ならひ)” の例文
私の祖父を里正津下市郎左衛門つげいちらうざゑもんと云つた。旧家に善くあるならひで、祖父は分家で同姓の家の娘をめとつた。祖母の名は千代ちよであつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そはこれがわが世のならひゆること、さながら諸天の中のいときものゝ𢌞めぐる早さがキアーナの水の流れにまさる如くなればなり 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ふ。宗桂そうけいのあしらひより、番太郎ばんたらう桂馬けいまはうが、えらさうにえるならひであるから、おきみ感心かんしんしたらしかつた。もさうず、と元二げんじ益々ます/\附入つけいる。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よめはうちゑみつゝしうとめにかくといへば、姑はにはか土産みやげなど取そろへるうちよめかみをゆひなどしてたしなみ衣類いるゐちやくし、綿入わたいれ木綿帽子もめんばうし寒国かんこくならひとて見にくからず
高望王が上総介、六孫王が武蔵介、およそかゝる身分の人〻がかゝる官に任ぜられたのは当時のならひであるから、興世王もけだ然様さういふ人と考へて失当しつたうでもあるまい。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「貴殿に対して遺恨あり、武道のならひにて果合はたしあひ致度、明朝七ツ時、赤羽橋辻あかばねばしつじまで御越おこしあり度」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そして、少しでも厭な素振を見せると、それなら考があるから呉れなくても好いと威嚇おどすのがならひ。村方では又火でもけられては……と思ふから、仕方なしに、言ふまゝに呉れて遣る。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
〽あづま路に、かうも名高き沼津の里、富士見白酒名物を、一つ召せ/\駕籠かごに召せ、お駕籠やろかい參らうか、お駕籠お駕籠と稻むらの蔭に巣を張り待ちかける、蜘蛛のならひと知られたり。
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
ジエンナロは唯だ冷かに、にさることあらんも計られずとのみ答へしに、フランチエスカの君我耳に付きて、自ら怜悧さかしがりて人を屈するは惡しきならひぞとのたまふ。我は頭をれて人々のしりへに退きぬ。
これも少女をとめならひかや。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
中にも砲術家は大筒をもたくはへ火薬をも製するならひではあるが、此家ではそれが格別にさかんになつてゐる。去年九月の事であつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
よくあるならひで——醫師いしやぬかり、看護婦かんごふ不深切ふしんせつなんでも病院びやうゐん越度をちどおもつて、それ口惜くやしさに、ものぐるはしくおほきたてものを呪詛のろつてるんだらう。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自然のならひとて、晝の始め、冷やかなる羽をあたゝめんため、からすむらがりて飛び 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これも少女をとめならひかや。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
たしかえきみとめたのは國府津こふづだつたのである。いつもは大船おほふななほして、かなたに逗子づし巖山いはやまに、湘南しやうなんうみなぎさにおはします、岩殿いはと觀世音くわんぜおんれいまゐらすならひであるのに。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
世の常ならば生面せいめんの客にさへまじはりを結びて、旅の憂さを慰めあふが航海のならひなるに、微恙びやうにことよせてへやうちにのみこもりて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨にかしらのみ悩ましたればなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
海人あまならひ
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あはあたへてやしなならひと、仔細しさいけば、所謂いわゆる窮鳥きうてうふところつたるもの。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
對手あひてこひかたきでもゆるしてとほならひである。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)