トップ
>
熔
>
と
ふりがな文庫
“
熔
(
と
)” の例文
お前のからだを
熔
(
と
)
かしてやるよ——あたしは、お前が、どんな人達を、敵としてつけ狙っているか、ちゃあんと知っているのだからね。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
まれに、きわめてまれに、天の
焔
(
ほのお
)
を取って来てこの境界のガラス板をすっかり
熔
(
と
)
かしてしまう人がある。(大正九年五月、渋柿)
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
次第にそれが郷愁のなかに
熔
(
と
)
け込み、周囲との触れ合いで時々起こるしこりのような
硬
(
かた
)
い気持が、何から来るのか自分にも
解
(
わか
)
らなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その東北の方から
熔
(
と
)
けた銅の汁をからだ中に
被
(
かぶ
)
ったやうに朝日をいっぱいに浴びて土神がゆっくりゆっくりやって来ました。
土神と狐
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その
媚
(
なまめ
)
かしさと申すものは、暖かに流れる蝋燭より
前
(
さき
)
に、見るものの身が泥になって、
熔
(
と
)
けるのでございます。忘れません。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
衆口は金をも
熔
(
と
)
かすたとえに洩れず、それがいかにも秘密箱らしく、また、真をなして語りつたえられているから怖ろしい。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そうです。さらに変なことというのは、軍艦の
檣
(
ほばしら
)
が——これは鋼鉄でできているんですよ。それが一部
熔
(
と
)
けて、
飴
(
あめ
)
のように曲っているんです」
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「海賊の
唄
(
コルサリアス
)
」と題するくだんのモロッコ従軍歌が、いま糖蜜のようなイベリヤ半島の烈日に
熔
(
と
)
けて爆発している——AA! 闘牛日のMADRID!
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
料理場には火が
熾
(
おこ
)
されて、片口や
匙
(
さじ
)
やフォークなどすべて居酒屋にある
錫製
(
すずせい
)
のものが、弾型の中で
熔
(
と
)
かされていた。その片手間に人々は酒を飲んだ。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし、彼のおろかさから来たわざわいのすべてをもと通りにしてくれる筈の、その水は、マイダスにとっては
熔
(
と
)
かした金の海よりも貴かったのです。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
そのとき、
妃
(
きさき
)
の
大事
(
だいじ
)
にされた、
数々
(
かずかず
)
の
宝石
(
ほうせき
)
をごらんになって、この
青
(
あお
)
い
宝石
(
ほうせき
)
を
砕
(
くだ
)
いて、
鉄
(
てつ
)
といっしょに
熔
(
と
)
かして、
形
(
かたち
)
をなくしてしまおうとお
考
(
かんが
)
えなされたのです。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
鎧橋
(
よろひばし
)
に出づ。町の片側は火事なり。その
側
(
かは
)
に面せるに顔、焼くるかと思ふほど熱かりし由。又何か落つると思へば、電線を
被
(
おほ
)
へる
鉛管
(
えんかん
)
の
火熱
(
くわねつ
)
の為に
熔
(
と
)
け落つるなり。
鸚鵡:――大震覚え書の一つ――
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
およそ四百三十年の期間であった。治承四年の冬、
平重衡
(
たいらのしげひら
)
の兵火によって
伽藍
(
がらん
)
の大部分が焼失したことは周知のところであろう。仏頭もむろん
熔
(
と
)
け
墜
(
お
)
ちてしまった。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
しかし
若
(
わか
)
い
尼
(
あま
)
さんは、
眼鏡
(
めがね
)
をかけた
顔
(
かお
)
に
真剣
(
しんけん
)
な
表情
(
ひょうじょう
)
をうかべて、「いいえ、
自分
(
じぶん
)
の
体
(
からだ
)
を
熔
(
と
)
かして、
爆弾
(
ばくだん
)
となってしまう
鐘
(
かね
)
ですから、どうしても
供養
(
くよう
)
をしてやりとうござんす。」
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
なつかしい「
湯
(
ゆ
)
」の臭いが、ツーンと鼻に来た。ズクを
熔
(
と
)
かした奴を「湯」と言うのだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
門には竜宮といふ字を真珠を
熔
(
と
)
かして書き、それを
紅珊瑚
(
べにさんご
)
の玉で縁取つた素晴らしい大きな額をかけて、その中には矢張り
鱗模様
(
うろこもやう
)
の着物に、魚形の冠を
被
(
かぶ
)
つた番兵がついてをりました。
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
遠州
榛原
(
はいばら
)
郡金谷宿の言伝えに、昔この地に住みし長者
愛娘
(
まなむすめ
)
を某池の大蛇に取られ
憤恨
(
ふんこん
)
に堪えず、多くの蹈鞴師を呼び寄せて一時に銕を湯に
熔
(
と
)
かしてその池に注いだ(河村多賀造氏談)。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
熔
(
と
)
けたところへ砂糖を加へ、紫を注すと、ジユウツといふ音とともに、湯氣がむら/\と舞ひ
騰
(
のぼ
)
り、黒ずんだ天井の眞ん中に貼つてある大神宮の劍先
神符
(
ふだ
)
が、白雲に蔽はれた山寺の塔のやうに
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「
熔
(
と
)
ろかせてやろう。醂麝液で!」左手からジリジリと詰め寄せた。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……
彼女
(
かのじょ
)
の前へ出ると、まるで火に焼かれるような思いがするのだったが……わたしを燃やし
熔
(
と
)
かしてゆくその火が、いったいどういう火かということを、別に突き止めたいとも思わなかったのは
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
看護婦や宿直の若い医員だちを呼び集めて、陽気に騒いでいるのだったが、葉子は長い
袖
(
そで
)
を
牀
(
ゆか
)
まで垂らして、
熔
(
と
)
けるような声で謳っていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その東北の方から
熔
(
と
)
けた銅の
汁
(
しる
)
をからだ中に
被
(
かぶ
)
ったように朝日をいっぱいに浴びて土神がゆっくりゆっくりやって来ました。
土神ときつね
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
これには一キロ以下のや二十キロ位のやいろいろある。落ちて来るとたちまち三千度の熱を出し、鉄でもなんでもトロトロに焼き
熔
(
と
)
かしてしまうのだ。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
二つ割りの竹の節のあいだに、
熔
(
と
)
かした黄金を流したもので、竹流しの
竿金
(
さおきん
)
ともよぶ地金で、それが何本もあった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「この
鐘
(
かね
)
の
中
(
なか
)
には、ひすいが
熔
(
と
)
かし
込
(
こ
)
んであるという
話
(
はなし
)
だが、
青
(
あお
)
い
色
(
いろ
)
が、なんとなく
底光
(
そこびか
)
りがして
見
(
み
)
えるな。」と、
旅人
(
たびびと
)
は、
壊
(
こわ
)
れかけた
鐘楼
(
しょうろう
)
にたどり
着
(
つ
)
いたときに
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
往来の砂をかすめるばかり、
板葺
(
いたぶき
)
、
檜皮葺
(
ひわだぶき
)
の屋根の向こうに、むらがっているひでり
雲
(
ぐも
)
も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を
熔
(
と
)
かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
三人の眼の視力を
熔
(
と
)
かして、それを一つに集めて出来上ったのがその眼です。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
鉛を
熔
(
と
)
かして、むらむらと
湧懸
(
わきかか
)
って来たろうではないか。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし大きからぬ
眼眸
(
まなざし
)
に
熔
(
と
)
けるような
愛嬌
(
あいきょう
)
があり、
素朴
(
そぼく
)
ではあるが、冒険家の特徴とでも言うのか、用心深そうな神経がぴりぴりしていそうに見えた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
よく見ると戦車は真赤に熟しつつ、どろどろと形が
熔
(
と
)
けてゆくのだ。そして、その前には、正太に似た少年が、大口をあいて、はあはあ息をはきかけている。
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と、心のうちでいっているように、また、この焔こそ、夫婦の心を、一つに
熔
(
と
)
かす真実の
鉱炉
(
こうろ
)
であると見入るように、さばさばとした顔をあくまで
紅蓮
(
ぐれん
)
に向けていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして早くもその
燃
(
も
)
え立った白金のそら、
湖
(
みずうみ
)
の向うの
鶯
(
うぐいす
)
いろの原のはてから
熔
(
と
)
けたようなもの、なまめかしいもの、古びた黄金、
反射炉
(
はんしゃろ
)
の中の
朱
(
しゅ
)
、一きれの光るものが
現
(
あら
)
われました。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
石
(
いし
)
も、
鉄
(
てつ
)
も、
熔
(
と
)
かしてしまうために
強
(
つよ
)
い
火
(
ひ
)
がたかれました。
鐘
(
かね
)
を
鋳
(
い
)
るものは、
王
(
おう
)
さまの
命令
(
めいれい
)
に
従
(
したが
)
って、
仕事
(
しごと
)
に
苦心
(
くしん
)
をしました。そして、
大
(
おお
)
きな、
重
(
おも
)
い、
青
(
あお
)
みを
含
(
ふく
)
んだ
鐘
(
かね
)
ができあがったのでありました。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
昨日九段に陳列してあったソ連戦車をどろどろに
熔
(
と
)
かした怪事件がありましたが、そのときあのへんをうろついていたやはり二人づれの怪少年少女があるのですが
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「しかし、衆口金を
熔
(
と
)
かすということもありますから、ご注意に
如
(
し
)
くはありません」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庭にはもう
苧環
(
おだまき
)
が葉を
繁
(
しげ
)
らせ、夏雪草が日に
熔
(
と
)
けそうな淡紅色の花をつけていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「おう、たいへんだ。戦車が燃えている。いやどろどろに
熔
(
と
)
けている、おい、みんな早くこい」
人造人間エフ氏
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのうめえ口が、刀鍛冶の焼金まで
熔
(
と
)
かしたか。よくもうぬあ、師匠の山浦清麿をだましたな。やいッ、そして数年前に、てめえの、ちょろまかした師匠の金を、おれが盗んだと告げ口を
野槌の百
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
情婦は、思い
余
(
あま
)
って、自殺の意を決し、自分の働いている工場の
熔融炉
(
キューポラ
)
に飛びこんで、ドロドロに
熔
(
と
)
けた
鉛
(
なまり
)
の湯の中に
跡方
(
あとかた
)
もなく死んでしまった。こんどは、若い男の番だった。
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
まるで鉄を
熔
(
と
)
かしている炉の窓のようであり、それとともに
唇
(
くち
)
は、下腹からしている呼吸を、極めて平調に通わせているかのように見せていても、実は
韛
(
ふいご
)
のような熱
臭
(
くさ
)
い
火
(
か
)
ッ
気
(
き
)
をもっていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しゅーッと音がして、機械からは、紫色の
雷弧
(
アーク
)
がとびだした。その火にあたると、がんじょうな鉄の錠も、みるみるあめのようになって、どろどろに
熔
(
と
)
けおちてしまったのだった。
超人間X号
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それは、いまうす紫の光線を吐きながら、金属をめらめらと
熔
(
と
)
かしていきます。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だからもう一度生れ変ってくることだね。
真鍮
(
しんちゅう
)
の
屑金
(
くずがね
)
として、もう一度
製錬所
(
せいれんじょ
)
へ帰って
坩堝
(
るつぼ
)
の中でお仲間と一緒に身体を
熔
(
と
)
かすのだよ。そしてこの次は、りっぱなもくねじになって生れておいで
もくねじ
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私が今、見ている機械は、しきりに
原型
(
げんけい
)
をうち出している。原型は、普通は、かたい
鋼鉄
(
こうてつ
)
でつくるが、この地下工場では、私の知らない灰色のセメントのような妙な粉末を
熔
(
と
)
かして
固
(
かた
)
めるのであった。
人造人間の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
熔
漢検準1級
部首:⽕
14画
“熔”を含む語句
熔岩
熔鉱炉
熔岩流
熔融炉
熔炉
熔鉄
縄状熔岩
可熔線
砕塊熔岩
熔鉄剤
熔金
熔融石英
熔融水晶
熔融塊
熔融
熔接具
熔接
熔巖
熔巌
熔岩谷
...