土耳古トルコ)” の例文
マカラム街の珈琲コーヒー店キャフェ・バンダラウェラは、雨期の赤土のような土耳古トルコ珈琲のほかに、ジャマイカ産の生薑しょうが水をも売っていた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
T君は勿論もちろん僕などよりもこう云う問題に通じていた。が、たくましい彼の指には余り不景気には縁のない土耳古トルコ石の指環ゆびわまっていた。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
して、四十二にもなって、追いかえされて来るなんて……あなた、土耳古トルコのアンカラへ赴任なすった千田公使、ごぞんじでしょう?
野萩 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
やれ「土耳古トルコの伯爵に招待された」ことの「セルビヤの王子が来た」ことのと、その他いわく何、曰くなにと、それぞれ大奮闘の末
くれぐれも言うことであるが、吹込みの悪さを気にする人は、『フランス組曲』『土耳古トルコ行進曲ソナタ』などを求めるのが無事だろう。
彼女自身に云わせれば母親の方に土耳古トルコ人の血が交っていると云うことで、その肌の色の白皙はくせきでないのを隠そうためにしているのだが
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
薔薇ばら色、丁子色、朱色、土耳古トルコだま色、オレンジ色、群青、すみれ色——すべて、繻子しゅすの光沢を帯びた・其等の・目もくらむ色彩に染上げられた。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
口さがないホテルの使童ボーイ達は奇妙な取り合わせの二人を評して、広東産の鶏と土耳古トルコ産まれの孔雀とを交接かけあわせたようだと云うのであった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
自分で背中は見えないから、私が土耳古トルコ風呂の女番人のようにタオルを振り廻し、彼女の頸から黒い東洋の毛を払い落さなければならない。
シナーニ書店のベンチ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
さて東羅馬ローマを滅ぼして自ら取って代った土耳古トルコの文明は、何時いつまで継続したろう。須臾しゅゆにして自ら堕落し滅亡したのである。
文明史の教訓 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
これは帰朝の途上わたくしが土耳古トルコの国旗に敬礼をしたり、西郷隆盛さいごうたかもりの銅像を称美しなかった事などに起因したのであろう。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
どういう淹れ方か? 私は一遍、東京で土耳古トルコ風の淹れ方だとかいって、叔父の相伴しょうばんをしたことがありましたが、ちょうどそれと同じでした。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
既に印度いんどかすめて、デリヒを取り、波斯ペルシヤを襲い、土耳古トルコを征し、心ひそかに支那しなうかがい、四百余州を席巻して、大元たいげんの遺業を復せんとするあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
男子が一人で同時に幾人の女を独占することは丁度今もその遺風を伝えている土耳古トルコ帝の如きものであった。一夫多妻は最も元始的なものである。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
独逸も加盟を希望して片足位は入ったようなものであるが、全く入ろうとしていないのは米国、メキシコ、土耳古トルコ、アフガニスタン等であると述べた時
土耳古トルコ使しくわん佛蘭士フランス使くわん武官くわん以下西よう人の住宅じうたく非常ひぜうに多い外になかなかとく色のあるじう人を持つてゐる。
そして軽食ランチの膳立であろう、うまそうな品々がならべてあった。やがて正面の玄関口に廻ってみると、そこには二つの土耳古トルコ青色せいしょくの植木鉢が両側に控えていた。
そのM・A・ロスコー氏の足跡は西班牙スペイン土耳古トルコ智利チリ、日本、等々々の一二等書記官どころを転々し、最後に支那、香港ホンコンの領事として着任しているようですが
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
土耳古トルコ人たちは、みんなまっ赤なターバンと帯とをかけ、ことに地学博士はあちこちからの勲章くんしょうやメタルを、その漆黒しっこくの上着にかけましたので全くまばゆい位でした。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
……絵で見るような、いや、看板だから絵には違いない……長剣を帯びて、緋羅紗ひらしゃ羽被はおった、帽子もお約束の土耳古トルコ人が、出刃じゃない、拳銃ピストルで撃っているんだ。
「紅子、お前にちょっと聞くが、儂が土耳古トルコで買ってきたといった珍らしい彫刻のある指環を、お前にやって置いたが、先日そいつを、どこかで失くしたと云ったね」
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこに土耳古トルコ帽を被った五十位の露人と、その妻らしき婦人と、三人の娘らしい女が居りました。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
土耳古トルコの金持のめかけ、アメリカ世界観光船へ乗組の遊び女、これらの職業に携わって居る間に彼女は小田島に度々たびたび遇って、いくらも生活の愚痴や自慢話はするのだったが
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
Mueller は同じ工合に又他の譬を使つて居ります。土耳古トルコ王は子供の時に遊友達があると云ふと、自分が位に即くと友達を絞殺してしまふ、自分が一人で權を握る。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
王国の賛沢な偕調メロデーが部屋を満たして、アングロサクソンの英諾威えいノルウエー人、ケント族の仏伊人、スラブの露墺ろおう人、アイオニアンの血族希臘ギリシア人、オットマン帝国の土耳古トルコ人等に交って
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
その瞳は翁吉喇土オンギラアトの湖のごとく、口唇くちびる土耳古トルコ石、吐く息は麝香猫じゃこうねこのそれにも似て——。
土耳古トルコ語で「氷雪白き山岳の父」という意味だそうである、同氏はトランス・ヒマラヤを越えて、西方へ行き、ダングラユムツオ Dangrayumtsuo なる湖水のかたわらに
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
それが段々と分れて支那人・満洲人・蒙古人・土耳古トルコ人というようになって来る。
蛋白石色オパアルいろ薔薇ばらの花、後宮こうきゆう香烟かうえんにつつまれてやす土耳古トルコの皇后、蛋白石色オパアルいろ薔薇ばらの花、絶間無たえまななでさすりのつかれ、おまへの心はしたたかに滿足した惡徳の深い安心を知つてゐる、僞善ぎぜんの花よ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
土耳古トルコ埃及エジプト、などの西洋との交流が頻繁ひんぱんで、その文化的影響を、中国大陸よりも逆に早くうけていたこの羗族軍きょうぞくぐんは、すでにくろがねで外套した戦車や火砲を持ち、またアラビヤ血種の良い馬を備え
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土耳古トルコなの。悦んでるわ。文明国はもう厭き厭きだつて……。」
花問答 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
皮膚は浅黒くて、土耳古トルコ人みたいな顔だなと僕は思った。
(新字新仮名) / 梅崎春生(著)
先年土耳古トルコ軍艦の沈んだのも此處だといふことなど。
熊野奈智山 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
つまみの厚い土耳古トルコ煙草に火をつける。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
土耳古トルコ人にもせるびや人にも諾威ノウルエー人にも波蘭ポーランド人にも、ぶらじりあんにもタヒチ人にも、そして日本人にも第二の故郷である異国者の自由港。
今、下からは寿江子のかけているラジオでベートウヴェンの「土耳古トルコ行進曲」が響いて居ります。どうもこの音というものが。
螺鈿らでんの箱に入れた土耳古トルコ石を捧げて歩む少女の一群、緑玉髄を冠に着けたる年若き騎士の一団。司祭の頭には黄金の冠あり。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
して、四十二にもなって、追いかえされて来るなんて。あなた土耳古トルコのアンカラへ赴任なすった千田公使、ごぞんじでしょう
ユモレスク (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
独逸ドイツはその汎独主義の手先に土耳古トルコ人をまで使役して豺狼さいろう飽く無きの大欲を遂げんと欲し、譎詐けっさ百端至らざる無かった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
珈琲の中でわたしの最も好むものは土耳古トルコの珈琲であった。トルコ珈琲のすこし酸いような渋い味いは埃及エジプト煙草の香気によく調和するばかりでない。
砂糖 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
現にこの『土耳古トルコ行進曲ソナタ』など、手際のよさはケンプのに比べて格段の違いであるが、ケンプの稚拙な親しみを採る人の方が多いかも知れない。
土耳古トルコ巻の M. C. C. のかおりの高い烟を私の顔に吹き附けながら、指にめて居る宝石よりも鋭く輝く大きい瞳を、闇の中できらりと私の方へ注いだ。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はだなりに、土耳古トルコ人がねらって縫打に打つんだが、弾丸たまの煙が、さっ、颯と、薄絹を掛けて、肉線をまとうごとに、うつくしい顔は、ただ彫像のようでありながら、乳に手首に脈を打つ。
南の方はそら一杯にれた。土耳古トルコ玉だ。それから東には敏感な空の白髪が波立つ。光の雲のうねと云った方がいゝ、南はひらけたトウクォイス、東は銀の雲のうね、書いて行かうか。
山地の稜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしは又人間の堪へ得る限りの肉体的苦痛をめてゐる。貧乏のどん底に落ちたこともある。が、一方いつぱうには代議士に選挙されたこともある。土耳古トルコのサルタンの友だちだつたこともある。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
歓喜の最中夢中独待の下品な言葉をもらすアングロサクソン種の和蘭オランダ人、オットマン帝国の土耳古トルコ人からは古代のシステムの掟を、アイオニア民族の希臘ギリシャ人からは商売の極意を教わりました。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
私は『とんだタチアナ姫だ』と思いましたが、職責上確める必要があると思いましたから、土耳古トルコ帽を被った露西亜人が、娘達の後から急いでプラットフォームを去ろうとするのに、やっと追付いて
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
部屋の中央には土耳古トルコ更紗さらさおおうた、巨大な丸卓子テーブルが置いてある。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
婦人に化けたとしても、あの顔をどうするのだ。顔をかくしている婦人なんて印度インド土耳古トルコなら知らぬこと、この日の本にありはしない。婦人の死骸の行方が判らない限りこの問題は解決がつかない。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は私の妻の前身は土耳古トルコのサルタンだって言って居ました
ガルスワーシーの家 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)