隣村となりむら)” の例文
その風にって難破し、五六人の乗組の漁夫りょうしがみんな溺死して、その死体がそれから四五日もたってから隣村となりむらの海岸に漂著ひょうちゃくしましたが
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
にん子供こどもらはそのからたいんで隣村となりむらかけていって太郎たろうとけんかをしました。しかし先方せんぽうはいつも太郎たろう一人ひとりでありました。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勘次かんじころからおしなのいふなりにるのであつた。二人ふたりとほくはけないので、隣村となりむら知合しりあひとうじた。兩方りやうはう姻戚みよりさわした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
また同じ地方でも、ある村で立派なものを作るのに、すぐその隣村となりむらでは作り方すら知らないというような場合もありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
表通りで夜番よばん拍子木ひょうしぎが聞える。隣村となりむららしい犬の遠ぼえも聞える。おとよはもはやほとんど洗濯の手を止め、一応母屋おもやの様子にも心を配った。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
祖母おばあさんは隣村となりむら妻籠つまかごといふところから、とうさんのおうちへおよめひとで、曾祖母ひいおばあさんほどの學問がくもんいとひましたが、でもみんなにかれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其れは隣村となりむら鹿しゝたに盲唖院まうあゐんと云ふものを建てる趣意書を配つて応分の寄附金を勧誘くわんいうするためであつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
何とか速くきめなければならなかった。そして私たちはとうとう、二人一緒に出かけて隣村となりむらへ行って助けを求めようという考えが思いついた。言うが早いかやり出した。
現にぼくの隣村となりむらから来ていた青年なんか、帰りがけにいやにさびしそうな顔をして、もっと早く友愛塾のことを知っていればよかった、なんて、こっそりぼくに言っていたんだから。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
貸し置ひそかに以前の三人に知らせお前樣を殺さんとて隣村となりむらまで行くと云て出行し其樣子は納戸の中にて殘らず聞てはをりながら猿轡をはめられたれば聲を立る事さへ成ず夫故それゆゑに那樣に物音を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから四、五年の間、その寺はれるままにまかせて、きつねむじなの住み家となっていたが、それではこまるというので、村の人たちは隣村となりむらの寺から一人のわかぼうさんをんで来てそこの住職とした。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
自分じぶんむらも、隣村となりむらも、ならんであのときのままになっていたけれど、しかし、それ以外いがいになにもあたらしくかれてはいませんでした。
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
隣村となりむら妻籠つまごには、お前達まへたち祖母おばあさんのうまれたおうちがありました。妻籠つまご祖父おぢいさんといふ人もまだ達者たつしや時分じぶんで、とうさんたちをよろこんでむかへてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
自分のなつかしい記憶きおくは、産土には青空をしてるような古い松が三本あって、自分ら子供のころには「あれがおらほうの産土の社だ。」と隣村となりむらの遠くからながめて、子供ながらほこらしく
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
子供こどもらは口々くちぐちに、どうしたのだろうといっていました。するとそこへ、隣村となりむらからなれないおとこひと子供こどもらのあそんでいるところへやってきて
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
岸本の父は故国の山間にあって三百年以上も続いた古い歴史をつ家に生れた人であった。峠一つ越して深い谿谷たにに接した隣村となりむらには、矢張やはり同姓の岸本を名乗る家があった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
隣村となりむらに、もう一人ひとり金持かねもちがありました。この金持かねもちも天下てんかぴん仏像ぶつぞうがぜひたくなりました。それで、わざわざおとこのもとへやってきました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
をとこをんな旅人たびびとせたうま馬方うまかたかれてとほることもありました。とうさんのこゑけたのは、近所きんじよはれてうまで、毎日々々まいにち/\隣村となりむらはう荷物にもつはこぶのがこのうま役目やくめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やまへいくときと、反対はんたいみちをいって、隣村となりむらにさしかかろうとするとうげつと、あたりに、をさえぎるなにものもなくて、見晴みはらしがひらけるのでした。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あの落書らくがきは、まだいてあるかな。あれから、もし隣村となりむらたら、なにかまたいたかもしれない。」
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おお、これはわたしまれた、隣村となりむらだ。」と、良吉りょうきちは、その文字もじいつけられたようにちかづきました。
隣村の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこは、けていない仏像ぶつぞうをふろしきにつつんで、それをって、隣村となりむら金持かねもちのいえかけてゆきました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あ、あの仏像ぶつぞうですかい。地金じがね黄金おうごんですか、なんでできていますか。」と、隣村となりむら金持かねもちはきました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このむらには七つ八つから十一、二の子供こどもが五、六にんもいましたけれど、だれも隣村となりむら太郎たろうにかなうものはありませんでした。太郎たろうは、まだやっと十二ばかりでした。
雪の国と太郎 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこにあった、みすぼらしい小学校しょうがっこうへは、とお隣村となりむらからかよってくる年老としとった先生せんせいがありました。
空晴れて (新字新仮名) / 小川未明(著)