白玉しらたま)” の例文
「兼ちゃん。ここだよ。何ボヤボヤしているのさ。氷白玉しらたま二つ……それから、ついでに蚊遣香を買って来ておくれ。いい児だ。」
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おくでは殿様とのさま手襷掛たすきがけで、あせをダク/\ながしながら餡拵あんごしらへかなにかしてらつしやり、奥様おくさまは鼻の先を、真白まつしろにしながら白玉しらたまを丸めてるなどといふ。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
サファイアをちりばめた黄金おうごんの手箱などから、日本のまがたま、中国の白玉しらたまの美しいさいくものなど、まるで、きらめく星にかこまれたようなちんれつ室でした。
灰色の巨人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
親子おやこ三人くちおも滿足まんぞくにはまれぬなかさけへとはくおまへ無茶助むちやすけになりなさんした、おぼんだといふに昨日きのふらも小僧こぞうには白玉しらたま一つこしらへてもべさせず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
白玉しらたまだの、氷いちごだのの匙を鳴らしながら、ことさらな反感をそれに対してもった。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
この時ちらちらと降りかかり、冬牡丹ふゆぼたん寒菊かんぎく白玉しらたま乙女椿おとめつばき咲満さきみてる上に、白雪しらゆきの橋、奥殿にかかりて玉虹ぎょっこうの如きを、はらはらと渡りづる、気高けだかく、世にも美しき媛神ひめがみの姿見ゆ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三味線しゃみせんいたり、一絃琴いちげんきんを習ったり、白玉しらたまを丸めてなべの中へ放り込んだり、寒天を煮て切溜きりだめで冷したり、すべての時間はその頃の彼に取って食う事と遊ぶ事ばかりに費やされていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは五人ごにんとも別々べつ/\で、石造皇子いしつくりのみこには天竺てんじくにあるほとけ御石みいしはち車持皇子くらもちのみこには東海とうかい蓬莱山ほうらいさんにあるぎんきんくき白玉しらたまをもつたえだ一本いつぽん阿倍あべ右大臣うだいじんには唐土もろこしにある火鼠ひねずみ皮衣かはごろも
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ざあざあいう波の音がだんだんとおくなって、青い青い水の底へ、ただもうゆめのようにはこばれて行きますと、ふと、そこらがかっとあかるくなって、白玉しらたまのようにきれいなすなみちがつづいて
浦島太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かの白玉しらたまのごとくなる腕に残せし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
白玉しらたまゆめ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
白玉しらたま
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
つらねてきしはそもいつのゆめになりて精靈棚しやうりやうだなこものうへにもおもてだちてはまつられずさりとてはなかうらめしゝつきあき草葉くさばもろ白玉しらたまつゆこたへてえかぬる
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一年あるとし夏のなかば驟雨後ゆふだちあとの月影さやかにてらして、北向きたむきの庭なる竹藪に名残なごりしづく白玉しらたまのそよ吹く風にこぼるゝ風情ふぜい、またあるまじきながめなりければ、旗野は村に酌を取らして、夜更よふくるを覚えざりき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……唄の声がこの月に、白玉しらたまの露をつないで、おどろの草もあやを織って、目にあおく映ったと思え。……伴侶つれが非常に感に打たれた。——山沢には三歳みッつになる小児がある。……里心が出て堪えられん。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まろ白玉しらたまつゆうるはしゝ、おもへばれもゆるなるを、一ツなきものにせば、何方いづくなんさわりかるべき、いとはしきはいまはじめたることならず、てんはかねてよりのねがひなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つまさせ、てふ、かたさせ、ときますなかに、くさですと、そこのやうなところに、つゆ白玉しらたまきざんでこしらへました、れう枝折戸しをりどぎんすゞに、芥子けしほどな水鷄くひなおとづれますやうに、ちん、ちん……とかすか
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)