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動顛
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どうてん
ふりがな文庫
“
動顛
(
どうてん
)” の例文
死の恐怖で
動顛
(
どうてん
)
したあの人数を抑えきることはできない、力に対しては必ず力が動きだし、避難するまえに死傷者が出たであろう
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
心
(
こゝろ
)
は
不覺
(
そゞろ
)
、
氣
(
き
)
は
動顛
(
どうてん
)
して、
匇卒
(
いきなり
)
、
室
(
へや
)
を
飛出
(
とびだ
)
したが、
帽
(
ばう
)
も
被
(
かぶ
)
らず、フロツクコートも
着
(
き
)
ずに、
恐怖
(
おそれ
)
に
驅
(
か
)
られたまゝ、
大通
(
おほどほり
)
を
眞
(
ま
)
一
文字
(
もんじ
)
に
走
(
はし
)
るのであつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
私は半ば
動顛
(
どうてん
)
しながら、一打ちにその馬蠅を打ち殺した。「自然は私に敵意を持つてゐる。」——そんな迷信じみた心もちが一層私をわくわくさせた。
槍ヶ岳紀行
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それまでは、私は、あまりの
驚愕
(
きょうがく
)
に、
動顛
(
どうてん
)
して、震えることさえ忘却し、ひたすらに逆上し、
舌端
(
ぜったん
)
火を吐き、一種の発狂状態に在ったのかも知れない。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
父が、何とも返事をしないことが彼女の心を、スッカリ
動顛
(
どうてん
)
させてしまった。恐ろしい不安が、彼女の胸に、
充
(
み
)
ち
溢
(
あふ
)
れた。彼女は、
扉
(
ドア
)
を力一杯押した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
と、驚愕の余りに、足駄を踏み
辷
(
すべ
)
らしてよろよろとなった大月玄蕃は、さすがにさっと血の気をなくして
動顛
(
どうてん
)
したが、
咄嗟
(
とっさ
)
に
裃
(
かみしも
)
の前をばらりッと刎ねて
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、今、家屋の倒壊がゆるゆると再びある夢のような速度で進行を繰返している。僕は僕を探す。僕はいた。あそこに……。僕は僕に
動顛
(
どうてん
)
する。僕は僕に叫ぶ。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
村の人たちは甚だしく
動顛
(
どうてん
)
したときは、まず口を切る勇気を失うもので、ぐずぐずとしているうちに酒を量らせて勘定をすまし、さっさと出て行ってしまった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
日頃
(
ひごろ
)
沈着
(
ちんちやく
)
で、
何事
(
なにごと
)
にも
動顛
(
どうてん
)
した
事
(
こと
)
のない
大佐
(
たいさ
)
の
面
(
おもて
)
には、
此時
(
このとき
)
何故
(
なにゆゑ
)
か、
心痛
(
しんつう
)
極
(
きはま
)
りなき
色
(
いろ
)
が
見
(
み
)
えたのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
ご家臣の人達一人のこらず、
動顛
(
どうてん
)
するでございましょう。柳営へ知れればお咎めを受ける。ご家運さえも危うくなる。もしものことがあろうものなら、ご家臣達は禄を
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
舞子たちは、それと共に重なり合って
動顛
(
どうてん
)
したけれど、村正のおじさんは結句おもしろがって
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お初、吉の言葉に
動顛
(
どうてん
)
させられて、今は、雪之丞に対する複雑な気持をじっと、
持
(
も
)
ち
怺
(
こら
)
えることさえ出来なくなり、一思いに、殺害してしまおうと、決心したものと見えた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
第三にあの一個の肉塊先生、専門は外科のくせに、いま精神病の方へ夢中になってるもんだから、今日の君とザミョートフとの会話が、根底から奴を
動顛
(
どうてん
)
さしてしまったんだよ
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
畏い感情を持ったことのないあて人の姫は、
直
(
すぐ
)
に
動顛
(
どうてん
)
した心を、とり直すことが出来た。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
家族のものは何かぼーッと虚ろな顔になっていたのだ。旅なれぬ女や子供にとって、こういう変化は気を
動顛
(
どうてん
)
させているのだろう。彼らは船夫に導かれてそのまま船室におりて行った。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
風呂
桶
(
おけ
)
を
引被
(
ひっかぶ
)
せられたように
動顛
(
どうてん
)
して、
傍
(
わき
)
についた年増を突飛ばすが
疾
(
はや
)
いか——入る時は魂が宙に浮いて、こんなものは知らなかった——池にかかった石だたみ、目金橋へ飛上る拍子に
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夫は出でて
未
(
いま
)
だ帰らざれば、今日
若
(
も
)
し
罵
(
ののし
)
り
噪
(
さわ
)
ぎて、内に
躍入
(
をどりい
)
ることもやあらば
如何
(
いかに
)
せんと、前後の
別
(
わかれ
)
知らぬばかりに
動顛
(
どうてん
)
して、取次には婢を
出
(
いだ
)
し
遣
(
や
)
り、
躬
(
みづから
)
は
神棚
(
かみだな
)
の前に
駈着
(
かけつ
)
け、
顫声
(
ふるひごゑ
)
を
打揚
(
うちあ
)
げ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
此
(
この
)
ひびきに
動顛
(
どうてん
)
して関内まづ待つてくれよと、半分頭
剃
(
そ
)
りかけしを
周章
(
あわ
)
て立さはぎ天井の板の厚き所はないかと逃廻り脱捨し
単羽織
(
ひとへばおり
)
の有程引かぶり、桑原桑原と身を縮めかた隅に
倒臥
(
たふれふし
)
たるをかしさ
雷談義
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
と囁きながら、
動顛
(
どうてん
)
した熱い額を、ぐいぐい送話口に圧しつけた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
たしかに、私は
動顛
(
どうてん
)
していたのだ。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
動顛
(
どうてん
)
し
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
襖の向うで二人の対話を聞くうち、すっかり
動顛
(
どうてん
)
し
怯
(
おび
)
えたものらしい、ひき据えられるとすぐに、そこへ手をついて震えながら告白を始めた。
主計は忙しい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
心
(
こころ
)
は
不覚
(
そぞろ
)
、
気
(
き
)
は
動顛
(
どうてん
)
して、いきなり、
室
(
へや
)
を
飛出
(
とびだ
)
したが、
帽
(
ぼう
)
も
被
(
かぶ
)
らず、フロックコートも
着
(
き
)
ずに、
恐怖
(
おそれ
)
に
駆
(
か
)
られたまま、
大通
(
おおどおり
)
を
真
(
ま
)
一
文字
(
もんじ
)
に
走
(
はし
)
るのであった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
稀
(
まれ
)
には歯が生えて産れるほどの異相の子を
儲
(
もう
)
けると、たいていは
動顛
(
どうてん
)
して即座にこれを殺し、これによって
酒顛童子
(
しゅてんどうじ
)
・
茨木童子
(
いばらきどうじ
)
の如き悪業の根を絶った代りには
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一角は
動顛
(
どうてん
)
して後ろへ倒れたが、同時に大刀をピッタリ構えて、くわっと相手を睨みつけながら
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美奈子は、そうした青年の容子を見ることが、心苦しかった。彼女は、青年のために、心の
動顛
(
どうてん
)
している青年のためにも、母の勧めに、おいそれと従うことは出来なかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ただ殺すことだけはうまく仕おおせたのさ! 初めての仕事だよ、君、初めての、まるで
動顛
(
どうてん
)
しちゃったんだもの! 予定の行動じゃなくて、偶然のお
蔭
(
かげ
)
でうまく逃げたんだよ!
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
実は
動顛
(
どうてん
)
させられてしまったので……こいつは怖いということを知らない、知らないのではない、本来、怖いもの以上に出来ている奴だ、世に馬鹿ほど怖いものはないとはよく言った。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
家禄城地を召しあげられた当座の
動顛
(
どうてん
)
のうちに、とぼしい藩庫は
空々
(
からから
)
になっていた。特別の
憐愍
(
れんびん
)
によって個人の所有に残された家財道具も、かねめのものはこのたびの旅費に消えていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
動顛
(
どうてん
)
しくさって、店の者と間違ったか、このおれの手に、広海屋が六十の声を聴いて、やっと出来た一つぶ種——あの若い後妻に生ませた大事な赤児を、うまうま渡して行きゃあがった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
余りの意外に鳰鳥は心を
動顛
(
どうてん
)
させながらも白刃持つ手に取り
縋
(
すが
)
った。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
(一封の手紙ユリをして
動顛
(
どうてん
)
せしむることかくのごとし)
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
母子
(
おやこ
)
は
動顛
(
どうてん
)
して
殆
(
ほとん
)
ど
人心地
(
ひとごこち
)
を失ひぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
もしや
動顛
(
どうてん
)
していはしまいか、平常から覚悟はきめていたと信ずる、その覚悟にゆるぎはないかどうか、じっと息をつめ
日本婦道記:笄堀
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
エレーナ (ワーニャを見て)放して! (すっかり
動顛
(
どうてん
)
して窓のほうへ身をすさらす)ほんとにひどいわ。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼の本心は幼い者の
叫喚
(
きょうかん
)
に、鞭打たれ、叩き出され、
動顛
(
どうてん
)
して、その部屋から
転
(
まろ
)
び出した。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不慮の驚きに
動顛
(
どうてん
)
したとは言っても、
突嗟
(
とっさ
)
にそのような空想を描くようなかれらでない。
幻覚の実験
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そこへ、今度は、表門から、極度の
狼狽
(
ろうばい
)
と
動顛
(
どうてん
)
とを以て、発音もかすれかすれに
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのあとから、すっかり
動顛
(
どうてん
)
して、見るから
凄
(
すさ
)
まじい面相のラズーミヒンが、しゃくやくのようにまっかになり、さも恥かしそうにのっそのっそと、へまなかっこうをしてはいって来た。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「それが、何分、
動顛
(
どうてん
)
した折——男とのみしか、覚えてはおらぬと申します」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
むろん血の気は無かった。がたがたとふるえ、灰色の眼が
眉
(
まゆ
)
とともにひきつって来た。憎さげに、
歪
(
ゆが
)
んだり曲ったり尖ったり——うすい唇では言葉の神経と
動顛
(
どうてん
)
の精神がたたかっているのであろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
菊女はすっかり
動顛
(
どうてん
)
してしまった。で、話を皆まで聞かず
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
少し
蒼
(
あお
)
ざめてはいるが、
動顛
(
どうてん
)
したようすはどこにもなかった。代二郎は袴の
紐
(
ひも
)
を結びながら、
劬
(
いたわ
)
るように笑いかけた。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その鹿を追うてきたのを見て
動顛
(
どうてん
)
したと、寺石氏の『土佐風俗と伝説』には誌してある。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
溝口伊予は
動顛
(
どうてん
)
のあまり、しばらく言葉も口に出ない様子であったが、やがて手槍を引っ提げたまま、若侍どもに明りを持たせて奥の広芝へ来て見ると、首のない玄蕃の死骸が
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ほとんど
為
(
な
)
さん
術
(
すべ
)
を知らないほどに
動顛
(
どうてん
)
したらしい。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「梓と打合せたんだ」と私は
動顛
(
どうてん
)
しながら云いました、「真壁が密会するということで合図まできめてあった、いったいどうしてこんなことになったんだ」
失蝶記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼のつまさきで、器が砕け、とたんに
動顛
(
どうてん
)
した彼のからだが、大きく舟を揺すぶった。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
初めてのとき、千夜がひじょうな苦痛を訴えたこと、また苦痛の証明を見たことで、彼は殆んど
動顛
(
どうてん
)
した。
屏風はたたまれた
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なにしても、公卿ばらは
動顛
(
どうてん
)
して、身一つさえうろうろだった。いちはやく、お手をとって、外へ走りのがれていたのは、日ごろは柔弱なと、父皇さえ嘆いておられた弟宮の
宗良
(
むねなが
)
で
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
動
常用漢字
小3
部首:⼒
11画
顛
漢検準1級
部首:⾴
19画
“動”で始まる語句
動
動悸
動揺
動物
動作
動搖
動機
動静
動物園
動坂