私等わしら)” の例文
工風くふうの無えこともねえ、私等わしらどうせ遊んでゐるで、渡して上げずか。伊良湖なら新居へ行かずに、この先の浜へ着けりや好いだ」
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
男「何時いつけえるか知れぬが、まア、何時帰ると私等わしらに断って出た訳でえから受合えねえが、明けると大概なゝ八日ようかぐれえ帰らぬ男で」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
唯今ただいま狂人きちがいが、酒に酔って打倒ぶったおれておりましたのは……はい、あれは嘉吉と申しまして、私等わしら秋谷在の、いけずな野郎でござりましての。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、小店だと、相手が越後の国蒲原郡何村かんばらごおりなにむらの産の鼻ひしゃげか何かで、私等わしらが国さでと、未だ国訛くになまりが取れないのになる。往々にして下女にも劣る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さつしやるな小聲こごゑでもわかります先當時の役頭やくがしらを盜賊よばはたしかな證據なくては云れぬ事段々だん/\きくに九助が親類と私等わしらが名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
六十に近い七兵衛老爺じじいが手につばきして奮然とつを見ては、若い者共も黙ってはられぬ。皆口々に、「老爺じいさんは危ねえ、私等わしらが行く。」と、さえぎとどめた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何しろ私等わしらは、帳面一冊買ってやんのだって、なかなか大変なのでがすからは……ほんでも、四年生までやったのでがすげっとも、手紙一本書けねえんでがすから……。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
私等わしらしゅうとさんと気が合わなんだで、こうして別れて東京へ出て来たけれど、随分辛い辛抱もして来ましたよ。今じゃ独身ひとりの方が気楽で大変好いわね。御亭主なんぞ一生持つまいと思っているわね
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「これこれクシベシ、私等わしらは人間と違って、ごまかすようなことはしない。それだけでお前の一生に足りるのじゃ。着物か? 着物はもうちゃんとお前の体に着せてあるはずじゃ。それも、それ一枚だけで足りる筈じゃ。……さよなら」
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
それよ——矢張やつぱり……うだ——わすれもしねえ。……矢張やつぱおなじやうなことはしつけが、私等わしらにや撫子なでしこわかんねえだ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丹「うだね、男じゃア毀すかも知れねえ、私等わしらは何うも荒っぽくって、丼鉢を打毀うちこわしたり、厚ぼってえ摺鉢すりばちを落してった事もあるから、困ったものだアね」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぢやが、お前様めえさまやま先生せんせいみづ師匠ししやうふわけあひで、私等わしらにや天上界てんじやうかいのやうな東京とうきやうから、遥々はる/″\と……飛騨ひだ山家やまがまでござつたかね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私等わしらを見て盗賊どろぼうが旅人に掛ったのだと思って、鉄砲を撃って、其の玉が宇之助さんの胸へ当って、現在自分の家来けらいと知らずにあにさんが鉄砲でったと云って、おい/\泣きやんすから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
畜生ちくしょう。)といったが馬は出ないわ。びくびくとうごめいて見えるおおき鼻面はなッつらをこちらへじ向けてしきりに私等わしらが居る方を見る様子。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
禮「そいつア面白れえ、大夫が其の了簡なら私等わしらは十分に働きます」
畜生ちくしやう、)といつたがうまないわ。びく/\とうごめいてえるおほき鼻面はなツつら此方こちらけてしきり私等わしらはう様子やうす
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
神様も分らねえ、こんな、くだま野郎を労ってやらっしゃる御慈悲い深い思召おぼしめしで、何でこれ、私等わしら婆様の中に、小児こども一人授けちゃくれさっしゃらぬ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その様な生命いのちはの、殿、殿たちの方で言うげな、……やみほうけた牛、せさらぼえた馬で、私等わしらがにも役にも立たぬ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある晩、腕車くるまでお乗込み、天上ぬけにうつくしい、と評判ばかりで、私等わしらついぞお姿も見ませなんだが、下男下女どもにも口留めして、かくさしったも道理じゃよ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「新聞が邪魔になるのは私等わしらに限らぬと見える。御夫人方にも目のこぶじゃの。面倒なら停止をさそうか。」「そういたして頂きましょうか、ねえ。貴女あなた。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私等わしらが国はの、——殿、殿たちが、目の及ばぬ処、耳に聞えぬ処、心の通わぬ処、——広大な国じゃぞの。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さつせえ、かたちおなじやうな出来できだが、の、お前様めえさまふなみづれるとはらいたで、ちたいをよ、……私等わしらふなは、およいでも、ひれてたればきたやつ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「全くもちまして、娘ッをどうのこうの、私等わしらア御覧なさりやすとおり、いい年紀としでござりやす。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彫刻ほりものをする人もある、その美しいものは、私等わしらが国から、遠くゆびさ花盛はなざかりじゃ、散らすは惜しいに因って、わざと除らぬぞ!……何が、気の弱い此方こなたたちが
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えゝ、お姫様ひいさまの! うやらいままでの乞目こひめでは、一度いちど一年いちねんかゝりさうぢや。おかげ私等わしらひもじうも、だるうもけれど、肝心かんじんたすらうとふ、奥様おくさまをおさつしやれ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
姦通かな、親々の目を盗んで密会するかな、さもなけりゃ生命いのちがけでれたとか、惚れられたとかいう奴等、そして男の方は私等わしら構わんが、女どもはいずれも国色じゃで、先生難有ありがたいじゃろ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)