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鋲
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びょう
ふりがな文庫
“
鋲
(
びょう
)” の例文
唯
(
ただ
)
一つお目にかけて置きたいのは、この
鋲
(
びょう
)
の頭です(と、前夜
卓子
(
テーブル
)
の脚のところから拾いあげた針のとれている鋲の頭を示しながら)
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
新館の上層たる望楼は、屋根裏の一種の大広間で、三重の
鉄格子
(
てつごうし
)
がはめてあり、大
鋲
(
びょう
)
をうちつけた二重鉄板の
扉
(
とびら
)
でしめ切ってあった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
いかにも博士の言うとおり、それは何百何千という金の板を、金の
鋲
(
びょう
)
でつなぎあわせて、どくろのかたちに、つくったものでした。
怪奇四十面相
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
模様入りの人造革を張り詰めた室内の壁には、白樺材を真似た塗料が
被
(
き
)
せてあった。
鋲
(
びょう
)
が、掃除婦の忠実を説明して、光っていた。
踊る地平線:10 長靴の春
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
その
礎
(
いしずえ
)
の
花崗岩
(
みかげいし
)
と、その扉の下半分とが、
茫
(
ぼう
)
と薄赤く描き出されていた。どうした加減か一つの
鋲
(
びょう
)
が、鋭くキラキラと輝いていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
殊に
紅唐紙
(
べにとうし
)
の
聯
(
れん
)
を
貼
(
は
)
った、
埃
(
ほこり
)
臭い
白壁
(
しらかべ
)
の上に、
束髪
(
そくはつ
)
に
結
(
ゆ
)
った芸者の写真が、ちゃんと
鋲
(
びょう
)
で止めてあるのは、滑稽でもあれば悲惨でもあった。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ガラガラとウィンチ(
捲揚機
(
まきあげき
)
)の廻転する音、ガンガンと鉄骨を叩く
轟音
(
ごうおん
)
、タタタタタとリベット(
鋲
(
びょう
)
)を打ち込む
響
(
ひびき
)
、それに負けないように
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
鍔と鍔は
鋲
(
びょう
)
を打ったようにガッキリ食い合って、互いの顔と顔の間で、十字に
絡
(
から
)
んだ剣尖のみが、ただかすかな光のふるえを刻んでいるばかり——
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
栗毛
(
くりげ
)
の
駒
(
こま
)
の
逞
(
たくま
)
しきを、
頭
(
かしら
)
も胸も
革
(
かわ
)
に
裹
(
つつ
)
みて飾れる
鋲
(
びょう
)
の数は
篩
(
ふる
)
い落せし秋の夜の
星宿
(
せいしゅく
)
を一度に集めたるが如き心地である。女は息を凝らして眼を
据
(
す
)
える。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、こうして語るその情景を、眼に、思い
泛
(
うか
)
べてもらいたい。霧立ち
罩
(
こ
)
めた夜、波たかく騒ぐ海、駆逐艦からは爆雷が投ぜられて、艇中の
鋲
(
びょう
)
がふるえる。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
軍靴の
鋲
(
びょう
)
が階段に触れる音が、けだるい
四肢
(
しし
)
の
節々
(
ふしぶし
)
に
幽
(
かす
)
かに響いて来る、跫音はそのまま遠ざかるらしかった。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
長さは三フィート半、幅は三フィート、深さは二フィート半あった。
鍛鉄
(
たんてつ
)
の
箍
(
たが
)
でしっかりと締め、
鋲
(
びょう
)
を打ってあって、全体に一種の
格子
(
こうし
)
細工をなしている。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
みかん箱に新聞紙を張りつけて、風呂敷を
鋲
(
びょう
)
でとめたの。箱の中にはインクもユーゴー様も土鍋も魚も同居。あいなめ一尾買う。米一升買う。風呂にもはいる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
箱の外壁をグルリと
撫
(
な
)
で廻すと、所々に打った
厳
(
いかめ
)
しい
鋲
(
びょう
)
の一つが、どうやら心持動くではありませんか。
銭形平次捕物控:018 富籤政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そのかくし
鈴
(
ベル
)
は人間が楽にはいられるくらいの大きさで、鉄の
締金
(
しめがね
)
と
鋲
(
びょう
)
とで厳重に釘付けにされていた。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
てのひらをかえすように前後左右に傾いて行き、丸い
鋲
(
びょう
)
のとび出した鉄の柱や板が、一まい一まい、ねじ切られるような、きしみ音をたてるので、眠れなかった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
それはちょうど鶴のような恰好をした
自働器械
(
オートマトン
)
である。その
嘴
(
くちばし
)
が長いやっとこ
鋏
(
ばさみ
)
のようになって、その
槓杆
(
こうかん
)
の支点に当るねじ
鋲
(
びょう
)
がちょうど眼玉のようになっている。
夢
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうなるまでは、作品は母体に結びつけられてる
赤児
(
あかご
)
であり、生きた肉体に
鋲
(
びょう
)
付けされてる生けるものである。生きんがためには、それを切断しなければいけない。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
甲冑の材料である鉄板の堅い感じ、その鉄板をつぎ合わせている
鋲
(
びょう
)
の、いかにもかっちりとして並んでいる感じ、そういう感じまでがかなりはっきりと出ているのである。
人物埴輪の眼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
大太鼓
(
おおだいこ
)
を作る店なども真に見ものであります。革の厚み、胴の張り、
鋲
(
びょう
)
のふくらみ、健康な姿を思わせます。日蓮宗の信徒が手にする
団扇太鼓
(
うちわだいこ
)
も東京出来のをよいとします。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
しかもどういう造り方がしてあるのか、
釘
(
くぎ
)
や
鋲
(
びょう
)
という物が一切これには使ってなかった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
黒革
(
くろかわ
)
張りに
真鍮
(
しんちゅう
)
の
鋲
(
びょう
)
を乱れ打ちに打った、津賀閑山が騒ぎまわっている、あの鎧櫃だ!
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
さてさて困ったと困り抜いていると、それもなんでもない事だと小さい太鼓の
革
(
かわ
)
をはがして、その中へたくさんの
蜂
(
はち
)
を入れ、
鋲
(
びょう
)
を打ちなおしてむりな殿さまのところへ持参させた。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そのくせ、彼女のからだはそこへ
鋲
(
びょう
)
でねじつけられでもしたように、動かなかった。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
(カルタ卓の上に図面をひろげて、
鋲
(
びょう
)
でとめる)あなたのお生れは、どちらです?
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
ハイネが静夜の星を仰いで蒼空における金の
鋲
(
びょう
)
といったが、天文学者はこれを詩人の
囈語
(
げいご
)
として一笑に附するのであろうが、星の真相はかえってこの一句の中に現われているかも知れない。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
鋲
(
びょう
)
の打ってない靴の底はずるずる赤土の上を滑りはじめた。二間余りの間である。しかしその二間余りが尽きてしまった所は高い石崖の鼻であった。その下がテニスコートの平地になっている。
路上
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「御通知によって、昨朝飛翔したアブロ練習機を精査してみると、車輪軸に打たれている
鋲
(
びょう
)
が一個はずれている事を発見した。紛失は昨日の練習飛行の際行われたものである事は明らかである」
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
鋲
(
びょう
)
がゆるみでもするように、ギイギイと船の何処かが、しきりなしにきしんだ。宗谷海峡に入った時は、三千
噸
(
トン
)
に近いこの船が、しゃっくりにでも取りつかれたように、ギク、シャクし出した。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
はたせるかな、そこには長さ一アルシン(約七十センチメートル)以上もあって、そり
蓋
(
ぶた
)
がつき、キッドの赤革を張って、鋼鉄の
鋲
(
びょう
)
を一面に打ってある、かなり立派なトランクが置いてあった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
その内側に巨万の富を
蔵
(
しま
)
い込んでいるらしい……黒い……重たい……マン丸く光る黄金色の
鋲
(
びょう
)
を縦横に打ち並べた……ただその扉が普通と違うところは、その
把手
(
ハンドル
)
が少し低目に取付けてある事と
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
つけられた方は、呆れるより、いきなり
撲
(
なぐ
)
るべき蹴倒し方だったが、
傍
(
かたわら
)
に、ほんのりしている
丸髷
(
まげ
)
ゆえか、主人の錆びた
鋲
(
びょう
)
のような
眼色
(
めつき
)
に
恐怖
(
おそれ
)
をなしたか、気の毒な学生は、
端銭
(
はした
)
を
衣兜
(
かくし
)
に
捻込
(
ねじこ
)
んだ。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
キキキキ……、鋼が悲鳴をあげて、
鋲
(
びょう
)
がゆるんだ。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
昨夜来の
寒波
(
かんぱ
)
のためにすっかり冷え切っていて、
早登庁
(
はやとうちょう
)
の課員の靴の裏にうってつけてある
鋲
(
びょう
)
が床にぴったり
凍
(
こお
)
りついてしまって
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ちょっと、ここへ来てごらん。又靴のあとだよ。でも、今度は保君のじゃない。大人の靴だよ。
鋲
(
びょう
)
の打ってない上等の靴だよ」
新宝島
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
このヴァンデアン党(訳者注 王党の一派にしてストフレーはその将軍)の紙幣は、この前の庭番が壁に
鋲
(
びょう
)
で留めたものだった。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それに
唐草
(
アラベスク
)
の模様があって、まわりに真鍮の
鋲
(
びょう
)
が光っていた。ゴセック式の大きな
釦金
(
クラスプ
)
がそのまま製本の役をつとめていた。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
大門の
鋲
(
びょう
)
が光っていてその下に膝を抱いてうずくまって、顔を膝頭におしあてて眠りにはいっている、嘉門の全身も明るすぎるほどに明るんで見えた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして彼女はその日の午後に、ちょうど駕をもって迎えに来た姉の通子の方と同道して、
鋲
(
びょう
)
乗物に姿を隠し、打ち沈んだまま江戸城の大奥深くへ入ったのである。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
玉を並べた様な
鋲
(
びょう
)
の一つを半ば
潰
(
つぶ
)
して、ゴーゴン・メジューサに似た夜叉の耳のあたりを
纏
(
まと
)
う蛇の頭を叩いて、横に延板の平な地へ
微
(
かす
)
かな細長い
凹
(
くぼ
)
みが出来ている。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
深さ一メートルの四角なコンクリートの柱の頂上のまん中に径一寸ぐらいの金属の
鋲
(
びょう
)
を埋め込んで
小浅間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして歩廊を踏む靴
鋲
(
びょう
)
の音が遠ざかって行った。僕はそのまま再び深い眠りに落ちた。
蜆
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
障子にぴっちりつけて机があった。その机の上には障子に風呂敷が
鋲
(
びょう
)
で止めてあった。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
月はなかったが、何といううつくしい星空だろう!
碧黒
(
あおぐろ
)
い壁一めんに、銀の
鋲
(
びょう
)
を打ったような星がちかちかとかずかぎりもなく
瞬
(
またた
)
いていて、手をのばしただけで、つかみ取れそうに近かった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
すると
殆
(
ほとん
)
ど
間
(
ま
)
をおかずに、そこから鉄に
鋲
(
びょう
)
を打ち込むリベット・ハンマー(
鋲打
(
びょううち
)
の
槌
(
つち
)
)の音がタタタタタと聞えはじめた。一男には気のせいかその音が、ほかの音より元気がないような気がした。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
敷物の向う端を
鋲
(
びょう
)
で止め、人形の着衣から
護符刀
(
タリズマン
)
を抜いておく——そしていよいよ博士が背後を見せると、
敷物
(
カーペット
)
の端をもたげて、縦にした部分を足台で押して速力を加えたので、
敷物
(
カーペット
)
には
皺
(
しわ
)
が作られ
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
松山の坐っていた場所については特に注意を払い、布をひっぱったり、
鋲
(
びょう
)
をはずしたり、
刷毛
(
はけ
)
で
埃
(
ほこり
)
をあつめて紙包をいくつも作ったりした。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
大事件というのは壁の門の開くことであって、その
鋲
(
びょう
)
のいっぱいついた恐ろしい鉄の
扉
(
とびら
)
は大司教の前にしか決して開かれなかったのである。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
燈明の火が明るく輝き、紫の幕が、華やかに
栄
(
は
)
え、その奥から、
真鍮
(
しんちゅう
)
の
鋲
(
びょう
)
を持った
祠
(
ほこら
)
の、
扉
(
とぼそ
)
が覗いていた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いいえ、あの人はハンブルグの
荷上
(
にあげ
)
人夫ではないのです。コロンの郊外に生産工場を持っていて、半世紀来
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
じゅうの客車と貨物列車へ打ってきた
鋲
(
びょう
)
の供給者なのです。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
“鋲”の解説
鋲(びょう)とは、金属製の留め具の一種。スタッドともいう。例外的に金属製でないものもある。なお、「鋲」という文字は日本で形声によって生み出された国字である。
日本において鋲留め技法の伝来は、律令時代に伝わった鉄釘より早く、古墳時代の短甲(鉄製甲冑)に見られる(詳細は「短甲」を参照)。
(出典:Wikipedia)
鋲
漢検準1級
部首:⾦
15画
“鋲”を含む語句
鋲打
鉄鋲
乳鋲
金鋲
飾鋲
鋲釘
螺旋鋲
打鋲
銀鋲
画鋲
鋲乗物
太鋲
眞鍮鑄鋲
靴鋲
鋼鉸鋲
鋲飾
鋲門袖
鋲門
鋲金物
鋲締
...