考える事がきちんと何時も
捗
(
はかど
)
るんだろうね、厠で考えた事は、何時も正確で後悔はない。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
なるべく隠して紙を持って行ってどうにか向うの知らん中にうまく始末をして
厠
(
かわや
)
の中から出て来るという始末。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「あら!」と女はわざと驚いて見せて、「もうおやすみになったんだわ、あなたまだ
厠
(
かわや
)
にいらっしゃらない」
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
宮中
厠
(
かわや
)
と申候共同便所の如きもの往来の両側に処々散在すれども日本の共同便所と同日に談ずべくもなし
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「失礼ながら『基督教青年』は私のところへきますと私はすぐそれを
厠
(
かわや
)
へ持っていって置いてきます。」
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
実をいえば今朝方
厠
(
かわや
)
へ起きるまでは、これから先の暮し方など、とやこう考えていた訳ではなかった。
曲亭馬琴
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
文墨
(
ぶんぼく
)
の
交
(
まじわり
)
がある位で、ちょっと変った面白い人で、第三回の博覧会の時でしたかに、会場内の
厠
(
かわや
)
の下掃除を引受けて、御手前の防臭剤かなんかを
撒
(
ま
)
かしていましたが
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
熊楠いわく、馬文耕の『近世江都著聞集』四に、京町三浦の
傾城
(
けいせい
)
薄雲
厠
(
かわや
)
へ往くごとに猫随い入る。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
おれは小用をしに立って、
潜
(
くぐ
)
り
戸
(
ど
)
の
桟
(
さん
)
をはずして表に出る。暗さは暗し、農家のこととて
厠
(
かわや
)
は外に設けてある。ちょうど
雨滴落
(
あまだれお
)
ちのところで物に
躓
(
つまず
)
いて
仰向
(
あおむ
)
けに倒れたね。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
厠
(
かわや
)
と井戸の接近したような家に夭死する人が続出したり、逆上して変死する者の続出するのは当然で、この中に一人でも脳の加減が悪くて奇異な幻覚を見るものがあると
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
現に
厠
(
かわや
)
に入りて、職業用の
鋏刀
(
はさみ
)
もて自殺を
企
(
くわだ
)
てし女囚をば妾も
目
(
ま
)
の当りに見て親しく知れりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
厠
(
かわや
)
へ立ちはしなかったかナ——お! そうだ、いま厠へ行って帰って来たところだ! うウム、さてはその間に何者か忍び入って——だが、しかし、忍び入ってと申して
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
じゃあということになって、一人は別室の
厠
(
かわや
)
へゆく。一人は談話室のテエブルを引き寄せる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
突き当りの
厠
(
かわや
)
の戸を開けて、中へ入っていった。そうして、なかなか出てこなかった。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
隣の部屋にいる和助どんを起して、ほんのしばらく代って貰って、
厠
(
かわや
)
へ行ったのは、かれこれ、
寅刻
(
ななつ
)
(午前四時)でございました。用を済まして、帰ってみると、和助どんは見えません。
銭形平次捕物控:041 三千両異変
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は
厠
(
かわや
)
にはいっていた。その小さな窓からは、
井戸端
(
いどばた
)
の光景がまる見えになった。誰かが顔を洗いにきた。私が何気なくその窓から
覗
(
のぞ
)
いていると、青年が悪い顔色をして歯を
磨
(
みが
)
いていた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして、そのときは気づかなかったのに、息子がいった百合の花というのは、光丸のことを考えてのことであったろうか、と、
霹靂
(
へきれき
)
のように、金五郎は、今、
厠
(
かわや
)
のなかで悟ったのである。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
厠
漢検1級
部首:⼚
11画
“厠”を含む語句
厠上
上厠
東厠
厠籌
軽便厠
稚厠
洋風厠
御厠人
小厠
外厠
厠通
厠草履
厠臭
厠溷
厠椅子
厠戸
厠役
厠卒
厠与
上厠頻数
...