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跪
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ひざまず
ふりがな文庫
“
跪
(
ひざまず
)” の例文
親族、朋友等もまた涙ながらに花嫁の前に
跪
(
ひざまず
)
き、その手をとって
懇
(
ねんご
)
ろに同じような事を戒めるがごとく勧めるがごとくにいうのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
薄暗い
神殿
(
しんでん
)
の奥に
跪
(
ひざまず
)
いた時の冷やかな石の
感触
(
かんしょく
)
や、そうした生々しい感覚の記憶の群が
忘却
(
ぼうきゃく
)
の
淵
(
ふち
)
から一時に蘇って、
殺到
(
さっとう
)
して来た。
木乃伊
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「お父さん、どうしたんです。しっかりして下さい」新一はその側に
跪
(
ひざまず
)
いて父の肩に手をかけた。だが、老博士は身動きもしない。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そんなのの前に男らしく
跪
(
ひざまず
)
いて、堂々と満身の愛を告白する。昔のように自己を偽って見識ばらぬ。そんなのが「男らしい男」らしい。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
(画家
徐
(
しずか
)
に娘の前に
跪
(
ひざまず
)
き、娘を見上ぐ。娘両手にて画家の目を
塞
(
ふさ
)
ぎ、顔次第に晴やかになりて微笑み、少し苦情らしき調子にて。)
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
▼ もっと見る
見渡すかぎり
蒼茫
(
そうぼう
)
たる青山の共同墓地に
入
(
い
)
りて、わか
葉
(
ば
)
の
扇骨木籬
(
かなめがき
)
まだ新らしく、墓標の墨の
痕
(
あと
)
乾きもあえぬ父の墓前に
跪
(
ひざまず
)
きぬ。
父の墓
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この制裁が終った時にモリイシャは一同に樹のまわりに輪をなして
跪
(
ひざまず
)
かせた。やがて彼はほろびゆく男の霊のために祈りをした。
精
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
翁は、説教壇の前に
跪
(
ひざまず
)
いて、其処に凍え固ったものの如く、火の気のない教会堂の広間に眤として祈りを捧げたまま身動きもしなかった。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
われは
堕
(
お
)
ちじと戒むる
沙門
(
しゃもん
)
の心ともなりしが、聞きをはりし時は、胸騒ぎ肉
顫
(
ふる
)
ひて、われにもあらで、少女が前に
跪
(
ひざまず
)
かむとしつ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
わたくしの前に
跪
(
ひざまず
)
いて頭をお上げなさらないのに、私は窮してしまいました——そんなようなわけで、私はこの際の白骨入りは
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
然
(
しか
)
るに燕王の
北平
(
ほくへい
)
を発するに当り、道衍これを
郊
(
こう
)
に送り、
跪
(
ひざまず
)
いて
密
(
ひそか
)
に
啓
(
もう
)
して
曰
(
いわ
)
く、臣願わくは託する所有らんと。王何ぞと問う。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
日来
(
ひごろ
)
武に誇り、
本所
(
ほんじょ
)
を
無
(
なみ
)
する権門高家の武士共いつしか諸庭奉公人と
成
(
なり
)
、或は軽軒香車の後に走り、或は青侍格勤の前に
跪
(
ひざまず
)
く。
四条畷の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
三島神社に
詣
(
もう
)
でて昔し千句の連歌ありしことなど思い出だせば有り難さ身に
入
(
し
)
みて神殿の前に
跪
(
ひざまず
)
きしばし祈念をぞこらしける。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
大跨
(
おおまた
)
に下りて、帽を脱し、はたと夫人の
爪尖
(
つまさき
)
に
跪
(
ひざまず
)
いて、片手を額に加えたが、無言のまま身を起して、
同一
(
おなじ
)
窓に
歩行
(
あゆ
)
み寄った。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物見は、そこを一歩も動かないのが、役目の原則なので、守将にも上から言葉をかけたが、帯刀が登って来ると、
跪
(
ひざまず
)
いて、片手をつかえた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
沈んではいるがしゃんと張切った心持ちになって、クララは部屋の隅の聖像の前に
跪
(
ひざまず
)
いて
燭火
(
あかり
)
を捧げた。そして静かに身の
来
(
こ
)
し
方
(
かた
)
を返り見た。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
或
(
ある
)
時長い間
往来
(
おうらい
)
の
杜絶
(
とだ
)
えて居た両親の家に行き、突然
跪
(
ひざまず
)
いて、大
真面目
(
まじめ
)
に両親の前で祈祷したりして、両親を
却
(
かえ
)
って驚かしたこともありました。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と口々に叫びながら、出丸の
馬出
(
うまだ
)
しから細谷の浦へおり、足るほどに磯草を採ったり、磯辺に
跪
(
ひざまず
)
いてパーテル・ノステルの祈祷を唱えたりする。
ひどい煙
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
私はヷーシャの前に
跪
(
ひざまず
)
いて言いました、『ヷシーリイ・マクシームィチ、われわれ二人は君に悪いことをしたのだ。どうか宥してくれたまえ。』
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
あるいはまた密室に
跪
(
ひざまず
)
き四辺人なきのときにおいて、ひそかにわが邦将来のことをば積誠を
凝
(
こ
)
らして上帝に祈る熱心なるキリスト教徒もあらん。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
驢これを聞いて
跪
(
ひざまず
)
いて愁い申したに、慈悲無辺の上帝よ、
某
(
それがし
)
そんな辛い目をして五十年も長らえるはいかにも情けない。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
この人は心の底から紅葉を崇拝していた。紅葉の死後も毎朝顔を洗って飯を食う前に、必ず旧師の写真の前に
跪
(
ひざまず
)
いて礼拝することを怠らなかった。
文壇昔ばなし
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
母は長い間わが子の
我
(
が
)
を助けて育てるようにした結果として、今では何事によらずその
我
(
が
)
の前に
跪
(
ひざまず
)
く運命を甘んじなければならない
位地
(
いち
)
にあった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と申して、医者も薬も、どうして払いましょう、一文もありません。ですからまあわずかなお金でも
跪
(
ひざまず
)
いて押しいただくような始末でございます。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私はこの校長さんに
跪
(
ひざまず
)
いてスリッパを揃えた時心から幸福であった。やはり紋付、袴に、靴といういでたちであった。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
王妃は、もはや、オフィリヤの味方になっています。王妃は、きょうの夕刻このわしに、泣いて
跪
(
ひざまず
)
いてたのみました。
新ハムレット
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その内にもう一人の陳彩は、房子だった「物」の側に
跪
(
ひざまず
)
くと、そっとその細い
頸
(
くび
)
へ手を廻した。それから頸に残っている、無残な指の
痕
(
あと
)
に唇を当てた。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼女は、この寒い夜の自然に向って、
跪
(
ひざまず
)
き、「この幸福を、私に授けて下すったのは、どなたですか。私はそれほど、恵み愛されていたのでしょうか」
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
何時の間にか家内は寝台の向側に
跪
(
ひざまず
)
いていた。私はお房の細い手を握って脈を捜ろうとした。火のように熱かった。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ただ、大地に
跪
(
ひざまず
)
き、額で地べたを叩き、遂には、血の匕首を持っている三郎兵衛の、物すごい表情に怖れもせず、裾をすら掴んで哀願しつづけるのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
老人も
終
(
つい
)
には若い男の説を
納
(
い
)
れて解剖刀を捨て、二人とも
跪
(
ひざまず
)
いて少女の死屍に
祈祷
(
きとう
)
を捧げたという光景を叙して
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こうした
尼寺
(
ホスピス
)
の前までやっと辿りついて、
跪
(
ひざまず
)
くように雪の上につんのめるとたんに、けたたましい犬の声が闇の奥から響いて、今まで積雪の上に漏れて
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
これを決するためには終日終夜
心魂
(
しんこん
)
を痛め、あるいは
跪
(
ひざまず
)
いて神意を伺わんとしたり、あるいは思案に沈んで、ほとんど無意識に一室を
往
(
ゆ
)
き
来
(
き
)
したという。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そして昔彼女が
跪
(
ひざまず
)
きに来ていた腰掛の見える所に、柱の後ろに座を占めた。彼女がもし生きてたらなおそこへやって来るに違いないと思って待ち受けた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その人は黒い烏帽子を前かがみに、私たちの前に、やや斜めに
跪
(
ひざまず
)
いて、
審
(
いぶ
)
かしげに、また親しそうに
此方
(
こちら
)
を見た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
と
勧
(
すす
)
めて、承諾も待たずにもう
跪
(
ひざまず
)
いた。私は今更仕方がなく、占部さんの後について口真似をした。今考えて見ると
主
(
しゅ
)
の祈りだった。大体申分なかったが
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
唯
蚊
(
か
)
だけが
疵
(
きず
)
だが、至る処の
堂宮
(
どうみや
)
は
寝室
(
ねま
)
、
日蔭
(
ひかげ
)
の草は
茵
(
しとね
)
、貯えれば腐るので家々の貰い物も自然に多い。ある時、安さんが
田川
(
たがわ
)
の側に
跪
(
ひざまず
)
いて居るのを見た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
忠僕の爺は悲運の迫った主家の邸下に
跪
(
ひざまず
)
いて慟哭し、山村の人々にも一々腰を曲げて別れを告げ
飄然
(
ひょうぜん
)
と出掛けて来た。まだ山の峠には雪が真白く積っていた。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
綱手は、石の前に、
跪
(
ひざまず
)
いて合掌した。合掌すると、ただ、無闇に悲しくなって、涙が、いくらでも出て来た。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
会衆が一どきに立ちあがりました。千恵はとつさに、さも入口のすぐ外に
跪
(
ひざまず
)
いてゐたやうな身ぶりを装つて、流れ出る会衆の先頭に立つて礼拝堂を離れました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
彼の
背後
(
うしろ
)
には縄付きが五人ズラリと廊下に
跪
(
ひざまず
)
いている。昨日まで武威を誇っていた鬼王丸と四天王とがいわゆる
珠数繋
(
じゅずつな
)
ぎに繋がれて
悄然
(
しょうぜん
)
と跪いているのである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
罪に喘ぐ小羊達は、
跪
(
ひざまず
)
き、うなだれた頭を指で支えて、聖なる聖なる父の御名を
疲労
(
くたび
)
れる迄くり返した。
反逆
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
しばし
呆然
(
ぼうぜん
)
と立ちすくんでいると、頼政の軍から、一きわ
華
(
はな
)
やかに
鎧
(
よろい
)
をつけた男が、進み出てきて、神輿の前に
跪
(
ひざまず
)
くと主人からの口上を、力強い声で述べたてた。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
例の
放蕩
(
ほうとう
)
子息が
跪
(
ひざまず
)
いて泣いた時、かれはその過去の罪悪および苦悩をば生涯において最も美しく神聖なる時となしたのであると基督がいわれるであろうといっている。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
マリヤの像の前へ案内すると、あゝ、ほんとにマリヤさま、ゼススさまをだいていらっしゃると、なつかしげに叫んだが、やがてみなみな
跪
(
ひざまず
)
いて祈りはじめてしまった。
二合五勺に関する愛国的考察
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
こう言いながら彼は私の前にとつぜん
跪
(
ひざまず
)
いたので、今度は私の方があっけにとられたくらいだった。壮士というような人間の心の単純さに私はじっさい
吃驚
(
びっくり
)
したのだった。
私はかうして死んだ!
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
壮厳なあたりの空気に圧せられて、我々が一瞬間
呆気
(
あっけ
)
に
奪
(
と
)
られて佇立していた時に、
跪
(
ひざまず
)
いた侍女の一人が何か
囁
(
ささや
)
いたのでしょうか? 両胸に垂れた白髯がかすかに
揺
(
ゆら
)
いで
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「
家
(
うち
)
へ帰ると、寝台の上に
跪
(
ひざまず
)
いて、持っている本をひろげてミサを読んだんだよ。だけどお前、やっぱりね、いくら一生懸命に読んでも、御堂の式に出るのとは違うからね」
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
そして
壁際
(
かべぎわ
)
に
跪
(
ひざまず
)
いてお祈りをすまして学校に出かける。洗面器は売ってしまったので顔を洗うことが出来ないから、顔は途中にある湯島公園の便所の出口の
手洗鉢
(
てあらいばち
)
で洗った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それは巨大な工場地帯の裏地のようなところで
跪
(
ひざまず
)
いて祈っているキリストの絵像であった。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
跪
漢検1級
部首:⾜
13画
“跪”を含む語句
跪坐
跪座
拝跪
跪拝
跪居
跪踞
長跪
人々跪
左右前後跪起
拝跪問撏
拝跪礼
盥嗽跪拝
跪下
跪坐低頭
跪座立礼
蹲跪