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揶揄
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やゆ
ふりがな文庫
“
揶揄
(
やゆ
)” の例文
その
逼迫
(
ひっぱく
)
している急場の足もとをつけこみ、故意に
怠
(
なま
)
けてはそれを
揶揄
(
やゆ
)
し、
鞭
(
むち
)
で
強
(
し
)
いられれば俄然不平を鳴らすというふうであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
揶揄
(
やゆ
)
一番した。ナカ/\
性
(
たち
)
が悪い。
態〻
(
わざわざ
)
二流会社を志望する僕達は決して優秀でないから、
擽
(
くすぐ
)
ったいような心持で顔を見合せた。
恩師
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
有原と節子は、黙ってついて歩いて行く。有原も、その夜は、勝治をれいのように
揶揄
(
やゆ
)
する事もせず、妙に考え込んで歩いていた。
花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
極めて露骨なる
揶揄
(
やゆ
)
を試むるところであろうけれど、駒井は、それをもてあまして、ああ、昨夜の出来事から、ぶり返した、せっかく
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「君の単行本はまだ出ないのかい」と、青木は雄吉がたじたじとすればするほど、
揶揄
(
やゆ
)
とでもとればとれそうな質問を連発した。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
……
現
(
げん
)
に、
廣島師範
(
ひろしましはん
)
の
閣下穗科信良
(
かくかほしなしんりやう
)
は——こゝに
校長
(
かうちやう
)
たる
其
(
そ
)
の
威嚴
(
ゐげん
)
を
傷
(
きず
)
つけず
禮
(
れい
)
を
失
(
しつ
)
しない
程度
(
ていど
)
で、
祝意
(
しゆくい
)
に
少
(
すこ
)
し
揶揄
(
やゆ
)
を
含
(
ふく
)
めた
一句
(
いつく
)
がある。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
かげでこそオッペケペなぞと旗上げ当時を回想して
揶揄
(
やゆ
)
するものもあったが、演劇界に新たな一線を
劃
(
かく
)
すだけのことを川上はやり通した。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
無抵抗の教養に対する手きびしい
揶揄
(
やゆ
)
が殆ど自嘲の調子をすら帯びて響いていることは、おそらく衆評の一致するところだろう。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
彼女は
嘲弄
(
ちょうろう
)
的な気質と寛大な気質とをともに具えていたのである。そして人を
揶揄
(
やゆ
)
しながらも、人の世話をするのが好きだった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「殿」と長老は
揶揄
(
やゆ
)
するように、「
徐如
レ
林
しずかなることはやしのごとし
、どうやらそろそろこの文句が、役に立たなくなりましたな」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は彼の友に
揶揄
(
やゆ
)
せられたる結果としてまず手初めに吾輩を写生しつつあるのである。吾輩はすでに
十分
(
じゅうぶん
)
寝た。
欠伸
(
あくび
)
がしたくてたまらない。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「Kが今入つて来た所は、まるで放蕩息子の帰宅と云つた風だつたね。」私の腰を掛けるのを待つて、Hは
傍
(
そば
)
から
揶揄
(
やゆ
)
した。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
そうして世間では、職人に何の美が生めるのだといった調子であった。それ故「亡びゆく民藝派」等と小山冨士夫君から
揶揄
(
やゆ
)
されたものである。
四十年の回想:『民藝四十年』を読んで
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
(例えば、偽の品川が態々本物の品川の住宅に逃げ込んで、寸分違わぬ二つの顔を並べて、明智小五郎を
揶揄
(
やゆ
)
した如き)
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
嘲笑
(
あざわら
)
うように、また
揶揄
(
やゆ
)
するごとく、くっきり浮き上っているのが、まことに
凶事
(
きょうじ
)
そのもののように、不気味に見える。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
くるりうしろを向くと、あの眉間疵を冴えやかに光らして、
揶揄
(
やゆ
)
するように呼びかけました。しかしその刹那! どこかへかくれたか、もういない。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
いや、
寧
(
むし
)
ろ顔を見る度に
揶揄
(
やゆ
)
せずにはいられぬ道化者だった。それは操行点六点の彼には当然の態度に違いなかった。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
被告に有利なる唯一の証人を挙げよ、と命じてさえも被告はかくのごとき愚弄的な言辞をもって法廷を
揶揄
(
やゆ
)
している。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
私はしづちゃんに貧しい贈物をする。自作の童話一篇。あるとき、イエが流石に私の大器晩成振りにもあきれて、私の不勉強を
揶揄
(
やゆ
)
したことがあった。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
と、練吉は、彼等のわきにさつきから立つてゐた今泉に向つて、
揶揄
(
やゆ
)
するやうに訊いた。どういふものか、今泉の紙衣裳はちつとも痛んでゐなかつた。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
御製の御
揶揄
(
やゆ
)
に対して劣らぬユウモアを漂わせているのであるが、やはり親愛の心こまやかで棄てがたい歌である。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
これは十九のとき漢学に全力を傾注するまで、国文をも少しばかり研究した
名残
(
なごり
)
で、わざと流儀違いの和歌の真似をして、同窓の
揶揄
(
やゆ
)
に
酬
(
むく
)
いたのである。
安井夫人
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なにしろとっさのことで、着物を着る暇がなかったのだろうと、ヘンリイ・ウイリアムズのジョウジ・ジョセフ・スミスがあとで裁判長を
揶揄
(
やゆ
)
している。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
多計代は、娘に対するというより、むしろ年下の若い女に好意ある
揶揄
(
やゆ
)
をするという風に、笑いを含んで云った。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
アプトン・シンクレアが十年一日のように
揶揄
(
やゆ
)
しておかない「疲れたる事業家」の典型。経験と果断を示す
白毛
(
しらが
)
まじりの髪。企業と大きく書かれた
赭
(
あか
)
ら顔。
字で書いた漫画
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
そこは城下町の東北一里ばかりの処にあり、きわめて
諧謔
(
かいぎゃく
)
的な、自然を
揶揄
(
やゆ
)
するかのような景観を呈していた。
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人々はロダンの精神状態を疑い、モンマルトルの寄席では喜劇にまでこれを使用し、ロダンを
揶揄
(
やゆ
)
したのです。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
黒い帽子はさういふ彼を
揶揄
(
やゆ
)
するやうに、路角まで走つてゐる。もう追ひつかない。「どうしてくれよう。」主人はいら立つて窓からそれを見送つてゐた。
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
見果てぬ夢をあまり短くして断ったそれを惜しませるような、冷たく
揶揄
(
やゆ
)
するような沖の
篝火
(
かがりび
)
でありました。灯は人の眼のように
瞬
(
またた
)
くだけなお悪ったのです。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ペンクは色々とディスクシオンをしながら自分などにはよく分らぬ皮肉らしいことを云って相手を
揶揄
(
やゆ
)
しながら一座を見渡してにやりとするという風であった。
ベルリン大学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
名古屋城内で
襖
(
ふすま
)
に描かれた虎の絵を見て、「経済学者の顔のようだ」と言われたり、
熱田
(
あつた
)
神宮で手洗いの浄水溜めを見て、「神聖の水は危険だ」と
揶揄
(
やゆ
)
されたり
アインシュタイン教授をわが国に迎えて
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
勢いで、としゑにもつい言わずにはいられなかった
揶揄
(
やゆ
)
が口をついた。俺にかと、たじろがずには言ったが、内心すぐ思い当るもので友太はさすがに眼をそらした。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
運命の人を
揶揄
(
やゆ
)
することもまた甚しいではないか。草稿の裏には猶数行の余白がある。筆の行くまま、詩だか散文だか訳のわからぬものを
書
(
しる
)
して此夜の
愁
(
うれい
)
を慰めよう。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
やや広ければ特別室とせられ、
価
(
あたひ
)
も其れに添ひたるもののよしに
候
(
さふら
)
へど、機関に近く窓の小さければ、特別は特別に𤍠き意なりしかなど船員を
揶揄
(
やゆ
)
しあるを見申し
候
(
さふらふ
)
。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そこで女も亦婦人問題というような社会問題の内容として世間の眼には写らずに、云わば
揶揄
(
やゆ
)
や娯楽の対象である美人としてばかり、世間の眼に写るというような次第だ。
思想と風俗
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
「ウェリントンも陛下のおいでを待ってるほどばかでもありますまい」と言うネーを
揶揄
(
やゆ
)
した。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それから云っても云わなくとも好い事を云うように、「変っているわね……」と軽く
揶揄
(
やゆ
)
した。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
またそれに続いて、レヴェズが僕を
揶揄
(
やゆ
)
するのに、あの
箭
(
や
)
が裏の蔬菜園から放たれたのだと云って、その中に
蕪菁
(
リューベ
)
(Rübe)と一
語
(
こと
)
を、しきりと躍動させるのだったよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
従って私は侍階級の横暴と驕慢をいやが上にも聴かされて育ち、筆を執るようになってからは、侍階級の歪められた道徳を、非難し
揶揄
(
やゆ
)
することに興味を持っていたらしい。
捕物小説のむずかしさ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「私はお前さんの力ぐらゐには驚かんね! どうでも勝手に、もつとしつかりやつて見るがいい!」と、その藤蔓は
小面憎
(
こづらにく
)
くも彼を
揶揄
(
やゆ
)
したり、
傲語
(
がうご
)
したりするのであつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
鳴雪翁は短評を以て人を
揶揄
(
やゆ
)
したり、
寸言隻語
(
すんげんせきご
)
を加へて他の詩文を
飜弄
(
ほんろう
)
したりすることはむしろ大得意であつたのであるが、今この俳句選の評を見ると如何にも乳臭が多くて
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
ルピック氏は、
真情流露
(
しんじょうりゅうろ
)
を逆に行く人物だから、
久々
(
ひさびさ
)
で彼の顔を見た
悦
(
よろこ
)
びを、
揶揄
(
やゆ
)
の形でしか表わさない。向こうへ往きがけに彼の耳を
弾
(
はじ
)
く。こっちへ来がけには、
肱
(
ひじ
)
で
小突
(
こづ
)
く。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
この思想は蕭殺たる形を成して意識の上に現われては私を威嚇したり
揶揄
(
やゆ
)
したりする。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
忽
(
たちま
)
ちそれが通学生の耳に伝はり、朝の登校の出合がしら「やあ、お早う」といふ
挨拶代
(
あいさつがは
)
りに誰からも「おい、親のことを思へば、か」と
揶揄
(
やゆ
)
されても、別に
極
(
きま
)
り悪くは思はなかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
然るにこの位な
揶揄
(
やゆ
)
弄言
(
ろうげん
)
は平生面と向って談笑の間に
言合
(
いいあ
)
うにかかわらず、この手紙がイライラした神経によっぽど
触
(
さわ
)
ったものと見えて
平時
(
いつ
)
にない怒気紛々たる返事を直ぐ
寄越
(
よこ
)
した。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
賢しらの
似而
(
えせ
)
文学者どもが、いかに
揶揄
(
やゆ
)
しようとも、僕はかかる言葉に打たれる。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
ト野村ハ云ウガ、ソウダトスレバ、コレモ予ヲ
揶揄
(
やゆ
)
スル積リナノカモ知レナイ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
敬二郎は驚きの目を
瞠
(
みは
)
って正勝の顔を見詰めた。しかし、敬二郎はしだいに驚きの表情を失って、侮蔑的な微笑に崩れていった。そして、敬二郎は侮蔑的に微笑みながら
揶揄
(
やゆ
)
的に訊いた。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
この句は作者が殊更にそう見たので、大師に関する伝説を頭から肯定したというよりも、むしろその鉢坊主を多少
揶揄
(
やゆ
)
するような気分で、「弘法顔」といったものではないかと思われる。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
妻と死別してもう七年になるので、知人の間でとかく
揶揄
(
やゆ
)
や
嘲笑
(
ちょうしょう
)
が絶えないのを彼は知っていた。……妹が夕飯の
支度
(
したく
)
にとりかかると、彼は応接室の方へ行ってピアノの前に腰を下ろした。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
揶
漢検1級
部首:⼿
12画
揄
漢検1級
部首:⼿
12画
“揶揄”で始まる語句
揶揄的
揶揄半分
揶揄係
揶揄面
揶揄気分
揶揄氣味
揶揄調子