)” の例文
「貧乏性だわねえ、あんたは。今日は黄道吉日こうどうきちにちでしょ。お大尽だいじんの仕立て物には、ち祝いということをするもンなのよ、知らない?」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第一種は普通ふつうの股引にして、はだへに密接するもの、第二種はち付け袴の類にして、全体甚ゆるやかに、僅に足首の所に於てかたくくられたるもの。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
むろん二人の着物は、同じ長さにたれた。しかも大ていは同じ柄の飛白かすりであった。だから、二人は着物を取りちがえては、よく喧嘩をした。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
巻絹はち縫うて衣裳にすれどもらず、衣服に充満みちけるが、後にその末を見ければ延びざりけり、鍋は兵糧をくに、少しの間に煮えしとなり。
そこで、仕立屋したてやさんはおおいそぎで、おびを一本って、ぬいあげました。そしてそれに、大きな字で、「ひとちで七つ」と、ししゅうをしました。
「だって、肩のところが少しすれているだけのことじゃないか。何か、お前んとこにちぎれがあるじゃろうが……」
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「まさか私に殿の御暦の中をって、すぐ八月が出るように、つないでくれとおっしゃるのではないでしょうね?」
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
わざ/\仏蘭西ふらんすにゐる義妹いもうとに注文して、六づかしい名のつく、頗る高価な織物おりものを取寄せて、それを四五人でつて、帯に仕立てゝて見たりなにかする。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きぬはいくらってもってもりません。がねはたたくと近江おうみ国中くにじゅうこえるほどのたかおとをたてました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
果ては羽根布団の腹をち割って、その臓腑を天井に向って投げつければ、寝室はたちまち一面の銀世界。
黒い洋服を着ていたが、その洋服は今まで見たこともないような奇異なち方をしてあった。胸のところを広く開いてあるので、青く静脈の浮いた胸が見える。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
改良服の寸法ち方を論ずる前に、古着も襤褸ぼろをささずには着られない生活の多いことを、折畳み式寝台を説く前に、世の中にわらの中に寝なければならぬ者が
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ところが白氏は台所婆なぞを定規にして詩をった人なので、気の毒に其の益をも得たろうが其弊をも受け、又白氏は唐人の習い、弥勒菩薩みろくぼさつの徒であったろうに
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは感激なくして書かれた詩のようだ。又着る人もなくたれた錦繍きんしゅうのようだ。美しくとも、価高くあがなわれても、有りながら有る甲斐かいのない塵芥じんかいに過ぎない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そしてちものもね。——何故つて衣類や上着うはぎや外套やその他色んなものを私たちは作るんですから。
博多の小山おやまという所の母方の御親戚に当るお婆さんの処へ行って、機織はたおりいなぞをお習いになりましたが、そのお婆さんが名高い八釜やかまのお師匠さんでしたのに
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今日は幸ひ土曜日なので、授業が濟むと直ぐ歸つた。そして、歸途かへりに買つて來た——一圓某の安物ではあるが——白地の荒い染の反物をつて、二人の單衣を仕立に掛つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
別に洋裁を教わってはいないのだったが、とにかくった。裂はオレンジ色のサティンだったが、全部細かいひだから成り立ったスカアトに、特徴があると言えるのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
武士であるわが君のお佩きになつている大刀のつかに、赤い模樣を畫き、その大刀の緒には赤い織物をつて附け、立つて見やれば、向うに隱れる山の尾の上の竹を刈り取つて
それから三条寺町てらまちまで歩いて、いつもの紙屋で大判の雁皮がんぴを十枚と表紙用の厚紙を一枚買い、それを私の日記帳の大きさにって貰い、しわにならないようにうまく包装して貰って
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
掻巻はいつも神月と添寝した五所車ごしょぐるまを染めた長襦袢ながじゅばんったのに、紅絹もみの裏を附けて、藤色縮緬ちりめん裾廻すそまわし、綿も新しいのをふッかりと入れて、天鵝絨びろうどの襟を掛けて、黄八丈の蒲団ふとんを二枚。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしが客間へはいってみると、この前よりもっと太って、もう白髪あたまになった母親は、ゆかにいつくばって、何やら青い布地をっていた。娘はソファーにかけて、刺繍をしていた。
嫁入り支度 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
上衣うわぎっても下衣に裁っても十分用に足りるだけの幅もたけもあったけれど、不思議のことにはその紅巾はせみの羽根のように薄いところから、てのひらの中へ握られるほどにまた小さくもなるのであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
晩年には益々こうじて舶来の織出し模様の敷布シーツを買って来て、中央に穴を明けてスッポリかぶり、左右の腕に垂れた個処を袖形そでがたって縫いつけ、まる酸漿ほおずきのお化けのような服装なりをしていた事があった。
彼女が絶対の権威をもってつむぎ、織り、つのである。
ちて縫はさむかこのきれを、うたげのをりの
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
つ手をしばしやめよかし
たまくをしき唐綾からあや
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
饗応役きょうおうやくの家臣たちは勿論のこと、君侯生涯の大命である。肌着にはけがれのない晒布さらしち、腹巻には天の加護かごを祈って、神札まもりを秘めている者もあった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを行灯袴あんどんばかまに、膝頭ひざがしらまでって、たてひだを置いたから、膝脛ふくらはぎは太い毛糸の靴足袋くつたびで隠すばかりである。歩くたびにキルトの襞が揺れて、膝とももの間がちらちら出る。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
地面の形にもくずのようなものが出来ていて、一目見ただけでもふるい道でないことが判る。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それだけならいいけれど、どういうつもりか知らないが、その上に釣鐘マントを羽織はおっている。ああ、モナリザだと私は思い出した。洋服のち方が、モナリザのきている洋服と同じである。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
しかし、さしあたって与える物もないので、帝は隠岐脱出のさいに召されていたボロの狩衣を細かにち切らせ
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっそく水干をって、白布に縫い合せ、白と紫つなぎの一りゅうの旗を作らせた。そして
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
障子紙を細くって、短冊たんざくに代えた紙きれへ、誰かが、こんな句を、いたずらに書く。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝々、武大ぶだを稼ぎに追い出してしまうと、金蓮はもう翼をかえして隣の奥へ来ていた。この間じゅうから縫いにかかった白綾しらあや青羅紅絹せいらこうけんがもうちもすんで彼女の膝からその辺に散らかっている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)