トップ
>
些
>
さ
ふりがな文庫
“
些
(
さ
)” の例文
その人
迂
(
う
)
ならず、善く財を理し、事を計るに由りて、かかる疎放の殿を
戴
(
いただ
)
ける田鶴見家も、
幸
(
さいはひ
)
に
些
(
さ
)
の
破綻
(
はたん
)
を生ずる無きを得てけり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
些
(
さ
)
と凹凸なく
瞰下
(
みおろ
)
さるる、かかる一枚の絵の中に、
裳
(
もすそ
)
の端さえ、
片袖
(
かたそで
)
さえ、美しき夫人の姿を、
何処
(
いずこ
)
に隠すべくも見えなかった。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
力車
(
りきしや
)
、一輪車、電車、あらゆる種類の車と、あらゆる人種を交へた通行人とが
絡繹
(
らくえき
)
としながら
些
(
さ
)
の衝突も生じないのを見ると
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
吾々の此の日常生活というものに対して
些
(
さ
)
の
疑
(
うたがい
)
をも
挾
(
さしはさ
)
まず、
有
(
あら
)
ゆる感覚、有ゆる思想を働かして自我の充実を求めて行く生活、そして何を見
絶望より生ずる文芸
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その代り
凡
(
すべ
)
ての物を古雅化して
些
(
さ
)
の俗気を帯びざる処に一種の面白みあり、故に万葉調を以て凡百の物事を詠まんとならば大体において賛成致候。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
けれどもが、さし向かえば、
些
(
さ
)
の尊敬をするわけでもない、自他平等、
海藻
(
のり
)
のつくだ煮の品評に余念もありません。
号外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
勘次
(
かんじ
)
が
什麽
(
どんな
)
に
八釜敷
(
やかましく
)
おつぎを
抑
(
おさ
)
へてもおつぎがそれで
制
(
せい
)
せられても、
勘次
(
かんじ
)
は
村
(
むら
)
の
若者
(
わかもの
)
がおつぎに
想
(
おもひ
)
を
懸
(
か
)
けることに
掣肘
(
せいちう
)
を
加
(
くは
)
へる
些
(
さ
)
の
力
(
ちから
)
をも
有
(
いう
)
して
居
(
を
)
らぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その四、五人の人達は、どれもこれも、薄い削いだような脣をしていて、話の
些
(
さ
)
中には、極まって眉根を寄せ、苦い後口を覚えたような顔になるのが常であった。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何にも
停滞
(
ていたい
)
しておらん。
随処
(
ずいしょ
)
に動き去り、
任意
(
にんい
)
に
作
(
な
)
し去って、
些
(
さ
)
の
塵滓
(
じんし
)
の腹部に
沈澱
(
ちんでん
)
する
景色
(
けしき
)
がない。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
而かも相互の愛情には
些
(
さ
)
の不純も無かつた。相愛してゐた。誰一人憎むべき人間は見当らなかつた。
神童の死
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
主人の証言によって、それは
些
(
さ
)
の疑いもなく由蔵の屍体であると判明した。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
痩せこけた頬に
些
(
さ
)
の血色もない、
塵埃
(
ごみ
)
だらけの短い袷を著て、
穢
(
よご
)
れた白足袋を穿いて、色褪せた花染メリンスの女帶を締めて、赤い木綿の
截片
(
きれ
)
を頸に捲いて……、俯向いて足の
爪尖
(
つまさき
)
を瞠め乍ら
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
人もしその
倨傲
(
きょごう
)
なるを憎みて、
些
(
さ
)
の米銭を与えざらむか、乞食僧は
敢
(
あえ
)
て意となさず、決してまた
餓
(
う
)
えむともせず。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかしそれすら極端に推論せられては過誤を生ずべし。例へば一分の理窟ある製作は、
些
(
さ
)
の理窟なき製作に比して、一分だけ劣れりなどと推論せらるるが如し。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それと
同時
(
どうじ
)
に
若者
(
わかもの
)
の
爲
(
ため
)
には
彼
(
かれ
)
は
蝮蛇
(
まむし
)
の
毒牙
(
どくが
)
の
如
(
ごと
)
きものでなければ
成
(
な
)
らぬ。
其
(
そ
)
れでありながら
些
(
さ
)
の
威嚴
(
ゐげん
)
も
勢力
(
せいりよく
)
もない
彼
(
かれ
)
は
凡
(
すべ
)
ての
若者
(
わかもの
)
から
彼
(
かれ
)
を
苛立
(
いらだ
)
たしめる
惡戯
(
いたづら
)
を
以
(
もつ
)
て
報
(
むく
)
いられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それでなければ卒然と春のなかに消え失せて、これまでの
四大
(
しだい
)
が、今頃は目に見えぬ
霊氛
(
れいふん
)
となって、広い天地の間に、
顕微鏡
(
けんびきょう
)
の力を
藉
(
か
)
るとも、
些
(
さ
)
の
名残
(
なごり
)
を
留
(
とど
)
めぬようになったのであろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
痩せこけた頬に
些
(
さ
)
の血色もない、
塵埃
(
ごみ
)
だらけの短かい袷を着て、
穢
(
よご
)
れた白足袋を穿いて、色褪せた花染メリンスの女帯を締めて、赤い木綿の
截片
(
きれ
)
を頸に捲いて、……俯向いて足の爪尖を
瞠
(
みつ
)
め乍ら
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
些
(
さ
)
の
憶起
(
おもひおこ
)
す
節
(
ふし
)
もありや、と貫一は打案じつつも
半
(
なかば
)
は怪むに過ぎざりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
今
(
いま
)
も
目
(
め
)
は
塞
(
ふさ
)
がず、
例
(
れい
)
の
眸
(
みは
)
つて、
些
(
さ
)
の
顰
(
ひそ
)
むべき
悩
(
なや
)
みも
無
(
な
)
げに、
額
(
ひたひ
)
に
毛
(
け
)
ばかりの
筋
(
すぢ
)
も
刻
(
きざ
)
まず、
美
(
うつく
)
しう
優
(
やさし
)
い
眉
(
まゆ
)
の
展
(
の
)
びたまゝ、
瞬
(
またゝき
)
もしないで、
其
(
そ
)
のまゝ
見据
(
みす
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼の心性高潔にして
些
(
さ
)
の俗気なきこともって見るべし。しかれども余は磊落高潔なる蕪村を尊敬すると同時に、小心ならざりし、あまり名誉心を抑え過ぎたる蕪村を惜しまずんばあらず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
些
(
さ
)
も動ずる色無き直行は
却
(
かへ
)
つて微笑を帯びて、
語
(
ことば
)
をさへ
和
(
やはら
)
げつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
床も、
承塵
(
なげし
)
も、柱は
固
(
もと
)
より、
彳
(
たたず
)
めるものの踏む
処
(
ところ
)
は、
黒漆
(
こくしつ
)
の落ちた
黄金
(
きん
)
である。
黄金
(
きん
)
の
剥
(
は
)
げた黒漆とは思われないで、しかも
些
(
さ
)
のけばけばしい感じが起らぬ。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その歌、『古今』『新古今』の
陳套
(
ちんとう
)
に
堕
(
お
)
ちず
真淵
(
まぶち
)
、
景樹
(
かげき
)
の
窠臼
(
かきゅう
)
に陥らず、『万葉』を学んで『万葉』を脱し、
鎖事
(
さじ
)
俗事を捕え
来
(
きた
)
りて縦横に
馳駆
(
ちく
)
するところ、かえって高雅
蒼老
(
そうろう
)
些
(
さ
)
の俗気を帯びず。
曙覧の歌
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
謹慎なる聴衆を
容
(
い
)
れたる法廷は、室内の空気
些
(
さ
)
も熱せずして、渠らは幽谷の木立ちのごとく群がりたり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
実景をそのままに写し、
些
(
さ
)
の巧を
弄
(
もてあそ
)
ばぬところかえって興多く候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
外套を
押遣
(
おしや
)
って、ちと慌てたように
広袖
(
どてら
)
を脱ぎながら、上衣の衣兜へまた手を入れて、顔色をかえて
悄
(
しお
)
れてじっと考えた時、お若は
鷹揚
(
おうよう
)
に
些
(
さ
)
も意に介する処のないような、しかも情の
籠
(
こも
)
った調子で
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
実景をそのままに写し
些
(
さ
)
の
巧
(
たくみ
)
を
弄
(
もてあそ
)
ばぬ所かへつて興多く候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
“些”を含む語句
些少
些々
些事
些細
些末
些子
些程
些中
些細事
露些
一些事
今些
些額
些許
些計
些箇
些末事
些末主義
些技
些小
...