つつ)” の例文
筆がしらでも中軸なかじくでも一味についた連名の、昼鳶がお尻をつつく、駿河台の水車、水からくりの姉さんが、ここにも一人と、飛込もうか。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、花簪はなかんざしが傾いたり、だらりの帯が動いたり、舞扇まひあふぎが光つたりして、はなはだ綺麗きれいだつたから、かもロオスをつつつきながら、面白がて眺めてゐた。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ワアワアワアワアとはちの巣をつついたような騒ぎのうちに、船はたちまちゴースタンして七千トンの惰力をヤット喰止くいとめながら沖へ離れた。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『来ないのは来ないでせうなア。』と、校長は独語ひとりごとの様に意味のないことを言つて、つくゑの上の手焙てあぶりの火を、煙管でつついてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
家鴨あひるくちばしつつかれたり、牝鶏めんどりはねでぶたれたり、鳥番とりばんおんないかけられるなんかより、どんなにいいかしれやしない。
漁史は、錨綱を繰り放つ役、船頭は戕牁かしつつく役にて、前々夜、のお茶屋釣聖ちょうせいのかかりという、きりっぷの大巻きに鈎尖はりさきの漂う加減に舟を停めぬ。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
いつも黙って、ベンチの片隅に腰をかけていると他の生徒が後方うしろから来て、耳を引ぱったり、脊中をつついたり、しまいには頭を叩いて逃げるような悪戯いたずらをする。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この機密書類のホンの一部分を公開しただけでも、天下は驚倒して蜂の巣をつついたように騒ぎ出すだろう。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
たちまち米艦隊の真上には、蜜蜂みつばちの巣をつついたように、二千台の戦闘、偵察、攻撃、爆撃のあらゆる種類を集めた飛行機が一斉に飛び上った。天日は俄かに暗くなった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
靴の先でチョイチョイつついていたが、二人が目を見合せて、「こりゃ変だぞ、」という表情になったかと思うと、その一人が馬鹿に勇敢に、いきなりバケツの中へ手を突込むと、その生腕を
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つつかれ出すと参木には酔いがだんだん廻って来た。彼はいった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
あの中がみんな謡本さ、可恐おそろしい。……その他一同、十重二十重とえはたえに取囲んで、ここを一つ、と節をつついて、浮かれて謡出すのさえあるんです。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女は吾妻あづま下駄をつつかけると、心配さうに店へ捜しに来た。ぼんやりした小僧もやむを得ず罐詰めの間などを覗いて見てゐる。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いいえそうでありません、私は何にもせなかったのに、私を小山さんが、つついたのです。」
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
公儀おかみへは遠乗りの途中暴れ馬が殿を乗せたまま雑木林に飛込み、木の枝で眼をつつかれた——と届出ているが、町人のもてあそぶ楊弓の矢で眼を一つつぶされては、何としても諦められない。
淡い焔がメラ/\と立つかと見ると、直ぐ消えて了ふ。と、渠は不揃な火箸を取つて、白くなつてちひさく残つてゐる其灰をつつく。突いて、突いて、そして上げた顔は平然けろりとしてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
弦吾はひじでチョイと同志帆立の脇腹わきばらつついた。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
掏摸の指でつついても、倒れるような石垣や、蟻で崩れるほり穿って、河野の旗を立てていたって、はじまらねえ話じゃねえか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いきなり奈良茂ならもの側にあつた鮫鞘さめざや脇差わきざしひつこぬいて、ずぶりと向うの胸へつつこんだんだ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『怎うしてだと! ホヽヽヽ。』と、持つてゐるほんで信吾の膝をつつく。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お嬢さんがすがりついて留めてたがね。へッ被成なさるもんだ、あの爺をかばう位なら、おいら頬辺ほっぺたぐらい指でつついてくれるがい、と其奴がしゃくに障ったからよ。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悪戯児いたずらっこ悪関係こだわりから、火の番の立話、小紅屋へ寄ったまで、ちょっと時間が取れている。昼間近所へ振売だ、と云う。そんなお尻は鳶のつつくが落だ、と云う。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今なお座中によこたわって、墨色もあざやかに、五千疋とある奉書包に集めた瞳を、人指指のさきで三方へつつき廻し
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のべつに饒舌る……黄色い歯の上下に動くのと、猪首いくびを巾着帽子のふちつつくのと同時なんです。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白魚鍋しらおなべでもつつかれてみろ、畜生! 吹雪に倒るればといって、黒塀の描割かきわりの下が通れるものか。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若い同士耳打をするのがあり、尻をつついて促すのがあり、中には耳を引張ひっぱるのがある。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しゃがんで、力なげに一服吸って三服目をはたいた、駄六張だろくばり真鍮しんちゅう煙管きせる雁首がんくびをかえして、つついて火を寄せて、二ツさげ煙草入たばこいれにコツンと指し、手拭てぬぐいと一所にぐいと三尺に挟んで立上り
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
柳沢はななめ卓子テイブルもたれて、小刀ナイフの柄で紅茶に和した角砂糖をつつきながら
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
コツコツ、炭を火箸でつついて見たっけ、はっとめて、目を一つまたたいて
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鶴とは申せど、尻を振って泥鰌どじょう追懸おっかける容体などは、余り喝采やんやとは参らぬ図だ。誰も誰も、くらうためには、品も威も下げると思え。さまでにして、手に入れる餌食だ。つつくとなれば会釈はない。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つるとは申せど、尻を振つて泥鰌どじょう追懸おっかける容体ようだいなどは、余り喝采やんやとは参らぬ図だ。誰も誰も、くらふためには、ひんも威も下げると思へ。までにして、手に入れる餌食だ。つつくと成れば会釈はない。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山手やまてから黒煙くろけぶりを揚げて、羽蟻はありのやうに渦巻いて来た、黒人くろんぼやり石突いしづきで、浜に倒れて、呻吟うめき悩む一人々々が、胴、腹、腰、背、コツ/\とつつかれて、生死いきしにためされながら、抵抗てむかいも成らずはだかにされて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と横のめりに平四郎、煙管の雁首がんくび脾腹ひばらつついて、身悶みもだえして
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)