)” の例文
お前のからだをかしてやるよ——あたしは、お前が、どんな人達を、敵としてつけ狙っているか、ちゃあんと知っているのだからね。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
まれに、きわめてまれに、天のほのおを取って来てこの境界のガラス板をすっかりかしてしまう人がある。(大正九年五月、渋柿)
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
次第にそれが郷愁のなかにけ込み、周囲との触れ合いで時々起こるしこりのようなかたい気持が、何から来るのか自分にもわからなかった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その東北の方からけた銅の汁をからだ中にかぶったやうに朝日をいっぱいに浴びて土神がゆっくりゆっくりやって来ました。
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
そのなまめかしさと申すものは、暖かに流れる蝋燭よりさきに、見るものの身が泥になって、けるのでございます。忘れません。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
衆口は金をもかすたとえに洩れず、それがいかにも秘密箱らしく、また、真をなして語りつたえられているから怖ろしい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうです。さらに変なことというのは、軍艦のほばしらが——これは鋼鉄でできているんですよ。それが一部けて、あめのように曲っているんです」
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「海賊のコルサリアス」と題するくだんのモロッコ従軍歌が、いま糖蜜のようなイベリヤ半島の烈日にけて爆発している——AA! 闘牛日のMADRID!
料理場には火がおこされて、片口やさじやフォークなどすべて居酒屋にある錫製すずせいのものが、弾型の中でかされていた。その片手間に人々は酒を飲んだ。
しかし、彼のおろかさから来たわざわいのすべてをもと通りにしてくれる筈の、その水は、マイダスにとってはかした金の海よりも貴かったのです。
そのとき、きさき大事だいじにされた、数々かずかず宝石ほうせきをごらんになって、このあお宝石ほうせきくだいて、てつといっしょにかして、かたちをなくしてしまおうとおかんがえなされたのです。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鎧橋よろひばしに出づ。町の片側は火事なり。そのかはに面せるに顔、焼くるかと思ふほど熱かりし由。又何か落つると思へば、電線をおほへる鉛管えんかん火熱くわねつの為にけ落つるなり。
およそ四百三十年の期間であった。治承四年の冬、平重衡たいらのしげひらの兵火によって伽藍がらんの大部分が焼失したことは周知のところであろう。仏頭もむろんちてしまった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
しかしわかあまさんは、眼鏡めがねをかけたかお真剣しんけん表情ひょうじょうをうかべて、「いいえ、自分じぶんからだかして、爆弾ばくだんとなってしまうかねですから、どうしても供養くようをしてやりとうござんす。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
なつかしい「」の臭いが、ツーンと鼻に来た。ズクをかした奴を「湯」と言うのだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
門には竜宮といふ字を真珠をかして書き、それを紅珊瑚べにさんごの玉で縁取つた素晴らしい大きな額をかけて、その中には矢張り鱗模様うろこもやうの着物に、魚形の冠をかぶつた番兵がついてをりました。
竜宮の犬 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
遠州榛原はいばら郡金谷宿の言伝えに、昔この地に住みし長者愛娘まなむすめを某池の大蛇に取られ憤恨ふんこんに堪えず、多くの蹈鞴師を呼び寄せて一時に銕を湯にかしてその池に注いだ(河村多賀造氏談)。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けたところへ砂糖を加へ、紫を注すと、ジユウツといふ音とともに、湯氣がむら/\と舞ひのぼり、黒ずんだ天井の眞ん中に貼つてある大神宮の劍先神符ふだが、白雲に蔽はれた山寺の塔のやうに
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ろかせてやろう。醂麝液で!」左手からジリジリと詰め寄せた。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……彼女かのじょの前へ出ると、まるで火に焼かれるような思いがするのだったが……わたしを燃やしかしてゆくその火が、いったいどういう火かということを、別に突き止めたいとも思わなかったのは
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
看護婦や宿直の若い医員だちを呼び集めて、陽気に騒いでいるのだったが、葉子は長いそでゆかまで垂らして、けるような声で謳っていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その東北の方からけた銅のしるをからだ中にかぶったように朝日をいっぱいに浴びて土神がゆっくりゆっくりやって来ました。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これには一キロ以下のや二十キロ位のやいろいろある。落ちて来るとたちまち三千度の熱を出し、鉄でもなんでもトロトロに焼きかしてしまうのだ。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二つ割りの竹の節のあいだに、かした黄金を流したもので、竹流しの竿金さおきんともよぶ地金で、それが何本もあった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「このかねなかには、ひすいがかしんであるというはなしだが、あおいろが、なんとなく底光そこびかりがしてえるな。」と、旅人たびびとは、こわれかけた鐘楼しょうろうにたどりいたときに
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
往来の砂をかすめるばかり、板葺いたぶき檜皮葺ひわだぶきの屋根の向こうに、むらがっているひでりぐもも、さっきから、凝然と、金銀銅鉄をかしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三人の眼の視力をかして、それを一つに集めて出来上ったのがその眼です。
鉛をかして、むらむらと湧懸わきかかって来たろうではないか。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし大きからぬ眼眸まなざしけるような愛嬌あいきょうがあり、素朴そぼくではあるが、冒険家の特徴とでも言うのか、用心深そうな神経がぴりぴりしていそうに見えた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
よく見ると戦車は真赤に熟しつつ、どろどろと形がけてゆくのだ。そして、その前には、正太に似た少年が、大口をあいて、はあはあ息をはきかけている。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、心のうちでいっているように、また、この焔こそ、夫婦の心を、一つにかす真実の鉱炉こうろであると見入るように、さばさばとした顔をあくまで紅蓮ぐれんに向けていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして早くもそのえ立った白金のそら、みずうみの向うのうぐいすいろの原のはてからけたようなもの、なまめかしいもの、古びた黄金、反射炉はんしゃろの中のしゅ、一きれの光るものがあらわれました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いしも、てつも、かしてしまうためにつよがたかれました。かねるものは、おうさまの命令めいれいしたがって、仕事しごと苦心くしんをしました。そして、おおきな、おもい、あおみをふくんだかねができあがったのでありました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨日九段に陳列してあったソ連戦車をどろどろにかした怪事件がありましたが、そのときあのへんをうろついていたやはり二人づれの怪少年少女があるのですが
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「しかし、衆口金をかすということもありますから、ご注意にくはありません」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭にはもう苧環おだまきが葉をしげらせ、夏雪草が日にけそうな淡紅色の花をつけていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「おう、たいへんだ。戦車が燃えている。いやどろどろにけている、おい、みんな早くこい」
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのうめえ口が、刀鍛冶の焼金までかしたか。よくもうぬあ、師匠の山浦清麿をだましたな。やいッ、そして数年前に、てめえの、ちょろまかした師匠の金を、おれが盗んだと告げ口を
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
情婦は、思いあまって、自殺の意を決し、自分の働いている工場の熔融炉キューポラに飛びこんで、ドロドロにけたなまりの湯の中に跡方あとかたもなく死んでしまった。こんどは、若い男の番だった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
まるで鉄をかしている炉の窓のようであり、それとともにくちは、下腹からしている呼吸を、極めて平調に通わせているかのように見せていても、実はふいごのような熱くさをもっていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しゅーッと音がして、機械からは、紫色の雷弧アークがとびだした。その火にあたると、がんじょうな鉄の錠も、みるみるあめのようになって、どろどろにけおちてしまったのだった。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それは、いまうす紫の光線を吐きながら、金属をめらめらとかしていきます。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だからもう一度生れ変ってくることだね。真鍮しんちゅう屑金くずがねとして、もう一度製錬所せいれんじょへ帰って坩堝るつぼの中でお仲間と一緒に身体をかすのだよ。そしてこの次は、りっぱなもくねじになって生れておいで
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
私が今、見ている機械は、しきりに原型げんけいをうち出している。原型は、普通は、かたい鋼鉄こうてつでつくるが、この地下工場では、私の知らない灰色のセメントのような妙な粉末をかしてかためるのであった。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)