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俎板
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まないた
ふりがな文庫
“
俎板
(
まないた
)” の例文
細い
俎板
(
まないた
)
の様な簡単な手術台に黒い桐油紙を布いたのが二脚、捨て
床几
(
しやうぎ
)
の様に置かれてあるきりで、広い其の室はがらんとして居た。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
看板には本人の立姿と土俵入りの図、木戸口に
俎板
(
まないた
)
大の駒下駄と畳一畳ぐらいの大かごを飾り、まずその図体の大きさを想わせる。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
養鶏談の長かりける
中
(
うち
)
に眼前の料理場にてはレデーケーキも
美事
(
みごと
)
に出来上り、一人の料理人は
鶏
(
とり
)
を
俎板
(
まないた
)
に載せてその肉を
割
(
さ
)
き始めたり。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
まだ床を離れない細君は、手を延ばして彼の枕元から取った
袂時計
(
たもとどけい
)
を眺めていた。
下女
(
げじょ
)
が
俎板
(
まないた
)
の上で何か刻む音が台所の方で聞こえた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俎板
(
まないた
)
は柱のような四角な木切れだった。人も家も、大人も子供も、俎板もさつま芋も、どす黒い煙にいぶされたような色だった。
一つ身の着物
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
▼ もっと見る
なるほど箱の中には
高脚
(
たかあし
)
つきの膳が入っていて、膳の上に吸物、さしみ、口取り、その他種々の材料をはじめ庖丁
俎板
(
まないた
)
まで仕込んである。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
むつかしやの隠居は
小松菜
(
こまつな
)
の中から
俎板
(
まないた
)
のにおいをかぎ出してつけ物の
皿
(
さら
)
を拒絶する。一びん百円の香水でもとにかく売れて行くのである。
試験管
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鮒は近在で
捕
(
と
)
れるのでしょう、大きな
桶
(
おけ
)
に一杯入れたのが重ねてあって、
俎板
(
まないた
)
を前に、若い男がいつも串刺に忙しそうです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
俎板
(
まないた
)
とんとん庖丁チョキチョキ、出放題な、
生欠伸
(
なまあくび
)
をして大歎息を発する。
翌日
(
あくるひ
)
の天気の噂をする、お題目を唱える、
小児
(
こども
)
を叱る、わッという。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そこには共進会のように新しいおはちだの
俎板
(
まないた
)
、
盥
(
たらい
)
、大
笊
(
ざる
)
、小笊、ちり紙、本棚、鏡台などという世帯道具がうずたかく陳列されているのであった。
朝の風
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
母親は青葉の映りの濃く射す縁側へ新しい
茣蓙
(
ござ
)
を敷き、
俎板
(
まないた
)
だの庖丁だの水桶だの蠅帳だの持ち出した。それもみな買い立ての真新しいものだった。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
七輪も
鍋釜
(
なべかま
)
も、庖丁も
俎板
(
まないた
)
も、凡そ金になりさうもない物は、所狹きまで取散らばし、まさに足の踏みどころもない有樣ですが、さすがに女の夜逃げで
銭形平次捕物控:222 乗合舟
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その
孕児
(
はらみご
)
を見るという安達ヶ原の鬼婆は、今その携えた出刃庖丁で、あの可憐な振袖を着た乙女を、
犠牲
(
いけにえ
)
の
俎板
(
まないた
)
に載せようとしている瞬間と見ていると
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、親爺は今、
俎板
(
まないた
)
の上で暴れ廻る蝦を、水でふやけた太い五本の指をひろげて、手の中へ押さえ付けながら
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
七日の朝はこの土地では
白粥
(
しらがゆ
)
に豆を入れたもので、七草をはやすというのはいろいろの食器を
俎板
(
まないた
)
に置いて、それをマワシ木(擂木)でたたくことであった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ちょっとした鍋
俎板
(
まないた
)
庖丁膳椀皿なども用意しているので、少しも人の世話にならずに食事をするのであるが、飯だけは、船に附いている竈で、家来に
焚
(
たか
)
せる。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
「べらぼうめ、出なくたって斬れらあ!
俎板
(
まないた
)
代りにちゃんと花道を背負っているんだ。斬ってみろ!」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
朝夕はきまって、お杉の手籠を持ってやるし、たびたび賄所へいって刃物を
研
(
と
)
いだり、
俎板
(
まないた
)
を削ったり、ときには菜を洗う手伝いまでする、ということであった。
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
平べったい
俎板
(
まないた
)
のような下駄を
穿
(
は
)
き、他の東京仕込みの人々に比べあまり田舎者の尊敬に値せぬような風采であったが、しかも自ら此の一団の中心人物である如く
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
俎板
(
まないた
)
の上で首を切られても、
胴体
(
どうたい
)
だけはぴくぴく動いている
河沙魚
(
かわはぜ
)
のような、
明瞭
(
はっき
)
りとした、動物的な感覚だけが、千穂子の
脊筋
(
せすじ
)
をみみずのように動いているのだ。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
お仙は母に言付けられた
総菜
(
そうざい
)
の仕度をしようとして、台所の板の間に
俎板
(
まないた
)
を控えて、夕顔の皮を
剥
(
む
)
いた。
干瓢
(
かんぴょう
)
に造っても
可
(
い
)
い程の青い大きなのが
最早
(
もう
)
裏の畠には沢山
生
(
な
)
っていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
幸堂氏は
料理人
(
いたば
)
がするやうに、
手拭
(
てぬぐひ
)
を
襷
(
たすき
)
に
効々
(
かひ/″\
)
しく
袂
(
たもと
)
を絞つて台所で
俎板
(
まないた
)
を洗つてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
利家の夫人、いちど外した
襷
(
たすき
)
をかけ直して、自身、調理場の
水瓶
(
みずがめ
)
や
俎板
(
まないた
)
の前に立った。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
千代松は火鉢に
翳
(
かざ
)
してゐた兩手を
懷
(
ふところ
)
に收めて、首を傾けつゝ、
傍
(
かたはら
)
の
俎板
(
まないた
)
の上に澤庵漬けの黄色い
大根
(
だいこ
)
が半分だけ切り殘されて、庖丁とともに置きツ放しにしてあるのを見詰めてゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
他
(
かれ
)
已
(
すで
)
に罠に落ちたる上は、
俎板
(
まないた
)
の上なる
魚
(
うお
)
に等しく、殺すも
生
(
いか
)
すも思ひのままなり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
料理長というものは板前といって、
俎板
(
まないた
)
の前に
坐
(
すわ
)
って刺身ばかり作っている。
お米の話
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
それでも七輪や鍋、
薬鑵
(
やかん
)
、
庖丁
(
ほうちょう
)
、
俎板
(
まないた
)
、茶碗などが揃ったのはつい最近のことである。そしてどうやらいまのところはこの生活を維持している。けれども僕の不安定な生活も久しいものである。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
妻というものは台所の
俎板
(
まないた
)
と同様、または
雑巾
(
ぞうきん
)
ぐらいに見てよいものだといって
憚
(
はばか
)
らないものがあることゆえ、妻の偉さを知っているものを白眼で見て、
羨
(
うらや
)
ましさから起る
嫉妬
(
しっと
)
にしか過ぎません。
平塚明子(らいてう)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
この村の民家の台所で始めてクシ(松の
一木作
(
いちぼくづく
)
りの
俎板
(
まないた
)
兼食器洗い)
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
裁縫
(
しごと
)
をさせますと、日が一日
襦袢
(
じゅばん
)
の
袖
(
そで
)
をひねくっていましてね、お
惣菜
(
そうざい
)
の大根をゆでなさいと申しますと、あなた、大根を
俎板
(
まないた
)
に載せまして、
庖丁
(
ほうちょう
)
を持ったきりぼんやりしておるのでございますよ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
剥
(
む
)
いて身を取て
俎板
(
まないた
)
で叩いて
擂鉢
(
すりばち
)
でよく
摺
(
すっ
)
て
玉葱
(
たまねぎ
)
を
山葵卸
(
わさびおろ
)
しで摺込んで塩と味淋で味を付けてまたよく摺って
煮汁
(
だし
)
を加えてドロドロにして
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ともよの父親の福ずしの亭主は、いつかこの客の潔癖な性分であることを覚え、湊が来ると無意識に
俎板
(
まないた
)
や塗盤の上へしきりに
布巾
(
ふきん
)
をかけながら云う。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
板前の重三郎は、何んか客寄せがあると、浅草から呼んで来る中年男、
俎板
(
まないた
)
の傍を煙草一服の間も離れません。
銭形平次捕物控:245 春宵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
壁一面に、天井へとゞくくらいな書棚があって、本がぎっしり詰まっている。それから、室の中央には、牛肉屋の
俎板
(
まないた
)
のような大きなデスクが頑張っている。
蘿洞先生
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その下に据えた
俎板
(
まないた
)
も、野菜を切り込む
笊
(
ざる
)
も、
目籠
(
めかご
)
も、自在にかけて何物か煮つつある鍋も、炉中の火をかき廻す火箸も、炉辺に据えた五徳も——茶のみ茶碗も
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
七草なずな、
唐土
(
とうど
)
の鳥が——の唄に合わせて、とことん! とことん! と
俎板
(
まないた
)
を叩く音が、吉例により、立ち並ぶ家々のなかから、
節
(
ふし
)
面白く
陽気
(
ようき
)
に聞えて来ていた。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
カルソーの母音の中の微妙な変化やテトラッチニの極度の高音やが分析の
俎板
(
まないた
)
に載せられている。それにもかかわらず母音の組成に関する秘密はまだ完全に明らかにはならない。
蓄音機
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
石臼
(
いしうす
)
もあり、
俎板
(
まないた
)
あり、灯のない
行燈
(
あんどう
)
も三ツ四ツ、あたかも人のない道具市。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鶏の料理は
是非
(
ぜひ
)
とも鶏の割き方を覚えなければなりません。今あの料理人が三百目ほどの
雄鶏
(
おんどり
)
を
俎板
(
まないた
)
の上へ
仰向
(
あおむけ
)
に置きました。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
響板
(
きやうばん
)
とか言つたね、あの
俎板
(
まないた
)
のヒネたやうな虫喰板に青い字を彫つたのを入口の横手に吊してある奴だ。
銭形平次捕物控:209 浮世絵の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
禰宜 ああ、いやいや、さような
斟酌
(
しんしゃく
)
には決して及ばぬ。料理
方
(
かた
)
が
摺鉢
(
すちばち
)
俎板
(
まないた
)
を
引
(
ひっ
)
くりかえしたとは違うでの、
催
(
もよおし
)
ものの
楽屋
(
がくや
)
はまた一興じゃよ。時に日もかげって参ったし、
大分
(
だいぶ
)
寒うもなって来た。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庖丁
(
ほうちょう
)
、
俎板
(
まないた
)
出しかけて
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それをテンパンから
俎板
(
まないた
)
の上へ取出し裏返しておいて紙を
剥
(
は
)
がして、その剥がした方の裏へ
苺
(
いちご
)
のジャムでも何のジャムでも少し湯で
弛
(
ゆる
)
めて煉って一面に塗って
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
入口の方から番傘が
覗
(
のぞ
)
いて、お勝手の方から
柄杓
(
ひしやく
)
と
俎板
(
まないた
)
が覗いてゐる世帶、淺ましくも凄まじい
家居
(
いへゐ
)
ですが、八五郎にのしかゝるやうに
啖呵
(
たんか
)
を浴びせてゐる女は見事でした。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とお源は袖を擦抜けて、
俎板
(
まないた
)
の前へ
蹲
(
しゃが
)
む。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
器械がなければビフテキのように鍋で
一旦
(
いったん
)
両面を
炙
(
や
)
いてそれから
俎板
(
まないた
)
の上で
極
(
ご
)
く細かに刻みます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「算盤なんか俺の屋敷にあるものか、
俎板
(
まないた
)
か何んかで間に合せて置け、馬鹿々々しい」
銭形平次捕物控:224 五つの壺
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
五つに截り別ける第一として素人ならば先ず鳥を
俎板
(
まないた
)
の上へ仰向きに置いて左の手で胴を抑えながら先ず腰車の骨を
剥
(
は
)
がすように截り離すとあの通り足や
腿
(
もも
)
が楽に取れます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
しかも死骸の着て居るのは、帶ひろどけた寢卷一枚だけ、武家あがりの勘十郎が、日頃の大言にも似氣無く、
俎板
(
まないた
)
の上の
鰻
(
うなぎ
)
のやうにやられるのは、あまりと言へば不思議なことです。
銭形平次捕物控:264 八五郎の恋人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
本式にするとソボロ
俎板
(
まないた
)
といって
立目
(
たてめ
)
の俎板で肉を
細
(
こまか
)
く
截
(
き
)
るが此方にその俎板がない。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
“俎板(まな板)”の解説
まな板(まないた)は、調理で食材を切る際に台として用いる道具で、古来日本では板であったことからその名がある。。日本語では俎/俎板(まないた)とも記す。英語では "cutting board" または "chopping board" といい、現代日本語でも前者を音写した外来語「カッティングボード」があり、欧米などの俎板にこの語を当てることがある。
(出典:Wikipedia)
俎
漢検1級
部首:⼈
9画
板
常用漢字
小3
部首:⽊
8画
“俎”で始まる語句
俎
俎上
俎橋
俎下駄
俎岩
俎豆
俎倉
俎堂
俎島
俎嵓