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瀕死
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ひんし
ふりがな文庫
“
瀕死
(
ひんし
)” の例文
何をどうしたのか
詳
(
つまびら
)
かではないが、蛇毒をうけて
瀕死
(
ひんし
)
のハルクは、ついに自らの手で、自分の太ももを切断することに成功したのだ。
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
茶という物は、
瀕死
(
ひんし
)
の病人に与えるか、よほどな貴人でなければのまないからだった。それほど高価でもあり貴重に思われていた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その位だから活気ある舞台や興行振りは東京の劇壇では全く見ることが出来なかった、東京の劇壇は沈衰、
瀕死
(
ひんし
)
の状態にいたのである
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
の迫っている
崖端
(
がけはな
)
の道には、人の影さえ見えなかった。
瀕死
(
ひんし
)
の負傷者を見守る信一郎は、ヒシ/\と、身に迫る
物凄
(
ものすご
)
い
寂寥
(
せきりょう
)
を感じた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それは、「壮大なるものを生み出す戦闘、
瀕死
(
ひんし
)
の世界に意義と目的と理想とをふたたび与える戦闘」への、召集の叫びであった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
しかしジャン・ヴァルジャンは、おそらくはもう
死骸
(
しがい
)
になってるかも知れない
瀕死
(
ひんし
)
のマリユスをにないながら、続けて前進した。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
稲妻
(
いなずま
)
の如く迅速に飛んで来て魚容の翼を
咥
(
くわ
)
え、
颯
(
さっ
)
と引上げて、呉王廟の廊下に、
瀕死
(
ひんし
)
の魚容を寝かせ、涙を流しながら
甲斐甲斐
(
かいがい
)
しく
介抱
(
かいほう
)
した。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しかし玄鶴に相談することは、——お芳に勿論未練のある
瀕死
(
ひんし
)
の父に相談することは彼女には今になって見ても出来ない相談に違いなかった。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、ハッと思う間に、
瀕死
(
ひんし
)
のT氏の
身体
(
からだ
)
がヒョロヒョロと立上った。立上ってもまだ「クックックックッ」という変な声はやまなかった。
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
一人は酔い、一人は疲れてい、他の一人は
瀕死
(
ひんし
)
の病人。油がひどく燃えた。女中は夕方になってから急に暇が出て帰された。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いっそう親切なのになると
瀕死
(
ひんし
)
の人にいやがらせを言う。そうして病人は臨終の間ぎわまで隣人の親切を身にしみるまで味わわされるのである。
田園雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
二
合
(
がっ
)
してはじめて一秘符となる古文書を、中央からやぶいて二片
一番
(
つがい
)
としたさえあるに、しかも、その両片の一字一語に老工
瀕死
(
ひんし
)
の血滴が通い
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
瀕死
(
ひんし
)
の男は感謝してその手をにぎりしめたが、間もなく夢うつつの状態におちいり、花嫁のこと、婚約のこと、誓いの言葉を口走り、馬を命じて
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
もし部屋が明るかったら、山本の顔色は
瀕死
(
ひんし
)
の大川にもまして、死人の色を呈していることが認められたろう。ごくりと
唾
(
つば
)
をのんで山本が云った。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
と、その顏の表情は全く
破壞
(
はくわい
)
されてゐた。
瀕死
(
ひんし
)
の動物の顏を見るやうなグロテスクな蔭が全面に流れてゐた。——おきみは、氣が狂つたのである。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
外部の圧迫に細り細りながら、やがて
瀕死
(
ひんし
)
の眼に
把
(
とら
)
えられたものは、このように静かな水の姿ではなかろうかと……。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
きのう山へ
著
(
つ
)
くなり或半開の扉のかげからふと目を合わせてしまった
瀕死
(
ひんし
)
の患者の無気味な眼つきに感ぜられたり
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
それに修道院を出たときから、
瀕死
(
ひんし
)
の長老を思うの念は一分間も、一秒間も、彼の念頭を去らなかったのである。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
即ち極少量注射したら
瀕死
(
ひんし
)
の病人が生き返るというようなものではなくて、実際は米かパンのようなもので、毎日
喰
(
た
)
べていて栄養のとれるものなのである。
科学と文化
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
「『センチュリー』を買ってどうする?」と
瀕死
(
ひんし
)
の病人が高価な辞書を買ってどうする気かと不思議でならんので、「それどころじゃあるまい、」というと
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
崇拝者ポトカ伯夫人がニースから
駆
(
か
)
け
付
(
つ
)
けると、
瀕死
(
ひんし
)
のショパンは、この同国人に何か歌ってくれと言った。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
瀕死
(
ひんし
)
の猫は、脚で、狂おしく
虚空
(
こくう
)
を掻き、丸く
縮
(
ちぢ
)
まるかと思うと、長々と
反
(
そ
)
り返り、しかも、声は立てない。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
薄く、長く引いた眉の下に、
鯨
(
くじら
)
のような眼が小さく並んで、その中にヨボヨボの老人か、又は
瀕死
(
ひんし
)
の病人みたような、青白い瞳が、力なくドンヨリと曇っていた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
卯平
(
うへい
)
も
患者
(
くわんじや
)
の一
人
(
にん
)
でさうしてお
品
(
しな
)
の
家
(
いへ
)
に
惱
(
なや
)
んで
居
(
ゐ
)
た。お
品
(
しな
)
の
母
(
はゝ
)
の
懇切
(
こんせつ
)
な
介抱
(
かいはう
)
から
彼
(
かれ
)
は
救
(
すく
)
はれた。
彼
(
かれ
)
はどうしても
瀕死
(
ひんし
)
の
女房
(
にようばう
)
の
傍
(
かたはら
)
に
病躯
(
びやうく
)
を
運
(
はこ
)
ぶことが
出來
(
でき
)
なかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
夫の寛治氏も
瀕死
(
ひんし
)
の彼女の
枕辺
(
まくらべ
)
にあって、不面目と心のいたみに落涙をかくし得ず、
僅
(
わずか
)
に訪問の客に
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
果して加州に着いた時は、殆ど
瀕死
(
ひんし
)
の有様だった。しかし、兎に角どうにか頑張り通して生延びた彼は、翌年、ファニイの・前夫との離婚成立を待って
漸
(
ようや
)
く結婚した。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
その瞬間、誰かが扉の
挿錠
(
さしじょう
)
をがちゃがちゃさせた。私は急いで誰でも外から入って来られないようにして、それからまたすぐその
瀕死
(
ひんし
)
の敵手のところへとひき返した。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
小生はかつて
瀕死
(
ひんし
)
の境にあり肉体の煩悶困頓を免れざりしも右第二の工夫によりて精神の安静を得たりこれ小生の宗教的救済なりき知らず貴君の苦痛を救済し得るや否を
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
工藝も今や
瀕死
(
ひんし
)
の状態にある。否、無数のものが横死をとげていると云ってよいであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
瀕死
(
ひんし
)
の病人は、死期が迫るにつれて、恢復の見込みを医師に
頻繁
(
ひんぱん
)
にたずねるものである。そういう場合に老練な医師は患者を絶望させるようなことは決していわないものである。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
渡河
瀕死
(
ひんし
)
の難、雪峰凍死の難、
重荷
(
おもに
)
負戴
(
ふたい
)
の難、
漠野
(
ばくや
)
独行の難、
身疲
(
しんぴ
)
足疵
(
そくし
)
の難等の種々の
苦艱
(
くげん
)
もすっぱりとこの霊水に洗い去られて清々として自分を忘れたような境涯に達したです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
が、たちまち、彼らの一人が銃丸に当って、恐ろしい
呻
(
うめ
)
き声を
揚
(
あ
)
げた。つづいて、もう一人の方も草に
仆
(
たお
)
れた。先にやられたほうは
瀕死
(
ひんし
)
の重傷と見えて、唸り声がだんだん細ってゆく。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
イボタの虫だなんて云ふ訳の解らない売薬が何で
瀕死
(
ひんし
)
の病人に
利
(
き
)
くはずがあらう。幾ら母の云ひつけであらうと、そんなものを買ひに行つてゐる間に
若
(
も
)
し姉が死んで了つたらどうしよう。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
予算の大削減にも
遭
(
あ
)
わず、
瀕死
(
ひんし
)
の状態にあった内閣の命脈を、一年ぐらい続けたから、閥族としては、彼に爵位を与える位のことは、
何
(
な
)
んでもなかったさ、そこで、吾輩の復讐となったが
雨夜続志
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
こうして
瀕死
(
ひんし
)
の病人を海へ、大波のうねっている海へ、連れだそうというのです。その海こそは、生きているあいだはこの男に食べ物を
与
(
あた
)
え、いまは、死んでから後の安息を与えるのです。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
僕には母を母として愛さなければならん
筈
(
はず
)
です、
然
(
しか
)
し僕は母が僕の父を
瀕死
(
ひんし
)
の
際
(
きわ
)
に捨て、僕を瀕死の父の病床に捨てて、
密夫
(
みっぷ
)
と走ったことを思うと、言うべからざる
怨恨
(
えんこん
)
の情が起るのです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それは
鞭
(
むち
)
のひと打ちのように、私の眼前にある
瀕死
(
ひんし
)
の女のこころを
傷
(
いた
)
めた。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
やがて消滅するであろうが、消滅の日を一日なりとものばしたいと念ずる。つまり我々は称名しながら
瀕死
(
ひんし
)
の壁画と格闘しているようなものだ。保存とはかかる格闘を意味するのかもしれない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
奥さんはほら前にいった通り
瀕死
(
ひんし
)
の病人でしょう、先生の事なんかお耳に入れるとどんな事になるか分からないので、お役人も考えていたらしいのですけれども、聞かなきゃならない事もあるし
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「松島さんが死んだというんですね?
瀕死
(
ひんし
)
の怪我人とか
死骸
(
しがい
)
ですと、夜中でない限り裏門から出ませんでな。門衛のほうの名簿ですと、松島さんは昨日限り退職されたことになっておりますがね」
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そこに片手の
萎
(
な
)
えた人がいた。パリサイ人の律法論では、安息日には病気といえども、
瀕死
(
ひんし
)
の重病の場合以外は、これを癒すことを禁じていた。それが一種の労働になると解釈していたのであります。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
(一二)
瀕死
(
ひんし
)
のジャン・クリストフの最後の言葉。
ジャン・クリストフ:13 後記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
、
ロマン・ロラン
(著)
俺自身があの
瀕死
(
ひんし
)
の猫にほかならないのだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
病少女はもはや
瀕死
(
ひんし
)
の床に横わっていた。
勝ずば
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
けれども何か
瀕死
(
ひんし
)
に傷いた小鳥の方でも
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
いずれも
瀕死
(
ひんし
)
の大病人なのである。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
小僧「……ことは無くて大有りです。あンさんは、昼間の五分の居睡りは、
瀕死
(
ひんし
)
の病人を
蘇
(
よみがえ
)
らせるということを御存知ですか。」
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
瀕死
(
ひんし
)
の境にいるのではないかとさえ見られるのですから、老尼にも一点、
憐憫
(
れんびん
)
の心が起ってみると、恐怖心の大半が逃げました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
時刻は、正に
寅
(
とら
)
の
下刻
(
げこく
)
(午前五時頃)だった。わずか四日半で着いたわけになる。二人は勿論、
瀕死
(
ひんし
)
の病人に等しいものだった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その荘厳なる
瀕死
(
ひんし
)
の勇者のまわりにはある聖なる恐怖が勝利者らのうちに
萌
(
きざ
)
して、イギリスの砲兵は息をつきながら沈黙した。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
“瀕死”の意味
《名詞》
今にも死にそうなこと。
(出典:Wiktionary)
瀕
漢検準1級
部首:⽔
19画
死
常用漢字
小3
部首:⽍
6画
“瀕死”で始まる語句
瀕死者