トップ
>
領
>
えり
ふりがな文庫
“
領
(
えり
)” の例文
健康であった時と同じ程な力を
恢復
(
かいふく
)
したらしい様子で、男はしっかり女を抱き締めた。そして唇を女の
領
(
えり
)
の側へ寄せて
囁
(
ささや
)
くのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
鄭祥遠も実は竜で我と釣り処を争うて明日戦うはず故九子をして我を助けしめよ、絳綃を
領
(
えり
)
にしたは我、青綃は鄭だといった
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
時機到来……今日こそは、と
領
(
えり
)
を延ばしているとも知らずして帰ッて来たか、下女部屋の入口で「
慈母
(
おッか
)
さんは?」と優しい声。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
雪よりも白い
領
(
えり
)
の美くしさ。ぽうッとしかも
白粉
(
しろこ
)
を吹いたような
耳朶
(
みみたぶ
)
の愛らしさ。匂うがごとき
揉上
(
もみあ
)
げは
充血
(
あか
)
くなッた頬に乱れかかッている。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
それから駱駝の膝掛を二つに折って、その二枚の間に夜着の
領
(
えり
)
の処を挟むようにして被せた。こうすれば顔や手だけは不潔な物に障らずに済む。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
エレーンは衣の
領
(
えり
)
を
右手
(
めて
)
につるして、
暫
(
しば
)
らくは
眩
(
まば
)
ゆきものと
眺
(
なが
)
めたるが、やがて左に握る短刀を
鞘
(
さや
)
ながら二、三度振る。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分の
領
(
えり
)
をかかえ抱き起して一声自分の名を呼ぶ,はッと気がついて目を覚ます……覚めて見ると
南柯
(
なんか
)
の夢……そッと目を開いて室を見廻わして
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
これによって見ると、嶺は峯ではない、山の最頂上では無く、
領
(
えり
)
とか肩とかいう部分に当るという意味である。恐らく、これが漢字の本意であろう。
「峠」という字
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
領
(
えり
)
をすかして験べてみると、紅い糸のような筋がぐるりに著いて、上と下との肉の色がはっきりと違っていた。
陸判
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
われはその
自
(
おのづか
)
ら感動するを
以爲
(
おも
)
へり。夫人は呼吸の安からざるを覺えけん、
領
(
えり
)
のめぐりなる紐一つ解きたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
鉄色縮緬
(
てついろちりめん
)
の
頭巾
(
づきん
)
を
領
(
えり
)
に巻きたる
五十路
(
いそぢ
)
に近き
賤
(
いやし
)
からぬ婦人を載せたるが、南の
方
(
かた
)
より
芝飯倉通
(
しばいいぐらとおり
)
に来かかりぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
いづれ見物人の数は多からうと思つたので、己は用心の為め外套の
領
(
えり
)
を立てた。なぜだか知らないが、人に顔を見られるのが恥かしいやうな気がしたのである。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
子は
反
(
そ
)
り返つて両手でお
祖母
(
ば
)
あさんの
領
(
えり
)
に巻いてゐる
巾
(
きれ
)
を引つ張つてゐた。パシエンカは語を継いだ。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
洩りて
領
(
えり
)
に
入
(
い
)
る淺間の山の雪おろし弓なりに寐るつる屋の二階是等も何ぞの取合せと思ふ折しも
下屋
(
したや
)
賑はしく
馬士
(
まご
)
人足の
醉
(
ゑ
)
ひたるならん
祭文
(
さいもん
)
やら義太夫やら分らぬものを
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
と
沓脱石
(
くつぬぎいし
)
へピッタリ腰をかけ、
領
(
えり
)
の毛を掻上げて合掌を組み、首を差伸ばしまして、口の中で
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
瀧飛沫は冷やかに
領
(
えり
)
に
下
(
お
)
ちて
衣袂
(
いべい
)
皆しめり、山風颯然として至つて、瀧のとゞろき、流の
沸
(
たぎ
)
りと共に、人をして夏のいづこにあるかを忘れしむるところ、捨て難いものがある。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
この男バナナと
隠元豆
(
いんげんまめ
)
を入れたる
提籠
(
さげかご
)
を携えたるが
領
(
えり
)
しるしの水雷亭とは珍しきと見ておればやがてベンチの隅に倒れてねてしまいける。富米野と云う男熊本にて見知りたるも来れり。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
痩せたクリストフが刈株のやうな腮鬚で
領
(
えり
)
をこすりながら、ゆつくり何やらを咬んでゐる音と、ペピイががつがと痰を吐きながら、折々余り近くに寄つて来た子供や犬を叱る声とを聞いてゐる。
老人
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
舞台が済んで帰る時には、ポルジイが人の目に掛からないように、物蔭に、
外套
(
がいとう
)
の
領
(
えり
)
を馬鹿に高く立てて、たたずんでいる。ヒュッテルドルフまで出迎えている時もある。停車場に来ている時もある。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
第一の所化 (忽ち長順の
領
(
えり
)
を捉へて)こや、長順。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
(水垣の
領
(
えり
)
首を捉へ、室外に押し出さうとする)
傀儡の夢(五場)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
弊衣
(
へいい
)
領
(
えり
)
寒く
故郷の花
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
緑翹は額の低い、
頤
(
おとがい
)
の短い
猧子
(
かし
)
に似た顔で、手足は粗大である。
領
(
えり
)
や肘はいつも
垢膩
(
こうじ
)
に
汚
(
けが
)
れている。玄機に緑翹を忌む心のなかったのは無理もない。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
背景が北側の日影で、黒い中に女の顔が浮き出したように白く映る。眼の大きな頬の
緊
(
しま
)
った
領
(
えり
)
の長い女である。右の手をぶらりと垂れて、指の先でハンケチの
端
(
はじ
)
をつかんでいる。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
セルギウスは
法衣
(
はふえ
)
の
領
(
えり
)
を正し、僧帽を
被
(
かぶ
)
つて、そろ/\群集の間を分けて歩き出した。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
けだし水の東京におけるの隅田川は、網におけるの綱なり、衣におけるの
領
(
えり
)
なり。
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
馬夫には
領
(
えり
)
なる絹の
紛※
(
てふき
)
解きて與へ、牧者等と握手して、ひとり徑を下りゆきぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
祈り
労
(
つか
)
れたか小鼻も落ち、眼も窪み、頬肉も
殺
(
そ
)
いで取ったように落ちてしまい、胡麻塩まじりの髪が
領
(
えり
)
のところへ
纒
(
まと
)
い附きまして、痩せた手を膝へ突き、息遣いが悪く、ハッ/\と云いながら
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
いろんな事を考えて夜着の
領
(
えり
)
をかんでいると、涙が目じりからこめかみを伝うて
枕
(
まくら
)
にしみ入る。座敷では「夜の雨」をうたうのが聞こえる。池の
竜舌蘭
(
りゅうぜつらん
)
が目に浮かぶと、清香の顔が見えて
片頬
(
かたほお
)
で笑う。
竜舌蘭
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
見ざる眞に絶世の美人なり餅屋のはこれに
亞
(
つ
)
ぐと物覺え惡き一行なれど是は皆々
領裏
(
えりうら
)
にでも書留て置きしやよく覺えて
夫
(
それ
)
となく
此
(
こゝ
)
より荷物を包み直し
領
(
えり
)
掻き合せ
蝙蝠傘
(
かうもりがさ
)
に薄日を
厭
(
いと
)
ふ峠の上の
平坦
(
たひら
)
なるを
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
大人
(
おとな
)
しく横になつてゐた清さんの
領
(
えり
)
へ私が手を
遣
(
や
)
りし事に候、その時に清さんは身を縮めてぶるぶると震ひなされ候、女の肌知らぬ人といふではなし
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
外套の
襟
(
えり
)
を三寸ばかり
颯
(
さ
)
と返したら、左の
袖
(
そで
)
がするりと抜けた、右の袖を抜くとき、
領
(
えり
)
のあたりをつまんだと思ったら、裏を
表
(
おも
)
てに、外套ははや畳まれて、
椅子
(
いす
)
の
背中
(
せなか
)
を早くも隠した。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
老いたる
僧官
(
カルヂナアレ
)
達は紫天鵝絨の袍の
領
(
えり
)
に
貂
(
エルメリノ
)
の白き毛革を附けたるを
穿
(
き
)
て、埒の内に半圈状をなして列び坐せり。僧官達の裾を捧げ來し僧等は共足元に
蹲
(
うづくま
)
りぬ。
贄卓
(
にへづくゑ
)
の傍なる
小
(
ちさ
)
き扉は開きぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
尋ねんなど思ひ續くるうち夜は明けしが嬉しや雨も止みぬ馬二
頭
(
ひき
)
曳き來り
二方荒神
(
にはうくわうじん
)
といふものに二人づゝ乘すといふ繪に見話には聞しが自ら乘るは珍しく勇み乘りて立ち
出
(
いづ
)
れば雨の名殘の樹々の露
領
(
えり
)
に冷たく
宿
(
しゆく
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
美しくゆひ上げたるこがね色の髪と、まばゆきまで白き
領
(
えり
)
とを
露
(
あらわ
)
して、車の扉開きし
剣
(
つるぎ
)
佩
(
お
)
びたる
殿守
(
とのもり
)
をかへりみもせで入りし跡にて、その乗りたりし車はまだ動かず
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
女は
領
(
えり
)
を延ばして盾に描ける模様を
確
(
しか
)
と見分けようとする
体
(
てい
)
であったが、かの騎士は何の会釈もなくこの鉄鏡を突き破って通り抜ける
勢
(
いきおい
)
で、いよいよ目の前に近づいた時、女は思わず
梭
(
ひ
)
を
抛
(
な
)
げて
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒繻子
(
くろじゅす
)
の
領
(
えり
)
の掛かったねんねこ
絆纏
(
ばんてん
)
を着て、頭を
櫛巻
(
くしまき
)
にした安の姿を、瀬戸は無遠慮に眺めて、「こんなお上さんの世話を焼いてくれる内があるなら、僕なんぞも借りたいものだ」
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「
首懸
(
くびかけ
)
の松さ」と迷亭は
領
(
えり
)
を縮める。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
身の
周囲
(
まわり
)
を立ち
籠
(
こ
)
めている霧が、
領
(
えり
)
や袖や口から
潜
(
もぐ
)
り込むかと思うような晩であるのに、純一の肌は燃えている。恐ろしい「盲目なる策励」が理性の光を覆うて、純一にこんな事を思わせる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
毛革の肩かけを
随身
(
ずいじん
)
にわたして
車箱
(
しゃそう
)
のうちへかくさせ、美しくゆい上げたるこがね色の髪と、まばゆきまで白き
領
(
えり
)
とをあらわして、車の
扉
(
とびら
)
開きし剣おびたる
殿守
(
とのもり
)
をかえりみもせで入りしあとにて
文づかい
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
背中
左之方
(
ひだりのほう
)
一寸程
突創
(
つききず
)
一箇所、創口
腫上
(
はれあが
)
り深さ
相知不申
(
あひしれまをさず
)
、
領
(
えり
)
に
切創
(
きりきず
)
一箇所、長さ三寸程、深さ二寸程、同所
下之方
(
しものほう
)
に切創一箇所、長さ一寸五分程、深さ六分程、左耳之
脇
(
わき
)
に切創一箇所、長さ一寸
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お玉は肌も脱がずに、只
領
(
えり
)
だけくつろげて、忙がしげに顔を洗う。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
“領”の意味
《名詞》
(リョウ) 保有する土地。
(出典:Wiktionary)
“領”の解説
領(りょう)は、日本の中世から近世にかけて用いられた行政区分、および地域区分である。
(出典:Wikipedia)
領
常用漢字
小5
部首:⾴
14画
“領”を含む語句
首領
領主
占領
受領
大統領
領袖
要領
領分
頭領
管領
領地
総領
領域
惣領
領巾
押領
横領
領土
統領
本領
...