お繁おしげ
曇日であった。 わたしは青べかを漕いで河をくだり、ふたつ瀬から関門をぬけて細い水路へはいっていった。そこにはわたしが私かにみつけておいた鮒の釣場があるのだ。——左岸には川柳が茂っていて、流れにあらいだされた薄紫色の根が水の中へ美しく差伸ばさ …