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裂目
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さけめ
ふりがな文庫
“
裂目
(
さけめ
)” の例文
小柄なヒステリイの強い眼の下に影のある
年増
(
としま
)
女の顔が浮んで来ると、彼は
己
(
じぶん
)
をふうわりと包んでいた
靄
(
もや
)
の
裂目
(
さけめ
)
が出来たように感じた。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
丁度
(
ちやうど
)
私
(
わたし
)
の
居
(
ゐ
)
た
汀
(
みぎは
)
に、
朽木
(
くちき
)
のやうに
成
(
な
)
つて、
沼
(
ぬま
)
に
沈
(
しづ
)
んで、
裂目
(
さけめ
)
に
燕子花
(
かきつばた
)
の
影
(
かげ
)
が
映
(
さ
)
し、
破
(
やぶ
)
れた
底
(
そこ
)
を
中空
(
なかぞら
)
の
雲
(
くも
)
の
往來
(
ゆきき
)
する
小舟
(
こぶね
)
の
形
(
かたち
)
が
見
(
み
)
えました。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ここにオホクメの命が、天皇の仰せをそのイスケヨリ姫に傳えました時に、姫はオホクメの命の眼の
裂目
(
さけめ
)
に
黥
(
いれずみ
)
をしているのを見て不思議に思つて
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
天井の一条の
裂目
(
さけめ
)
は非常に深く、また非常に広い。彼女が立ち上って、指先で弾いても、少しも澄んだ音はせず、破れ茶碗の音とほとんど違いがない。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
それは雪子学士の着ているワンピースの服が、あっちもこっちも引裂け、
甚
(
はなは
)
だしい箇所ではその
裂目
(
さけめ
)
から雪子の青白い皮膚があらわに見えることだった。
四次元漂流
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
洞穴
(
ほらあな
)
の中に一筋の
明
(
あか
)
りが差し込んでいる。それは巌の
裂目
(
さけめ
)
で、そこへ近づいてみると、
傍
(
かたわら
)
につっ立っている奇巌城が見える。ガニマールは
指
(
ゆびさ
)
していった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
あの都のまん中にある七つの
丘
(
おか
)
の一つに、
皇帝宮
(
こうていきゅう
)
の
廃墟
(
はいきょ
)
があります。野生のイチジクが
壁
(
かべ
)
の
裂目
(
さけめ
)
から生えでて、広い
灰緑色
(
かいりょくしょく
)
の葉で壁の
素肌
(
すはだ
)
をおおっています。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
と言いながら米友は、松の木の下を離れて、そこらを探し廻り、裂けて落ち散っていた槍の
鞘
(
さや
)
を拾って、これを穂の上へかぶせ、
紙撚
(
こより
)
をこしらえて
裂目
(
さけめ
)
を結ぶ。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女は幕をひく手をつと放して内に
入
(
い
)
る。
裂目
(
さけめ
)
を洩れて斜めに大理石の階段を横切りたる日の光は、一度に消えて、薄暗がりの中に戸帳の模様のみ
際立
(
きわだ
)
ちて見える。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
大正十二年
(
たいしようじゆうにねん
)
の
噴火
(
ふんか
)
に
於
(
おい
)
ては、
山
(
やま
)
の
東側
(
ひがしがは
)
と
西側
(
にしがは
)
とに
東西
(
とうざい
)
に
走
(
はし
)
る
二條
(
にじよう
)
の
裂目
(
さけめ
)
を
生
(
しよう
)
じ、
各線上
(
かくせんじよう
)
五六
(
ごろく
)
の
點
(
てん
)
から
鎔岩
(
ようがん
)
を
流出
(
りゆうしゆつ
)
した。この
状態
(
じようたい
)
はエトナ
式
(
しき
)
と
稱
(
しよう
)
すべきである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
水がこぼこぼ
裂目
(
さけめ
)
のところで
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
きながらインクのようにゆっくりゆっくりひろがっていったのだ。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
陽は、もう丘の稜線に沈み
懸
(
かか
)
って、
陰欝
(
いんうつ
)
な雲の
裂目
(
さけめ
)
から、鉱区の一部をあの血の様な色に染めていた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
いまから考へると多分の
嫉妬
(
しっと
)
もあつたやうに思ふ。さういふ
険
(
けわ
)
しい
石火
(
いしび
)
を
截
(
き
)
り合つて、そこの
裂目
(
さけめ
)
から
汲
(
く
)
まれる案外甘い情感の滴り——その
嗜慾
(
しよく
)
に雪子は魅惑を感じた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
何百年かの昔、一粒の種が風に吹かれてあの岩の小さな
裂目
(
さけめ
)
に落ちこんだとする。それはその種にとって運命だったんだ。つまり、そういう境遇に巡り合わせたんだね。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
ロミオ いや/\、
旦
(
あさ
)
を
知
(
し
)
らする
雲雀
(
ひばり
)
ぢゃ、ナイチンゲールの
聲
(
こゑ
)
ではない。
戀人
(
こひびと
)
よ、あれ、お
見
(
み
)
やれ、
意地
(
いぢ
)
の
惡
(
わる
)
い
横縞
(
よこじま
)
めが
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
の
雲
(
くも
)
の
裂目
(
さけめ
)
にあのやうな
縁
(
へり
)
を
附
(
つ
)
けをる。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
我等は右に左に
紆行
(
うね
)
りてその
状
(
さま
)
あたかも寄せては返す波に似たる一の石の
裂目
(
さけめ
)
を登れり 七—九
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
頬
(
ほお
)
のあたりはこけて、しわがより、よく発達したあごには、やわらかい
裂目
(
さけめ
)
ができている。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
巨大
(
おほき
)
な
岩
(
いわ
)
の
裂目
(
さけめ
)
があつて、
其處
(
そこ
)
から
太陽
(
たいやう
)
の
光
(
ひかり
)
は
不足
(
ふそく
)
なく
洞中
(
どうちう
)
を
照
(
てら
)
してをるのである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
桔梗
(
ききょう
)
の花の
裂目
(
さけめ
)
のようにくっきりした
襟
(
えり
)
の
生
(
は
)
え際に、おや? ……という
面持
(
おももち
)
。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
私がそれを見上げたとき、その
裂目
(
さけめ
)
を埋めてゐる空に暫くの間月が現はれた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
文字通り
斧
(
おの
)
でたち割った、巨大な
鼠色
(
ねずみいろ
)
の
裂目
(
さけめ
)
に過ぎません。
目羅博士の不思議な犯罪
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
己はあの岩の
裂目
(
さけめ
)
から落ちて来る滝を
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
其
(
そ
)
の
手近
(
てぢか
)
なのの、
裂目
(
さけめ
)
の
口
(
くち
)
を、
私
(
わたし
)
は
餘
(
あま
)
りの
事
(
こと
)
に、
手
(
て
)
でふさいだ。ふさいでも、
開
(
あ
)
く。
開
(
あ
)
いて
垂
(
た
)
れると、
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
したやうに
見
(
み
)
えて、
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
が
甘澁
(
あましぶ
)
くニヤリと
笑
(
わら
)
つた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
獣の吠える声がますます凄く聞えた。章は渇きを覚えたので、水を飲もうと思って岩の後ろへ廻り、そこへ来た時にちらと見てあった、岩の
裂目
(
さけめ
)
からしたたり落ちている水を
掌
(
て
)
に掬うて飲んだ。
狼の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼の眼は二筋の光る
裂目
(
さけめ
)
にすぎなくなっている。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
裂
常用漢字
中学
部首:⾐
12画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“裂”で始まる語句
裂
裂帛
裂罅
裂地
裂石
裂織
裂隙
裂傷
裂口
裂布