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犢
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こうし
ふりがな文庫
“
犢
(
こうし
)” の例文
吹雪の夜、
厨
(
くりや
)
の戸がことことと鳴るのに驚いて出て見ると、餌をあさりに来た鹿であったり、時には
犢
(
こうし
)
ほどもある狼であったりする。
春いくたび
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
宏大な美しい声と、幅の広い柔かな表現を持った人だ。ほかに望みのある人は『ファウスト』の「
黄金
(
きん
)
の
犢
(
こうし
)
の歌」などが面白かろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
海ぞいに立て連ねた
石杭
(
いしぐい
)
をつなぐ
頑丈
(
がんじょう
)
な鉄鎖には、西洋人の子供たちが
犢
(
こうし
)
ほどな洋犬やあまに付き添われて事もなげに遊び戯れていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
最近私は烏や、豚や、
家鴨
(
あひる
)
や、
犢
(
こうし
)
の叫び声を完全に真似する行商人に逢った。また私は、気のいい一人の老人(図271)を写生した。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
最近に生み落とした
犢
(
こうし
)
のことをぼんやり思い出して、わが子恋しさに
啼
(
な
)
くようなことも
稀
(
ま
)
れである。ただ、彼女は人の訪問を悦ぶ。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
▼ もっと見る
先ず目についたのは鑵詰工場らしい、ほとんど吹き
曝
(
さら
)
しのバラックだ。大きい、
犢
(
こうし
)
ほどの樺色の樺太犬がのそりと、その前には出ていた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
太平
(
たいへい
)
町の某は十四頭を、大島町の某は
犢
(
こうし
)
十頭を殺した。わが一家の事に就いても種々の方面から考えて惨害の感じは深くなるばかりである。
水害雑録
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
山羊
(
やぎ
)
と
犢
(
こうし
)
との血を用いず、己が血をもてただ一たび至聖所に入りて、永遠の贖罪を終え給えり。……このゆえに彼は新しき契約の仲保なり。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
それらの善良なる男女はわれわれを
放蕩息子
(
ほうとうむすこ
)
と呼び、われわれの帰国を
希
(
ねが
)
い、われわれのために
犢
(
こうし
)
を殺してごちそうをしようと言っている。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
伸子は、手をつけないままの大皿のふたの上に「どうぞ、牛肉か、
犢
(
こうし
)
か、羊肉を」と書いた紙きれをのせて、台所へおいた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その辺の大都フェスの諺に口ばかり剛情な怯者を
詈
(
ののし
)
って汝はアグラの獅ほど勇なり
犢
(
こうし
)
にさえ尾を
啖
(
く
)
わるべしというとある。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
英夫を見くびって躍りかかって来た相手だけに、背負投はあざやかにきまって趙の
犢
(
こうし
)
のような
図体
(
ずうたい
)
は、もんどりうってはげしく鉄板の上を叩き
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
母牛が
犢
(
こうし
)
をなめるような愛は昔から
舐犢
(
しとく
)
の愛といって悪い方の例にされているけれども、そういう趣きがなくなっては、母の愛は去勢されるのだ。
女性の諸問題
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
大きな小學校と、この太政官の家とを、後の山の上から見下ろすと、恰も白い牝牛が同じ毛色の
犢
(
こうし
)
を連れて、松林の中に眠つてゐるやうに見えた。
太政官
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
犢
(
こうし
)
の冷肉を一皿とクワス一本を
平
(
たい
)
らげてから、広大無辺な我がロシア帝国の地方によっては、よく言い草にされている、
謂
(
いわ
)
ゆる『
鞴
(
ふいご
)
のような
大鼾
(
おおいびき
)
』
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
汝等はキリストを救世主とし、神の子とし、又罪の贖者とするが、それは人間的解釈で、かの古代ヘブライ人の刻める
犢
(
こうし
)
の像と、何の相違もない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
犢
(
こうし
)
のカツレツが二十五匁で二百五十カロリー、焼パンが十二匁で百五十六カロリー、バターが八匁で二百二十カロリー
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
そのうちに、何か、犬の
癇
(
かん
)
に触ったことがあるとみえ、いきなり城太郎のすそへ噛みついて、
犢
(
こうし
)
のように唸りだした。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ゆえに人にはあくまでも男らしい気骨がなければ宗教の
主旨
(
しゅし
)
にも
適
(
かな
)
わなくなる。人は軟骨動物ではない。愛とは単に老牛が
犢
(
こうし
)
を
舐
(
な
)
むるの類に
止
(
とど
)
まらぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
さてまた牡丹が
雄
(
おっと
)
文角
(
ぶんかく
)
といへるは、
性来
(
うまれえて
)
義気深き牛なりければ、花瀬が遺言を堅く守りて、黄金丸の養育に、
旦暮
(
あけくれ
)
心を傾けつつ、
数多
(
あまた
)
の
犢
(
こうし
)
の
群
(
むれ
)
に入れて。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
そのかわり、牛が三頭、
犢
(
こうし
)
を
一頭
(
ひとつ
)
連れて、
雌雄
(
めすおす
)
の、どれもずずんと
大
(
おおき
)
く真黒なのが、
前途
(
ゆくて
)
の細道を
巴形
(
ともえがた
)
に
塞
(
ふさ
)
いで、悠々と遊んでいた、渦が巻くようである。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうしてから、まず牡牛だけを去らせて、その後に牝牛の眼隠しを解きますと、そうしてから生れる
犢
(
こうし
)
が、その後同居する牡牛の色合に似てしまうのです。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
犢
(
こうし
)
はうまい。けれども、犢の味をふつうの牛の味と比較するのは無理である。犢と親牛の肉は、同じ牛の肉でも全く別な味である。言わば品質が違うのである。
猪の味
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
鋳
(
い
)
かけ屋佐平次の唯一の
伴侶
(
とも
)
、利口者として飼主よりも名の高い、甚右衛門は
犢
(
こうし
)
のような土佐犬であった。
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
検事の役目を承わった動的表現界の代表者、
犢
(
こうし
)
の神は鼻息荒く立ち上って、
劈頭
(
へきとう
)
左の如く論じ出しました。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それと見た一頭の黒い牝牛は尻毛を動かして、塩の方へ
近
(
ちかづ
)
いて来る。
眉間
(
みけん
)
と下腹と白くて、他はすべて茶褐色な一頭も耳を振つて近いた。
吽
(
もう
)
と鳴いて
犢
(
こうし
)
の
斑
(
ぶち
)
も。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
血腸詰
(
プウダン
)
やら、
河沙魚
(
グウジョン
)
の空揚げやら、
胎貝
(
ムウル
)
と
大蒜
(
にんにく
)
の塩汁、豚の軟骨のゼラチン、
犢
(
こうし
)
の脳味噌を
茹
(
ゆ
)
でたやつ
犂氏の友情
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お
腹
(
なか
)
には弟子
達
(
だち
)
が焼いて呉れた
犢
(
こうし
)
の肉が一杯詰つてゐるしするので、基督はこれ迄にない上機嫌で、
親父
(
おやぢ
)
の神様に代つて、
姦通
(
まをとこ
)
のほかは大抵の罪はかけ構ひなく
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
家畜の宰領をしているラファエレに、現在の頭数を聞いて見たら、乳牛三頭、
犢
(
こうし
)
が
牝
(
めす
)
牡
(
おす
)
各一頭ずつ、馬八頭、(ここ迄は聞かなくても知っている。)豚が三十匹余り。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そのあいだにも、
犢
(
こうし
)
の
肥
(
ふと
)
ったのが殺され、森には猟師たちの喚声がひびき、
厨
(
くりや
)
は山海の珍味でいっぱいになり、酒蔵からはライン酒やフェルネ酒がしこたま運びだされた。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
トンカツに
巡
(
めぐ
)
り会わない日本人はようやくその代用品を見つけて、衣を着た肉の
揚物
(
あげもの
)
に対する
執着
(
しゅうちゃく
)
を
充
(
み
)
たすだけで我慢しなければならぬ。それは
犢
(
こうし
)
の肉のカツレツである。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
金銀の大皿に盛った
犢
(
こうし
)
の
炙
(
あぶ
)
り肉や、香料を入れた鳥の蒸し焼き、紅鶴の舌や茸や橄欖の実の砂糖漬、蜂の子の蜜煮、焼き立ての真っ白な
麺麭
(
パン
)
が所狭きまでに並べられていた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
さも渇してゐたかの如く、ちやうど
犢
(
こうし
)
が親牛の乳を
貪
(
むさぼ
)
る時のやうな亂暴な恰好をしてごく/\と咽喉を鳴らして
美味
(
うま
)
さうに飮むのだつた。見てゐた彼は
妬
(
ねた
)
ましさに見震ひした。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
よぼよぼのユダヤ人イサイチクが、石鹸一箇とその兎を交換しないかと言いながら、後から
蹤
(
つ
)
いて行く。黒い
犢
(
こうし
)
が土間に見える。ドームナが肌着を縫いながら何やら泣いている。
グーセフ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「中央公論」の「巣父
犢
(
こうし
)
に
飲
(
みづか
)
ふ」は、遺憾ながら、戯曲としては未完成作品である。
戯曲二十五篇を読まされた話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
これらの仲間の中には
繩
(
なわ
)
の一
端
(
はし
)
へ
牝牛
(
めうし
)
または
犢
(
こうし
)
をつけて
牽
(
ひ
)
いてゆくものもある。
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
別になんでもないので、ところで、アトスでは、お聞き及びでしょうが、女性の訪問が禁制になっとるばかりか、どんな生物でも
牝
(
めす
)
はならん、牝鶏でも、牝の七面鳥でも、牝の
犢
(
こうし
)
でも……
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
犢
(
こうし
)
から取った血清を水に浸しておくとその中の塩分がだんだんに脱けて来る。
話の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「ブロデツトオ」は卵の
※
(
きみ
)
を入れたる
稀
(
うす
)
き
肉羹汁
(
スウプ
)
、「チポレツタ」は葱、「フアジヲロ」は豆、「カステロ、デ、ロヲオ」は卵もて製したる菓子、「アニメルレ、ドオラテ」は
犢
(
こうし
)
の臟腑の料理
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
クリスマスの仮面をつけて
犢
(
こうし
)
や七面鳥の料理で葡萄酒の杯を挙げている青年男女の生活——そしてまた明るさにも暗さにも徹しえない自分のような人間——自分は酔いが廻ってくるにしたがって
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
するとある日女たちは、どこから
洞穴
(
ほらあな
)
へつれて来たか、一頭の犬を飼うようになった。犬は全身まっ黒な、
犢
(
こうし
)
ほどもある
牡
(
おす
)
であった。彼等は、殊に
大気都姫
(
おおけつひめ
)
は、人間のようにこの犬を可愛がった。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
よく
犢
(
こうし
)
を食べさせられるにも、いい加減うんざりさせられる。じっさい
瑞西
(
スイツル
)
では、どの牛も、牛になるよほど以前に殺されてしまうのであろうと思われるほど、さかんに、無反省に、
犢
(
コウシ
)
の肉を出す。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
犢
(
こうし
)
はこはさうに建物を見ながら云ひました。
黒ぶだう
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そうなさったら、黄金の
犢
(
こうし
)
が群をなして
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
鷄
(
とり
)
や
犢
(
こうし
)
の聲さへも霞の中にきこえる。
定本青猫:01 定本青猫
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
代表的なレコードは、今は市場にないが『ノルマ』の「山の
彼方
(
かなた
)
は」(八一五八)、『ファウスト』の「
黄金
(
こがね
)
の
犢
(
こうし
)
」などであったろう。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
「それは三年ばかり、以前に、私が南洋から持って帰ったもので、今は馴れていますが非常な猛鳥で、怒ると犬や
犢
(
こうし
)
ぐらいは
啄
(
つ
)
き殺します」
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その音は、
犢
(
こうし
)
の啼くのを真似したら出来そうであるが、然し調子には規則正しい連続があり、私にはそれが明かに判った。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
廊下の簾の蔭から鬼になっている順助が何と思ったのか
犢
(
こうし
)
ぐらいの嵩で自分も四つ足になりながらいきなり姿を現した。
夜の若葉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ヨナーの鯨、ソロモンの蟻、イシュメールの羊、アブラムの
犢
(
こうし
)
、シェバ女王の驢、サレクの駱駝、モセスの牛、ベルキの郭公、マホメットの驢だ。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
犢
漢検1級
部首:⽜
19画
“犢”を含む語句
犢鼻褌
犢牛
犢皮
舐犢
仇討義理与犢鼻褌
死犢
牡犢
犢子
犢料理
犢肉
越中犢鼻褌
黄犢