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凋
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しぼ
ふりがな文庫
“
凋
(
しぼ
)” の例文
腕組みして仔細らしく考へ込んでゐる
凋
(
しぼ
)
んだ
青瓢箪
(
あをべうたん
)
のやうな小僧や、さうした人達の中に加つて彼は控所のベンチに身を
憩
(
やす
)
ませた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
蒼白い靄に
埋
(
うず
)
もれながら、すぐ窓下の冬薔薇の木は、
凋
(
しぼ
)
んだ花と満開の花とを
簪
(
かんざし
)
のように着けながら、こんもりと茂って居るのでした。
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
土の色は白く乾いて、木の葉は大抵落ちた。圃に残った桑の葉は、黒く
凋
(
しぼ
)
んだ。天地は
終日
(
ひねもす
)
音もなく、死んだように静かであった。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
神棚には
福助
(
ふくすけ
)
が乗ツかゝツてゐて、箪笥の上には大きな
招猫
(
まねきねこ
)
と、色が
褪
(
さ
)
めて
凋
(
しぼ
)
んだやうになつて見える
造花
(
つくりはな
)
の
花籠
(
はなかご
)
とが乗りかツてゐた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
松は四季を通じていつも緑の色を湛えた常磐木で、それが雪中にあってもなお青々として
凋
(
しぼ
)
まず、いわゆる松柏後凋の姿を保っている。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
▼ もっと見る
しかし、それは愚かな想像で、それほど離れたところにあって、新鮮な花の
凋
(
しぼ
)
んでゆくことなどがどうして認められるであろう。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
凋
(
しぼ
)
まざる温雅の情操を持して、利害の打算に
維
(
こ
)
れ余念なき現時の市中に、其高く優しき行為を成すに至らしめしにはあらざるか。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
暑い明るい焼きつくような日光は、街路の並木の葉を
凋
(
しぼ
)
ませていた。街のなかにも、そこここに珍らしく蝉の啼くのが遠くきこえたりした。
或る少女の死まで
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
夕暮になると花は
凋
(
しぼ
)
んだ。病人は黒ずんで来た草花を踏みにじって、
残骸
(
ざんがい
)
を床から拾いあげると、それを浴室へ持って行った。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
よし
偶々
(
たまたま
)
根ざしても、やがて枯れ
凋
(
しぼ
)
んでしまふ。恋愛のデリケートな繊緯は日々挽き砕かれる圧迫に耐へることが出来ない。
結婚と恋愛
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
「僕は確信しているのだが、年齢も自分の無限の変心性を
凋
(
しぼ
)
ますことは出来ず、また習慣もそれを腐らすことは出来ないね」
空家の冒険
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
端正な、然し一度もぱっと咲き揃った花盛りという時代はないなり
凋
(
しぼ
)
んだような顔をみや子に向け、子爵夫人は感歎した。
伊太利亜の古陶
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そして、幼年時代の消耗し
凋
(
しぼ
)
みはてた魂が
剥落
(
はくらく
)
するのを見ながらも、より若くより力強い新しい魂が生じてくるのを、彼は夢にも知らなかった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
葉子は後ろの方にいたので、動静はわからなかったが、今夜の彼女はさながら
凋
(
しぼ
)
みきった花のように、ぐったりしていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
凋
(
しぼ
)
んだ月見草の
花片
(
はなびら
)
を見つめている事もあります。着いた日などは左隣の
長者
(
ちょうじゃ
)
の別荘の境に生えている
薄
(
すすき
)
の傍へ行って、長い間立っていました。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こゝへ来て、わたしの口は
凋
(
しぼ
)
む。わたしは蝶子、おまえに恋を語り出たとき、自分の年齢の事も言わなかったし、わたしの容貌のことも言わない。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
唯
雨上
(
あまあが
)
りの瓦屋根だの、火のともらない
御神燈
(
ごしんとう
)
だの、花の
凋
(
しぼ
)
んだ朝顔の鉢だのに「浅草」の作者
久保田万太郎
(
くぼたまんたらう
)
君を感じられさへすれば
好
(
よ
)
いのである。
野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あの下には子宮が枯れ
凋
(
しぼ
)
んで、まだ残つてゐるだらうか——僕はふつと、そんな妙なことを考へた。多分のこつてゐるだらう——僕は自分に答へた。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
またもう一つは、ひどく淫事を
嗜
(
たしな
)
むようになったという事で、彼女は夜を重ねるごとに、自分の
矜恃
(
ほこり
)
が
凋
(
しぼ
)
んでゆくのを、眺めるよりほかになかった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
墓石からも
凋
(
しぼ
)
んだ花からも、秋の
朽葉
(
くちば
)
の匂いをまじえて、罪の
赦
(
ゆる
)
し、悲哀、それから安息がいぶいて来るのだった。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
春
従
(
よ
)
り
亢旱
(
かうかん
)
にして夏に至るまで雨ふらず。百川水を減じて五穀
梢
(
やや
)
に
凋
(
しぼ
)
めり。
実
(
まこと
)
に朕が不徳を
以
(
も
)
て致す所なり。百姓何の罪ありてか、
憔萎
(
せうゐ
)
せる事の甚しき。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
そっと
凋
(
しぼ
)
まない花を花環に編んで、アロアにそれを墓場へ持って行かせ、今は少年も立ち去って、人影もないその墓の上にうやうやしくおかせたのでした。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
「ごらん、この月見草という花は、日が暮れるとこんなに咲いて、日にあたると
凋
(
しぼ
)
んでしまうのだから。お月様の好きな花、そうしてお月様に好かれる花」
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
花は白、紫、
絞
(
しぼり
)
などが
咲交
(
さきまじ
)
っていて綺麗でした。始めに咲いて
凋
(
しぼ
)
んだのを取集めると、
掌
(
てのひら
)
に余るほどあります。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
紅
(
あか
)
い
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
を
摘取
(
つみと
)
ると、すぐそれが
汚
(
けが
)
れて
了
(
しま
)
ひ、ちよいと
草木
(
くさき
)
の
根
(
ね
)
を
穿
(
ほじ
)
つても、この
手
(
て
)
が
付
(
つ
)
くと
凋
(
しぼ
)
んでゆく。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
そして、いつまでも
凋
(
しぼ
)
むことを知らぬ、白と
紅
(
あか
)
の薔薇のように、二人は楽しく幸福でありました。(おわり)
シンデレラ
(新字新仮名)
/
水谷まさる
(著)
私は先程の元気も嬉しさもが、いつの間にか
凋
(
しぼ
)
んでしまったのに気がつきました。ザワザワと高く
聳
(
そび
)
えている杉の
梢
(
こずえ
)
が風をうけて鳴ります。
天狗颪
(
てんぐおろし
)
のようです。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
さて、バシリスクが諸動物および人を睨めば、その毒に中って死せざる者なく、諸植物もことごとく
凋
(
しぼ
)
み枯る。ただ雄鶏を
畏
(
おそ
)
れその声を聞けば、たちまち死す。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
しかし、彼の断滅する感傷が、次第に泥溝の岸辺に従って
凋
(
しぼ
)
んで来ると、忽ち、朝からまだひとむしりのパンも食べていない空腹が、お杉に代って襲って来た。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
すべてが幸福だったのである。乱れてるそれらの椅子の上で、
凋
(
しぼ
)
んでるそれらの花の間で、消えてるそれらの灯火の下で、人々は喜びの念をいだいたのである。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そうでなくっても
凋
(
しぼ
)
んでゆく……そのため日に/\気の屈して来る、料簡のしゅんで来る、世の中のつまらなくなって来る自分を心細くみ出しかけたかれである。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
如
(
も
)
し
求
(
もと
)
む
可
(
べ
)
からずんば、
吾
(
わ
)
が
好
(
この
)
む
所
(
ところ
)
に
從
(
したが
)
はん。
(六〇)
歳
(
とし
)
寒
(
さむ
)
うして
然
(
しか
)
る
後
(
のち
)
松柏
(
しようはく
)
の
凋
(
しぼ
)
むに
後
(
おく
)
るるを
知
(
し
)
る
国訳史記列伝:01 伯夷列伝第一
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
日本人にして
加特力
(
カトリック
)
教徒だった者の子供なのであろう。周囲の十字架に掛けられた花輪どもはことごとく褐色に枯れ
凋
(
しぼ
)
み、海風にざわめく枯
椰子
(
ヤシ
)
の葉のそよぎも哀しい。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
花の
凋
(
しぼ
)
むように乱菊の消えた平凡な黄昏の空のなかに、煙は、流れに落ちた一滴の淡墨のように、見えぬ手に急速に掃かれ、滲まされて、たちまち跡形なく溶けていった。
昼の花火
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
一年の間の如何なる悲痛によつても、彼の體力が壓服され、力に滿ちた若々しさが
凋
(
しぼ
)
まされるといふことはあり得なかつたのだ。しかし彼の容貌のうちに私は變化を見た。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「立浪の、寄るかと見えて」いつも空しく仇花と
凋
(
しぼ
)
んでいってしまうことが仕方がなかった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
今は
凋
(
しぼ
)
み果てたれど、かつては
瑠璃
(
るり
)
の色、いと鮮かなりしこの花、ありし日の君と過せし、楽しき思ひ出に似て、私の心に告げるよ。——外国人はジョオと云ふ名前だと云つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
白鯉
(
しろこい
)
の
鱗
(
うろこ
)
を以て包んだり、
蜘蛛
(
くも
)
の糸を以て織りなした
縮羅
(
しじら
)
の
巾
(
きぬ
)
を引きはえたり、波なき海を
縁
(
ふち
)
どる
夥
(
おびただ
)
しい砂浜を作ったり、地上の花を
羞
(
は
)
じ
凋
(
しぼ
)
ます
荘厳
(
そうごん
)
偉麗
(
いれい
)
の色彩を天空に
輝
(
かがや
)
かしたり
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
『春のように暖かいから、桜思いました。ああ今、私の世界となりました。で咲きました。しかし……』と言って悲しげに『かわいそうです。今に寒くなります。
驚
(
おどろ
)
いて
凋
(
しぼ
)
みましょう』
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「よし、思いついた。この春の雪の積んでいる時に、人間世界にどこに桃がある。ただ
西王母
(
せいおうぼ
)
の
園
(
はたけ
)
の中は、一年中草木が
凋
(
しぼ
)
まないから、もしかするとあるだろう。天上から
窃
(
ぬす
)
むがいいや。」
偸桃
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
ところが、碓氷の分水嶺を一足すぎて、この浅間の麓へ眼をやると、なんと寂しい、すべての草木の
凋
(
しぼ
)
れた姿であろうか。穂に出た芒は、枯れて西風に靡いている。路ゆく人の襟巻は、首に深い。
酒徒漂泊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
日は次第に
黄昏
(
たそが
)
れて、ゲンツィヤナの花は、もう、どれもどれも
凋
(
しぼ
)
んでしまった、私達は牧夫のように煙管をくわえて、坂路をとことこと下りて来る、山の夕暮は膚に沁みて、ホテルの窓ごしに
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
善
(
よ
)
しと匂へる
花瓣
(
はなびら
)
は
徒
(
あだ
)
に
凋
(
しぼ
)
みて
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
私の胸は
凋
(
しぼ
)
んだ花の
皺
(
しわ
)
ばかり
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
紫色の唇は、
凋
(
しぼ
)
んだ花のようだ。削げた頬の感じは、秋の黄ばんだ色を想い出さした。女は、今眼ばかり働いている。眼ばかり活きている。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
凋
(
しぼ
)
んだ花を鋏で
剪
(
き
)
っていると、路地に俥のベルが聞えた。伸子は板塀の切戸をあけて見た。祖母が俥から降りた。伸子は
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そうして、その花は男の胸から女の髪へ差し換えられる筈だ。そうしてその花は
暁天
(
あけがた
)
には、二人の交わせた枕の間へ、物憂く
凋
(
しぼ
)
んで落ちている筈だ
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
『この花の
凋
(
しぼ
)
むときに』と答えるんだが、わっしのやった芝居では、すぐ花を凋ませて、アルマンがやって来るのさ
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それで
唯
(
ただ
)
氣が悶々して、何等の
踏切
(
ふみきり
)
が付かぬ。そして斷えず何か不安に
襲
(
おそ
)
はれて、自分でも苦しみ、他からは
凋
(
しぼ
)
むだ花のやうに見られてゐるのであツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
この朝顔はね、あの婆の家にいた時から、お敏さんが
丹精
(
たんせい
)
した鉢植なんだ。ところがあの雨の日に咲いた
瑠璃色
(
るりいろ
)
の花だけは、奇体に今日まで
凋
(
しぼ
)
まないんだよ。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
凋
漢検準1級
部首:⼎
10画
“凋”を含む語句
凋落
凋衰
凋零
一少艾衣類凋損
凋傷
凋弊
凋滅
凋然
凋萎
凋落期
凋謝
咲凋
萎靡凋落
衰凋