起居たちゐ)” の例文
にたゝへておたかくとはいひしぬ歳月としつきこゝろくばりし甲斐かひやうや此詞このことばにまづ安心あんしんとはおもふものゝ運平うんぺいなほも油斷ゆだんをなさず起居たちゐにつけて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
越した年寄ですが、老耄らうまうして起居たちゐも不自由なので、家の者とは別に住んで居り、孫娘のお芳とお種が介抱して居ります
第一、女たちの生活は、起居たちゐふるまひなり、服装なりは優雅に優雅にと変つては行つたが、やはり昔の農家の家内の匂ひがつき纏うて離れなかつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ひるの中に伴建部の兩人より申こしたれども惣右衞門は此節病氣にて起居たちゐも自由ならざれば今宵こよひやしき内へゆきはたらく事能はず又悴重五郎は九月中より御代官だいくわんの供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
唯真すぐに向を見るのみ、起居たちゐ振舞ふるまひ自由ならざる、如何どうしても明治の木曾殿と云ふ容子ありさま
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
可艱なやましげにも自ら起居たちゐたすけ得る身となりければ、一日一夜をす事も無く、ベッドの上に静養をつとめざるべからざる病院の無聊ぶりようをば、ほとんど生きながら葬られたらんやうにこうじつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、むらさきふじより、菖蒲あやめ杜若かきつばたより、鎌倉かまくらまちは、みづは、ひと出入ではいり起居たちゐにも、ゆかりのいろふであらう、とゆかしがるのみで、まるでもつて、したる容体ようだいとはおもひもつかないでたのに。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
顏容かほかたちさへ稍〻やつれて、起居たちゐものうきがごとく見ゆれども、人に向つて氣色きしよくすぐれざるを喞ちし事もなく、偶〻たま/\病などなきやと問ふ人あれば、却つて意外の面地おももちして、常にも増して健かなりと答へけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
眼を病めば起居たちゐをぐらし冬合歓ふゆねむの日ざしあたれる片枝かたえのみ見ゆ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
太しきさうの羽根さへも起居たちゐ妨ぐ足まとひ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ふさげない事になつてにもにもまぬかれぬ弊風へいふうといふのが時世ときよなりけりで今では極点きよくてんたつしたのだかみだけはいはつて奇麗きれいにする年紀としごろの娘がせつせと内職ないしよくの目も合はさぬ時は算筆さんぴつなり裁縫さいほうなり第一は起居たちゐなりに習熟しうじよくすべき時は五十仕上しあげた
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
いとけなき起居たちゐのさまや
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
伯父様にきずのつかぬやう、我身が頓死とんしする法は無きかと目は御新造が起居たちゐにしたがひて、心はかけ硯のもとにさまよひぬ。
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
立てもいたむ事なき故友次郎は云に及ばずお花忠八もいたよろこかくては日ならず江戸へ下らるべしと猶おこたりなく看病かんびやうせしかば五日目には起居たちゐの成樣になり十日目ごろは座敷の中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
空は見て答ふるなきは音絶えし兵の起居たちゐさがとやなりにし
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
太しきそうの羽根さへも起居たちゐさまたぐ足まとひ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
伯父樣おぢさまきずのつかぬやう、我身わがみ頓死とんしするはうきかと御新造ごしんぞ起居たちゐにしたがひて、こゝろはかけすゞりのもとにさまよひぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふせたる程の腫物しゆもつ出來ていたむこと甚だしく自由には起居たちゐも成ざればお花は又もやおどろきて以前の醫者をよびて見するに此度は醫師もかうべを傾け是は何共名付なづけ難き腫物しゆもつなり何にもせよ口を明て毒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
篁に起居たちゐすがしむきのふけふしみみに紅き水引のはな
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕暮ゆふぐれ店先みせさき郵便脚夫いうびんきやくふ投込なげこんできし女文字をんなもじ書状ふみ一通いつゝう炬燵こたつ洋燈らんぷのかげにんで、くる/\とおびあひだ卷收まきをさむれば起居たちゐこゝろくばられてものあんじなること一通ひととほりならず、おのづといろえて
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)