“午睡(ひるね)” の例文
そこへ来て午睡(ひるね)をする怠け者もあった。将棋を差している閑人(ひまじん)もあった。女の笑顔が見たさに無駄な銭を遣いにくる道楽者もあった。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「とにかく、機関が停っては、君がここに突立って、コンパスと睨めっくらしていたって無駄さ。船長室へ往って、午睡(ひるね)でもするさ」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
毎日、筑阿弥はきっと午睡(ひるね)をした。日吉は得たりとばかり、その隙間に抜け出すのである。やがて筑阿弥が、畑や堤に姿を現わして
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「怪しいもんだぜ。真昼間(まっぴるま)、表を閉めて、女将さんが二階でグウグウ午睡(ひるね)をしている支那料理といったら大抵、相場はきまってるぜ」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
相変らず午睡(ひるね)ですかね。午睡も支那人の詩に出てくると風流だが、苦沙弥君のように日課としてやるのは少々俗気がありますね。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
午睡(ひるね)をしたときちょっと風邪をひいたのが祟(たた)って、また熱が高くなり、胸の痛みと食欲不進と、全身のぬけるようなけだるさがぶり返した。
おばな沢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
狹衣子(さごろもし)が手傳(てつだ)ひに來(き)ては、つい、社(しや)に出(で)る時間(じかん)を忘(わす)れた事(こと)や、佛骨子(ぶつこつし)が穴(あな)の中(なか)で午睡(ひるね)をした事(こと)や、これ等(ら)は奇談(きだん)の主(おも)なるもの。
晝(ひる)は午睡(ひるね)が許(ゆる)されてあるので其(そ)の時間(じかん)を割(さ)いて器用(きよう)な彼(かれ)には内職(ないしよく)の小遣取(こづかひどり)も少(すこ)しは出來(でき)た。好(す)きな煙草(たばこ)とコツプ酒(ざけ)に渇(かつ)することはなかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
午睡(ひるね)する人達(ひとたち)もあわててとび起(お)き、上(うえ)を下(した)への大騒(おおさわ)ぎを演(えん)じたのも道理(どうり)、その来客(らいきゃく)と申(もう)すのは、誰(だれ)あろう、時(とき)の帝(みかど)の珍(うず)の皇子(みこ)
「就いては、己が午睡(ひるね)をしてゐる間中、枕もとに坐つてゐて貰ひたいのだが。」と、遠慮がましく頼むではございませんか。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
蔵の前の板の間に、廂間(ひあわい)の方から涼しい風の通って来るところを択(えら)んで、午睡(ひるね)の夢を貪(むさぼ)っている人があった。大勝の帳場だ、真勢さんという人だ。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
誠に済みませぬがお通しなすって下さりまし、なるたけお午睡(ひるね)の邪魔(じゃま)になりませぬようにそっと通行いたしまする。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
皆んな午睡(ひるね)の最中に、電話で自分の女房を呼び出すと、君達証人の前で予め双生児(ふたご)の指紋をつけて置いた兇器で刺殺(さしころ)し、君達の目の届かない曲角の向うで
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
だが、足るを知ること斯(か)くの如き男でも、やはり、病が酷(ひど)いよりも軽い方がいいし、真昼の太陽の直射の下でこき使われるよりも木蔭で午睡(ひるね)をした方が快い。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
喋(しゃべ)るだけ喋った未亡人は、これから習慣の午睡(ひるね)をしなければならぬと、そのまま寝室に籠(こも)って、またさっきの頬髭(ほおひげ)が、二階各室から、階下地階へと案内してくれる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
清三はかみさんからもらった萩の餅に腹をふくらし、涼しい風に吹かれながら午睡(ひるね)をした。夢(ゆめ)うつつの中にも鐘の音、駒下駄(こまげた)の音、人の語り合う声などがたえず聞こえた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
休んでると、へんな奴が二人来て、俺(おいら)を盗人(ぬすっと)が午睡(ひるね)してると云うから、撲(なぐ)りつけて諍闘(けんか)になったところへ、その女が来て仲裁してくれたのだ、それで俺は八幡様を出て来たものの
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「姐さんと喧嘩をして家(うち)を飛出してしまったんですって。それで少しばかりお金がいるからッて相談に来たのよ。断ったんだから構やしないのよ。」と云って、その儘午睡(ひるね)でもする気か
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「うむ。一八郎ももどった。午睡(ひるね)をしている。おせい様と歌子は、たったよ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
座敷の方では、暑さに弱い叔母が赭(あか)い広東枕(かんとんまくら)をしながら、新聞と団扇(うちわ)とを持ったまま午睡(ひるね)をしていた。叔母は夏に入ってから、手足にいくらか水気をもった気味で、肥った体が一層懶(だる)かった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その時、銃の台尻が恰度(ちょうど)この本立の隅に当っていたという事は、この事件に重大な原因を作ったのです。手紙を書き終ると、直ぐ、習慣になっています午睡(ひるね)の為めに、ベッドに横たわりました。
火縄銃 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
秋風に肌(はだへ)すずしく午睡(ひるね)して聞きごころよきひぐらしのこゑ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
僕、午睡(ひるね)の夢から覚めてみると
別離 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
おれはあの木のかげへ行って、甲羅(こうら)をほしながら午睡(ひるね)をしているから、なにか怖い者が来たら、すぐに俺をよべ。いいか。
蟹満寺縁起 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
みんな田の草を取りに行っていたし、留守番の女子供も午睡(ひるね)の真最中であったので、只さえ寂(さ)びれた田舎町の全体が空ッポのようにヒッソリしていた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
午睡(ひるね)から覚(さ)めた時の彼女は顔の半面と腰骨のあたりを射し入る光線に照らされていた。彼女はすこし逆上(のぼ)せたような眼付をして身を起した。額も光った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「はい。先生は家においでなさいますが、いま草堂で午睡(ひるね)していらっしゃいます。まだお眼ざめになりませんが」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある日の午後、吾輩は例のごとく椽側(えんがわ)へ出て午睡(ひるね)をして虎になった夢を見ていた。主人に鶏肉(けいにく)を持って来いと云うと、主人がへえと恐る恐る鶏肉を持って出る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ええ、未(ま)だ空惚(そらとぼ)けおるか。おぬしは拙者の腰の印籠(いんろう)を盗みおった。勿論油断して岩を枕に午睡(ひるね)したのがこちらの不覚。併し懐中無一文の武者修業、行先々(ゆくさきざき)の道場荒し。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
ところが秋森家の双生児(ふたご)は、二人ともつい今しがたまで裏庭の藤棚の下で午睡(ひるね)をしていたので、なにがなんだかサッパリ判らんと答え、犯行に関しては頭から否定した。
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「己は少し午睡(ひるね)をしようと思ふ。がどうもこの頃は夢見が惡い。」
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「さて、それではわたくしも午睡(ひるね)でもするとしましょうか」
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
誰彼の午睡(ひるね)するとき
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
蟹 いい心持で午睡(ひるね)をしている枕もとで、泣いたり笑ったり、がやがや騒ぐので、すっかり眼がさめてしまった。
蟹満寺縁起 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それに城内でもここの位置は最も高いので、中国山脈の脊梁(せきりょう)から吹いてくるそよ風が鬢(びん)の毛(け)や、懐(ふところ)を弄(なぶ)って、一刻の午睡(ひるね)をむさぼるには寔(まこと)に絶好な場所だった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午睡(ひるね)から覚めた真勢さんが顔を洗いに来た頃、捨吉も井戸端に出てこの大勝の帳場と一緒に成った。真勢さんは田辺の小父さんの遠い親類つづきに当っていた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
卒然、襯衣(シャツ)一枚になって素足で庭へ飛び出した。三千代が帰る時は正体なく午睡(ひるね)をしていた門野が
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二人の若旦那が藤棚の下で午睡(ひるね)をしていられたのは確かだが、実は自分もそれから一時間程午睡(ひるね)した事、尚事件の起きあがる少し前頃に何処からか電話がかかって来て
石塀幽霊 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
午睡(ひるね)をさしてくれた方が余(よ)っ程(ぽど)有り難いというような顔をして大きな眼を瞬いておりました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作、杉山萠円(著)
「己は少し午睡(ひるね)をしようと思ふ。がどうもこの頃は夢見が悪い。」
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「じゃあ僕は午睡(ひるね)をするとしよう」
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ところが真夏の八月に入った或る日の事、鯛網引(たいあみひ)きの留守で、村中が午睡(ひるね)をしている正午下(ひるさが)り時分に、ケタタマシイ自動車の音が二三台、地響(じひびき)を打たして別荘の方へ走って行った。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
身体(からだ)の悪い時に午睡(ひるね)などをすると、眼だけ覚(さ)めて周囲のものが判然(はっきり)見えるのに、どうしても手足の動かせない場合がありましょう。私は時としてああいう苦しみを人知れず感じたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こういう言葉を交換(とりかわ)して歩いて行くうちに、二人は池に臨んだ石垣の上へ出て来た。樹蔭に置並べた共同腰掛には午睡(ひるね)の夢を貪(むさぼ)っている人々がある。蒼ざめて死んだような顔付の女も居る。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お午睡(ひるね)をなさいよ」
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
貴様は……貴様は昨日(きのう)の正午(ひる)過ぎに、俺がタッタ一人で午睡(ひるね)している処へ忍び込んで来て、俺に何かしら暗示を与えたのだ……否(いや)……そうじゃない……その前に俺を診察しに来た時から
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三千代が帰る時は正体なく午睡(ひるね)をしてゐた門野(かどの)が
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
午睡(ひるね)をしてから、ムックリ眼を醒ましますと又、日が落ちて
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「二階に午睡(ひるね)してんのよ」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)