半紙はんし)” の例文
その片隅かたすみ印袢天しるしばんてん出入でいりのものらしいのが、したいて、さい輪飾わかざりをいくつもこしらへてゐた。そば讓葉ゆづりは裏白うらじろ半紙はんしはさみいてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大きな雨になったので、坂をあがりつめた処にあった家の簷下のきした駈込かけこんでみると、その戸口に半紙はんしってあるのが見えた。
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
へいからおつかぶさりました、おほきしひしたつて、半紙はんしりばかりの縱長たてながい——膏藥かうやくでせう——それ提灯ちやうちんうへかざして、はツはツ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かさ半紙はんしの一しめくらいある、が、目かたは莫迦ばかに軽い、何かと思ってあけて見ると、「朝日」の二十入りのき箱に水を打ったらしい青草がつまり
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
千朶山房せんださんぼうの草稿もその晩年『明星』に寄せられたものを見るに無罫むけい半紙はんしに毛筆をもって楷行を交えたる書体、清勁暢達せいけいちょうたつ、直にその文を思わしむるものがあった。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこの雑誌とふのは、半紙はんし両截ふたつぎり廿枚にぢうまい卅枚さんぢうまい綴合とぢあはせて、これ我楽多文庫がらくたぶんこなづけ、右の社員中から和歌わか狂歌きやうか発句ほつく端唄はうた漢詩かんし狂詩きやうし漢文かんぶん国文こくぶん俳文はいぶん戯文げぶん新躰詩しんたいし
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
手に取つて見ると、薄い半紙はんし表に下手つ糞な字を不揃ではあるが剋明に並べたもので
かれは、かばんから、半紙はんしして、えびをつつみました。そして、いそぎました。うちくと、洗面器せんめんき塩水しおみずつくって、れてみたのです。けれど、やはり、えびはうごきませんでした。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
半紙はんしを八つほどにったのをのりで竹のくしにりつけ、それに拝みに行く神さまの名と月日などを書いて、参詣路さんけいみちの左右に刺すもので、ひと目でその神の信者の多いことがわかり
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なに度胸どきよう半紙はんし四五まい二つをりにして、すみつぎうすふみらぬかまぎらはし、わざぢて表紙へうしにもき、此趣向このしゆかううまくゆけかしとくるをちけるが、ひとしらぬこそ是非ぜひなけれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで、おおぜいの生徒せいと勉強べんきょうするには、くじで、じゅんばんをきめて、めいめいに原書げんしょ半紙はんしに四、五まいぐらいうつしとるわけでした。それに字引じびきは一さつしかありませんから、たいへんでした。
出てきたのは半紙はんし半分の白紙でした。
紅色ダイヤ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
かへるときに、小六ころくたもとから半紙はんし何枚なんまいして、缺席屆けつせきとゞげ入用にふようだからこれはんしてれと請求せいきうして、ぼく退學たいがく在學ざいがくかたまで勉強べんきやう出來できないから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まちがいだ、まだそんなことを云うか、それじゃ、その証拠を見せてやろう、驚くな」松山は右のたもとへ手をやって半紙はんしに書いた物を二枚出して、「おい、これを見ろ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
実際支那人の言つたやうに「変らざるものよりして之を見れば」何ごとも変らないのに違ひない。僕もまた僕の小学時代には鉄面皮てつめんぴにも生薬屋きぐすりやへ行つて「半紙はんしを下さい」などと言つたものだつた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
吉雄よしおさんは、もし自分じぶんばんをしなかったら、だれか、かんがえなしに、このうちまえで、おおきなこえして、しょうちゃんのをさまさないものでもないとかんがえたから、大急おおいそぎで、自分じぶんうちかえって、半紙はんし
幼き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
楊枝やうじ齒磨はみがき……半紙はんし。」
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半ちゃんがすずり半紙はんしを持って入って来た。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)