同一おんなじ)” の例文
何しろ、まるでもって赤十字なるものの組織を解さないで、自分等を何がなし、戦闘員と同一おんなじに心得てるです。仕方がありませんな。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、なぜということもない。辛いのは誰しも同一おんなじだ。お前さんと平田の苦衷こころを察しると、私一人どうして来られるものか」
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
古い錦絵にしきえの滝夜叉姫と踊り屋台に立ったお鶴とは全く同一おんなじだったように思われて
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
それに不思議にもその娘は常時いつも同一おんなじ節ばかりを弾いていたのでございます。
馬士まごもどるのか小荷駄こにだが通るか、今朝一人の百姓に別れてから時の経ったはわずかじゃが、三年も五年も同一おんなじものをいう人間とは中をへだてた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにしても何と二人の女は、その顔立から肉付から、年恰好から同一おんなじなのであろう! そうして何とこの二人は、経歴から目的から同一なのであろう! 二人の女の関係はどうなのであろう?
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
馬士まごもどるのか小荷駄こにだとほるか、今朝けさ一人ひとり百姓ひやくしやうわかれてからときつたはわづかぢやが、三ねんも五ねん同一おんなじものをいふ人間にんげんとはなかへだてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おお吃驚びっくりした……慌てるわねえ、お前さんは。いいえ、自殺じゃないけれども、私の考えだと、やっぱり同一おんなじだわ、自殺をしたのも。」
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ふむ、豪勢なことを言わあ。平民も平民、きさまの内ゃ芸妓げいしゃ屋じゃあないか。芸妓も乞食も同一おんなじだい。だから乞食の蒲団になんか坐るんだ。」
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おいら何もこれを盗って、儲けようというんじゃあなし、ただ遊んでたのしむんだあな。犬猫を殺すのも狩をするのも同一おんなじこッた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また全く左様そうでしやう、そでに赤十字の着いたものを、戦闘員と同一おんなじ取扱をしやうとは、自分はじめ、恐らく貴下方あなたがたにしても思懸おもいがけはしないでせう。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いやな事でござります。黒門へ着かしって、産所へ据えよう、としますとの、それ、出養生の嬢様の、お産の床と同一おんなじじゃ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勿論、白状はしなかったさ。白状はしなかったに違無いが、自分で、知ってれば謂おうというのが、既に我が同胞どうぼうの心でない、敵に内通も同一おんなじだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また全くそうでしょう、袖に赤十字の着いたものを、戦闘員と同一おんなじ取扱をしようとは、自分はじめ、恐らく貴下方あなたがたにしても思懸おもいがけはしないでしょう。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いいえ、貴下あなた、この花を引張ひっぱるのは、私を口説くのと同一おんなじ訳よ。主があるんですもの。さあ、引張って御覧なさい。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白状はしなかつたにちがいないが、自分で、知つてればいはうといふのが、既に我が同胞どうぼうの心でない、敵に内通も同一おんなじだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なんのお前様まへさまたばかりぢや、わけはござりませぬ、みづになつたのはむかふのやぶまでゞ、あと矢張やツぱりこれと同一おんなじ道筋みちすぢやままでは荷車にぐるまならんでとほるでがす。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
支那チャン探偵いぬになるやうな奴は大和魂やまとだましいを知らねえ奴だ、大和魂を知らねえ奴あ日本人のなかまじやあねえぞ、日本人のなかまでなけりや支那人チャン同一おんなじだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
どの道、妙に惚れてる奴だから、その真実愛しているものの云うことは、娘に取っては、神仏かみほとけ御託宣おつげ同一おんなじです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ちょいと、こぼしたの。やっぱり悪戯いたずらな小僧さん? 犬にばっかりからかっているんでしょう、私ンとこのも同一おんなじよ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(いいえ、もう御覧の通り、土間も同一おんなじでございますもの、そんな事なぞ、ちっともおいといには及びませんの。)
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三味線のあい同一おんなじだ。どうです、意気なお方に釣合わぬ……ン、と一ツねないと、野暮な矢の字が、とうふにかすがい、ぬかに釘でぐしゃりとならあね。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ト来た日にゃ夢もまた同一おんなじだろう。目が覚めるから、夢だけれど、いつまでも覚めなけりゃ、夢じゃあるまい。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先生御串戯ごじょうだんを、勿論あれです、お夏さんは華族てえと大嫌だいきらいです。わっしが心も同一おんなじだ、癬は汚えに違いません、ですが、それがどうということはありませんよ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若衆は、一支えもせず、腰を抜いたが、手をく間もない、仰向あおのけにひっくりかえる。独りでに手足が動く、ばたばたはじまる。はッあァ、鼬の形と同一おんなじじゃ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
自分がこの人を介抱しようとするのは、眠った花を、さあ、咲け、と人間の呼吸いきを吹掛けるも同一おんなじだと。……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大苦おおくるしみなわけでござりまして、貴女方と同一おんなじと申すと口幅ったい、その数でもござりませんが、……稲葉家さんに、お世話になっておりますので、はい。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも今時分、よしんば落して行った処にしろ、お前何だ、拾って店へ並べておきゃ札をつけて軒下へぶら下げておくと同一おんなじで、たちまちとんびトーローローだい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なんでも思い込んだらどうしても忘れることのできないたちで、やっぱりおまえと同一おんなじように、自殺でもしたいというふうだ。ここでおもしろいて、はははははは
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも降続きました五月雨さみだれのことで、さらわれて参りましたと同一おんなじ夜だと申しますが、皺枯しわがれた声をして
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天人に雲の上から投落されたも、お前ん、勿体ないだが、乙姫様に海の底から突出されたも同一おんなじですだ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月こそ違うが、日は同一おんなじ、ちょうど昨日の話で今日、あらためてその甥御様に送る間にあった、ということで、研賃とぎちんには多かろうが、一杯飲んでくれと、こういうのじゃ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お米は舌を食い切っても爺の膝を抱くのは、いやかぶりをふり廻すと申すこと。それは私も同一おんなじだけれども、罪のないものが何をこわがって、煩うということがあるものか。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
理窟を言えば同一おんなじで、垣根にあるだけの雪ならば、無理に推せばくけれど、ずッとむこうの畠から一面に降りつづいて、その力が同一ひとつになって、表からおすのだもの。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「熱はお前さんを見て帰ったって同一おんなじだ、何暗いたッて日中ひなかよ、構やしない。きっとそこらにうろついているに違いない、ちょっと僕は。おい、姉さん帰りに寄ろう。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
家へ顔を出しますのはやっぱり破風はふから毎年その月のその日の夜中、ちょうど入梅つゆ真中まんなかだと申します、入梅から勘定して隠居が来たあとをちょうど同一おんなじように指を折ると
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
牡丹の花の影を、きれいな水から、すっと出て、斑蝥の前へくと思うと、約束通り、前途むこう退さがった。人間に対すると、その挙動は同一おんなじらしい。……白鷺が再び、すっと進む。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あま心中立しんじゅうだてを物珍らしそうに、世の中にゃあ出ねえの、おいらこれッきりだのと、だらしのねえ、もう、情婦いろを拵えるのと、坊主になるのとは同一おんなじものじゃあございませんぜ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これが風説うわさの心中仕損しそこない。言訳をして、世間が信ずるくらいなら、黙っていても自然おのずから明りは立つ。面と向ってきさまが、と云うものがないのは、君が何にも言わないと同一おんなじなんだ。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やはり同一おんなじようなたいらな土で、客人のござる丘と、向うの丘との中にの形になった場所。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねえ、親方、どうですお婆さん、寸分違わねえ、同一おんなじこッたい、こいつあ面白えや。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
以来心にかかって、蝶吉を落籍ひかそうと思うたびに、さることはあらじと知りながら、幼い時からの感情で、羽織の同一おんなじのが兆をなして、恐らく、我が手に彼を救うてこれを掌中の玉とせんか
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
浪のうねると同一おんなじに声が浮いたり沈んだり、遠くなったりな、近くなったり。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
 娘は幸福しあわせではないのですか。火も水も、火は虹となり、水は滝となって、彼の生命を飾ったのです。抜身ぬきみの槍の刑罰が馬の左右に、そのほまれを輝かすと同一おんなじに。——博士いかがですか、僧都。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やっこは絵に在る支那兵の、腰を抜いたと同一おんなじ形で、肩のあたりで両手を開いて、一縮ひとすくみになった仕事着のすそに曰くあり。戸外おもてから愛吉が、足の𧿹指おやゆびの股へ挟んで、ぐッとそっちへ引くのであった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と入ったまま長火鉢に軽く膝をいて、向うへ廻った女房に話しかけたが、この時門口を見返ると、火の玉はまだ入らず、一件の繻子張を引提ひっさげながら、横町の土六尺、同一おんなじ処をのそりのそり。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もともと人間がそういうことをこしらえたのなら、誰だって同一おんなじ人間だもの、何密夫まおとこをしても可い、駈落かけおちをしても可いと、言出した処で、それが通って、世間がみんなそうなれば、かえって貞女だの
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうだろう、人情は誰も同一おんなじだから言うことも違わないんだよ。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このあたりこそ気勢けはいもせぬが、広場一ツ越して川端へ出れば、船の行交ゆきかい、人通り、烟突えんとつの煙、木場の景色、遠くは永代、新大橋、隅田川の模様なども、同一おんなじ時刻の同一頃が、親仁おやじの胸に描かれた。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのおもいが段々こうじて、朝から晩まで、寝てからも同一おんなじことを考えてて、どうしてもその了簡りょうけんがなおらないで、後暗いことはないけれど、なんに着け、に着け、ちょっとの間もそのおもいが離れやしない。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)