トップ
>
昂然
>
こうぜん
ふりがな文庫
“
昂然
(
こうぜん
)” の例文
染五郎は
昂然
(
こうぜん
)
と応えるのです。天地神明に恥じないといった態度です。一つはお絹を縛ったガラッ八に対する反感もあったでしょう。
銭形平次捕物控:137 紅い扱帯
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして腕組みをして
昂然
(
こうぜん
)
とした態度を作つた。それには不自然なところがあつた。兄はありたけの勇を
揮
(
ふる
)
つて弟の瞳に
睨
(
にら
)
み合つた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
そう
昂然
(
こうぜん
)
と言って、(——私は昂然たる朝野を、ここで初めて見た。)朝野はポンと、はだけた
痩
(
や
)
せた胸を叩き、みずからよろめいた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
が、彼の顔を見ると、彼女は急に唇を
歪
(
ゆが
)
めて、
蔑
(
さげす
)
むような表情を水々しい眼に浮べたまま、
昂然
(
こうぜん
)
と一人先に立って、彼の傍を通り過ぎた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、いよいよ、彼は、
昂然
(
こうぜん
)
として、母親の顔を直視する。母親はなにがなんだかわからない。彼女は、救いを求めるように、人を呼ぶ——
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
民心の彼に向うを
奈何
(
いかん
)
、とありけるに、
昂然
(
こうぜん
)
として答えて、臣は天道を知る、何ぞ民心を論ぜん、と云いけるほどの豪傑なり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
四人が席を立った時、藤尾は
傍目
(
わきめ
)
も触らず、ただ正面を見たなりで、女王の人形が歩を移すがごとく
昂然
(
こうぜん
)
として入口まで出る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
三造は、
昂然
(
こうぜん
)
として答えました。しかし、私はこの愚ものの言葉を、俄に信用していいかどうか、判断に苦しまないではいられませんでした。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
瑠璃子が、急いで応接室に
駈
(
か
)
け込んだとき、父はそこに、
昂然
(
こうぜん
)
と立っていた。半白の髪が、
逆立
(
さかだ
)
っているようにさえ見えた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「その男らしさは剣や
槍
(
やり
)
で腹をつらぬかれているのに、
昂然
(
こうぜん
)
たるはじらいのうちに、歯をくいしばったまま、静かに突立っているものなのだ。」
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
世の
嘲笑
(
ちょうしょう
)
や批難に堪えてゆけるだけの
確乎
(
かっこ
)
たるものはなかったが、どうかすると、彼はよく
昂然
(
こうぜん
)
と、しかし、低く
呟
(
つぶや
)
いた。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
彼は
昂然
(
こうぜん
)
と語りだした、自分を最も難境に陥らせるかもしれない事柄を、すなわち、兵士らとの
喧嘩
(
けんか
)
、自分が受けた追跡、国外への逃亡などを。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
マリユスはコゼットと相並んで、かつて瀕死の身体を引きずり上げられたあの階段を、光り輝き
昂然
(
こうぜん
)
として上っていった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「申上げたとおりです」正四郎は
昂然
(
こうぜん
)
と云った、「私の知らない娘ですし、娘のほうでも私を知りません、まったく関係のない人間でございます」
その木戸を通って
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
病人は多少とも卑屈になり、おどおどした態度を示すものだが、その青年はその気配は
微塵
(
みじん
)
も見せなかった。
昂然
(
こうぜん
)
として廊下をまっすぐ歩くのだ。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
あだかも燃ゆるがごとき熱望にみち、
温
(
あたた
)
かい情感にあふれ、あの
昂然
(
こうぜん
)
とした独立独歩の足どりで、早くこの戸を明け放てと告げに来る人のように。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
けれど従前から各部署にいる大将連は、
昂然
(
こうぜん
)
として、みな敢えて服さない色を示していた。賀を
陳
(
の
)
べてくる者すらない。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『
私
(
わたくし
)
だつて、
其樣
(
そんな
)
に
無鐵砲
(
むてつぽう
)
な
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
はない、
此
(
この
)
工夫
(
くふう
)
は、
大佐閣下
(
たいさかくか
)
も
仲々
(
なか/\
)
巧妙
(
うまい
)
と
感心
(
かんしん
)
なすつたんです。』と
意氣
(
いき
)
昂然
(
こうぜん
)
として
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
椅子に
凭
(
よりかか
)
って黙って社員の顔を眺めていられるだけであったが、社員が
昂然
(
こうぜん
)
として得意そうに英語を
喋
(
しゃべ
)
れば喋るほど
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
晃 むむ、
夜
(
よ
)
ごとに見れば星でも
了
(
わか
)
る……ちょうど
丑満
(
うしみつ
)
……そうだろう。(と
昂然
(
こうぜん
)
として鐘を凝視し)山沢、僕はこの鐘を
搗
(
つ
)
くまいと思う。どうだ。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
匡
(
きょう
)
の地で暴民に囲まれた時
昂然
(
こうぜん
)
として孔子の言った「天のいまだ
斯文
(
しぶん
)
を
喪
(
ほろぼ
)
さざるや
匡人
(
きょうひと
)
それ
予
(
われ
)
をいかんせんや」が、今は子路にも実に良く
解
(
わか
)
って来た。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「科学もいい、理詰めもいい、しかしその外にも大事なものがある」紋太夫は
昂然
(
こうぜん
)
と云う。「他でもない
大和魂
(
やまとだましい
)
よ」
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、やがて
立留
(
たちとどま
)
って
室内
(
しつない
)
の
人々
(
ひとびと
)
を
眴
(
みまわ
)
して
昂然
(
こうぜん
)
として
今
(
いま
)
にも
何
(
なに
)
か
重大
(
じゅうだい
)
なことを
云
(
い
)
わんとするような
身構
(
みがま
)
えをする。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
エルリングは
昂然
(
こうぜん
)
として戸口を出て
行
(
ゆ
)
くので、己も附いて出た。戸の外で己は握手して覚えず丁寧に礼をした。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
誤解の中にも攻撃の中にも
昂然
(
こうぜん
)
と首をもたげて、自分は今の日本に生まれて
来
(
く
)
べき女ではなかったのだ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼がウオムスの大会において訊問せられんとするや、人その行を危ぶむ。彼
昂然
(
こうぜん
)
として曰く、「否々我
往
(
ゆ
)
かん、悪魔の数
縦令
(
たと
)
い屋上の瓦より三倍多きも何ぞ妨げん」
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
五人の
友輩
(
ともがら
)
、幾人かの弟子どもを、刀を抜かず打ち倒した雪之丞の、あまりに
昂然
(
こうぜん
)
たる意気に、
気圧
(
けお
)
されはしたが、退きもならず、勇気を振い起し、髪の毛を逆立てて
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
むかし、山田奉行所の白洲の夜焚き火のひかりに、
昂然
(
こうぜん
)
と眉をあげた幼い源六郎のおもかげ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
刃を捨て、
昂然
(
こうぜん
)
と廻れ右をして立ち去ったのは、ひとり、ランボオだけではなかったか。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
天晴
(
あっぱれ
)
東洋の舞台の
大立物
(
おおだてもの
)
を任ずる水滸伝的豪傑が寄って
集
(
たか
)
って天下を論じ、提調先生
昂然
(
こうぜん
)
として自ら蕭何を以て処るという得意の壇場が髣髴としてこの文字の表に現われておる。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ある目に見えぬ力に向かっていどみかけでもするように、彼は
昂然
(
こうぜん
)
としてつけ加えた。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
意気
昂然
(
こうぜん
)
と引き揚げていったので、当然のごとくに伝六がいろめきたちました。
右門捕物帖:21 妻恋坂の怪
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
昂然
(
こうぜん
)
と
項
(
うなじ
)
をそらして詰所へ出て、昂然と項をそらして詰所から引いていた。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
前述べたとおり、わたしは「落胆への賦」を書くつもりではなく、止り木のうえに立った朝の雄鶏のように
昂然
(
こうぜん
)
と誇らかに歌うのだ——たとえわたしの隣人たちを目醒ますだけであろうとも。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
玄米でも饂飩粉でもよかった、「働く人の食料を分けてもらうのは気の毒」と私が申すと、「働くから上げられるのです」とI君が
昂然
(
こうぜん
)
と
応
(
こた
)
えました。これは確に一本参りました。全くです。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と、田山白雲が
昂然
(
こうぜん
)
として肯定しながら、言葉をつづけました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昂然
(
こうぜん
)
として戦う決意を明らかにした義仲は、さらに語を継いだ。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「おまえに食わせる
豆腐
(
とうふ
)
はないぞ」とチビ公は
昂然
(
こうぜん
)
といった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
手に杯を持たまゝ、
昂然
(
こうぜん
)
と
頭
(
こうべ
)
をあげて大空を
眺
(
なが
)
めて居た。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
先生は、丸まっちい肩を
昂然
(
こうぜん
)
と
聳
(
そび
)
やかすようにしながら
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
おしまいにはやがて
昂然
(
こうぜん
)
とした調子で
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
歌麿は
昂然
(
こうぜん
)
として居ずまいを正した。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
と
警
(
いまし
)
めたが、ルターは
昂然
(
こうぜん
)
として
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
陳君は、
昂然
(
こうぜん
)
と肩を
聳
(
そびや
)
かした。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
昂然
(
こうぜん
)
と
泰山木
(
たいさんぼく
)
の花に立つ
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
昂然
(
こうぜん
)
と嬌坊第一にいた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
次郎は
昂然
(
こうぜん
)
となった。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
有
(
あれ
)
ども無きがごとくに
装
(
よそお
)
え。
昂然
(
こうぜん
)
として水準以下に取り扱え。——気がついた男は面目を失うに違ない。これが
復讐
(
ふくしゅう
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
昂然
(
こうぜん
)
として顔をあげたのは、ちょっと良い男の浪人者
御厩
(
おうまや
)
左門次でした。二十七八、
身扮
(
みなり
)
もそんなに悪くはなく、腕っ節も相応にありそうです。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
十分ばかり
逡巡
(
しゅんじゅん
)
した後、彼は時計をポケットへ収め、ほとんど
喧嘩
(
けんか
)
を吹っかけるように
昂然
(
こうぜん
)
と粟野さんの机の側へ行った。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“昂然”の意味
《形容動詞》
気負って意気込むさま。
(出典:Wiktionary)
昂
漢検準1級
部首:⽇
8画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“昂”で始まる語句
昂
昂奮
昂進
昂揚
昂騰
昂々
昂昂渓
昂上
昂張
昂奮剤