相州そうしゅう)” の例文
鹿角かづの郡のユルギがあり、福島県では石城いわき郡のイルギ、最上もがみ会津あいづ相州そうしゅう浦賀等のユルギのほかに、飛んで隠岐おき五箇浦ごかのうらのエリリがある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もう十二年ぜんである、相州そうしゅう逗子ずしの柳屋といううちを借りて住んでいたころ、病後の保養に童男こども一人ひとり連れて来られた婦人があった。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
えいさてわたくしは夏休みのうち相州そうしゅう箱根から京阪の方へ廻って、久しゅう筆記を休んで居りましたが、申続きの美代吉庄三郎の身の上
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どこをどうあるき迷ったあげくか、その翌日には、お蝶は相州そうしゅう津久井県つくいけんさかいを出て、甲州の郡内に一歩足をふみ入れておりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文政四年の四月は相州そうしゅう江の島弁財天の開帳かいちょうで、島は勿論、藤沢から片瀬にかよう路々もおびただしい繁昌を見せていた。
恨みの蠑螺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大豆は常陸ひたち赤莢あかざやといって土浦近傍から出るのを全国第一としてあります。麦は相州そうしゅう藤沢近傍のが最上等です。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
東京付近では房州ぼうしゅう〔千葉県の南部〕、相州そうしゅう〔神奈川県〕、豆州ずしゅう〔伊豆半島と伊豆七島〕へ行けば得られる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
すなわち、相州そうしゅう三浦郡大津村に、信誠寺という真宗の寺院があるが、その境内に蓮如上人れんにょしょうにんの杖を地にはさまれたのが生育して、銀杏いちょうの大木となったという古木がある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ええ、そもそも羽田の浦を、扇ヶ浜おうぎがはまと申しまするで、それで、それ、此地を要島、これは見立で御座いますな。相州そうしゅうしま弁財天べんざいてんと同体にして、弘法大師こうぼうだいしの作とあります。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
波が浜へ打ち上げてから次の波が来るまでの時間は時によっていろいろですが、私が相州そうしゅうの海岸で計ったのでは、波の弱い時で四五秒ぐらい、大波の時で十四五秒ぐらいでした。
夏の小半日 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
わたくしは——じつ相州そうしゅう荒井あらい城主じょうしゅ三浦道寸みうらどうすんそく荒次郎あらじろう義光よしみつもうものつまだったものにございます。現世げんせ呼名よびな小櫻姫こざくらひめ——時代じだい足利時代あしかがじだい末期まっき——いまからやく四百余年よねんむかしでございます。
そこに鹿の角の刀けに二口の豪刀、大迫玄蕃が自慢の差料さしりょうで、相州そうしゅう猿畠さるばたけの住人、お猿畠の佐平太兼政が火と水を取ったという、新刀中での稀代きだい業物わざものの据えられてある——のはいいが
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひるごろ私は、作家、深田久弥氏のもとをたずねた。かれの、はっきりすぐれたる或る一篇の小説に依り、私はかれと話し合いたく願っていた。相州そうしゅう鎌倉二階堂。住所も、忘れてはいなかった。
狂言の神 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そういうわたしは、相州そうしゅう鎌倉かまくらにも小田原にも、上総かずさ富津ふっつにも時を送ったことがあり、西は四日市よっかいち神戸こうべ須磨すま明石あかしから土佐とさの高知まで行って見て、まんざら海を知らないでもありませんでした。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相州そうしゅうの江ノ島」とおのぶが云った、「近くはなくってよ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「はてね……。だが、相州そうしゅうとか伯耆ほうきとか京ものとか、およそ、その短刀の系図ぐらいは見当けんとうがついていねえんでしょうか」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前年相州そうしゅうの或る山村の過去帳を調べた時に心づいたことだが、同じ一家の死亡者は三年五年となかを置いてよく続いている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人力車から落されて少々怪我をいたし、打撲うちみで悩みますから、或人の指図で相州そうしゅう足柄下郡あしがらしもごおり湯河原ゆがわら温泉へ湯治とうじに参り、温泉宿伊藤周造いとうしゅうぞう方に逗留中
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでもこの興行もとどこおりなく勤め終って、かれはこの年の夏を相州そうしゅう茅ヶ崎ちがさきの別荘に過ごした。暑中と寒中に芝居を休むのは、かれが年々の例であった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
元来がんらい、水仙は海辺かいへん地方の植物であって、山地にえる草ではない。房州ぼうしゅう〔千葉県の南部〕、相州そうしゅう〔神奈川県の一部〕、その他諸州しょしゅうの海辺地には、それが天然生てんねんせいのようになってえている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
それにしてもみぎ所謂いわゆる小櫻姫こざくらひめ』とは何人なんびとか? 本文ほんぶんをおみになればわかとほり、この女性じょせいこそは相州そうしゅう三浦みうら新井城主あらいじょうしゅ嫡男ちゃくなん荒次郎あらじろう義光よしみつ奥方おくがたとして相当そうとうられているひとなのであります。
客はいよいよ不思議がって、ここの本陣の先祖に相州そうしゅう三浦みうらから来たものはないかと尋ねる。答えは、そのとおり。その先祖は青山監物けんもつとは言わなかったか、とまた客が尋ねる。まさにそのとおり。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
相州そうしゅうでございますな。正宗でございますな。まことに御名作で。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ここは、旅をするほどの者がたれも知るとおり、甲州街道の咽喉のどで、相州そうしゅう津久井県つくいけん武蔵むさしの国の分水嶺でもあります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相州そうしゅう浦賀郡うらがごおり東浦賀の新井町あらいまち𢌞船問屋かいせんどんやで名主役を勤めた人で、事実有りました人で、明和の頃名高い人で、此の人の身の上にく似て居りますから、此の人になぞら
烏帽子のあつらえ手は相州そうしゅう衣笠の城主で三浦介源義明よしあきらであることを家来は説明した。三浦介は上総介かずさのすけ平広常と共に京都の守護として、このごろ坂東から召しのぼられたのであった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
眼近まぢか相対あいたいする伊豆東海岸の各地から、相州そうしゅう足柄下郡あしがらしもぐんの浦々にかけて、祭にこの弥勒歌を踊ったという例が多く、しかも歌のことばは一様に、かえって大島のものよりは古風なのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
相州そうしゅう鎌倉地福寺かまくらじふくじ学僧がくそう、一とうりゅうけん妙手みょうしゅとして聞えた慈音じおんというぼうさんのすがたが見えたからである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貸してくれぬか。といっても、お身も旅先でそれだけの貯えもあるまい。お身は京の刀屋に知るべがあると聞いている。おれの刀は相州そうしゅう物だ。その刀屋に相談して、二百両に換えてはくれまいか
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
相州そうしゅう三浦郡みうらごおり高沢町たかざわまち井桁屋米藏いげたやよねぞうたしかに四布風呂敷よのぶろしきに白いきれで女房が縫って、高沢井桁米たかざわいげたよねと書いてあるが証拠だ中結なかゆわえもある、どうも御人体ごにんていにも似合わねえ、他人ひとの荷物を持って其処そこへ置いてなん
相州そうしゅう大磯には化け地蔵、一名袈裟切けさぎり地蔵というのがもとはありました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
二十日正月までにこしらえる事に相成ったが、の國綱は存じてるであろうが、鬼丸同作であると云うは、北條のもとめによって國綱山城やましろの粟田口より相州そうしゅう山の内にきたり、時頼ときよりの為にきたえたる鬼丸