玉蜀黍たうもろこし)” の例文
こちらには玉蜀黍たうもろこし蔓豆つるまめとが作られてゐる。後に立つてゐる栗の木の青葉の間には、甘い匂ひのする栗の花がうす黄色に咲いてゐる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
茄子で馬をつくつたり、玉蜀黍たうもろこしや胡瓜や大角豆などをいろいろな形にして集めたりして、小机の上に乗せて、七夕様に供へた。
月を見ながら (新字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
二人はまだ紅い毛並の幾分か黄金の光沢を潤ませた玉蜀黍たうもろこしの、その新鮮な薄い緑色の薄皮をはぎはぎ、無心に遊びほれてゐた。
神童の死 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その折ある地方で、皮膚はだの赤茶けた土人が、地面ぢべた蹲踞はひつくばつて玉蜀黍たうもろこし煙管パイプやにくさい煙草をすぱすぱやつてゐるのを見かけた。
玉蜀黍たうもろこしの畑が路傍に広く現はれるやうになつて来た。岸の淡竹はちくの藪の向ふには、水が青く淵をたゝへて、筏が絵のやうに静かに滑つて行つた。
草津から伊香保まで (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
而シテ土人ヨリ分与受ケタル玉蜀黍たうもろこしノミガ成功シ、コレニヨツテ僅カニ主食ヲ備ヘ、漁猟ヲ以テコレヲ補ヒツツ、辛ウジテソノ年ヲ送ルヲ得タル也
これは私が自分で玉蜀黍たうもろこしを蒔いてよく出来たから見にきてと此間いつてやつたからのことで、私の大中好だいなかよしの人たち故、日和下駄ひよりげた一件は一寸ちよつと忘れてしまひ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
彼等かれら玉蜀黍たうもろこしがざわ/\とめうこゝろさわがせて、花粉くわふんにほひがさらこゝろあるもの衝動そゝはたけあひだくとては
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
湖岸の平地には、果樹が植ゑられ、玉蜀黍たうもろこし、落花生、甘藷などがつくられてゐます。野生の木からも、油や果実がとれ、谿谷の大木は丸木舟の材料になります。
アフリカのスタンレー (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
もと大きな物置藏のあつた跡の芋畑の一葉一葉にも殘らずその青やかなかげは流れてゐて、芋の葉の廣いのや畑の縁に立ち並んでゐる玉蜀黍たうもろこしの葉の粗く長いのが
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
小屋の天井にのぼった人たちは、器械の上の方からどんどん乾いた玉蜀黍たうもろこしをはふり込みました。
耕耘部の時計 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
静かに立ちてあれば、わがそばなる桑の葉、玉蜀黍たうもろこしの葉は、月光げつくわうを浴びて青光あおびかりに光り、棕櫚しゆろはさや/\と月にさゝやく。虫のしげき草を踏めば、月影つきかげ爪先つまさきに散り行く。露のこぼるゝなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
をぢは我を抱きおろして、例の大部屋の側なる狹き一間につれゆき、一隅に玉蜀黍たうもろこしさや敷きたるを指し示し、あれこそ汝が臥床ふしどなれ、さきには善き檸檬水呑ませたれば、まだ喉も乾かざるべく
いへうしろ玉蜀黍たうもろこしはたけに吹き渡る風のひゞきが夜なぞは折々をり/\雨かとあやまたれた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
唐臼からうすを踏むやうな大跛足おほちんばで、澁紙色の顏には、左の頬からびんへかけて、大燒痕おほやけどの引つつりがある上、髮は玉蜀黍たうもろこしの毛のやうな女——、年こそ三十前後ですが、これは又あまりに痛々しい不容貌きりやうです。
両側に藤豆と玉蜀黍たうもろこしとが
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
玉蜀黍たうもろこしの焼くるにほひよ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
初秋しよしうかぜ吊放つりはなしの蚊帳かやすそをさら/\といて、とうから玉蜀黍たうもろこしかまどはひなかでぱり/\と威勢ゐせいよくえる麥藁むぎわらかれて、からがそつちにもこつちにもてられる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
むね茅葺かやぶき屋根と一つの小さい白壁造の土蔵とがあつて、其後にはけやきの十年ほどつたまばらな林、その周囲には、蕎麦そばや、胡瓜きうり唐瓜たうなすや、玉蜀黍たうもろこしなどを植ゑた畠、なほ近づくと
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
その気の毒なそらか、すきとほる風か、それともうしろの畑のへりに立って、玉蜀黍たうもろこしのやうな赤髪を、ぱちゃぱちゃした小さなはだしの子どもか誰か、とにかくう歌ってゐます。
葡萄水 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「はい、松でも、桜でも、それとも玉蜀黍たうもろこしの樹でも一向差支ありません。」と客は平気な顔をして言つた。「さうして、その島の向うに初日の出の見えるところをいて戴きたいのです。」
考へるうちにフト思ひついたことが有つて、手をました、さうだ/\、さうしよう、此葦洲よしずと此朝顔、これを上へはして丁度よい涼み場になる、玉蜀黍たうもろこし畑によく見えるこゝへと独りで合点した
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
玉蜀黍たうもろこしかがよふ中にうつら来てしばらく光り誰か消えつも (原作)
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、おかみさんは裏の玉蜀黍たうもろこしのところに立つてさう言はれた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
いたところはたけ玉蜀黍たうもろこしあひだからもさ/\とあかいて、おほきながざわ/\とひとこゝろさわがすやうると、男女なんによむれ霖雨りんうあと繁茂はんもしたはやし下草したぐさぎすました草刈鎌くさかりがまれる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
四辺あたりはしんとして、しつとりとして、折々何とも形容の出来ない涼しい好い風が、がさ/\と前の玉蜀黍たうもろこしの大きな葉を動かすばかり、いつも聞えるといふ虫の声さへ今宵こよひうしてか音を絶つた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ひえ真黒まつくろ、真黒、くろんぼ、玉蜀黍たうもろこしや赤髯、赤髯毛唐人が股くら毛。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉蜀黍たうもろこしがいつの間にかあんなに高くなつた。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
玉蜀黍たうもろこし七本9・19(夕)
そよかぜに子供が遊んでゐる玉蜀黍たうもろこしはそばに真紅まつかな毛を揺りてゐる
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ここよりも輝りきらめけるなりここよりも向うの山の玉蜀黍たうもろこし
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉蜀黍たうもろこしかがよふ中にうつら来てしばらくはゐしか誰か去りたり
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かれよりも輝りきらめけるなり彼よりもかの上の高き玉蜀黍たうもろこし
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉蜀黍たうもろこし輝り極まれば言葉なくそがひに息する人の恋しさ
真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
太陽は枯草のほめきに、玉蜀黍たうもろこしの風味に
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉蜀黍たうもろこしを噛みしむる、收穫とりいれの日の
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
玉蜀黍たうもろこしとまれば玉蜀黍たうもろこしうつる。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)