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譬
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たとえ
ふりがな文庫
“
譬
(
たとえ
)” の例文
世の
譬
(
たとえ
)
にも
天生
(
あもう
)
峠は
蒼空
(
あおぞら
)
に雨が降るという、人の話にも
神代
(
かみよ
)
から
杣
(
そま
)
が手を入れぬ森があると聞いたのに、今までは余り樹がなさ過ぎた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
うどの大木という
譬
(
たとえ
)
はあるが、若いころは知らず、この
女
(
ひと
)
はとても味のある、ずば抜けたばかげさを持った無類の好人物だった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
荘子
(
そうし
)
に虚舟の
譬
(
たとえ
)
がある。今の予は何を言っても、文壇の地位を争うものでないから、誰も怒るものは無い。彼虚舟と同じである。
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私
(
わたくし
)
の病気は実は
是々
(
これ/\
)
といいましたが、其の事は
乳母
(
おんば
)
にも云われないくらいな訳ですが、
其処
(
そこ
)
が親馬鹿の
譬
(
たとえ
)
の通り、お
蔑
(
さげす
)
み下さるな
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「それは物の
譬
(
たとえ
)
ですよ。一と目見ても千両の値打のある女を、一日眺めても、十六文で済むというから大したものでしょう」
銭形平次捕物控:213 一と目千両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
二度あることは三度あるというが、私の家出もその
譬
(
たとえ
)
にもれなかった。もっとも、その三度目は二度目のときからは、大分歳月が経っていた。
遁走
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
と云う訳になる。何となく落語じみてふざけているが、実際この時の心の状態は、こう
譬
(
たとえ
)
を借りて来ないと説明ができない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
われら猿とは
古代
(
いにしえ
)
より、仲
悪
(
あ
)
しきものの
譬
(
たとえ
)
に呼ばれて、互ひに
牙
(
きば
)
を鳴らし合ふ身なれど、かくわれのみが彼の猿に、
執念
(
しゅうね
)
く狙はるる覚えはなし。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「お母さんが潰しはしないさ、これは物の
譬
(
たとえ
)
だよ、しかし、お母さんだって、悪いことをすりゃあ、自家が潰れるのだよ」
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
内心
如夜叉
(
にょやしゃ
)
の
譬
(
たとえ
)
通りです。第一あなたがたの涙の前には、誰でも
意気地
(
いくじ
)
がなくなってしまう。(小野の小町に)あなたの涙などは
凄
(
すご
)
いものですよ。
二人小町
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その
譬
(
たとえ
)
が、さとの小さい胸を、どんなに痛く刺したか、てんで気附かないでいるのである。勝手な子である。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
僕は、
坊主
(
ぼうず
)
憎
(
にく
)
ければ
袈裟
(
けさ
)
までもの
譬
(
たとえ
)
のとおり、この美青年の給仕を
呶鳴
(
どな
)
りつけたい衝動に駆られたのを、ようやくにしてぐっと
怺
(
こら
)
え、誘導訊問風に呼びかけた。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
雪なんぞは降らなくてもいい、竹筒っぽうでも降ればいいというのは、あまり聞き慣れない
譬
(
たとえ
)
であります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その後イエスは
譬話
(
たとえばなし
)
で語られるようになり、
譬
(
たとえ
)
でなければいっさい公の説教をせられぬこととなった(四の二、三四)。これはいかなる理由によるのでしょうか。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
火中に栗を拾う
譬
(
たとえ
)
で、なまじっかなことをすれば、
怪我
(
けが
)
をするだけではすまない。主水にどのような
目途
(
めど
)
があるとしても、まずまず成功は
覚束
(
おぼつか
)
ないように思われた。
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鹿を追う猟師は山を見ずの
譬
(
たとえ
)
の通りに、李は夢中になって追って行くうちに、岡を越え、峰を越えて、深い谷間へ入り込みましたが、遂に
獲物
(
えもの
)
のすがたを見失いました。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
兄がよくその
譬
(
たとえ
)
を人の事に取ってこう申します。それは全く最初の考えようが悪いので海は一年中
平
(
たいら
)
で
穏
(
おだやか
)
なものでない。時あって風も起り波も荒くなるのが海の
持前
(
もちまえ
)
だ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
譬
(
たとえ
)
ば僅に一銭持たるとも、其一銭限り不
レ
残取上るを一銭切と云なるべし、捜し取る事と見ゆ。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
「この長屋は、義理が堅い。それに、燈台下暗しの
譬
(
たとえ
)
で、一晩や、二晩は、却ってよい」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
鳥なき里の
蝙蝠
(
こうもり
)
という
譬
(
たとえ
)
があるが、三越という大きな鳥が出現して中村屋がただちにこの打撃を被るのは、やはり中村屋の商売にまだ一人前として足らぬところがあるからである。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
「べらぼうめ。土を掘つても、一文の銭もでないと、昔から
譬
(
たとえ
)
にも言ふ通りのものだ」
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
とかく
譬
(
たとえ
)
は不完全であるから言葉だけでみると、僕が単に不熱心たれ、退け、何事にも熱するなというように聞こえるか知らぬが、
分別
(
ふんべつ
)
ある読者は僕の真意を味わわれるであろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ついに今日、変り果てし
醜骸
(
しゅうがい
)
をお目にふれ候こと、
寔
(
まこと
)
に天の
冥罰
(
みょうばつ
)
、そら怖ろしと酔心を
冷
(
ひや
)
し候といえども、乞食三日の
譬
(
たとえ
)
の如く、到底今となっては真人間に成り難き新九郎にござ候。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところが、悪運が尽きたとでもいうのですか、それとも、
阿漕
(
あこぎ
)
が浦で引く網も度重なれば何とやらの
譬
(
たとえ
)
か、警察ではやっとのことで、彼等の二つの住居の中の一つを嗅ぎ出したのです。
稀有の犯罪
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それも道理千万な
談
(
はなし
)
で、早い
譬
(
たとえ
)
が、誤植だらけの活版本でいくら万葉集を研究したからとて、真の研究が
成立
(
なりた
)
とう訳はない理屈だから、どうも学科によっては骨董的になるのがホントで
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その中へ
譬
(
たとえ
)
なども入れてごく感心するように戒めます。その事が終りますと今度はその父、母がまた正しくその場に坐り込んで同様の事を告げる。それはほとんど泣きながら告げて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
後に目科は余に向い「誠に残念ですが、勤めには代られぬ
譬
(
たとえ
)
です、此勝負は明日に譲り今日は是で失敬します」とて早や立去らん様子なり、勝負の中止も快からねど
夫
(
それ
)
よりも不審に
得堪
(
えた
)
えず
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
と僕は相手にならなかったが、この兵隊の
譬
(
たとえ
)
を忘れなかった。自習をしようと思っても、兵隊は薬を飲まないと思い出す。それでもやる時はウンとやるんだ。何うも兵隊の精神が本当らしい。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
大きなデカ
爺
(
おやじ
)
が、自分の
頭程
(
あたまほど
)
もない先月生れの小犬の
蚤
(
のみ
)
を
噛
(
か
)
んでやったり、小犬が母の
頸輪
(
くびわ
)
を
啣
(
くわ
)
えて引張ったり、犬と猫と
仲悪
(
なかわる
)
の
譬
(
たとえ
)
にもするにデカと猫のトラと
鼻
(
はな
)
突
(
つき
)
合わして
互
(
たがい
)
に
疑
(
うたが
)
いもせず
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
伯父は母親のように正面から
烈
(
はげ
)
しく反対を
称
(
とな
)
えはしなかったけれど、聞いて極楽見て地獄の
譬
(
たとえ
)
を引き、
劇道
(
げきどう
)
の成功の困難、舞台の生活の苦痛、芸人社会の交際の
煩瑣
(
はんさ
)
な事なぞを長々と語った
後
(
のち
)
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おらも婿だが、昔から
譬
(
たとえ
)
にいう通り、婿ちもんはいやなもんよ。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
蟻の穴よりの
譬
(
たとえ
)
。小事の如き大事だと思う。
日記:27 一九四四年(昭和十九年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と小宮山は且つ慰め、且つ諭したのでありまする、そう致しますと、その物語の調子も良く、取った
譬
(
たとえ
)
も
腑
(
ふ
)
に落ちましたものと、見えて
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
志「今日は臥竜梅へ梅見に出かけましたが、梅見れば
方図
(
ほうず
)
がないという
譬
(
たとえ
)
の通り、
未
(
ま
)
だ
慊
(
あき
)
たらず、
御庭中
(
ごていちゅう
)
の
梅花
(
ばいか
)
を拝見いたしたく参りました」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「飛んでもない、物の
譬
(
たとえ
)
だよ、俺は年増女と月賦の洋服屋は相手にしないことにして居るんだ
執
(
しつ
)
こくて叶わないからね」
笑う悪魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
キンギン国の心臓にも
譬
(
たとえ
)
ていいマイカ大要塞を望んで、怪しい敵の空襲部隊は、悠々と地上に舞下った。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
なんでも、僕の聴き取った所では、心が動いてはならぬ、動けば
隙
(
すき
)
を生ずる、隙を生ずれば乗ぜられると云うような事であった。石原は虎が酔人を
噉
(
く
)
わぬと云う
譬
(
たとえ
)
を引いた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
譬
(
たとえ
)
ば、丸橋忠弥の堀ばたとか、立廻りの見得とか、せまい台所でほんものの雨傘をひろげるのだから、じきに破いてしまうが、
一方
(
ひとかた
)
ならない高島屋びいきは、小言どころではない。
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
神妙の極に達すると、出るべき涙さえ遠慮して出ないようになる。涙がこぼれるほどだと
譬
(
たとえ
)
に云うが、涙が出るくらいなら安心なものだ。涙が出るうちは笑う事も出来るにきまってる。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
譬
(
たとえ
)
ばパインナプルが牛肉を溶解する力ありとすればそれと反対に
或
(
あ
)
る植物が或る肉類を不消化にするという作用もなければならん。現に酸類は牛乳を凝結せしめて不消化にする例もある。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
かく
比喩
(
ひゆ
)
をもってしては、あるいは意味が
解
(
わか
)
らぬか知らぬが、
譬
(
たとえ
)
を
変
(
か
)
えていえば一日に六時間学生に教授するといえば、授業時間には
苦
(
にが
)
い顔せず、また
叱
(
しか
)
ったり
不愉快
(
ふゆかい
)
な
風
(
ふう
)
に教えないで
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「それは
譬
(
たとえ
)
だ。お前が怠けているからだ」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
菊「そんならおぬしゃあ盗人と、知ってもやっぱり愛想も
尽
(
つか
)
さず、」源「お前と一所に居たいのは、
譬
(
たとえ
)
にもいう似た者夫婦、」菊
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と気があれば目も口ほどに物をいうと云う
譬
(
たとえ
)
の通り、新三郎もお嬢様の
艶容
(
やさすがた
)
に
見惚
(
みと
)
れ、魂も天外に飛ぶ
計
(
ばか
)
りです。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
自分の地位を築き上げるためには他人を
陥入
(
おとしい
)
れる位のことは、まことに——
尾籠
(
びろう
)
な
譬
(
たとえ
)
で恐縮ですが、——屁とも思わないといった、冷酷無残な性格の持主でした。
奇談クラブ〔戦後版〕:11 運命の釦
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いずれにしても、ここで、そのお誓に逢おうなどとは……
譬
(
たとえ
)
にこまった……間に合わせに、されば、箱根で田沢湖を見たようなものである。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それにお尋ねの風聞も大抵抜けた様子だから故郷
忘
(
ぼう
)
じ
難
(
がた
)
しの
譬
(
たとえ
)
で、二人一緒で江戸へ
往
(
ゆ
)
き、どんな暮しでもしようじゃないか、懐に金も有ることだからと
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「それは物の
譬
(
たとえ
)
で」
銭形平次捕物控:069 金の鯉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
卑俗な
譬
(
たとえ
)
だけれど、
小児
(
こども
)
が何とかすると町内を三
遍
(
べん
)
廻らせられると言つた形で、此が大納言の
御館
(
みたち
)
を騒がした狂人であるのは言ふまでもなからう。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
嘸まア腹が立つとも
悪
(
にく
)
い野郎とも、実にね悪党野郎でごぜえまして、
牛裂
(
うしざき
)
にしても飽足らねえ奴の親だから、坊主が悪けりゃ袈裟まで悪いという
譬
(
たとえ
)
の通りで
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
譬
漢検1級
部首:⾔
20画
“譬”を含む語句
譬喩
譬話
譬噺
譬喩的
譬喩品
彼譬諭
法句譬喩経
譬喩歌
譬喩経
譬喩談
譬如北辰
譬諭
譬諭経
雑譬喩