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鈎
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かぎ
ふりがな文庫
“
鈎
(
かぎ
)” の例文
捕虜をとらえていた悪漢はその手を離した。またたく間に、
繩梯子
(
なわばしご
)
は窓の外におろされ、二つの鉄の
鈎
(
かぎ
)
でしっかと窓縁に止められた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
多くの小船は、たちまちそこに集まって
鈎
(
かぎ
)
をおろし、エイヤエイヤの声をあわせて、だんだんと
浅瀬
(
あさせ
)
のほうへひきずってくるようすだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
石附のところには
鈎
(
かぎ
)
のついた分銅が入っていて、振るとブーンと
呻
(
うな
)
りを立てて、長い綱が飛び出してくる仕掛けになっていた。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
向うのアカシヤの植えこみに包まれた
鈎
(
かぎ
)
型の第三、第四校舎の間で、焚火が見えた。若芽が伸びたアカシヤの葉末は、焚火に紅く染っていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
チクリと来ると
吐出
(
はきだ
)
すが又、喰う。そのうちに
鈎
(
かぎ
)
が舌に引っかかるんだが、引っかかったら最後、決して啼かないから妙だ。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
ひろげた指は
掻
(
か
)
き寄せようと、
鈎
(
かぎ
)
になったり熊手になったりしてあがいている。しかし彼らの願望は上までは届かなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
それから狐の読んでいたものを
検
(
あらた
)
めると、それには大勢の女の名を書きならべて、ある者には朱で
鈎
(
かぎ
)
を引いてあった。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そのとき彼女の眼は
小豹
(
こひょう
)
のように輝く、
剥
(
む
)
きだした白い歯がかちかちと鳴る、それ以上なにか云えば、彼女は両手の爪を
鈎
(
かぎ
)
のようにして跳びかかり
お繁
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その上、上げ蓋の下には頑丈な掛金がかかっているし、繩梯子を投げた所で、天井に
鈎
(
かぎ
)
のかかる箇所は全くない。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
石畳を一つ起すと、その中に凹みがあって、したたかな
棕梠
(
しゅろ
)
縄、
鈎
(
かぎ
)
、柄の短かい
鶴嘴
(
つるはし
)
などが入って居ります。
古城の真昼
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
平吉はさっきから人待顔にすぐ前に下っていた太い
鎖
(
くさり
)
の先の
鈎
(
かぎ
)
に軽く右足をかけて鎖に全身を
托
(
たく
)
した。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
黄昏時
(
たそがれどき
)
の七時頃、がらっと障子戸を開けると土間、あがりばたの部屋には囲炉裡があって、自在
鈎
(
かぎ
)
にかけたお鍋の蓋をとって煮物のお塩梅をしていた、やせたお婆さんが
三浦環のプロフィール
(新字新仮名)
/
吉本明光
(著)
梳
(
けず
)
つた羊毛は先づ長い小房に分けられる。そして此の房の一つをぐる/\廻つてゐる
鈎
(
かぎ
)
のそばへ持つて行く。鈎は其の羊毛を掴んで廻りながら其の繊維を一本の糸に
捩
(
よ
)
る。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
「今降りて来る女はやりましたよ」と、
只
(
ただ
)
之れ丈け云って自分の人指ゆびを
鈎
(
かぎ
)
にして見せた。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
エーレンフェルトは、小柄で、頭が
禿
(
は
)
げ、微笑を浮かべ、
茶褐
(
ちゃかっ
)
色の
頤髯
(
あごひげ
)
を
生
(
は
)
やし、元気のない繊細な顔つきをし、
鈎
(
かぎ
)
鼻であって、流行記事や世間的雑報を雑誌に書いていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
此方
(
こちら
)
からはお
使番
(
つかいばん
)
が馬に乗って駆けて来る。仕事師は
纒
(
まとい
)
を振り
鈎
(
かぎ
)
をかついで威勢
能
(
よ
)
く繰出してまいる騒ぎに、二人はまご/\しながら漸く逃出しましたが、
行
(
ゆ
)
き所がありません。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
縁から一インチ半ばかりのところに、穴を二つあけ、これに
鈎
(
かぎ
)
が二つ引っかけてあります。その鈎を長い綱で馬車にくゝり、こんなふうにして一マイル半以上も引きずって来たのです。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
と、突然、後部の
巻揚機
(
ウインチ
)
ががら/\と
凄
(
すさま
)
じい響を出して、その五六本の
鋼条
(
ワイヤー
)
の先に
吊
(
つ
)
るした
鈎
(
かぎ
)
づきの滑車が弾薬庫にする/\と滑りこんだ。それを真つ先に見つけたのは
掌砲長
(
しやうはうちやう
)
だつた。
怪艦ウルフ号
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
鳥屋の店先で
青
(
あを
)
ン
膨
(
ぶくれ
)
の若者が、パタ/\
踠
(
あが
)
いてゐる鷄を
攫
(
つかん
)
で首をおツぺしよるやうに引ン
捩
(
ねぢ
)
ツてゐることや、肉屋の店に皮を剥がれたまゝの豚が
鈎
(
かぎ
)
に吊されて逆さになツてゐることや
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
蛇また
蟾蜍
(
ひき
)
が雄鶏が産んだ卵を伏せ
孵
(
かえ
)
して生じ、蛇形で翼と脚あり、鶏冠を
戴
(
いただ
)
くとも、八足または十二足を具え、
鈎
(
かぎ
)
ごとく曲った
嘴
(
くちばし
)
ありとも、また単に白点を頂にせる蛇王だともいう。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
釣針
(
つりばり
)
のやうな
鈎
(
かぎ
)
の
爪
(
つめ
)
をどこへでもひつかけて、赤や青や黄や紫の自動車や汽船や大砲やタンクや乳母車を、五つも六つも、いつしよにひいて、ゾロッ・ゾロッと、お縁をはつて行きます。
かぶと虫
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
もう子ねずみさえもかからなくなってしまった
捕鼠器
(
ねずみとり
)
は、ふたの落ちたまま台所の
戸棚
(
とだな
)
の上にほうり上げられて、
鈎
(
かぎ
)
につるした
薩摩揚
(
さつまあ
)
げは干からびたせんべいのようにそりかえっていた。
ねずみと猫
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
円い
鈎
(
かぎ
)
をもち、髪をわけ
下駄
(
げた
)
をはいた魚屋の主人や、けらを着た村の人たちが、みんなこっちを見ているのに気がついて、すっかりあわてて急いで手をふりながら、小声で言い直しました。
山男の四月
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
鈎
(
かぎ
)
のような鼻が盛り上っているし、牛のようにも太い頸筋には静脈が紐のように
蜒
(
うね
)
っている、半白ではあったがたっぷりとある髪を、太々しく髷に取り上げている、年の格好は六十前後であったが
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
黄金
(
こがね
)
の
鈎
(
かぎ
)
に
龍王
(
りうわう
)
の
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
ピューッと舟から空に走ったのは、
鈎
(
かぎ
)
のついた一本のなわ。ガリッというと手にもどって、上からザラザラと岩のかけらが落ちてくる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
警護の兵士のひとりは、先に
鈎
(
かぎ
)
のついた棒を持っていて、時々その人間の
塵芥溜
(
ごみため
)
をかき回そうとするような顔つきをした。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
重い物体をひっかける
化物
(
ばけもの
)
のようにでっかい
鈎
(
かぎ
)
が、太い
撚
(
よ
)
り
鋼線
(
ロープ
)
で
吊
(
つ
)
ってあり、また橋梁の
一隅
(
いちぐう
)
には、
鉄板
(
てっぱん
)
で囲った小屋が
載
(
の
)
っていて、その中には
夜泣き鉄骨
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それにしても他のひとりの媳はどうしたかと見まわすと、
梁
(
はり
)
の上に一羽の大きい
怪鳥
(
けちょう
)
が止まっていた。鳥は灰黒色の
羽
(
はね
)
を持っていて、
口喙
(
くちばし
)
は
鈎
(
かぎ
)
のように曲がっていた。
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
わけのわからぬ事をわめくと、お小夜の手は
鈎
(
かぎ
)
の如く曲つて、十本の指は、喉から胸へと、滅茶々々に掻きむしりながら、
耻
(
はぢ
)
も外聞もなく、その邊をのた打ち廻るのです。
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
真赤に染まったハンカチの上に、何かしら細長いものが、
鈎
(
かぎ
)
なりに曲って横わっていた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
松の
梢
(
こずえ
)
で小鳥が鳴き騒いだ。顔を掩った両手の指が(
苦悶
(
くもん
)
のため)
鈎
(
かぎ
)
のように曲り、やがて
嗚咽
(
おえつ
)
の声がもれた。それはぞっとするほど絶望的で、圧しひしがれるような響きをもっていた。
月の松山
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
魚というものは普通
餌
(
えさ
)
も
鈎
(
かぎ
)
もない糸を食うものではないということは、彼もよく知っていたけれど、しかし一度くらいは、自分のために、魚が例外なことをするかもしれないと思っていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
あらわに痩せた
脛
(
すね
)
が膝の上まで捲くれ上がり衣裳の裾から洩れて見えたが、その脛が一本塀の上から、塀の面へのばされて、
拇指
(
おやゆび
)
の先が
鈎
(
かぎ
)
のように曲がって、塀の面の一所へ
疣
(
いぼ
)
のように吸い付いた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
anchor はラチンの anchara でまたギリシアのアンキユラで「曲がった
鈎
(
かぎ
)
」であり、従ってまた英の angle とも関係しているらしい。ペルシアでは lāngar である。
言葉の不思議
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と、かれの
貪慾
(
どんよく
)
な
相好
(
そうごう
)
がニヤニヤ
笑
(
え
)
みくずれてきた。——湖水の中心では、いましも
鈎
(
かぎ
)
にかかった
獲物
(
えもの
)
があったらしい。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
電灯をその方へさしつけてみたが、天井のあることと、そのまん中あたりに、
鎧
(
よろい
)
でもぶら下げるためにつけてあるのか、大きな
鈎
(
かぎ
)
が一つ見える。その他ははっきり見えない。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その時マリユスは、今まで何かわからなかったその繩みたいなものは、実は木の桟と引っかけるための二つの
鈎
(
かぎ
)
とがついてるきわめて巧みにできた
繩梯子
(
なわばしご
)
だということがわかった。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
溜池の底に
鳶口
(
とびくち
)
と手網と、
鈎
(
かぎ
)
と、あらゆる道具を入れて掻き廻しました。
銭形平次捕物控:219 鐘の音
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
というのは、その廊下の斜向うに、
鈎
(
かぎ
)
の手になった建物の大きな白壁が、夜目にも薄白く、目を圧するように浮上っているのだが、その白壁の表面にボーッと白く
燐
(
りん
)
のような光がさしていたのである。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そしてついに衆のいきどおりをこめた声が「わあッ」となって、
櫂
(
かい
)
、
水棹
(
さお
)
、水揚げ
鈎
(
かぎ
)
、思い思いな
得物
(
えもの
)
を押っとり、李逵へむかってかかって来た。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで宿命の
暗澹
(
あんたん
)
たる暴虐からいかにむごたらしく引きずられ縛り上げられているか、その
深淵
(
しんえん
)
の中でいい知れぬ
鈎
(
かぎ
)
にいかにしかと結び止められているか、それを見ては心おびえるほどである。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
平次は棒秤の
鈎
(
かぎ
)
の先に分銅を縛り付けて、力任せに振つて見せました。
銭形平次捕物控:199 蹄の跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
絨毯の上にどっしりした台を置き、そこから上に向って人の背丈よりもやや高く架台があって、その架台の先が提灯をかけるように曲って横に出ているが、その
鈎
(
かぎ
)
に鳥籠が下げられているのだった。
地獄の使者
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
みると周馬の左の手が、いつのまにか、部屋の
角柱
(
すみばしら
)
に伸びていて、そこにある
鈎
(
かぎ
)
のようなものへ指をかけている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自在
鈎
(
かぎ
)
につるしてある鉄の鍋は火に煮立っていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
この車にはまた、起重機のような
鈎
(
かぎ
)
がついている。台上の歯車を兵が三人掛りで廻すと、綱によって、地上の何でも雲梯の上に運び得る仕掛になっていた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
智慧の
環
(
わ
)
のような金具を出して五ツの
鈎
(
かぎ
)
に解き放し、それを
長押
(
なげし
)
へ一つずつ懸けて、笠、衣類、合財袋、煙草入れ、旅の
身上
(
しんしょう
)
をのこらずこれに吊ってみせる。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、その
鈎
(
かぎ
)
の爪がガッキとどこかへ食いついた途端に、天神岸から
軽舸
(
けいか
)
を飛ばしてついてきた
原士
(
はらし
)
たち、縄を
攀
(
よ
)
じてポンポンと
蝗
(
いなご
)
のようにおどり込んできた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十合とも太刀打ちせずに潘璋は逃げ
奔
(
はし
)
った。追いまくって密林の小道へ迫りかけた時、四方の巨木から
乱離
(
らんり
)
として
鈎
(
かぎ
)
のついた
投縄
(
なげなわ
)
や
分銅
(
ふんどう
)
が降った。関羽の駒はまた何物かに脚をからまれていなないた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鈎
漢検準1級
部首:⾦
12画
“鈎”を含む語句
鈎形
鈎爪
鈎綱
鈎切
鈎素
毛鈎
鈎縄
釣鈎
鈎棒
手鈎
鈎鼻
双鈎刊刻
鈎裂
鈎𧋬
鈎槍
鉤鈎
鈎束
鋤鈎
双鈎
鈎政
...