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端
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はな
ふりがな文庫
“
端
(
はな
)” の例文
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の座布団に男女連れがかけていた。入って行った石川の方に振り向いた女の容貌や服装が、きわだって垢ぬけて
贅沢
(
ぜいたく
)
に見えた。
牡丹
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
諏訪、上原の合戦では、糧道の
先達
(
せんだつ
)
に道を教えなかったら、村
端
(
はな
)
へ煙硝を仕掛け、一郡七カ村を跡方もなく噴き飛ばしてしまった。
うすゆき抄
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
栄二は傘をすぼめて戸袋に立てかけ、格子をあけてはいると、
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の六
帖
(
じょう
)
ではいつもの小僧が、麻の袋を持って板に打ちつけていた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
銀河
(
あまのがわ
)
はいつか消えて、うす白い空の光りはどこにも見えなかった。お絹を乗せてゆく駕籠の
端
(
はな
)
を、影の痩せた稲妻が弱く照らした。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
こう
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
のところに
膝
(
ひざ
)
を突いている老婆の眼が言った。意気な細君らしく成った豊世の風俗は、
昔気質
(
むかしかたぎ
)
の老婆には気に入らなかった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
見れば米友はあちら向きになって、いま旅の仕度をして
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
に腰をかけて、しきりに
草鞋
(
わらじ
)
の紐を結んでいるところであります。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なかの一人が上がり
端
(
はな
)
へ出て見ますと、予期に反して、
御岳
(
みたけ
)
ごもりの
行乞
(
ぎょうこつ
)
か、
石尊詣
(
せきそんまい
)
りの旅人らしい
風体
(
ふうてい
)
のものが格子の外に立っている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人は「桔梗」の入口の戸をあけて
中
(
うち
)
へはいつた。六畳の上り
端
(
はな
)
で
欅
(
けやき
)
の
胴切
(
どうぎり
)
の火鉢のまはりに、お糸さんとおなかさんとがぼんやりして居た。
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
「私が入つて行つた時にね、簑村といふ人は
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の座敷の隅に向ふを向いて立つてゐたの。それがすつかり私の方から見えてしまつたの。」
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
一寸
(
ちよつと
)
みたゞけでは何んの商売か見当のつかない店の
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
に、端然と腰をかけたかれのすがたがみつかつたではないか……
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
彼小家の前に立って望めば、右手に上野の山の
端
(
はな
)
が見え、この端と向岡との間が
豁然
(
かつぜん
)
として開けて、そこは遠く地平線に接する人家の海である。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と二人で見ているうち、夕日のなごりが、出崎の
端
(
はな
)
から
𤏋
(
ぱっ
)
と雲を射たが、親仁の額も
赫
(
かっ
)
となれば、線路も
颯
(
さっ
)
と赤く染まる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それにも
挫
(
ひる
)
まず又向って来た。
已
(
や
)
むを得ず脇差を抜いて切った。はずみで蛇の首は飛んで社前の鈴の手綱の
端
(
はな
)
に当った。
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
別役
(
べっちゃく
)
の姉上が来て西の
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
で話していたら要太郎が台所の方から自分を呼んで裏へ
鴫
(
しぎ
)
を取りに行かぬかと云う。
鴫つき
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
竹越三
叉
(
さ
)
氏の、中学へ行つて居る息子さんは、
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
に編上げ靴の紐を
解
(
ほど
)
くと、直ぐに追はれる様に駈け上つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と云いながら
四辺
(
あたり
)
を見ましたが、手頃の棒が有りませんから、
三尺
(
さんじゃく
)
を締め直して梯子の
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
まで来ると、上り端に六尺や半棒木太刀などが掛って居ります。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
挨拶が済んで、
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の帳場机の前に坐ると鍵屋のお民さんがにこ/\と私の顔を見ながら言つた。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
二両の
端
(
はな
)
が欠けると来ちゃ法はつかんよ! 俺らは早く道路工事が始まりゃいいと思っとる。
夏蚕時
(新字旧仮名)
/
金田千鶴
(著)
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の障子が赤くなる。同時に
其
(
その
)
障子が開いて、
洋燈
(
ランプ
)
を片手にして岡村の顔があらわれた。
浜菊
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
今更余計な仕業したりと悔むにもあらず、恐るゝにもあらねど、一生に
覚
(
おぼえ
)
なき異な心持するにうろつきて、土間に落散る
木屑
(
きくず
)
なんぞの
詰
(
つま
)
らぬ者に眼を注ぎ
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
に腰かければ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
二階階段の
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
に、便所と隣りあつてあるが、流しもとは狭くて水道栓は一つ、ガス焜炉は二つしかないので、支度時には混雑して、立つて空くのを待つてゐなければならない。
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
私は想い出すのだが、父が秋田で百姓をしていた頃、田から上がってくると、泥まみれの
草鞋
(
わらじ
)
のまゝ、ヨクうつ伏せになって上り
端
(
はな
)
で昼寝していた。父は身体に無理をして働いていた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
守人はわれとわが身を疑うもののごとく、しばし女の顔をみつめていたが、くずれるように、上がり
端
(
はな
)
へあぐらをかくと、そのままお蔦を引き寄せて大刀を持つ手で、ひしと抱き締めながら
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
K夫婦の新婚当座の甘い夜毎の睦言を他所に、米三君はその狭い
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の三畳でおそくまでこつ/\勉強した。寒い夜には焼芋を買つて来て、それをごそ/\と音させながら袂から出したりした。
田舎からの手紙
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
房州の
端
(
はな
)
が眼近に見え、右手は寧ろ黒々とした遠く展けた外洋である。
岬の端
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
とお父さんは、上り
端
(
はな
)
に突つ立つたままいつた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
四辺
(
あたり
)
が暗くなりかけに、借部屋に帰った。
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の四畳に、夜具包が駅から着いたままころがしてある。今日は主の爺さんがいた。
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
母屋
(
もや
)
の方へ引き返して行って見ると、上がり
端
(
はな
)
に
畳
(
たた
)
んだ
提灯
(
ちょうちん
)
なぞを置き、
風呂
(
ふろ
)
をもらいながら彼を見に来ている馬籠村の
組頭
(
くみがしら
)
庄助
(
しょうすけ
)
もいる。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
上り
端
(
はな
)
の三
帖
(
じょう
)
に
轆轤鉋
(
ろくろがんな
)
を据え、一日じゅう椀の木地を作っているが、いい腕なのでかなりな
稼
(
かせ
)
ぎになるのだ、といわれていた。
落葉の隣り
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あるいは上がり
端
(
はな
)
から転げ落ちるはずみに何かで打ったのか、医者にも確かに見極めが付かないらしく、結局おまきは
卒中
(
そっちゅう
)
で倒れたということになった。
半七捕物帳:12 猫騒動
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
暫くは舞台の
端
(
はな
)
に立つて、鉛筆のやうに真直になつてゐたが、急に
履
(
くつ
)
音を
蹴立
(
けた
)
ててフロオマンの前へ出て来た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
得月楼
(
とくげつろう
)
の前へ船をつけ自転車を引上げる若者がある。楼上と門前とに女が立ってうなずいている。犬引も通る。これらが煩悩の犬だろう。
松
(
まつ
)
が
端
(
はな
)
から車を雇う。
高知がえり
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
宵の口から品川の海辺に出で汐を見ますと、丁度高潮まわりで段々と汐のさしてまいる
端
(
はな
)
でげすから、伊之吉喜び勇みまして、舟を和国楼の石垣のとこへつけ
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
処を、牛の首に出会ったために、むしろその方が興味があったかも知れないと、そぞろに心の迷った
端
(
はな
)
を、
隠身寂滅
(
おんしんじゃくめつ
)
、地獄が消えた
牛妖
(
ぎゅうよう
)
に、少なからず驚かされた。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
裏手の格子戸の内に泥のついた下駄がいつぱいに脱ぎ散らしてあつた。みのるは臺所で見付けた昔馴染の老婢に木蓮を渡してから
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の座敷の隅にそつと入つて坐つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
僕は岡田と一しょに花園町の
端
(
はな
)
を横切って、東照宮の石段の方へ往った。二人の間には暫く詞が絶えている。「不しあわせな雁もあるものだ」と、岡田が独言の様に云う。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「あの方のは、上り
端
(
はな
)
で
草鞋
(
わらじ
)
を取っておりますところと、病気で行燈の下に休んでいるところとを取りました、それから昨日は、品右衛門爺さんが
蕎麦餅
(
そばもち
)
を食べているところを……」
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
飯島の
端
(
はな
)
にある叔母の家の広縁からながめると、むこう、稲村ヶ崎の切通しの下までつづく長い渚には、暑い東京で、汗みずくになって働きながら夢想していたような、花やかなものは
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
命じ終ると、正成は数十歩、丘の南の
端
(
はな
)
のほうへ歩いていた。すると、
童武者
(
わらべむしゃ
)
の
蔦王
(
つたおう
)
が、おやかたさま、おやかたさま、と彼のそばへ駈けよっていた。正成の顔の汗を見たからであろう。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「去年は五郎平の
端
(
はな
)
まで行つて、獲るのを見て居つたれど、今年は——」
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
復
(
ふたゝ
)
び艇へ戻つて寺ヶ崎の
端
(
はな
)
を廻り、上野島かけて大日崎の方を走ると、艇の位置が變るにつけて四圍の山々も動き、今までは見えなかつた山が姿をあらはしたり、今まで見えた山が隱れて行つたり
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
お福はよく
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
の壁の側や物置部屋の風通しの好いところを
択
(
えら
)
んで、
独
(
ひと
)
りで
読書
(
よみかき
)
するという風であったが、
何処
(
どこ
)
にも姿が見えなかった。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
おみのはあがり
端
(
はな
)
まで出てゆき、自分でそれを運びこんだ。そのとき得石は、おみのが女中に、なにか囁くのを聞きとめた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
韋駄天
(
いだてん
)
を叱する勢いよく
松
(
まつ
)
が
端
(
はな
)
に
馳
(
か
)
け付くれば旅立つ人見送る人
人足
(
にんそく
)
船頭ののゝしる声々。車の音。端艇
涯
(
きし
)
をはなるれば
水棹
(
みさお
)
のしずく屋根板にはら/\と音する。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
画家 (はじめて心付きたる
状
(
さま
)
にて)どうも、これは失礼しました。いや、
端
(
はな
)
から
貴女
(
あなた
)
がなさると思った次第でもありません。ちょっと今時珍しかったものですから。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
階段の
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
にさし出した裸ローソクの揺れる光が、つい目の下まで来ている水面を照らし出した。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
安兵衞が生垣の外から
怖々
(
こわ/″\
)
覗いて見ると、金重の弟子の恭太郎という馬鹿な奴が
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
に腰を掛けて、足をブラ/\やって遊んで居りまする。奥に叔母のおしのが居ります。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
わたくしがお風呂を頂いて、
身化粧
(
みじまい
)
をして、奥へまいりますと、奥様は御縁の
端
(
はな
)
に出て、虫の声でも聞いていらっしゃるかのように、じっと首をかしげていらっしゃいました。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それには
拘
(
かか
)
わらず七兵衛は
上
(
あが
)
り
端
(
はな
)
へ腰をかけて
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
真名古は上り
端
(
はな
)
へ腰をおろすと湿った調子で
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
端
常用漢字
中学
部首:⽴
14画
“端”を含む語句
端折
尖端
尻端折
片端
出端
端緒
一端
端正
山端
縁端
端然
端艇
突端
上端
町端
切端
川端
下端
端々
発端
...