)” の例文
されば二十四、五の年増になっても十七、八の若い同様にお客の受けがよく、一度呼ばれれば屹度きっと裏が返るという噂さえあった。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「外ぢや御座いません、——あの柳橋で殺された吉原藝妓のやつこ——あののことに付きまして、親分に伺ひたいことが御座います」
藤「あいた/\/\、あなた、あいた……そんな乱暴なことをしては困りますねえ、わたくしなどの云う事を聞くではありませんから」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何だか赤ん坊になって生れ故郷へ帰ったような気持ちになってボンヤリ立っていると向うから綺麗な舞いが二人連れ立って来た。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ト月過ぎタ月すぎてもこのうらみ綿々めんめんろう/\として、筑紫琴つくしごと習う隣家となりがうたう唱歌も我に引きくらべて絶ゆる事なく悲しきを、コロリン
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
辰巳たつみごのみを典型的に身に持っているだった。すこしやつれの見えるのもかえって男には魅惑がある。二十三、四というところであろう。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けンど、ようやくのことで、南の新地で時々遊ぶらしい事を嗅ぎ出して、馴染のを尋ね当てゝ、客になってちょい/\呼びました。
まぶしいような電燈の灯影ほかげみなぎったところに、ちょうど入れ替え時なので、まだ二人三人のたちが身支度をして出たり入ったりしている。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
すこぶる道化たもので「腰付がうまいや。」と志田君が呟やいて居たが、私は、「若し芸妓の演芸会でもあつたらこのを賞めて書いてやらう。」
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
勿論もちろん、一流のお客さんたちは、評判になったの顔も知らないとあっては恥辱はじとばかりに、なんでもかんでも呼んで来いということになる。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
先刻さっき出て行ったが、いつの間にか村川の前に帰って来ていた。そして、割箸を袋の中から出して、白いかわいい手で、二つに割っていた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「正念寺様におまいりをして、それから木賃へくそうです。いま参りましたのは、あのがちょっと……やかたへ連れて行きましたの。」
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あながちそれを悪口とばかりいってしまえないというものは、いまの若いたちは、俥へ乗るのをあんまりうれしがらないかたちがあります。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
あんたはん、このに床をつけてやっておくんなはれ、でないと女郎屋の規則としてお金とる訳に行きませんよって——
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
そのは仲の町のある家の抱えであったが、さっぱりお座敷がなくて姐さんや朋輩からも冷遇されていたが、ついにわが身を果敢無はかなんで死をえらんだ。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
柳橋ではどちらも評判の売れっで、屋敷まで文をよこすほどのぼせあがっているが、永井はまるで見向きもしない。
古今集巻之五 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あまり売れのよくないが二人いるきりで、銀子の月々入れる少しばかりの看板料すら当てにするようになっていた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その時分気心の合っていた札幌の芸者で君太郎という二十一になる自前のと、しばらく人眼を避けて二人だけになりたい一種の逃避行なのであった。
生不動 (新字新仮名) / 橘外男(著)
里勇と云うのは宗右衛門町から出ているで、おさく師匠から特別に可愛がられている山村流の舞い手であった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
じゃの道はへびさ。それに、あたし、光丸さんと踊りながら、あのが、妊娠してることに気づいたよ。踊るのが苦しそうだったし、肩で息ばかりしてたわ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
東京生れのが靜かに爪彈か何かで三味線を彈いてゐるさまなどがをりをり繪になつて私の眼に映つて見えた。
日光 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
暫くして「今晩は、女将さん」と三人の若い、しかしあまり美しくないが三味線も持たずに上がって来た。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
邪魔な独り者には吉原でよいが待っておるとよ。京弥! 程よく可愛がってつかわせよ。——流水心なく風また寒し。遙かに華街かがいの灯りを望んでわが胸独り寥々……
これもまたばれて行くと見え、箱屋一人連れ、つま高く取つて、いそ/\と二人の前を通過ぎた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あれじゃない。ホラ、あの右にいる黒いドレスの方だ。あれは、まさかここのじゃあるまい」
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
お駒はことし二十二の勤め盛りで、眼鼻立ちは先ず普通であったが、ほっそりとした痩形の、いかにも姿のいい女で、この伊勢屋では売れっのひとりに数えられていた。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蝶子は声自慢こえじまんで、どんなお座敷ざしきでも思い切り声を張り上げて咽喉のどや額に筋を立て、襖紙ふすまがみがふるえるという浅ましいうたい方をし、陽気な座敷には無くてかなわぬであったから
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
『もう店はしてえしまへんがな。どもしも二人居るだけで、阿母おかアはんと四人よつたりだす。……お茶屋はんから口がかゝるとどもを送るだけで、家へはお客を上げえしまへん。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
芳男はお槙のほかによし町の小仙というの旦那をつとめているね。小唄の師匠というのに入れあげてもいるそうだ。修作もよし町のヒナ菊という妓の旦那を相つとめているね。
わかいを二人招んで騒いでゐると、やがて対岸で竹法螺たけぼらが鳴りだし、箱丁はこやが芸者のお直しを交渉に来るのが道中往復に困難なため、いつも竹法螺を吹いて間に合はすのだと云ふ。
落語家温泉録 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
「……気質きだても素直だし、顔もよい方だし、肌も綺麗だし、旦那の一人や二人、出来ない筈はないんだが……。まったく、看板みたいなだ、どこか、足りないんじゃないかしら……。」
操守 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
この娼婦達が何んと子供っぽい迄に若く、子供さながらに元気でお喋舌しゃべりで悪戯いたずら的であることか。それは全く吃驚びっくりする程なのだ。一見どのもどの妓も十六七にしか見えないのだ。
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「兄さん、気晴らしに一遍遊びにきまひよかいな。」延若はにや/\笑ひながら靴滑りのやうに曲つたあごを撫でまはした。「あんたに見せたい/\と思うてるが一人おまんのやぜ。」
むしろ美し過ぎるほど美しい女で、その美しいのをこってりとあでやかにつくっている、それは芸妓げいしゃだ。年も若いし、相当の売れっになっている芸妓——兵馬は一時いっとき、それの姿に眼を奪われて
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乞う。取次が出てくる。押問答になる。それだけ——まず、命に別条の無い方へ廻りたい。百石の御加増はいらんが、命はいる。拙者は不用だが、あのがいると、おっしゃる。はいはい左様で御座い
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
桃割のの瞳だけしいです
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
春著はるぎ右のたもとに左の手
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
ほかじゃございません、——あの柳橋で殺された吉原芸妓のやっこ——あののことにつきまして、親分に伺いたいことがございます」
楼「それでは小主水の花魁、お前に預けますから、何うか意見をして遣って下さい、わしもこのにくうて折檻までするのではないからね」
「どうして、この辰巳たつみでも、あんなに売れたはなかった程だけれど、ちょっと、おかしな事が、ぱっと聞えたものだからさ」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金瓶大黒の今紫の男舞といえば、明治もずっと末になって、今紫といったの晩年まで地方の劇場では売りものにしていた。
あんな派手な落籍祝ひきいわいどころじゃありません、貴郎あなた着換きがえも無くしてまで、借金の方をつけて、夜遁よにげをするようにして落籍ひいたんですもの。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家にいる他のたちはまたそれを面白がって、対手になって戯弄からかうと、彼女は生真面目きまじめな顔をしてそれに受けこたえをしているという有様である。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
先刻さつき膳を運ぶ時、目八分に捧げて、眞先に入つて來て、座敷の中央へ突立つた儘、「マア怎うしよう、私は。」と、仰山に驚いた姿態しなを作つたであつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
この碑は勿論空襲の際に破壊されたと思う。藤田医院には土地柄くるわたちなども診察を受けにきていた。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
昔はこのきょうにして此ありと評判は八坂やさかの塔より高くその名は音羽おとわの滝より響きし室香むろかえる芸子げいこありしが、さる程に地主権現じしゅごんげんの花の色盛者しょうじゃ必衰のことわりをのがれず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これも花村からの夤縁いんねんで、取引することになり、抱えの公正証書を担保に、金を融通するので、勘定日には欠かさず背広姿で、春よしの二階へ現われるのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「馬子にも衣裳という奴じゃ。あの、この妓があれば見せたいのう。駕籠じゃ。支度せい」
その右側のの眼鼻立ちが鶴原の未亡人にソックリのように見えたので、私は思わず微笑しながら近付いて名前をきいたら右側のは「美千代」、左側のは「玉代」といった。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
金に窮してのうえではないので、自前じまえでもよいのだが、身分を隠すため、わざと、借金をした。新之助も、君香も、「よいが来てくれた」といって、すこぶる、よろこんだ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)