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さまよ
ふりがな文庫
“
彷徨
(
さまよ
)” の例文
彼はいま、不可抗と闘いながら、路傍を
彷徨
(
さまよ
)
っている。人が裁くか、神が裁かれるか——それこそ、人間の一番な壮烈な姿であろう。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
どうかして和歌子の在処を知りたい。知らずに置くものかと思った。毎夜、霰の降る暗い寒い夜を彼は和歌子の家の周囲を
彷徨
(
さまよ
)
った。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
で、彼女は小屋を出て雪の高原を
彷徨
(
さまよ
)
いながら
狂人
(
きちがい
)
のように探してみたが結果は昨日と同じであった。で、また寂しい夜となる。……
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逆さに振ってものみ一匹出てこないという有様だった。苦しまぎれに、彼はいつもの手で、フラリと新宿の夜店街へ
彷徨
(
さまよ
)
いいでた。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
王子
(
おうじ
)
はこういう
憐
(
あわ
)
れな
有様
(
ありさま
)
で、
数年
(
すうねん
)
の
間
(
あいだ
)
、
当
(
あて
)
もなく
彷徨
(
さまよ
)
い
歩
(
ある
)
いた
後
(
のち
)
、とうとうラプンツェルが
棄
(
す
)
てられた
沙漠
(
さばく
)
までやって
来
(
き
)
ました。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
▼ もっと見る
そして今度はどこという
当
(
あて
)
もなく、フラフラと街から街を
彷徨
(
さまよ
)
った。どこまで逃げても、たった五尺の
身体
(
からだ
)
を隠す場所がなかった。
灰神楽
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
三毛は暫く其處らをウソ/\
彷徨
(
さまよ
)
うてゐたが、
旋
(
やが
)
て絶望したのか、
降連
(
ふりしき
)
る雨のなかを、悲しげな泣聲が次第に遠くへ消えて行つた。
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
方々
彷徨
(
さまよ
)
ったあげくに、このまま帰宅してはどうにも引込みのつかない落莫たる思いがたかまり、
愈〻
(
いよいよ
)
小笠原を訪ねる決心を堅めると
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
振乱す幽霊の毛のように打なびく柳の
蔭
(
かげ
)
からまたしても怪し気なる女の姿が
幾人
(
いくたり
)
と知れず
彷徨
(
さまよ
)
い
出
(
い
)
で、何ともいえぬ
物哀
(
ものあわれ
)
な泣声を立て
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
あの林檎畠が花ざかりの頃は、其枝の低く垂下つたところを
彷徨
(
さまよ
)
つて、互ひに無邪気な初恋の
私語
(
さゝやき
)
を取交したことを忘れずに居る。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
見知らぬ異国へでも、
彷徨
(
さまよ
)
い込んだような気持がして、
寝呆
(
ねぼ
)
け
眼
(
まなこ
)
でぼんやりと、
焔
(
ほのお
)
を
瞶
(
みつ
)
めているうちに、ハッとして私は跳ね起きました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
勿論百姓といふものが一旦落ちついた自分の土地を離れて
彷徨
(
さまよ
)
ふといふことはよく/\の事情が起らない限りは決してないことであります。
白瓜と青瓜
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ある年江州より
彷徨
(
さまよ
)
ひ来り、織屋へ奉公したるを手始めに、何をどうして溜めしやら、廿年ほどの内にメキメキと頭を
擡
(
もた
)
げ出したる俄分限
心の鬼
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
かくの如く主張する人々は自己の思想を同種類の隣人によつて定められたる狭隘なる圏外に
彷徨
(
さまよ
)
ひ出づることを許さなかつた。
恋愛と道徳
(新字旧仮名)
/
エレン・ケイ
(著)
相反して見ゆる二つの極の間に
彷徨
(
さまよ
)
うために、内部に必然的に起る不安を得ようとも、それに忍んで両極を恐れることなく掴まねばならぬ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
たとひ夜陰ひそかに
彷徨
(
さまよ
)
ひ寄つたかも知れないとしても、既にそこには昔の人達の影もなく、跡絶えて了つてゐたではないか。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
兄の粂之介が、狂気を装って、詩や歌を
謡
(
うた
)
って
彷徨
(
さまよ
)
っているのは、山にかくれている弟に、自分の訪れを告げて呼び出す策だったのである。
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何處に私は
彷徨
(
さまよ
)
つてゐるのか、何を云つてゐるのか、結局、何を感じてゐるのか? マルセイユの愚者の樂園に奴隷となつて
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
だが、二度目にひとりで、その同じ場所を訪れた時の記憶もヒリヒリと眼のまえに
彷徨
(
さまよ
)
っていた。みじめな、孤独な、
心呆
(
こころほう
)
けした旅であった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
それから三日目の朝のこと、笛吹川の
洪水
(
おおみず
)
も大部分は引いてしまった荒れあとの岸を、
彷徨
(
さまよ
)
っている一人の女がありました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
水月は渥美より手紙を受取つた翌日は例の新聞紙包を手に持つて京都市中を
彷徨
(
さまよ
)
うて居つた。それから其日の夜汽車で東京へ歸つてしまつた。
俳諧師
(旧字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
山岳や
茫々
(
ぼうぼう
)
たる
沙漠
(
さばく
)
や
曠野
(
こうや
)
の大海を
彷徨
(
さまよ
)
った原始の血であろうか。
或
(
あるい
)
は南方の強烈な光りによって鍛えられた血であろうか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
思い悩んでただ彼の周囲を
彷徨
(
さまよ
)
った。彼の慰めとなるような言葉を見出そうと願いながら、彼をいらだたせることを恐れて口もきけなかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それだから男も女も互いに本当の自分の半身を見つけ出そうとして、完全な愛を求めて果もなく
彷徨
(
さまよ
)
う悲しい宿命がそこから生じているのだと。
人間の結婚:結婚のモラル
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
時と荒廃とに任せていた彼の住居は崩れかけて来たので、飢えたる
山羊
(
やぎ
)
どもは
彷徨
(
さまよ
)
い出て、近所の牧場へ行ってしまった。
世界怪談名作集:14 ラザルス
(新字新仮名)
/
レオニード・ニコラーエヴィチ・アンドレーエフ
(著)
そこで彼女は数日間仕事を求めて、街を、工場から工場へと
彷徨
(
さまよ
)
うたのだろう。それでも彼女は仕事がなかったんだろう。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
入りにし人の跡もやと、
此處彼處
(
こゝかしこ
)
彷徨
(
さまよ
)
へば、とある
岸邊
(
きしべ
)
の大なる松の幹を
削
(
けづ
)
りて、
夜目
(
よめ
)
にも
著
(
しる
)
き數行の文字。月の光に立寄り見れば、南無三寶。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
私は、森の中を縫う、荒れ果てた
小径
(
こみち
)
を、あてもなく
彷徨
(
さまよ
)
い歩く。私と並んで、マリアナ・ミハイロウナが歩いている。
秋の歌
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私はN氏の案内で、正午すぎのひとときを、足にまかせて校庭の内部を
彷徨
(
さまよ
)
い歩いた。歩きながら私の心はたちまち幻怪な思いに打ちのめされた。
早稲田大学
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
外へ出て
其処
(
そこ
)
らを見廻しながら立っていると、まだ夜の気の
彷徨
(
さまよ
)
うている谷の向う河岸や此方の林の中で、
青蜩
(
ひぐらし
)
が
透
(
す
)
き
徹
(
とお
)
るような声で鳴き初めた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
私は来るべき工藝が徒労な
彷徨
(
さまよ
)
いをしないために、疑い得ない美の目標をさらに語ってゆこう。私は言葉を換えてこう云わざるを得ないのである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
重なり合い折れ
朽
(
くち
)
ている雑草の上を
黝
(
く
)
すんだ空気が、
飄々
(
ひょうひょう
)
と流れ、
彷徨
(
さまよ
)
うのを鈍い目で追跡し、ヤッと手を伸ばせば、その
朽草
(
くちくさ
)
の下の、月の
破片
(
かけら
)
が
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
先刻
(
さつき
)
まで箒を持つて
彷徨
(
さまよ
)
つてゐた、年老つた小使も何處かに行つて了つて、隅の方には隣家の鷄が三羽、柵を潜つて來てチョコ/\遊び𢌞つてゐる。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼の心も身もともに、闇が冷たい風とともに狂おしくひしめき合っているそのなかに
彷徨
(
さまよ
)
うているかのようであった。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
はや正午と云ふに
未
(
いま
)
だ朝の物さへ口に入れず、又半銭をも帯びずして、
如何
(
いか
)
に
為
(
せ
)
んとするにか有らん、猶降りに降る雨の中を
茫々然
(
ぼうぼうぜん
)
として
彷徨
(
さまよ
)
へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
大いなる巖を切り崩して歩み深山に迷ひ入つて
彷徨
(
さまよ
)
はねばならぬ。毒虫に刺され、飢え渇し峠を越え断崖を
攀
(
よ
)
ぢ谷を渡り草の根にすがらねばならない。
新らしき女の道
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
を弾き
乍
(
なが
)
ら山を
彷徨
(
さまよ
)
うた。勿論、この
計
(
はかりごと
)
は成就した。山の夜更けの三味の音は、甚七の注意を
牽
(
ひ
)
くに充分であった。
新訂雲母阪
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彷徨
(
さまよ
)
いあぐねてこの洞穴の一つのまえを通りかかった水無瀬女は、穴の中から
唵
(
うめ
)
き声に混ってこういうのを聞いた。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
今日
(
きょう
)
一日は山中に潜伏して、日の暮るるを待って里へ出る方が安全であろうと、
飢
(
ひもじ
)
い腹を抱えて
当途
(
あてど
)
も無しに
彷徨
(
さまよ
)
う
中
(
うち
)
に、彼は
大
(
おおい
)
なる谷川の
畔
(
ほとり
)
に出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そのものを捜しつつ山中をそちこちと
彷徨
(
さまよ
)
うて歩き廻り、遂にその日一日を山で暮して仕舞ったというのである。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
川口はハンドルを握って、二つの死体を乗せた自動車を運転しながら、夜の街を当なく
彷徨
(
さまよ
)
いました。恰度その時、どこかの時計が午前二時を打ちました
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
(夢みるように)……遠い、遥かな夢の野に、あてどもなく、
涯
(
はて
)
しもなく、ただ
彷徨
(
さまよ
)
いあるく彼でした。………
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
人に狩り取られて、親がないか、夫がないか、
孤
(
みなしご
)
、
孀婦
(
やもめ
)
、あわれなのが、そことも分かず
彷徨
(
さまよ
)
って来たのであろう。人
可懐
(
なつかし
)
げにも見えて近々と寄って来る。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この人々は
謝肉祭
(
カルナワレ
)
の頃
假粧
(
けはひ
)
して街頭を
彷徨
(
さまよ
)
ひたりしが、こゝにさへ假粧して集ひしこそ可笑しけれ。推するにその
打扮
(
いでたち
)
は軍隊の
號衣
(
ウニフオルメ
)
に擬したるものならん。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
港に兵隊が上陸したせゐか、いろいろな姿をした人達が
彷徨
(
さまよ
)
うてゐた。小雨が降つてゐた。孝次郎達は寒いも暑いも感じないほど季節には鈍感になつてゐた。
雨
(旧字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
鳥銃を肩に掛けて、沼を渡り、森を穿ち、登りつ、降りつ、幾時となく
彷徨
(
さまよ
)
うて、山鳩一羽、栗鼠二三頭を捕つて、喜んで還るのは、耐忍力ではありませんか。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
天南には弟が二人と、妹が二人とあるけれど、次ぎの弟は小學校も卒業しないで、諸國を
彷徨
(
さまよ
)
うた末、今は滿洲に居るさうで、もとより住職を繼ぐ資格もない。
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
広野に
彷徨
(
さまよ
)
う中ある窟に
亜米利加獅
(
ピューマ
)
の牝が子を産むに苦しむを見、大胆にも進んで産婆の役をして遣った
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
此忍びぬ心と、その忍びぬ心を破るに忍びぬ心と、二つの忍びぬ心が
搦
(
から
)
み合った処に、ポチは
旨
(
うま
)
く
引掛
(
ひッかか
)
って、
辛
(
から
)
くも棒
石塊
(
いしころ
)
の危ない浮世に
彷徨
(
さまよ
)
う憂目を
免
(
のが
)
れた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
酔漢や嫖客が三々五々姿を
彷徨
(
さまよ
)
わせて居り、深い夜更けを想う為には時計を見る等しなければなりませんが、一度其の区域を外れ貧しい小売商家街に這入りますれば
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
“彷徨”の意味
《名詞》
彷徨(ほうこう)
さまよい歩くこと。うろつくこと。
(出典:Wiktionary)
彷
漢検1級
部首:⼻
7画
徨
漢検1級
部首:⼻
12画
“彷徨”で始まる語句
彷徨彳亍