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嫌疑
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けんぎ
ふりがな文庫
“
嫌疑
(
けんぎ
)” の例文
惣太は
面
(
かお
)
の色を失って荷田の手を押し払って、それを拾い取って懐中へ
捻
(
ね
)
じ込もうとしますから、いよいよ
嫌疑
(
けんぎ
)
が深くなるわけです。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然
(
さ
)
ればと
云
(
いい
)
て
之
(
これ
)
を幕府の方に渡せば、殺さぬまでもマア
嫌疑
(
けんぎ
)
の筋があるとか取調べる
廉
(
かど
)
があるとか
云
(
いっ
)
て
取敢
(
とりあ
)
えず牢には入れるだろう。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ずるいやつた知ってたが、まさかあんな
嫌疑
(
けんぎ
)
を受けようとは思わんかった。いや近ごろの軍人は——僕も軍人だが——実にひどい。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ことに、七百両という女房の大金を持ち出して、ゆうべひと晩どこかをうろうろしていたということが、大きな
嫌疑
(
けんぎ
)
の種でした。
右門捕物帖:33 死人ぶろ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「ウン、それは」と検事は
控帳
(
ひかえちょう
)
の頁をくりかえしてみながら「湯呑をひっくりかえしたのは星尾信一郎だな。星尾に
嫌疑
(
けんぎ
)
がかかりますね」
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
かの女は
咄嗟
(
とっさ
)
の間に、おならの
嫌疑
(
けんぎ
)
を甲野氏にかけてしまった。そしてその
為
(
た
)
めに突き上げて来た笑いが、甲野氏への
法外
(
ほうがい
)
な
愛嬌
(
あいきょう
)
になった。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
また、その
嫌疑
(
けんぎ
)
のために、わが子の
松寿丸
(
しょうじゅまる
)
へ打首の厳命が出ていたことなども——まったく夢想もしていないらしかった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これをもってわが指令書の中にも、
首
(
しゅ
)
として土国の
嫌疑
(
けんぎ
)
を
醸
(
かも
)
すべき諸事を避け、宗教の事に
拘
(
かか
)
わる
条款
(
じょうかん
)
に至りては、ことに過多の寛裕を与えたり。
「ヒリモア」万国公法の内宗教を論ずる章(撮要)
(新字新仮名)
/
ロバート・フィリモア
(著)
そうしてこっちが驚いておこるとよけいにおもしろがってそうするのではないかという
嫌疑
(
けんぎ
)
さえ起こさせるのであった。
自由画稿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
彼等は
間牒
(
かんちょう
)
の
嫌疑
(
けんぎ
)
のため、臨時この旅団に加わっていた、第×聯隊の
歩哨
(
ほしょう
)
の一人に、今し方
捉
(
とら
)
えられて来たのだった。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「いや、
好奇
(
ものずき
)
から、かように下らぬ
服装
(
なり
)
をしておるため、何かは知らぬが、あらぬ
嫌疑
(
けんぎ
)
をこうむり、えらい人さわがせを致したな。まま許せ、許せ」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
別れぎわに浪士らは、稲雄の骨折りを感謝し、それに報いる意味で記念の陣羽織を贈ろうとしたが、稲雄の方では幕府の
嫌疑
(
けんぎ
)
を
慮
(
おもんぱか
)
って受けなかった。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
下手人
(
げしゅにん
)
はまだ確かには判らないが、村の百姓甚右衛門のせがれ甚吉というのが先ず第一の
嫌疑
(
けんぎ
)
者として召捕られた。
真鬼偽鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてそれが佐藤君に対する
嫌疑
(
けんぎ
)
となった。彼はそれがため、別に不敬罪として起訴された。我々はそのことを市ケ谷の未決監で聞いて大いに心配した。
赤旗事件の回顧
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
彼女は自分を好まない人々の憎悪を
大袈裟
(
おおげさ
)
に考えていた。人々から
嫌疑
(
けんぎ
)
をかけられてると思っていた。ちょっとしたことで身の破滅となるに十分だった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それに何の関係もない日本国政府の官吏がそういう話をするということは英国政府の
嫌疑
(
けんぎ
)
を受ける
嫌
(
きら
)
いがある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
秀吉においては、
嫌疑
(
けんぎ
)
があるというだけでも即時死刑にする充分な理由であった、そしてその怒れる支配者の意に従うよりほかに哀訴の道もなかったのである。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
かくてそれまでは自ら洗礼をうけ、あるいは切支丹に厚意を持っていた西国の諸侯は、幕府の
嫌疑
(
けんぎ
)
をおそれるがゆえに改宗し、あるいは切支丹の討伐にかかった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
とはなはだ
尋常茶飯事
(
じんじょうさはんじ
)
のごとき
口調
(
くちょう
)
で答えた。これが日本ならいろいろな
嫌疑
(
けんぎ
)
も受けるであろうが、自由の天地は違うと思いながら、僕はそのほうに足を運んだ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
ブロクルハーストさんがリード夫人からの受け賣りで、根據もないのに、大げさに
吹聽
(
ふいちやう
)
したこの
嫌疑
(
けんぎ
)
を、あなたは受けてゐる譯がないのを、私が知つてゐるやうに。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「すると何かの間違いでしょうか。間違いなら
嫌疑
(
けんぎ
)
とか何とかそう言って連れて行きそうなもんじゃありませんかね。」とお国は
馴
(
な
)
れ馴れしげに火鉢に
頬杖
(
ほおづえ
)
をついた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その牛肉屋の
牛
(
ぎゅう
)
が馬肉かもしれないという
嫌疑
(
けんぎ
)
がある。学生は皿に盛った肉を手づかみにして、座敷の壁へたたきつける。落ちれば牛肉で、ひっつけば馬肉だという。
三四郎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あっちが顔のいい上にあんなにはねッかえりで、
瓜田李下
(
かでんりか
)
の
嫌疑
(
けんぎ
)
なんぞにかまわないところへ。こっちがおかしくべたべたするたちだから。おかやきがやかましいのサ。
藪の鶯
(新字新仮名)
/
三宅花圃
(著)
「
嫌疑
(
けんぎ
)
の本人がおれでよかった。外様大名なら家が潰れる。そうむやみと潰してはいけない」
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
正しいことをすればする
丈
(
だけ
)
、言へば言ふ丈、その
嫌疑
(
けんぎ
)
を免かれる方便の如く思ひ
做
(
な
)
された。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
そないしてるあいだも時々お
腹
(
なか
)
痛
(
いと
)
なって出血するのんで、ここで何ぞの事でもあったら病院に
嫌疑
(
けんぎ
)
がかかりますし、そうかて苦しんでるもんを黙って見てるいう訳に行かんし
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
窃盗
(
せっとう
)
の
嫌疑
(
けんぎ
)
を
受
(
う
)
けて、
身体検査
(
しんたいけんさ
)
までされ、
半裸体
(
はんらたい
)
の
姿
(
すがた
)
で
立
(
た
)
ちながら、
職務
(
しょくむ
)
に
忠実
(
ちゅうじつ
)
すぎる男の
手
(
て
)
で
自由
(
じゆう
)
にされる——これがはずかしくないだろうか? しかし、これも
経験
(
けいけん
)
なのだ。
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
掏児
(
すり
)
に取られた
体
(
てい
)
にして届け出よう、そう為ようと考がえた、すると
嫌疑
(
けんぎ
)
が自分にかかり、自分は拘引される、お政と助は拘引中に病死するなど又々浅ましい方に空想が移つる。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
自分には絶対に
嫌疑
(
けんぎ
)
のかからない方法で、女をなぶり殺しにしたいというわけですね。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかえしに、
色仕掛
(
いろじか
)
けで、たらしこんでしこたま
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
させてやろうと
考
(
かんが
)
えたつてわけ。ところが、ほんとうに
因業
(
いんごう
)
おやじでどうにもならない。おまけに、
嫌疑
(
けんぎ
)
までかけられてさ。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
倉地が自分を捨てて逃げ出すために書いた狂言が計らずその筋の
嫌疑
(
けんぎ
)
を受けたのか、それとも恐ろしい売国の罪で金をすら葉子に送れぬようになったのか、それはどうでもよかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
手持の船に一家
眷族
(
けんぞく
)
を乗せてツーランに入津し、フェイフォに落着きたい意嚮らしかったが、海賊の
嫌疑
(
けんぎ
)
があるので、大年寄がいい返事をしなかったら腹を立てて
暹羅
(
シャム
)
のアユチャに行き
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ただ
遺憾
(
いかん
)
なるは
彼
(
か
)
の
脇屋
(
わきや
)
某が
屠腹
(
とふく
)
を命ぜられたる事を聞き、かかる
暴政
(
ぼうせい
)
の下に
在
(
あり
)
ては
何時
(
いつ
)
いかなる
嫌疑
(
けんぎ
)
をうけて首を
斬
(
き
)
られんも知れずと思い、その時
筐中
(
きょうちゅう
)
に
秘
(
ひ
)
し
置
(
おき
)
たる
書類
(
しょるい
)
は
大抵
(
たいてい
)
焼捨
(
やきすて
)
ました
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
嫌疑
(
けんぎ
)
がいかほど濃厚であろうと、それはかれの知ったことではない。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
内実
奢侈放逸
(
しやしはういつ
)
に
耽
(
ふけ
)
れることは其筋に
於
(
おい
)
て注意する所なりしが、鍛工組合に放ても内々調査したりし結果、一昨夜を以て臨時総会を開き、彼に露探の
嫌疑
(
けんぎ
)
充分なりとの故を以て審判委員五名を選定せり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
暢気
(
のんき
)
な者だで、
嫌疑
(
けんぎ
)
が懸つたばかりでは、捕縛する事ア出来ん。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
信康はむざんにも信長の
嫌疑
(
けんぎ
)
のために
生害
(
しょうがい
)
した。
佐橋甚五郎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
又「どうも
怪
(
け
)
しからん
嫌疑
(
けんぎ
)
を受けるものだねえ」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
とむろん正三君に
嫌疑
(
けんぎ
)
をかけた。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
……
嫌疑
(
けんぎ
)
の
徒輩
(
ともがら
)
を
引出
(
ひきだ
)
せ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
現場から行方不明となった松ヶ谷学士には、すくなからぬ
嫌疑
(
けんぎ
)
がかけられていたが、その生死のほどについては知る人が無かったのである。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そのうえにつめ跡がまたそろいもそろってあのとおり子どものものであってみれば、ますます
嫌疑
(
けんぎ
)
が濃くなるばかりでした。
右門捕物帖:33 死人ぶろ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
たとえば収賄の
嫌疑
(
けんぎ
)
で予審中でありながら○○議員の候補に立つ人や、それをまた最も優良なる候補者として推薦する町内の有志などの顔がそれである。
涼味数題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
何
(
いず
)
れも皆驚いて、神奈川の組頭が捕まえられたと云うは何事だと
云
(
いい
)
て、その翌日になって
聞
(
きい
)
た所が、今の手紙の一件で
斯
(
こ
)
う/\云う
嫌疑
(
けんぎ
)
だそうだと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
公金費消か何かの
嫌疑
(
けんぎ
)
を受けたダンテはやはり僕等自身のやうに自己弁護を必要としたのに違ひない。しかしダンテの達した天国は僕には多少退屈である。
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この竜神村のどこかに隠れているという
嫌疑
(
けんぎ
)
で、昨夜から引続いて、探索のあることであります。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
間
(
ま
)
もなく一台来た。敬太郎はわざと二人の乗った
後
(
あと
)
から
這入
(
はい
)
って、
嫌疑
(
けんぎ
)
を避けようと工夫した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これらの志士との往来が幕府の
嫌疑
(
けんぎ
)
を受けるもとになって、身辺に危険を感じて来た彼はにわかに京都を去ることになり、夜中
江州
(
ごうしゅう
)
の
八幡
(
やわた
)
にたどり着いて
西川善六
(
にしかわぜんろく
)
を訪い
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
羨
(
うらや
)
ましさの余り、欲しさの余りに悪心を起したものかとも想像されないことはないので、あれかこれかと数えてゆくと、その
嫌疑
(
けんぎ
)
者が二、三人ぐらいは無いでもなかったが
兜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてもちろんランジェー夫人の
軽佻
(
けいちょう
)
さは、そういう
嫌疑
(
けんぎ
)
に豊富な材料を与えるものだった。ジャックリーヌはそれへさらに
尾鰭
(
おひれ
)
をつけた。彼女は父のほうへ接近したかった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
嫌
常用漢字
中学
部首:⼥
13画
疑
常用漢字
小6
部首:⽦
14画
“嫌疑”で始まる語句
嫌疑者
嫌疑心
嫌疑薄
嫌疑薄弱