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虚
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むな
ふりがな文庫
“
虚
(
むな
)” の例文
架空
(
かくう
)
の影の
虚
(
むな
)
しい自信と力なのだが、それを承知で、だまされ、たわいもない話だが、それでほんとに、いい気なのだから笑わせる。
戯作者文学論:――平野謙へ・手紙に代えて――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
太陽はぎらぎら輝きながら、
虚
(
むな
)
しい速度で回転していた。その大空の何処かを、鋭く風を切って、飛行機が近づいて来る
気配
(
けはい
)
があった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
こんな
虚
(
むな
)
しい何も浮んでいない顔を見たことがはじめてだった。どんな困窮の日にもこんなさびしい顔色はしていなかったのだ。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私は土の崩れるような大きな激情がよせて来ると、何もかもが一切
虚
(
むな
)
しくなりはてて、死ぬる事や、古里の事を考え出してくる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
これ以上
荏苒
(
じんぜん
)
日を
虚
(
むな
)
しうすることはできないから、このうえは官庁側においてもいま一歩積極的に出て、業者とともに悩み、ともにはかり
思い:情報局の映画新体制案について
(新字新仮名)
/
伊丹万作
(著)
▼ もっと見る
前後左右を
劃
(
かぎ
)
っていて、街の下を流れる下水の如くに、時々ほんのちょっとした隙から
微
(
かす
)
かな
虚
(
むな
)
しい響を聞かせるように三造には思われた。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
なんといっても、
枢軸
(
すうじく
)
の後醍醐をうしなった南朝の朝廷は、空閣の
虚
(
むな
)
しさをどうしようもなく、前途を悲観する人々のあいだでは、はやくも
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
虚
(
むな
)
しき人は
悟性
(
さとり
)
なし、その生るるよりして
野驢馬
(
のろば
)
の
駒
(
こま
)
の如し」というが如き、余りに不当なる悪口というべきである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
青白いスクリインは、バタバタと風に
煽
(
あお
)
られ、そのまえに乱雑に転がったデッキ・チェア、みんな、
虚
(
むな
)
しい風景でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
私の努力が
虚
(
むな
)
しく終るかあるいはよき実を結ぶか否かは私が本当に正直になりうるか否かによって決ることである。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
悠二郎は高い空をわたる風の音でも聞くような、一種の
虚
(
むな
)
しいおもいで、そっと溜息をつき、窓の外へ眼をやった。
桑の木物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼等のわが事を語るにいたれるもこれが爲なりき、かれらまづ、彼は
虚
(
むな
)
しき身のごとくならずといふ 一〇—一二
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
汝もし信ぜずば今夜新しい葉を
席
(
むしろ
)
の下に
鋪
(
し
)
いて、別々に臥して見よ、明朝に至り汝の
榻下
(
とうか
)
の葉は実するも、鬼の
臥所
(
ふしど
)
の葉は
虚
(
むな
)
しかるべしと言うて別れ出た。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
やむなく、見舞品を置いて、
虚
(
むな
)
しく帰らなければならなかった。力のない足どりで、街の方へ引き返しながら
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
孝孺の
此
(
この
)
言
(
げん
)
に
照
(
てら
)
せば、
鄭暁
(
ていぎょう
)
の伝うるところ、実に
虚
(
むな
)
しからざる也。
四箴
(
ししん
)
の序の
中
(
うち
)
の語に曰く、天に
合
(
がっ
)
して人に合せず、道に同じゅうして時に同じゅうせずと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
事実としては、墓が
虚
(
むな
)
しくあったことだけである。これに関して、復活を否定する諸説がある。いわく、マグダラのマリヤたちは墓を間違えたのであろうと。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
それで、欧米の人と、直接に会って心を
虚
(
むな
)
しうして言ってみれば、その誤解は釈然として解けるのである。
平和事業の将来
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
ここの山々の特徴は、山々の起伏の線の、へんに
虚
(
むな
)
しい、なだらかさに在る。小島烏水といふ人の日本山水論にも、「山の
拗
(
す
)
ね者は多く、此土に仙遊するが如し。」
富嶽百景
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
貴族の栄華は、彼をして
虚
(
むな
)
しき世のものをあさりめぐるの
外
(
ほか
)
に楽しみとてはあらずと、思はしめにき。
トルストイ伯
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
時々彼は
空
(
くう
)
な
懐
(
ふところ
)
をひろげて、この世に居ない自分の娘を捜した……彼の
虚
(
むな
)
しい手の中には、何物も抱締めてみるようなものが無かった……朝に晩に傍へ来る娘達が
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
此
(
こ
)
の駅が止まりである列車は、見る/\
裡
(
うち
)
に、洗われたように、
虚
(
むな
)
しくなってしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
老子が孔子に
餞
(
はなむ
)
けしたと言われる言は、自己を主張せず理智に
拘泥
(
こうでい
)
せず、我を
虚
(
むな
)
しくして世に順応せよと教えた点において、『老子』の思想を一句に表現していると見ることもできる。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
交際は無くて
協
(
かな
)
はぬものにて、又一たび誤りてあらぬ人と相結ぶときは、悔あるべきことなりといふ。われは深くその好意を謝して、善人は隨處にありといふ
諺
(
ことわざ
)
の
虚
(
むな
)
しからぬを喜びぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
人力車に乗って降りられないのは
勿論
(
もちろん
)
、
空車
(
からぐるま
)
にして
挽
(
ひ
)
かせて降りることも出来ない。車を降りて徒歩で降りることさえ、
雨上
(
あまあ
)
がりなんぞにはむずかしい。鼠坂の名、真に
虚
(
むな
)
しからずである。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
虚
(
むな
)
しく
屠
(
ほふ
)
られてしまった無数の
哀
(
かな
)
しい生命にくらべれば、窮地に追詰められてはいても、とにかく彼の方が
幸
(
しあわせ
)
かもしれなかった。天が彼を無用の人間として葬るなら、
止
(
や
)
むを得ないだろう。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
しぜん人も馬も重苦しい気持に
沈
(
しず
)
んでしまいそうだったが、しかしふと
通
(
とお
)
り
魔
(
ま
)
が過ぎ去った
跡
(
あと
)
のような
虚
(
むな
)
しい
慌
(
あわただ
)
しさにせき立てられるのは、こんな日は
競走
(
レース
)
が
荒
(
あ
)
れて大穴が出るからだろうか。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
この
虚
(
むな
)
しさは、なぜか、彼の家中に於ける位置にも共通していると思われて来た。何か漠然と、
捉
(
とら
)
えどころはないが、そぐわないものが感じられてならぬのであった。彼の頭はぼんやりしていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
折ふしに冬木見えくる
眼先
(
まなさき
)
もたちまち暗し
虚
(
むな
)
しかりけり
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
むちうて、
汝
(
いまし
)
虚
(
むな
)
しく見えなせども
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
虚
(
むな
)
しき空に紅の
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
私の
冷
(
つ
)
めたい心が、女の
虚
(
むな
)
しい激情を冷然と見すくめていた。すると女が突然目を見開いた。その目は憎しみにみちていた。火のような憎しみだった。
私は海をだきしめていたい
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
日ごろにあった彼の罪悪意識と突然な
虚
(
むな
)
しさとが、波の通ったあとの砂地みたいにべったり心の底に定着していた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はたかが女一匹とふたたび心で叫んで見たが、それはもはや
虚
(
むな
)
しい
痩我慢
(
やせがまん
)
にすぎない言葉だった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そこにはつつましい
落魄
(
らくはく
)
と、
諦
(
あきら
)
めの溜息が感じられた。絶望への郷愁といったふうなものが、生きることの
虚
(
むな
)
しさ、生活の苦しさ、この世にあるものすべてのはかなさ。
嘘アつかねえ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
やっと兵曹長となり、一応の余裕が出来て、あたりを見廻した時、ひそかに育てて来た復讐の
牙
(
きば
)
は、実は
虚
(
むな
)
しいものに
擬
(
ぎ
)
せられてあったことに気付いたに違いないのだ。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
あゝ人力の
榮
(
さかえ
)
は
虚
(
むな
)
し、衰へる世の來るにあはずばその
頂
(
いたゞき
)
の縁いつまでか殘らむ 九一—九三
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
加うるに南軍は北軍の騎兵の
馳突
(
ちとつ
)
に備うる為に
塹濠
(
ざんごう
)
を掘り、塁壁を作りて営と
為
(
な
)
すを常としければ、軍兵休息の
暇
(
いとま
)
少
(
すくな
)
く、往々
虚
(
むな
)
しく人力を
耗
(
つく
)
すの
憾
(
うらみ
)
ありて、士卒
困罷
(
こんひ
)
退屈の情あり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
故竹添進一郎氏の『左氏会箋』一四に引かれた銭錡の説に今の牛宿の星群は子宮にあって丑宮にあらず、周の時
元枵
(
げんきょう
)
という星が虚宿二星の一たり、枵は
耗
(
こう
)
で鼠は物を
耗
(
へら
)
し
虚
(
むな
)
しくする
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
ヨブの失望察すべきである。故に二十一節において「
汝
(
なんじ
)
らも今は
虚
(
むな
)
しき者なり」と彼は友人らに対しまず総括的断定を下して
後
(
の
)
ち、激語を重ねて彼らを責むるのやむなきに至ったのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
今、鉄筋の残骸を見上げ、その円屋根のあたりに目を注ぐと、春のやわらかい夕ぐれの
陽
(
ひ
)
ざしが
虚
(
むな
)
しく流れている。
雀
(
すずめ
)
がしきりに飛びまわっているのは、あのなかに巣を作っているのだろう。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
一人一人に見れば、醜くもあり卑しくもあり愚かでもある少女たちが自分の生活の中で触れ得る唯一の生きた存在なのか? 豊かであるようにと予定したはずの日々が何と乏しく
虚
(
むな
)
しいことか。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
上梶
(
あげかぢ
)
を護謨の滑車に照りつむる陽ははげしくて下空
虚
(
むな
)
し
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
傳へぬ、こは
虚
(
むな
)
し
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
生計的に
落魄
(
らくはく
)
し、世間的に不問に
附
(
ふ
)
されていることは悲劇ではない。自分が自分の魂を握り得ぬこと、これほどの
虚
(
むな
)
しさ馬鹿さ
惨
(
みじ
)
めさがある筈はない。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
筒井は
師走
(
しわす
)
の日をせめてもの心だよりとして男の便りを待ったが、例に依ってそれは
虚
(
むな
)
しい彼女の心だのみに過ぎず、あと二日寝れば正月というのに、何のたよりもなかった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
此のような
虚
(
むな
)
しい感情を、私は何度積み重ねてはこわして来たのだろう。……
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「しかしこの
虚
(
むな
)
しさはなんだろう」と甲斐は暫くしてまた呟いた
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
空も山も青い田も、飢えている者の眼には
虚
(
むな
)
しく映った。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
我が
飛翔
(
かけり
)
挙
(
こぞ
)
り
出
(
で
)
て見む
郷人
(
くにびと
)
に心は
昂
(
あが
)
れ
虚
(
むな
)
しかりけり
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
虚
(
むな
)
しき
靈
(
れい
)
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
虚
常用漢字
中学
部首:⾌
11画
“虚”を含む語句
空虚
虚言
虚妄
虚空
虚構
虚偽
虚無
虚弱
虚飾
虚空蔵
虚心
太虚
虚誕
虚無的
虚無僧
虚子
虚僞
虚栄
虚舟
大虚
...