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ふりがな文庫
“
蔵
(
しま
)” の例文
旧字:
藏
蔵
(
しま
)
っておいたって仕様がないし、そうかといってウッカリ気心の知れないところに持って行ってお勧めする訳にも行きませんからね。
悪魔祈祷書
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私は妻という(しての)気持から、あなたとしては極めて自然に云われた数言を、耳へしみこませ、わが懐の奥ふかく
蔵
(
しま
)
う心持です。
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
三百両の金を
蔵
(
しま
)
って立ち上ろうとする。お松は情けない
面
(
かお
)
をして、眼にはいっぱいの涙を含んで、小さな
顋
(
あご
)
を
襟
(
えり
)
にうずめて
頷
(
うなず
)
きます。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ただ彼はひとりも知己を持たず、どの門番の家へもその名刺をふりまくことができなかったので、それをポケットの中に
蔵
(
しま
)
い込んだ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私にとっては金に換えがたいものばかりを
蔵
(
しま
)
っていたのでございましたわけで、それだけは、どうしてもなくしたくなかったのでした。
昔尊く:二千六百年を迎えて
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
▼ もっと見る
村の
少年少女
(
こどもたち
)
は造りかけた
山車
(
だし
)
や花笠や
造花
(
つくりばな
)
をお宮の拝殿に
蔵
(
しま
)
へ込んで、ゾロゾロと石の階段を野原の方へと降りて行くのでした。
女王
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
やがて物も言わずに突き膝で箪笥の方へにじり寄り、それを
蔵
(
しま
)
いこむ、その腰のあたりを見ると、安二郎はおかしいほど狼狽した。
青春の逆説
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「アラ、厭なの。じゃ、何かそこでしていんじゃない?
抽斗
(
ひきだし
)
や、下着入れを覗いているんだったら、今のうちに
蔵
(
しま
)
うことよ……」
一週一夜物語
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から
擦
(
さす
)
って見てから、それを、肌身深く
蔵
(
しま
)
いこんで仕舞った……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
どうやら自分ばかりが見ることの出来る不思議の宝物が
蔵
(
しま
)
つてあつて、そこに富と幸福とが、水銀を撒いたやうに散らばつて居る。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
だから彼はそそくさに四つの大根を引抜いて葉をむしり捨て著物の下まえの中に
蔵
(
しま
)
い込んだが、その時もう
婆
(
ばば
)
の尼は見つけていた。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「院長、では、これを見て、判断していただきましょう。当時、私が身につけていたものは、大切に、皆ここに
蔵
(
しま
)
ってあるのです」
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
瀬川は机の上の手紙を慌ててかくし、
抽斗
(
ひきだし
)
の中へ
蔵
(
しま
)
い込むと、それから机に背を
凭
(
もた
)
らせて寄りかかりながら「まあ、お座り」と言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
彼は叫ぶように言って、指環をチョッキの内ポケットに
蔵
(
しま
)
った。そして、冠っていたソフトを取ってテーブルの上に叩きつけた。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
彼はプロマイドを
蔵
(
しま
)
うと、そっと歩きだした。鳩の家の扉を開けると、いきなり一羽の伝書鳩を捕えて、マントの下にかくした。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
なぜといふに前の日からの約束で、この日われ/\が行くまではその幅を
蔵
(
しま
)
つておいて貰ふ打ち合せになつてゐたからであつた。
南京六月祭
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
「あなたは妾に見せられないものがあるのでせう、いゝえ、あの手箪笥の引き出しには何が
蔵
(
しま
)
つてあるか、妾にはよくわかつてゐます。」
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
花を
挘
(
むし
)
るも同じ事よ、
花片
(
はなびら
)
と
蕊
(
しべ
)
と、ばらばらに分れるばかりだ。あとは手箱に
蔵
(
しま
)
っておこう。——殺せ。(騎士、槍を取直す。)
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
高い帯揚の
心
(
しん
)
は減らせ、色はもっと質素なものを
択
(
えら
)
べ、金の指輪も二つは過ぎたものだ、何でも身の
辺
(
まわり
)
を飾る物は
蔵
(
しま
)
って置けという風で
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
すると樟脳や
包袋
(
においぶくろ
)
の香りと一緒に、長らく
蔵
(
しま
)
われていたものの古臭いような、それでいて好もしい、匂いも
錯
(
まじ
)
って鼻を打ってくるのでした。
虫干し
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
見付けられたとすれば、俺だけではない、これから入ってくる何百という人たちの、こッそり
蔵
(
しま
)
いこんでいた楽しみが奪われてしまうんだ。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
母親はよく
其
(
その
)
村のことを話した。四ツ切の大きな写真が
箪笥
(
たんす
)
の底に
蔵
(
しま
)
つてあつた。墓がいくつとなく並んで
居
(
ゐ
)
る写真であつた。
父の墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
彩牋堂記の拙文は書終ると
直様
(
すぐさま
)
立派な額にされたが新曲は遂に稿を脱するに至らずその断片は今でも机の
抽斗
(
ひきだし
)
に
蔵
(
しま
)
われてある。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
少年の試験場における念仏に依って直接に得たものは何か、それは宇宙に漲る大きな助力と、自分の内部に
蔵
(
しま
)
ってある潜在意識
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ここには四五人
人
(
ひと
)
がいる。だが一人も女はいない。何んとなく刀気が感じられる。これは武器庫に相違ないよ。随分沢山
蔵
(
しま
)
ってあるらしい。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
芸妓
(
げいこ
)
は一寸頭を下げて、紙包みを長い
袂
(
たもと
)
の中に
蔵
(
しま
)
ひ込んだ。
商人
(
あきんど
)
は自分ながら江戸つ児の
切
(
き
)
れ
離
(
はな
)
れのよいのに満足したやうににつと笑つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それはいつも、引き出すと同時に大急ぎで押しこまれてしまうため、一体どのくらい
金子
(
かね
)
が
蔵
(
しま
)
ってあるのやら、確かなことは分らなかった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
それで、もう釣もお終いにしようなあというので、蛇口から糸を
外
(
はず
)
して、そうしてそれを
蔵
(
しま
)
って、竿は
苫裏
(
とまうら
)
に上げました。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
爰
(
ここ
)
でも作りかたは簡単でないので、老人などの無い家では頼んで作ってもらい、用がすんでからも翌年まで、大事に
蔵
(
しま
)
って置く者があるという。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼は秘蔵の品に手をふれるように青い下帯を
撫
(
な
)
でさすりながら、珍らしい物をいままで
蔵
(
しま
)
って置いたものだといった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ある日母子二人とも留守の間に入って来てそこらを掻き探しているうちにふと私からやった手紙の
蔵
(
しま
)
ってあったのを目つけて残らず読んでしまった。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
いとも慇懃に帽子を脱ぐとさて「いやいや、奥さま。何卒宝石はお
蔵
(
しま
)
い下さい。そして叶いますことならば、あなたのお
髪
(
ぐし
)
の花を頂かせて下さいませ」
薔薇の女
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
校長は
蔵
(
しま
)
つた懐中時計をまた出して見て、『恰度七時半です。——恰度可いでせう。授業は十一時からですから。』
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
之は如何にも俗見で、ブーラール夫人にしたところで、滅多に
箝
(
は
)
めない宝石入の指輪を大事に
蔵
(
しま
)
っていた形跡があるのだから、此の小言は無理である。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
が、そう思い付いたものの、それはトランクの底深く、
蔵
(
しま
)
ってあるので、急場の今は、何の
援
(
たす
)
けにもならなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
本当に今まで永い間
蔵
(
しま
)
つて置いてよかつた。飛んでもない恥さらしをする事であつた。あの蕪雑な「雲母集」でつくづく私は懲り果ててゐたのであつた。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
新しい倉庫の建て増しまでおさせになって、それへは法皇がこの宮へ無数に御分配になった貴重品の今まで六条院にあったのを移してお
蔵
(
しま
)
わせになった。
源氏物語:38 鈴虫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
左近方には四郎左衛門が捕はれて死んだ後に、此徳利が
紫縮緬
(
むらさきちりめん
)
の
袱紗
(
ふくさ
)
に包んで、大切に
蔵
(
しま
)
つてあつたさうである。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
あれほど彼自身がもうもうこれは一文だつて無駄使ひは出来ないのだからと内ぶところに堅く
蔵
(
しま
)
つて、ぽんぽんと叩いてなど居たのに——つい例の病ひで
老猾抄
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
そして花梨のステッキは、玄関の傘戸棚のなかに
蔵
(
しま
)
ったままになっているのだが、井伏さんはふと思い出したように、この旅にこのステッキを持って出る。
井伏鱒二によせて
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
吸殻は黄色く燻ぶっていた。煙草に魔睡薬が仕込んであるに違いない。私はそれを自分のポケットへ
蔵
(
しま
)
った。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
貴方
(
あなた
)
どうぞお
嵌
(
は
)
めなすって、そうして貴方の指環を
私
(
わたくし
)
にくださいまし、あなた
若
(
も
)
し嵌めるのがお
厭
(
い
)
やなら
蔵
(
しま
)
って置いてくださいまし、私は何も知りませんが
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
たとへば酢とか油とか脂肪とか云ふやうな錆の出来るものと
接触
(
ふれ
)
させずに、
蔵
(
しま
)
つておかなければならない。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
簪
(
かんざし
)
をつまみ出し、香水の瓶をちよつと鼻の先に当てて匂ひを嗅ぐと、礼も言はずに戸棚の中に
蔵
(
しま
)
つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
いつでしたか、いちばん後まで残り、バック台を
蔵
(
しま
)
ってからも、皆、降りて行ってしまうまで海を眺めるふりをし、誰もいなくなってから、体育室に入ってみました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
いらい何十年もつい訪うていなかったのだ。主人の手紙によると私が書いた「三佳亭」の額やら色紙が遺墨として今も
蔵
(
しま
)
ってあるという。遺墨とあるには私も笑った。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真白な大理石の可愛らしい、美しい墓石もちやんと準備が出来てゐる、墓に関してのすべての遺言状も何遍となく浄書し直して、自分の文庫の中に丁寧に
蔵
(
しま
)
はれてある。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
その悶えは苦しいと同時に甘かった。たゞ何となく、大切に
蔵
(
しま
)
って置きたいようなものであった。
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
動物的の愛なんぞは何処かの隅に
窃
(
そっ
)
と
蔵
(
しま
)
って置き、例の霊性の愛とかいうものを
担
(
かつ
)
ぎ
出
(
だし
)
て来て、薄気味悪い上眼を遣って、天から
振垂
(
ぶらさが
)
った
曖昧
(
あやふや
)
な理想の玉を
睨
(
なが
)
めながら
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
焼捨てるのは勿体ないし、唯
蔵
(
しま
)
つて置くのも惜しい、世間へ出して差支の無いものなら出したい、斯ういふ妹からの頼みで、自分等は順にそれを読んで見ることに成つた。
一葉の日記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
蔵
常用漢字
小6
部首:⾋
15画
“蔵”を含む語句
土蔵
秘蔵
西蔵
蔵匿
武蔵
虚空蔵
家蔵
蔵人
大蔵
御蔵
石地蔵
腹蔵
蔵人所
酒蔵
蔵人頭
店蔵
土蔵造
仲蔵
貯蔵
西蔵犬
...