奥山おくやま)” の例文
旧字:奧山
「先生。大変な騒ぎで御座ります。奥山おくやまねえさんが朝腹あさっぱらお客を引込もうとした処を隠密おんみつ見付みつかりお縄を頂戴ちょうだいいたしたので御座ります。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
仲見世なかみせだの、奥山おくやまだの、並木なみきだの、駒形こまかただの、いろいろ云って聞かされる中には、今の人があまり口にしない名前さえあった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三芝居もどんなものだか、まつの若衆人形の落ちこぼれが、奥山おくやまあたりに出没しているとのことだが、それも気が進まない。活人形いきにんぎょうも見てしまった。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
牧之ぼくしおもへらく、鎮守府将軍ちんじゆふしやうぐん平の惟茂これもち四代の后胤かういん奥山おくやま太郎の孫じやうの鬼九郎資国すけくに嫡男ちやくなん城の太郎資長すけながの代まで越後高田のほとり鳥坂とりさか山に城をかまへ一国にふるひしが
一 遠州奥山おくやま白鞍山しらくらやまは、浦川の水源なり。大峰を通りおおよそ四里、山中人跡まれなり。神人住めり。俗に山男と云ふ。雪中に其跡を見て盛大なることを知る。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それは、むかし鎌倉かまくら奥山おくやまでよくききれた時鳥ほととぎすこえ幾分いくぶんたところもありますが、しかしそれよりはもッとえて、にぎやかで、そして複雑こみいった音色ねいろでございます。
近江屋あふみや旦那だんなかへつてて、梅喜ばいきいたから浅草あさくされてつたが、奥山おくやま見失みはぐつたけれども、いたからべつ負傷けがはないから安心してなとはれた時には
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥山おくやま真木まき板戸いたどおとはやいもがあたりのしも宿ぬ 〔巻十一・二六一六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それはとにかく、その勧工場のもう一つ前の前身としては浅草あさくさ仲見世なかみせ奥山おくやまのようなものがあり、両国りょうごくの橋のたもとがあり、そうして所々の縁日の露店があったのだという気がする。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「どうした、奥山おくやまきつねにでもつままれたのか」と、岩本はまた笑った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あとには子供こども一人ひとり其時そのとき戸長様こちやうさま帳面前ちやうめんまへ年紀とし六ツ、おや六十で二十はたちなら徴兵ちようへいはおこぼしとなに間違まちがへたかとゞけが五ねんおそうして本当ほんたうは十一、それでも奥山おくやまそだつたからむら言葉ことばろくにはらぬが
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いや、知っています、知っています。あれは奥山おくやまのお光ですよ」
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
奥山おくやますがぬぎふるゆきなばしけむあめなふりそね
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
奥山おくやま高くのぼり行き
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蘿月はその頃お豊の家を訪ねた時にはきまっておいの長吉とお糸をつれては奥山おくやま佐竹さたけぱら見世物みせものを見に行ったのだ。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
此頃誠太郎はしきりに玉乗りの稽古をしたがつてゐるが、それは、全く此間このあひだ浅草の奥山おくやまへ一所にれてつた結果である。あの一図な所はよく、あによめの気性を受けいでゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其様そんなことをつたつてやうがない、さアこゝは奥山おくやまだ。梅「へえ……。ときよろ/\してゐる中に、近江屋あふみや旦那だんな見失みはぐつてしまひました。梅「金兵衛きんべゑさアん……近江屋あふみやさアん……。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥山おくやまにしおるしおりたれのため身をかき分けて生める子のため
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
蘿月らげつころとよの家を訪ねた時にはきまつてをひ長吉ちやうきちとおいとをつれては奥山おくやま佐竹さたけぱら見世物みせものを見に行つたのだ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
以上に説くところを参考して推論して見ると、吾輩のかんがえでは奥山おくやまさると、学校の教師がからかうには一番手頃である。学校の教師をもって、奥山の猿に比較しては勿体もったいない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小梅こうめ伯父をぢさんにつれられて奥山おくやま見世物みせものを見に行つたり池のこひをやつたりした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
中洲真砂座なかすまさござといふ芝居の横手の路地にも銘酒屋楊弓場ようきゅうば軒を並べ、家名小さく書きたる腰高障子こしだかしょうじの間より通がかりの人を呼び込む光景、柳原の郡代、芝神明、浅草公園奥山おくやま等の盛況に劣らず。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)