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落魄
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らくはく
ふりがな文庫
“
落魄
(
らくはく
)” の例文
何でも
睾丸
(
きんたま
)
にシラミが湧いたから剃るのだ……といったような事を話していたから、余程、
落魄
(
らくはく
)
して帰って来たものであったらしい。
父杉山茂丸を語る
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
軽侮しているんだろう、おれの
落魄
(
らくはく
)
したざまが
可笑
(
おか
)
しいんだろう、それならなぜ
軽蔑
(
けいべつ
)
しないんだ、どうして笑わないんだ、どうしてだ
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
岸本は七日ばかりもこの旅の人を自分の許に
逗留
(
とうりゅう
)
させて置いた。その七日の後には、この
落魄
(
らくはく
)
した太一の父親を救おうと決心した。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
落魄
(
らくはく
)
して、最後に一旗という資本がないので、心まで淋しくなり、蝶吉の母に迫って、その
落籍
(
ひか
)
しただけの金員耳を揃えて返せという。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これ
迄
(
まで
)
は自宅で療養していたが、この時は父が死亡して
落魄
(
らくはく
)
の折だから三等患者として入院し、更に又公費患者に移されていた。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
落魄
(
らくはく
)
して漁民となったのだといわれているが、彼自身は「片海の
石中
(
いそなか
)
の賤民が子」とか、「片海の
海人
(
あま
)
が子也」とかいっている。
学生と先哲:――予言僧日蓮――
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
吁
(
あゝ
)
、当年豪雄の戦士、官軍を悩まし奥州の気運を支へたりし快男子、今は即ち
落魄
(
らくはく
)
して主従唯だ二個、異境に
彷徨
(
はうくわう
)
して漁童の嘲罵に
遭
(
あ
)
ふ。
客居偶録
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
悲壮な覚悟があるように見える。世に
豪奢
(
ごうしゃ
)
を誇った香以が、晩年
落魄
(
らくはく
)
の感慨を托するに
破芭蕉
(
やればしょう
)
を
択
(
えら
)
んだのははなはだ妙である。
枯葉の記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
聞けば男の生まれは新潟県だという。異郷の果てに
落魄
(
らくはく
)
の身の二人である。話合ううちに、しみじみとお互いに心のふれ合うものがあった。
私の履歴書:――放浪の末、段ボールを思いつく
(新字新仮名)
/
井上貞治郎
、
日本経済新聞社
(著)
それとも彼等は彼のこうまで
落魄
(
らくはく
)
している境遇へつけこんで、同盟して彼一人を奈落の底へ突きおとすのであるかも知れない。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
八歳の時に足利を出て、通りの郵便局の前の
小路
(
こうじ
)
の奥に一家はその
落魄
(
らくはく
)
の身を落ちつけた。その小路はかれにとっていろいろな
追憶
(
おもいで
)
がある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私はその場合、先ず朝鮮へ行っていた弟としての私が、内地へ舞い戻って来たと想像して、心持から、身なりから、
落魄
(
らくはく
)
した弟らしく装います。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼は自分の肉体に、あらゆる
醜穢
(
しゅうえ
)
を塗り付けた後、自分の心の状態が如何に
落魄
(
らくはく
)
するだろうと考えて、ぞっと
身振
(
みぶるい
)
をした。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一瞬の後、
落魄
(
らくはく
)
の小説家東野南次は、その浅ましい死骸を、裏銀座の街上に横たえる運命でした。真に一瞬の後、——が
奇談クラブ〔戦後版〕:05 代作恋文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
また公権をさえ
褫奪
(
ちだつ
)
して彼をして官途に
就
(
つ
)
く
能
(
あた
)
わざらしめ、結局
落魄
(
らくはく
)
して郷里に帰るの
外
(
ほか
)
に
途
(
みち
)
なからしめんと企てたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
しかも今や
落魄
(
らくはく
)
の極にあるこの不幸なるスペイン人の上に、願わくは閣下のキリスト教徒たる感情を向けたまい、慈悲の
一瞥
(
いちべつ
)
を投ぜられんことを。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
全体に
門付
(
かどつ
)
け
物貰
(
ものもら
)
いの
輩
(
やから
)
を、すべて人間の
落魄
(
らくはく
)
した姿のように考えることは、やや一方に偏した
観方
(
みかた
)
なのかも知れない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
わずかに、
邑久郡
(
おうくのこおり
)
の
今木
(
いまき
)
と、熊山の山間に、旧領の一部と、少数な部下を持っているにすぎない
落魄
(
らくはく
)
の武士だった。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
落魄
(
らくはく
)
の感じをいたましく漂わした肩を、さよう、その落魄感を大事に骨の上に載せていて、落してはならないとしてでもいるように微動だにさせず
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
駒井甚三郎は
落魄
(
らくはく
)
したけれども、まだ大事を為すの準備として、相当の資金がいずれにか蓄えてあるはずである。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところで私自身は、他人から見たら
蕭条
(
しょうじょう
)
たる
落魄
(
らくはく
)
の
一老爺
(
いちろうや
)
、気の毒にも憐むべき失意不遇の逆境人と映じているだろうが、自分では必ずしもそう観念しては居ない。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
周囲にめぐらした
土塀
(
どべい
)
も崩れ、山門も傾き、そこに
蔦
(
つた
)
がからみついて
蒼然
(
そうぜん
)
たる
落魄
(
らくはく
)
の有様である。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
ひょっとしたら十何年目のカテリイヌ——恐らく
落魄
(
らくはく
)
しているだろうが——にめぐり
遇
(
あ
)
っていつか自分を
順
(
ママ
)
致して奴隷のようにして仕舞った巴里に対する憎みを語りたい。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それが
一旦
(
いつたん
)
兄さんがつまらない心を起して返り討ちにあつてから、
落魄
(
らくはく
)
の
一途
(
いちづ
)
を
辿
(
たど
)
りはじめた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
ソロモン
落魄
(
らくはく
)
して、乞食し「説法者たるわれはかつてエルサレムでイスラエルに王たりき」と言い続く、たまたま会議中の師父輩が聞き付けて、
阿房
(
あほ
)
の言う事は時々変るに
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
これでは
落魄
(
らくはく
)
と云ってもよいような
細々
(
ほそぼそ
)
とした暮しをしていたとしか思われなかったが、それと云うのも、故人が芸術的良心に忠実で、昔からの舞の型を
崩
(
くず
)
すことを極端に
嫌
(
きら
)
い
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
こんな
落魄
(
らくはく
)
したような姿をつやに見せるのが
堪
(
た
)
えがたい事のように思われ出したのだ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「うう、それぢや君は何か、僕のかうして
落魄
(
らくはく
)
してをるのを見て
気毒
(
きのどく
)
と思ふのか」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
水上氏は
落魄
(
らくはく
)
し、ひどい恰好で日本へ帰ってきて、恵那の奥の郷里に落着いた……ところで、そのへんの谷のようすは、水上氏の目には、アメリカで見たウラニウムの出る谷々の形相と
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
次第に
落魄
(
らくはく
)
して近頃はおれの部屋からまだ二階上にある屋根裏に移つて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
うたた
脾肉
(
ひにく
)
の
歎
(
たん
)
に耐えないのであったが、これも身から出た
錆
(
さび
)
と思えば、
落魄
(
らくはく
)
の身の誰を怨まん者もなく、
南京虫
(
なんきんむし
)
と
虱
(
しらみ
)
に悩まされ、濁酒と唐辛子を
舐
(
な
)
めずりながら、
温突
(
おんどる
)
から温突へと放浪した。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
夜更けて帰って来て、なにしろ家がせまいから、
明朝
(
あした
)
また早くゆくといってくつろいでいた。その翌日いったらもう死者は家にいなかった。
落魄
(
らくはく
)
御直参連一党がつらなって帰って来てつぶやいた。
旧聞日本橋:10 勝川花菊の一生
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
病院を出て家に戻って来るまでに、あたりは見る見るうちに薄暗くなってゆき、それが
落魄
(
らくはく
)
のおもいをそそるのでもあった。薄暗い病院の廊下から表玄関へ出ると、パッと向うの空は明るかった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼はそれを見ながら、
落魄
(
らくはく
)
した男の姿を感じた。その男の子供に対する愛を感じた。そしてその子供が幼い心にも、彼らの諦めなければならない運命のことを知っているような気がしてならなかった。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
落魄
(
らくはく
)
、といったようなところはみじんも見えない若さでした。
右門捕物帖:38 やまがら美人影絵
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
お前は
落魄
(
らくはく
)
した給仕人だ。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丑松は敬之進のことを思出して、つく/″\
彼
(
あ
)
の
落魄
(
らくはく
)
の
生涯
(
しやうがい
)
を憐むと同時に、
亦
(
ま
)
た
斯
(
こ
)
の人を注意して見るといふ気にも成つたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
家系の
落魄
(
らくはく
)
に対する卑下感から、その結婚を過大に考えすぎたらしいし、それだけ真沙への愛情も激しくいちずになったようだ。
柘榴
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
生計的に
落魄
(
らくはく
)
し、世間的に不問に
附
(
ふ
)
されていることは悲劇ではない。自分が自分の魂を握り得ぬこと、これほどの
虚
(
むな
)
しさ馬鹿さ
惨
(
みじ
)
めさがある筈はない。
いずこへ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
われわれ武門の
端
(
はし
)
くれだった者さえ、弱肉強食の
巷
(
ちまた
)
には
剋
(
か
)
てず、
落魄
(
らくはく
)
、
愍然
(
びんぜん
)
たる境界に追いやられ、いまは争闘の世に、まったく思い
断
(
た
)
っているのに。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人は
落魄
(
らくはく
)
して、窮困の中に年をとって行くと、まず先に笑うことから忘れて行くものかも知れない。
草紅葉
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今こそ
落魄
(
らくはく
)
はしているが、後来必ずや名を成すのは、あんな人だろうなんぞと米友は考えました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その後、私はそのお好み焼屋の、これまたなんというか、——何か
落魄
(
らくはく
)
的な
雰囲気
(
ふんいき
)
に
惹
(
ひ
)
かれて足
繁
(
しげ
)
く通うようになったが、行くたびに、ミーちゃんこと美佐子は大概いた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
アア妾もまた不幸
落魄
(
らくはく
)
の身なり、不徳不義なる日本紳士の
中
(
うち
)
に立ち交らんよりは、知らぬ他郷こそ恋しけれといいけるに、彼は
忽
(
たちま
)
ち
活々
(
いきいき
)
しく、さらば自分と同行するの意はなきや
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
明治二十四、五年の間予西インド諸島にあり
落魄
(
らくはく
)
して象芸師につき廻った。その時象が些細な蟹や鼠を見て
太
(
いた
)
く不安を感ずるを
睹
(
み
)
た。その
後
(
のち
)
『五雑俎』に象は鼠を
畏
(
おそ
)
るとあるを読んだ。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
落魄
(
らくはく
)
している顔付きを思い出すに連れて、十円もする帽子を大得意で帰って来る自分の心理状態が恥かしくて、たまらなくなりましたから、汽車が博多駅に着く前に折畳んで
懐
(
ふところ
)
に入れて
父杉山茂丸を語る
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして服装からも、様子からも、
落魄
(
らくはく
)
というような一種の気分が漂っていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一旦嫁いだ女たちが後に
謀叛人
(
むほんにん
)
の子なるが故に夫に
疎
(
うと
)
まれ、
落魄
(
らくはく
)
した結果であろうか、それとも関ヶ原の当時まだ結婚期に達していなかった妹たちだけが、漂泊の憂き目を見たのであろうか。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
貧しい職人
体
(
てい
)
の男も居る。中には
茫然
(
ぼんやり
)
と眺め入って、どうしてその日の
夕飯
(
ゆうめし
)
にありつこうと案じ
煩
(
わずら
)
うような
落魄
(
らくはく
)
した人間も居る。
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
安宿の客たちも(例外はあるが)純朴で人情に
篤
(
あつ
)
く、またお互いが
落魄
(
らくはく
)
しているという共通の
劬
(
いたわ
)
りもあって、いかにも気易くつきあうことができた。
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“落魄”の意味
《名詞》
落ちぶれること。零落
(出典:Wiktionary)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
魄
漢検1級
部首:⿁
15画
“落魄”で始まる語句
落魄居
落魄公卿
落魄流寓