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御簾
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みす
ふりがな文庫
“
御簾
(
みす
)” の例文
源氏は内心に喜びながら宮のお居間を辞して出ようとすると、また一人の老人らしい
咳
(
せき
)
をしながら
御簾
(
みす
)
ぎわに寄って来る人があった。
源氏物語:20 朝顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
すでに、
御簾
(
みす
)
の蔭からうかがうこの席の見物の中には、
頭巾
(
ずきん
)
を取らない
武士
(
さむらい
)
もあれば、御殿女中かと見られる女の一団もあります。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その声に、維盛は気を取直し、幼い者の手を優しく離すとひらりと馬にまたがったが、不図思い返し、弓の
弭
(
はず
)
で
御簾
(
みす
)
をかきあげた。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
進退ここにきわまるかと、御車に従う者たちが度を失って喚くので、皇后も泣き声を洩らさせ給い、帝も、
御簾
(
みす
)
のうちから幾度となく
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鼻液
(
はな
)
をかむ音、物食う音、ひそひそ話す声、時々見物を制する声に混って、
御簾
(
みす
)
の下った高い一角からは三味線の音が聞えて来る。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
御姫様はこう仰有って、一度は愛くるしく御笑いになりましたが、急にまた
御簾
(
みす
)
の外の
夜色
(
やしょく
)
へ、うっとりと眼を御やりになって
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
突き当りには
御簾
(
みす
)
が下りていて、中には何か
在
(
あ
)
るらしい
気色
(
けしき
)
だけれども、奥の全く暗いため何物をも
髣髴
(
ほうふつ
)
する事ができなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小せんの上がる前というと
御簾
(
みす
)
が下りる。蒲団へ座った小せんの四隅を、前座がもって高座に上げる。——やがて、音もなく、御簾が上がる。
寄席行灯
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
万乗の天子も些少の銭貨にかへて
宸筆
(
しんぴつ
)
を売らせ給ひ、銀紙に百人一首、伊勢物語など望みのまゝをしるせる札をつけて、
御簾
(
みす
)
に結びつけ、日を
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
左大臣が一方ではあの
御簾
(
みす
)
の方へ
頻々
(
ひんぴん
)
と色目を使い、一方では平中を
掴
(
つか
)
まえて変な皮肉を浴びせたりしたので、一層不安が
募
(
つの
)
ったのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、
濃
(
こ
)
むらさきの紐が、
葵
(
あおい
)
の御紋散しでふちどった
御簾
(
みす
)
をスルスルと捲きあげて、
金襴
(
きんらん
)
のお
褥
(
しとね
)
のうえの八代将軍吉宗公を胸のあたりまであらわした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
遥かの奥に
御簾
(
みす
)
がかかってい、そこへ陰火が燃え上がり、髪ふり乱し血を流した、女の幽霊があらわれたからである。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
絵は
御簾
(
みす
)
にそれも桜で、裏に蝶が二つ白抜きで附いて居ました。それには桃色の縁がとられてました。
桔梗
(
ききやう
)
の花の扇は大阪の誰かから貰つた物でした。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
艫の方の化粧部屋は
蓆
(
むしろ
)
で張られ、昔ながらの廢れかけた舟舞臺には櫻の造花を隈なくかざし、欄干の三方に垂らした
御簾
(
みす
)
は
彩色
(
さいしき
)
も褪せはてたものではあるが
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その師匠、顔に小さい
肝斑
(
しみ
)
が多くある人だった。永年黒
御簾
(
みす
)
(はやし部屋)のうちにいると口も悪くなる。
噺家の着物
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
御所車の横の方の
御簾
(
みす
)
が少しあがつて、そこからこちらを御覧になつておいでなさるのは、去年おぢいさんが
負
(
おん
)
ぶして火事場をおにがし申した皇子さまでした。
拾うた冠
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
彼女の毛は、解いたならば、昔の物語に書いてある、
御簾
(
みす
)
の外へもこぼれるほど長いに違いないほどたっぷりと濃いのを、前髪を大きく
束髪
(
そくはつ
)
も豊かに巻いてある。
江木欣々女史
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「あんな見物人のたくさんいる桟敷で、
御簾
(
みす
)
もおろさずおおっぴらでいちゃいちゃしながら、あたしにまで罪な眼つきをなさるんだもの、本当にこわい方よ、あなたは」
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから房のついた
御簾
(
みす
)
のかかってる結構な、
一品
(
ひとしな
)
で五十両、
先刻
(
さっき
)
も申しましたね、格別
私
(
わっし
)
なんぞも覚えている御所車がそれッきりになったんですって、いつまで
経
(
た
)
っても
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
正面には
御簾
(
みす
)
を垂れて、鏡や榊や
幣束
(
へいそく
)
などもみえた。信心者からの奉納物らしい目録包みの巻絹や巻紙や鳥や野菜や菓子折や紅白の餅なども
其処
(
そこ
)
らにうず高く積まれてあった。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
下足札
(
げそくふだ
)
を出して、百畳敷一ぱいの人である。正面には
御簾
(
みす
)
を捲いて、鏡が飾ってある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
女は
御簾
(
みす
)
の下から重袿の裾のはみ出させ方によって男に想いを送る。男はその裾の模様や色彩によって女の気質や情致を
忖度
(
そんたく
)
する。王朝時代の恋ぐらい慾天的なものはまたとあるまい。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
じいさんがそんな事を言ったのは、子供の心にも、profanation である、
褻涜
(
せつとく
)
であるというように感ずる。お社の
御簾
(
みす
)
の中へ土足で踏み込めといわれたと同じように感ずる。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そこで保胤は是非無く御答え申上げた。斉名が文は、月の冴えたる良き夜に、やや古りたる
檜皮葺
(
ひわだぶき
)
の家の
御簾
(
みす
)
ところどころはずれたる
中
(
うち
)
に女の
箏
(
そう
)
の琴弾きすましたるように聞ゆ、と申した。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いつぞや寝所間近く忍び寄った
曲者
(
くせもの
)
が有った。危く
御簾
(
みす
)
の内にまで入って、
燈火
(
ともしび
)
消そうと試みたのを、宿直の侍女が見出して、取押えて
面
(
おもて
)
を見れば、十七八の若衆にして、色白の美男子であった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
御簾
(
みす
)
がおりてからも、二人はしばらくそんなことを言い合った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
船「
御簾
(
みす
)
になる竹の
産着
(
うぶぎ
)
や皮草履かね。」
町中の月
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
蜀魂
(
ほととぎす
)
啼や琴引
御簾
(
みす
)
の奥 吾仲
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
と言われて、「
竹河
(
たけかわ
)
」をいっしょに歌ったが、まだ少年らしい声ではあるがおもしろく聞こえた。
御簾
(
みす
)
の中からもまた杯が出された。
源氏物語:46 竹河
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
また、その横に“
御簾
(
みす
)
ノ
廂
(
ひさし
)
”とよぶ小部屋があった。時により重大な裁判には、
執権代
(
しっけんだい
)
とか、将軍の連署などが、陪審に臨むことがある。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
年をとった巫女が白い衣に
緋
(
ひ
)
の
袴
(
はかま
)
をはいて
御簾
(
みす
)
の陰にさびしそうにひとりですわっているのを見た。そうして私もなんとなくさびしくなった。
日光小品
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今の乱闘の現場——
御簾
(
みす
)
の
間
(
ま
)
——そこへ、二の足をしながら、雪洞をさし入れて見ると、座敷いっぱいに敷きのべた古戦場のあとはそのまま。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「お上の
御勘当
(
ごかんどう
)
が重いので」と云って面接せず、
御簾
(
みす
)
の外にも出なかったので、
漸
(
ようや
)
く此の事が評判になり、世人が
奢
(
おご
)
りを慎しむようになったが
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
主上則ち南殿の
御簾
(
みす
)
を高く捲せて玉顔殊に
麗
(
うるわ
)
しく、諸卒を照臨ありて正行を近く召して、以前両度の戦に勝つことを得て、敵軍に気を屈せしむ。
四条畷の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
千切れた
御簾
(
みす
)
を
背後
(
うしろ
)
にして、その欄干にもたれかかり、ぼんやりとお庭を見下ろしておられた、お姫様のお姿を見かけたのは、一月前のことだった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その合間合間には師匠から預った前の晩の皆の給金を渡したり、高座の火鉢を片付けたりまた出したり、
御簾
(
みす
)
を下ろしたり上げたりしなければならなかった。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
親皇がお部屋の
御簾
(
みす
)
を高く掲げて、お招きになったので、経正は前に進み寄ると、供の藤兵衛
有教
(
ありのり
)
に赤地の錦の袋に入れた物を持って来させた。琵琶であった。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
真夏の夕暮、室々のへだての
襖
(
ふすま
)
は取りはらわれて、それぞれのところに
御簾
(
みす
)
や
几帳
(
きちょう
)
めいた
軽羅
(
うすもの
)
が
垂
(
た
)
らしてあるばかりで、
日常
(
つね
)
の
居間
(
いま
)
まで、広々と押開かれてあった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
下女の案内で二人の通された部屋は、
縁側
(
えんがわ
)
を前に
御簾
(
みす
)
のような
簀垂
(
すだれ
)
を軒に懸けた古めかしい座敷であった。柱は時代で黒く光っていた。
天井
(
てんじょう
)
にも
煤
(
すす
)
の色が一面に見えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
正面、
御簾
(
みす
)
をたらした吉宗公のお座席のまえに、三宝にのせた白羽の矢が一本、飾ってある。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
これには色々な身分の者が加わるので、城主の席には
御簾
(
みす
)
が下されている。お留伊は控えの座から、その御簾の奥をすかし見しながら、幾度も総身の
顫
(
ふる
)
えるような感動を覚えた。
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
本殿の奥の
厨子
(
ずし
)
の中には、
大日如来
(
だいにちにょらい
)
の仏像でも安置してあると見えて、参籠者はかわるがわる行ってその前にひざまずいたり、珠数をつまぐる音をさせたりした。
御簾
(
みす
)
のかげでは
心経
(
しんぎょう
)
も読まれた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と帝はお言いになって、弘徽殿へ昼間おいでになる時もいっしょにおつれになったりしてそのまま
御簾
(
みす
)
の中にまでもお入れになった。
源氏物語:01 桐壺
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
土足の武者たちは、
局々
(
つぼねつぼね
)
の
調度
(
ちょうど
)
を荒らし、
御簾
(
みす
)
を引き落し、お座所の
御手筥
(
みてばこ
)
から
帳
(
とばり
)
までひッくり返して、家探しに興がッた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御簾
(
みす
)
のうちからお盃を下されるばかりで、はか/″\しい挨拶のお言葉もきこえないとあっては、一向景気が改まらない。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
御簾
(
みす
)
がかかっており、
蜘蛛
(
くも
)
の巣が張られてあり、畳は、ちゃんと
高麗縁
(
こうらいべり
)
がしきつめたままだが、はや一種の廃気が湧いて、このまま置けばフケてしまう。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今は
凄
(
すさま
)
じく荒れ果てて器具も調度も
頽然
(
たいぜん
)
と古び
御簾
(
みす
)
も
襖
(
ふすま
)
も引きちぎれ部屋に不似合いの塗りごめの
龕
(
がん
)
に二体立たせ給う
基督
(
キリスト
)
とマリヤが
呼吸
(
いきづ
)
く気勢に折々光り
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
検非違使
(
けびいし
)
たちが
目
(
ま
)
のあたりに、気を失って倒れたのを見て
居
(
お
)
るのでございますから、
御簾
(
みす
)
の内も御簾の外も、水を打ったように声を呑んで、僧俗ともに誰一人
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
御簾
(
みす
)
が下つて居るから何うして御顔を拝す事なぞは出来なかつたもの、モウ斯う云ふことは、今に誰も話す者がありますまいから、鳥渡茲に申述べて置きます……
下谷練塀小路
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
しばらくして寝殿に向うと、上段に高麗べりの畳を敷き、広縁には紫べりの畳が敷かれてあり、そこに泰定を坐らせた。やがて
御簾
(
みす
)
が高く巻き上げられ、頼朝が現れた。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
“御簾”の意味
《名詞》
(ギョレン、みす)貴人の在所を囲う垂れ幕・すだれ。
(ゴレン)他人の妻女に関する敬称。
(出典:Wiktionary)
御
常用漢字
中学
部首:⼻
12画
簾
漢検準1級
部首:⽵
19画
“御簾”で始まる語句
御簾中
御簾内
御簾側
御簾座
御簾所
御簾蔭
御簾越
御簾中様
御簾中筋
御簾調度