霹靂へきれき)” の例文
ドノバンがさけぶと同時に、耳をつんざくごうぜんたる霹靂へきれき! 数間先のぶなの大木がなまなましくさかれて風におののいている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そのとき、霹靂へきれきのように、雷鳴のとどろきをもって、昔聞いた、しがない博徒の言葉が、金五郎の脳裡によみがえって来たのであった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
嵐を孕み霹靂へきれきを載せた真黒な撥墨はつぼくの雲が蓬勃ほうぼつとして自ら止まるにも止まれないといった勢で、噴泉の如く下から湧き上っては横に崩れる。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
四方あたりを見い見いささやく鹿の子の言葉を、余吾之介は霹靂へきれきのように聞いたか、灯の側に坐った顔が、サッと血の気を失った程でした。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
低い声であったが、これは実に晴天せいてん霹靂へきれきだ。一郎も二郎も、余りに意外な明智の言葉に、あっけにとられて、暫くは口も利けなかった。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その声霹靂へきれきのごとく羅摩の胸に答え、急ぎ王宮に還っていたく怒り悲しみ、直ちに弟ラクシュマナを召し私陀を林中で殺さしむ。
村の人々の頭に喚起よびおこされたが、その最中さなかに突然、一知青年が自宅から本署へ拘引されて行ったので、村の人々は青天の霹靂へきれきのように仰天した。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
結局、自分の心が先生にそうしか云わせないのを知りつつ、伸子は、何か天啓的な一言、心境に大変動を捲き起す霹靂へきれき的な一言を渇き求めた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「こらっ。なにをわめいておるか。関門が閉まったからには、霹靂へきれきが墜ちても、開けることはできない。なんだ貴様は一体」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天が裂けたような一声の霹靂へきれきと共に紫の火花が眼の前へ散乱すると、新蔵は恋人と友人とに抱かれたまま、昏々として気を失ってしまいました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
青麟に一言ひとことや、直ちに霹靂へきれきであった。あたかもこの時の糸七に、屋の内八方、耳も目も、さながら大雷大風であった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同時につぶつぶした荒い霰が降り出して轟々たる霹靂へきれきに和し天地を震動する様は雪峰も破裂はれつしようかという勢いであった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
これは社会的にもセンセーシヨナルな事件に相違なかつたが、彼の旧友たる私共に取つても確かに青天の霹靂へきれきであつた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
小督の失踪は、主上にとっては、青天せいてん霹靂へきれきであった。昨日まで生きいきと輝いていたお顔が、一日の内にすっかり肉が落ちて、目がくぼんできた。
後に黒竜江の一部、朝鮮、満洲にも発見されるようになったが、当時この発見は正に青天の霹靂へきれきの感があったものだ。
ひょっとして、霹靂へきれき一声、俄雨にわかあめが来たあとは、たちまち晴れて、冴え冴えした月影が心の空に磨き出るのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
休せんと欲して休するあたわず、ついにその霹靂へきれき手段は今日においてほとんど遺類なきほどに改革を行なわしめたり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
いずれ宛擦あてこすりぐらいは有ろうとは思ッていたが、こうまでとは思い掛けなかッた。晴天の霹靂へきれき、思いの外なのに度肝どぎもを抜かれて、腹を立てるいとまも無い。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
道士は法を修して、やがてその鉄符をなげうつと、鉄符は浪の上に躍ること幾回の後に沈んだ。暫くして一天俄かにくらく、霹靂へきれき一声、これで法を終った。
青天の霹靂へきれき、『さあ、出て行け!』と突き出されても、石垣島の低気圧が俄然方向を変えたんだと言われゝばそれ迄だからね。これは好いことを聞いたよ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なんでも、その職人が、うっかり水だか湯だかを漱石にひっかけたので、漱石は霹靂へきれきの如き一喝を浴びせたのだそうである。まっぱだかで呶鳴ったのである。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
武男が叫びし声と同時に、霹靂へきれき満艦を震動して、砲台内に噴火山の破裂するよと思うその時おそく、雨のごとく飛び散る物にうたれて、武男はどうと倒れぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
時に或は愁雲恨雨の中に暴然鳴吼をなし、霹靂へきれき一声人眼を愕ろかすことあるも、亦た止むべからず。花なき花は之なり、実なき実は是なり。情死軽んずべからず。
「なんですか、小山さんは先渡し量が余分にいっているとかで、今日は配給が無いそうです。」まことに青天の霹靂へきれき、入浴中に警報の鳴るのを聞いたような気持で
メフィスト (新字新仮名) / 小山清(著)
東町奉行所で白刃はくじんしたのがれて、瀬田済之助せいのすけが此屋敷に駆け込んで来た時の屋敷は、決して此出来事を青天せいてん霹靂へきれきとして聞くやうな、平穏無事の光景ありさまではなかつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
らいが落ちたと申しましょうか、霹靂へきれきとどろいたと申しましょうか、恐ろしいありさまでございました。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
勿論もちろんふね嚴然げんぜんたる規律きりつのあることたれつてる、たとへ霹靂へきれき天空てんくうくだけやうとも、數萬すうまん魔神まじんが一海上かいじやう現出あらはれやうとも、船員せんゐんならぬもの船員せんゐん職權しよくけんおかして
青天の霹靂へきれきである。一同しばらくは茫然ぼうぜんとしていた。笑談じょうだんだろうか。この貴族先生の顔色を見るに、そうは受け取れない。世界を一周する。誰一人それを望まないものはない。
『日は合唱の音を立ててゐる。そして霹靂へきれきの歩みをして、まつた軌道を行く処まで行く』
雷談義 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
青天せいてん霹靂へきれきにもたとうべくや、所詮しょせんは中江先生も栗原氏も深き事情を知り給わずして、一図いちずに妾と葉石との交情を旧の如しと誤られ、この機を幸いに結婚せしめんとの厚意なるべし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
押鐘津多子おしがねつたこ——その名は事件の圏内に全然なかっただけに、この場合青天の霹靂へきれきに等しかったであろう。法水の神経運動ナアヴァシズムが微妙な放出を続けて、上りつめた絶頂がこれだったのか。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
けれど、ちょうどこの時事務所の中では、青天の霹靂へきれきともいうべき事件が起こった。
と思うと共に、きこえぬ霹靂へきれきの大きな音がわたくしを振りゆるがして気をひき立てた。もともと異教徒であったパウロがダマスコの町へ入る途中、大きな光にめぐり照らされて地に倒れた。
今度のことは要するに天のせる疾風暴雨霹靂へきれきに見舞われたものと思うほかはないという考えが、彼をいっそう絶望的ないきどおりへとったが、また一方、逆に諦観ていかんへも向かわせようとする。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
明軍の大将軍砲、仏郎機フランク砲、霹靂へきれき砲、子母砲、火箭ひや等、城門を射撃する爆発の音は絶間もなく、焔烟は城内に満ちる有様であった。日本軍は壁に拠って突喊とっかんして来る明軍に鳥銃をあびせる。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「四天王の太子を捧げし窣堵波ストゥーパの側に遠からず、大なる石柱ありて、上には馬の像を作れり。無憂アショーカ王の建つるところなり。後に悪竜が霹靂へきれきせしがためにその柱は中より折れて地にたおれたり」
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
いずれにしても古河にとっては青天の霹靂へきれきであったにちがいなく、従来の政府に対するような籠絡手段をもってしては到底まぬかれ得ない厳達であり、命令どおり遂行するとなれば、事業上
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
すべてが文句だった。すべてが遊戯だった。ユーゴーはその霹靂へきれきの声を聞かせようとする時、すぐに弱音機を用いて(彼の使徒たるマンデスが言ったように)小さな子供をも驚かすまいとした。
シルレルのところへお客にも行く——ところがまるで霹靂へきれきのように、こうした致命的な言葉が突然、彼の頭上で鳴り渡ると共に、彼はやはり自分が地上にあって、それも*3センナヤの広場か
何とすばらしい短時分の粉砕、まさにこれ、霹靂へきれき的の粉砕なりである。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
川島先生が息をむ一瞬のあひだ身動きの音さへたゝずしづまつた中に、突然佐伯の激しいすゝきが起つた。と、他人ひとごとでも見聞きするやうにぽツんとしてゐた私の名が、霹靂へきれきの如くに呼ばれた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
だがこれが我々の身の上を訪れた最初の霹靂へきれきであった。
忘れがたみ (新字新仮名) / 原民喜(著)
清川の言葉は青天の霹靂へきれきの如くに衣川を驚かした。
正義 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
真に霹靂へきれきの一声で、突然鋭く伝六に命じました。
私はそのことばを、青天の霹靂へきれきのごとく感じた。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この一言は、まさしく青天の霹靂へきれきであった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
と、青天の霹靂へきれきとでもいうように
母の死 (新字新仮名) / 中勘助(著)
それがなんと晴天の霹靂へきれき
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
霹靂へきれきことをのらしぬ
池のほとりに柿の木あり (新字旧仮名) / 三好達治(著)
霹靂へきれきの青火をくだし
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)