えん)” の例文
新字:
兎角とかく一押いちおし、と何處どこまでもついてくと、えんなのが莞爾につこりして、馭者ぎよしやにはらさず、眞白まつしろあを袖口そでくち、ひらりとまねいて莞爾につこりした。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紋着もんつきしろえりで盛裝せいさうした、えんなのが、ちやわんとはしを兩手りやうてつて、めるやうにあらはれて、すぐに一切ひときれはさんだのが、そのひとさ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はんかなあまい/\甘酒あまざけ赤行燈あかあんどうつじゆれば、そ、青簾あをすだれ氣勢けはひあり。ねや紅麻こうまえんにして、繪團扇ゑうちは仲立なかだちに、蚊帳かやいと黒髮くろかみと、峻嶺しゆんれい白雪しらゆきと、ひとおもひいづれぞや。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがてみのころよ。——就中なかんづくみなみ納戸なんど濡縁ぬれえん籬際かきぎはには、見事みごと巴旦杏はたんきやうがあつて、おほきなひ、いろといひ、えんなる波斯ペルシヤをんな爛熟らんじゆくした裸身らしんごとくにかをつてつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
得之これをえたるは、らず、はたもとぶを細君さいくんえんざるによるか、非乎ひか
術三則 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゝにおいて、はじめは曲巷ちまた其處此處そここゝより、やがては華屋くわをく朱門しゆもんされて、おくらざるところほとんすくなく、かれすもの、不具ふぐにしてえんなるををしみて、金銀きんぎん衣裳いしやうほどこす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……なかに、紅絹もみきれに、しろかほばかりして褄折笠つまをりがさ姿すがたがある。紅茸べにたけらしい。あのつゆびたいろは、かすかひかりをさへはなつて、たとへば、妖女えうぢよえんがある。にはゑたいくらゐにおもふ。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引添ひきそつて、手拭てぬぐひ吉原よしはらかぶりで、えん蹴出けだしの褄端折つまぱしよりをした、前髮まへがみのかゝり、びんのおくれ明眸皓齒めいぼうかうし婦人ふじんがある。しつかりした、さかり女中ぢよちうらしいのが、もう一人ひとりあとについてゐる。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これよりして、天下御免てんかごめん送狼おくりおほかみえんにしてかつなのもまたくるまうへから幾度いくたび振返ふりかへ振返ふりかへりする。それわざとならずじやうふくんで、なんとももつ我慢がまんがならぬ。のあたり、神魂迷蕩不知兩足䟜跚也しんこんめいたうりやうそくのとつさんをしらざるなり
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)