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稀
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たま
ふりがな文庫
“
稀
(
たま
)” の例文
宗助
(
そうすけ
)
にも
御米
(
およね
)
にも
思
(
おも
)
ひ
掛
(
が
)
けない
程
(
ほど
)
稀
(
たま
)
な
客
(
きやく
)
なので、
二人
(
ふたり
)
とも
何
(
なに
)
か
用
(
よう
)
があつての
訪問
(
はうもん
)
だらうと
推
(
すゐ
)
したが、
果
(
はた
)
して
小六
(
ころく
)
に
關
(
くわん
)
する
件
(
けん
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「Sさんには、この節は
稀
(
たま
)
にしか逢わない」と三吉は嘆息しながら、「何となく友達の遠く成ったのは、悲しいようなものだネ」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
稀
(
たま
)
には、せんべいや
蕎麦
(
そば
)
の
振舞
(
ふるまい
)
までしているほどなのに、その好意に対しても、ここで取っ組みを初めるなぞは、不届き至極だ。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
生来の
倹約家
(
しまつや
)
だが、実際、僅の手間では、食って行くのが、関の山で、
稀
(
たま
)
に活動か寄席へ出かけるより外、
娯楽
(
たのしみ
)
は
享
(
と
)
れ無い。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
「苦労の多い丈け楽みさ。冗談は兎に角、この寸法を一つ実地問題にしようじゃないか?
稀
(
たま
)
に来たんだから宜いだろう?」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
おさんちゃんだって
稀
(
たま
)
には屈託な顔もするだろうし、溜息だってつくだろうよ。それを一々噂の種にする奴があるもんか。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
道理で二三日前から、
稀
(
たま
)
に会ふ彼の両親や細君の様子が何だか妙だつた! と自分は気づいて、てれた。——彼は続けた。
夏ちかきころ
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
兼「私の方からは、必ず手紙で
何時
(
いつ
)
幾日
(
いくか
)
に何うすると、ちゃんと極めて上げるのに、
稀
(
たま
)
に手紙の返辞の一本ぐらいよこしても
宜
(
い
)
いじゃア無いか」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
此の
稀
(
たま
)
の虫干しの日に、遂に私は粗相をしました。うっかり何かにぶつけて、父の大切にしている赤い絵模様の
水差
(
みずさし
)
の
握手
(
にぎりて
)
を折って了ったのでした。
虫干し
(新字新仮名)
/
鷹野つぎ
(著)
ところで世中へ出てみるとまるで娘の時分に思った事と反対で海でも無風無波という日は
滅多
(
めった
)
にありません。
稀
(
たま
)
にあれば暴風雨の起る前兆位なものです。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
稀
(
たま
)
に聞いてくれる者があっても、人を馬鹿にするなと云って
憤
(
おこ
)
り出したり……ニヤニヤ冷笑しながら手を振って立ち去ったり……胸が悪くなったと云って
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そりゃあね、
稀
(
たま
)
には旦那のような優しい親切なお方も有りますけど、どうせ
私
(
あたし
)
のような
者
(
もん
)
の相手になる者ですもの、
皆
(
みんな
)
其様
(
そん
)
な薄情な碌でなしばかしですわ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
稀
(
たま
)
に田舎に来ると実に
好
(
い
)
いなあと思う。東京なんかに住まないで、こう云う田舎に住んで見たいなあと思う。
贋紙幣事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
と云ふのは、自分が時々善からぬ事をしてゐるのを、渠自身さへ
稀
(
たま
)
には思返して淺間しいと思つて居たので。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そのうへに叔母さんは、自分の大好きな慰みを止めてしまつて、
狩猟
(
かり
)
にも出かけなくなつた。
稀
(
たま
)
に出かけることがあつても、鷓鴣と間違へて烏を射つたりした。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:04 イワン・フョードロヸッチ・シュポーニカとその叔母
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
村の寄合などに
稀
(
たま
)
に出て、私は諸君の頭の白くなったに
毎々
(
まいまい
)
驚かされます。驚く私自身が諸君に驚かるゝ程
齢
(
とし
)
をとりました。全く十七年は短い月日でありません。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「こうまであぶれるとわかっていりゃあ、あっしも店を締まって押し出すんだった。これでも生物ですからね、
稀
(
たま
)
にゃあ商売を忘れて騒がねえとやりきれませんや。」
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
郭外の大勢の人々は、日曜の晴れ着をつけ、
稀
(
たま
)
には郭内の者のように百合の花をさえつけて、マリーニーの大小の広場に散らかり、輪遊びをしたり、木馬に乗って回ったりしていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
照子は、ごく
稀
(
たま
)
に、麹町の里にふらりと来ることもあつた。濱町にゐたのではわからないが、さうして麹町の家に来てみると、彼女のふとした身じろぎからも、薬の臭ひがただよつた。
地獄
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
リード夫人自身も、極く
稀
(
たま
)
にやつて來て、
衣裝箪笥
(
いしやうだんす
)
の中の、ある祕密な
抽斗
(
ひきだし
)
の中のものを調べるだけだつた。そこには、色々な文書類や、寶石の小函や、亡夫の
小照
(
ミナチュア
)
などが收めてあつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
宗助にも御米にも思い掛けないほど
稀
(
たま
)
な客なので、二人とも何か用があっての訪問だろうと
推
(
すい
)
したが、はたして小六に関する件であった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まあ、十人が十色のことを言つて、
誹
(
けな
)
したり
謗
(
くさ
)
したりする、
稀
(
たま
)
に蓮太郎の精神を
褒
(
ほ
)
めるものが有つても、寧ろ其を肺病の
故
(
せゐ
)
にして
了
(
しま
)
つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
老親
(
としより
)
にも女房子にも、
稀
(
たま
)
には、帰って功名ばなしの一つも聞かせ、一合のお
扶持
(
ふち
)
でも御加増に逢って、歓ばせてやりたいからな
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
折角
稀
(
たま
)
に落ちて来るやつを待ち構へて口に
享
(
う
)
けて見ると、それは水ではなくて熱い酒なので情なかつた、さう思へばあの月は、色も怪しい……。
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
稀
(
たま
)
にお
帰宅
(
かえり
)
の時分を外したからって、何も女中を寄越して恥をかゝせるには当りませんわ。今夜は
家人数
(
うちにんず
)
ばかりでなく目黒の
嫂
(
あによめ
)
が来ていましたよ。
女婿
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それに
私
(
わし
)
ゃア馬が誠に
嫌
(
きれ
)
えだ、
稀
(
たま
)
には随分
小荷駄
(
こにだ
)
に
乗
(
のっ
)
かって、
草臥
(
くたびれ
)
休めに一里や二里乗る事もあるが、それでせえ嫌えだ、
矢張
(
やっぱり
)
自分で歩く方が
宜
(
い
)
いだ
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と云ふのは、自分が時々善からぬ事をしてゐるのを、渠自身さへ
稀
(
たま
)
には思返して浅間しいと思つて居たので。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
飲酒家
(
さけのみ
)
の家族は毎日お酒の
燗
(
かん
)
をしますから
稀
(
たま
)
に醤油の燗をして検査する位何の手数でもありません。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
稀
(
たま
)
には
憐
(
あわ
)
れな私の事を思い出して下さい。どうぞ、生甲斐のある人生をお送りになりますように。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
稀
(
たま
)
に、山越えの諸国担ぎ売りが宿をとるくらいのもので、もとより
浴客
(
よっきゃく
)
などはないのだから、温泉とはいっても、沢の底の奇巌のあいだに噴き出るに任せ、
溢
(
あふ
)
るるままに
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
稀
(
たま
)
には場末の色町らしい処で笠の中を覗き込んで
馬糞
(
まぐそ
)
女郎や安
芸妓
(
げいしゃ
)
たちにムゴがられて、思わず
収入
(
みいり
)
に有付いたり、そんな女どもの取なしで
田舎大尽
(
いなかだいじん
)
に酒肴を御馳走され
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
彼は散歩の時好んで小銃を持って出たが、それを使うのは
稀
(
たま
)
にしかなかった。たまたまそれを使うような時には、その射撃は当たらないということがなく、人を恐れさせるほどだった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
お蔦 嘘だと思ったらあがっといで、親分に叱られるのも
稀
(
たま
)
にゃ面白いだろう。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
「なんの、
貴方
(
あなた
)
、
稀
(
たま
)
にいらしって下すったんですもの」と相川の妻は如才なく、「どんなにか宿でも喜んでおりますんですよ」
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「お、膳が来ていたのか。酒はいらねえ。宿屋の飯にも飽きたから、
稀
(
たま
)
にゃ外で、何か美味いものでも拾い食いしてみたい」
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「おい/\、イダーリアの親爺さん、そんなふくれツ面ばかりを売物にしないで
稀
(
たま
)
には俺達と一処になつて下院議員の改善策でも謀らないかね。」
山彦の街
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
折角
稀
(
たま
)
に教会へ出れば二度と顔出しの出来ないような事が起る。そして皆が
彼
(
あ
)
の子は善くない善くないと言う。何処まで損な
生来
(
うまれつき
)
だか知れやしない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
まるで紀伊國屋の伊之助さんのお
内儀
(
かみ
)
さんのようだ、
御新造
(
ごしんぞ
)
だという噂が立ちましたから、別に買いに来る客も有りません、
稀
(
たま
)
にあっても座敷切りで
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
... 正月そうそうお金さんもとんだ目に
逢
(
あ
)
いなすったね」胃吉「マア何にしろ今日はお互に遊びたいものだ。私たちだって
稀
(
たま
)
に休息もしなければ根気が
竭
(
つ
)
きていよいよ働けない。 ...
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ハリウッドの女優さんなんかは、
署名
(
サイン
)
係というのを何人か雇っていて、ブロマイドにサインをしてファンへ送っているそうですが萩乃のは、
稀
(
たま
)
のことだから、自分で書くのだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それはそれとして、唄も
稀
(
たま
)
にはいいが、仕事を忘れちゃいけないのう。(去る)
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
空は、仰げば目も眩む程無際限に澄み切つて、塵
一片
(
ひとつ
)
飛ばぬ日和であるが、
稀
(
たま
)
に
室外
(
そと
)
を歩いてるものは、
何
(
ど
)
れも何れも申合せた様に、心配気な、浮ばない顔色をして、
跫音
(
あしおと
)
を
偸
(
ぬす
)
んでる様だ。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「お前は
嫌
(
きら
)
いだからさ。しかし
稀
(
たま
)
には飲むといいよ。
好
(
い
)
い心持になるよ」
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯、毎日のように互いに顔を見合せていては、
稀
(
たま
)
に逢って見る年の若い人達のように、それほど激しく成長を感じないまでだ。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
こちとらなど、働いても働いても、どうしてあいつらの
真似
(
まね
)
もできねえのかしらと、
稀
(
たま
)
にゃあ、情けない気もしてきますぜ
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「兄さんはあたしの為に一緒に来たやうに思つてゐるけれど、それは反対になつてるわ、屹度自分の勉強の気分のために——
稀
(
たま
)
には別の部屋で……」
熱い風
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「こゝには次郎長というこの土地生え抜きの侠客がいましたよ。
稀
(
たま
)
に豪いものが出れば博奕打の親分と来ています」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
おむら 今更の
叱言
(
こごと
)
だけれど、おとッさんの死目にも会わず、家とは音信不通で永らくいて
稀
(
たま
)
に帰ってきて一晩たつと、もうこんな騒ぎを始めるのか、お前は他国で斬ったはったの騒ぎをして
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
実に是
邂逅
(
めぐりあひ
)
の唐突で、意外で、しかも偽りも飾りも無い心の底の
外面
(
そと
)
に
流露
(
あらは
)
れた
光景
(
ありさま
)
は、
男性
(
をとこ
)
と男性との間に
稀
(
たま
)
に見られる美しさであつた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
稀
(
たま
)
に、
安土
(
あづち
)
へ上がると、御主君までおいたわり下さるが、ふいに厚い
衾
(
ふすま
)
などに寝ると、却って寝苦しゅうて、よう眠れぬ。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
稀
漢検準1級
部首:⽲
12画
“稀”を含む語句
稀代
稀々
類稀
稀覯書
稀少
稀有
稀薄
稀人
稀塩散
稀物
稀世
古稀
稀〻
時稀
稀覯
稀品
稀覯本
稀塩酸
稀飯
古稀庵
...