しや)” の例文
がいむらさきしやべて四十里しじふり歩障ほしやうつくれば、そうにしきへてこれ五十里ごじふりる。武帝ぶていしうとちからへて、まけるなとて、珊瑚樹さんごじゆたか二尺にしやくなるをたまふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、白い切り立てのしやで特別仕立のうはぱりのやうなものをこしらへ、それを着込んでにこにこもので王献之のとこへ着て往つた。王献之は熟々つく/″\それを見てゐたが
半紅半碧のしやは肩より胸に垂れたり。黒髮を束ねたる紐の飾は珍らしき古代の寶石なるべし。傍に、窓の方に寄りて坐りたるは、暗褐色の粗服したるおうななり。
しかし東京の大火の煙は田端たばたの空さへにごらせてゐる。野口君もけふは元禄袖げんろくそでしやの羽織などは着用してゐない。なんだか火事頭巾づきんの如きものに雲龍うんりゆうさしと云ふ出立いでたちである。
彼等かれらうして時間じかんむなしくつひやしてはとほちかひぐらしこゑが一せいいそがしく各自かくじみゝさわがして、おほきなしやおほうたかとおもやううす陰翳かげ世間せけんつゝむと彼等かれらあわてゝみな家路いへぢく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しやの衣服のためか妙に細つそりとして、まぶしい庭を背にして縁近くにかしこまつてゐた。——疲れを隠すことの出来ないそのほゝと肩先に、わたしは自分の影を見たやうに思つた。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
界の襖に青のしやすかしが入つてゐて、それを透してその場の光景もおぼろげに窺はれたが、病褥の上で大儀さうに脇息に支へてゐた痩せた上体を前に乗り出して、頬のけた、色沢の悪るい
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
つかさんのピニヨレは何時いつも白いしやで髪から首筋を包んで居てラフワエルのいた聖母像を想はしめる優しい面立おもだちの女だが、娘はおかあさん程美しくは無いけれど気立きだては更に一層素直であるらしい。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
大方おほかた母上が若い時に着た衣装であらう。撫子なでしこの裾模様をば肉筆でいたしや帷子かたびらが一枚風にゆられながら下つてゐるあたりの縁先に、自分は明治の初年に出版された草双紙の種類を沢山に見付け出した。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しやとばりしなめきかかげ、かがやかに
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
それは、しやの服なんかを着込んで
眼うつせば、しやの服がくれ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
しや薄衣うすぎぬきなでて
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
たちま心着こゝろづくと、おなところばかりではない。縁側えんがはから、まちはゞ一杯いつぱいに、あをしやに、眞紅しんくあか薄樺うすかばかすりかしたやうに、一面いちめんんで、びつゝ、すら/\としてく。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
門一ぱいに当つてゐる、油のやうな夕日の光の中に、老人のかぶつたしやの帽子や、土耳古トルコの女の金の耳環や、白馬に飾つた色糸の手綱たづなが、絶えず流れて行く容子ようすは、まるで画のやうな美しさです。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私の眼には仏壇の扉の開かれて居る様も見えた。中扉の青いしやを透して一番奥の掛軸の阿弥陀如来の像や、その前に供へた御飯や、花瓶や、亀の上に鶴の乗つて居る蝋燭立てや、輪燈りんとうやが眼に入つた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
明るい硝子棚、しや日被ひよけ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)